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道に迷ったら、こどもの頃の自分に聞く。脱サラ絵本作家が生き物を描く理由

生ボイス

今の仕事を続けるか、それとも新しいことにチャレンジするか。

キャリアの分岐点に立ったときに取り組む自己分析。つい今の自分に「やれること」「やれないこと」という軸で考えてしまいがちです。

しかし、こどものときに無邪気に夢中になっていたことを思い出してみると、そこに自分の適性や、やりたいことのヒントが隠れているかもしれません。

生き物の描写を通じて自然の摂理を描いた絵本『うみがめぐり』の著者、かわさきしゅんいちさんは、法学部卒業後に商社での勤務を経て、絵本作家に転身したという珍しいキャリアの持ち主。

かわさきさんはなぜ会社員を辞めて、生き物を描く絵本作家になる道を選んだのでしょうか? その理由を伺いました。

<プロフィール>
かわさきしゅんいちさん
絵本作家・動物画家

1990年大阪府吹田市生まれ。甲南大学法学部を卒業後、上京し商社の青果営業を経て脱サラ。生物多様性のおもしろさを伝えるために、いきものの目線や、自然の摂理を描く。

Twitter  :https://twitter.com/nupotsu104
Instagram :https://www.instagram.com/nupotsu104/

カブトムシを描き続けた幼少期。大人になる過程で手放した「好き」を取り戻す

ー2017年4月に海の生態系を描いた絵本『うみがめぐり』で作家デビューし、絵本作家・動物画家として活躍するかわさきしゅんいちさん。現在に至るまでの経緯を教えてください。

かわさきさん
絵は幼い頃からずっと描いていました。物心ついたときには、下の写真のようなカブトムシの絵をひたすら描いていましたね(笑)。

地元はそれほど自然の多いところではありませんでしたが、草むらでバッタやトンボを追いかけ回したり、親に山に連れて行ってもらったりするのが何よりの楽しみで、小学生になった頃には「将来は虫博士になろう!」と決めていたくらい、生き物が好きでした。

ー大学では文系の学部に進学していますが、生き物や絵とは関係のない道を志したのでしょうか?

かわさきさん
そうなんです。中学生のとき、教室に虫が出るたびに「おい!かわさき!」と呼ばれたりして(笑)。僕が虫の話ばっかりしていたからだと思うんですけど、当時はそれをからかわれるのが嫌で、自分から生き物の話をあまりしないようにしはじめたこと。僕と同レベルかそれ以上に生き物が好きな人も周りにおらず、具体的にどうすれば虫博士とやらになれるのか、その情報がなかったのもあり自然とフェードアウトしてしまいました。

高校では漫才、大学では演劇や海外支援など、その時々で夢中になれるものがあったので、生き物からはますます離れてしまい、大学卒業後は、当時付き合っていた彼女との結婚を考えていたこともあり、一般企業に就職する道を選びました。

ー生き物が好きな気持ちを抑え込んでしまったのですね。そこからどのように絵本作家・動物画家になったのですか?

かわさきさん
就職してから半年間、全く絵を描いていないことに気づいたんです。

常に何かしら絵を描いていたんですが、社会人になってからは忙しすぎて、ペンを握ってなかったんですね。それに気づいた瞬間無性に絵が描きたくなると同時に、「こっちで食っていくことはできないのか」と考え始めました。

そんな僕の様子を見兼ねた彼女に「ホンマは何がしたいんや?」と迫られたとき、とっさに「絵本作家になりたい!」と応えていました。後から気づいたのですが、絵本作家って僕が大人になるまでの間に好きだったものが全部入った職業なんですね。生き物に、絵に、物語に…。この出来事がきっかけで将来の方向性が定まったんです。

他にもいくらか理由はあるんですが、でも彼女とは結婚を前提に付き合っていたこともあり、この先食っていけるかも分からん僕は、その場でフラれてしまいました(笑)。

帰りの電車で考えたのが「これで絵本作家になれなかったら、フラれただけで人生の収支がただのマイナスで終わってしまう」と背水の陣を決意。

むしろ失うものがなくなったのも後押しになり、適度に貯金を貯めた後、勤めていた会社を1年4カ月で退職しました。

ー退職後はどのように生活を成り立たせていたのでしょうか?

かわさきさん
貯金と単発のバイトでやりくりしながら、公募展に出展したり、オリジナルの絵葉書や缶バッジを作成し、自分の作品を販売できるイベントに出展しました。

最初に出した名古屋のイベントは「全部売れたら3~40万円くらいの売り上げになる!」と皮算用をしてみたものの、蓋を開けてみると、売り上げはその10分の1にも満たない額。

おまけに東京から名古屋まで郵送よりもレンタカーの方が安いやん!と思ってドライブしたら、ガソリン代と高速代を計算に入れておらず経費が膨らみ大赤字。

そのあたりを整理してやり方を変えてようやく黒字になり始めたのがその半年後。でもぼくの人件費を含めればまだまだ赤字でした。

それでも退職から1年で貯金が尽きかけ、ええいままよ、とペットの似顔絵のお仕事をはじめました。

募集に使ったメインはTwitter。普通は犬猫などの愛玩動物向けに描かれている方が多い中で、「犬猫からカブトムシまで」というキャッチコピーのもと、魚でも爬虫類でもなんでも描きますよ! と格安で似顔絵を描く仕事を始めてみたところ、予想以上に引き合いがあり、家賃分くらいの収入をいただくことができました。

そして、退職して1年が経とうとしていた頃、出展していたイベントで絵本『うみがめぐり』の同人誌版を手に取ってくれた出版社の方が「うちで出版しませんか?」と後日連絡をくれたんです。

これは最高に嬉しかったですよ。ついにチャンスが来たと。

でも、だからこそ中途半端なものは出せないと思って、出版社の方に「少しだけ描き直させてください」とお願いしました。それが最初はほんの1~2ページだけのつもりだったのですが、どんどん気になるところが出てきてしまって、結局全部書き直してから出版しました(笑)。

出版以降、絵本を通したクチコミやTwitterのおかげで挿絵や講演の仕事などの依頼もいただくようになりましたね。


絵本『うみがめぐり』今夏重版決定。中国語版も出版予定。
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漫才や演劇への回り道が強みに。フリーランスを強くするのは「スキルの掛け算」

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アントレスタイルマガジン編集部

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