あなたは、どのような心構えで仕事に臨んでいますか?
自信を持って堂々と臨む方もいれば、いつも不安を抱えながら仕事に向かっている方もいると思います。
今回お話を伺ったゲームキャスターのabaraさんは、不安の解消、そして自身の成長のために、仕事前の徹底的な準備は欠かさないと言います。
abaraさんはフリーランスで活動するゲームキャスター。主にゲームの大会やイベントの実況・解説を行っています。
今回は、abaraさんがゲームキャスターになるまでの道のりとともに、重要視している仕事に対する姿勢や準備について伺いました。
abara(アバラ)さん
1990年生まれ、神奈川県相模原市出身、三重県育ちのゲームキャスター。
幼少期に携帯型ゲーム機のパズルゲーム『テトリス』にハマり、ゲームに熱中し始める。
小学校高学年には、パソコン用FPS(※)ゲーム『ウルフェンシュタイン・エネミーテリトリー』に出合い、FPSの世界に没頭。中学・高校時代には同ゲームの大会にも出場する。
※FPS…ファーストパーソン・シューティングゲーム
主にシューティングゲームの一種で、主人公の本人(第一者)視点でゲーム中の世界・空間を任意で移動でき、武器もしくは素手などを用いて戦うアクションゲームのスタイルを指す。
高校卒業後は作家・ライターを目指せる専門学校へ進学。
2015年からはウルフェンシュタイン・エネミーテリトリーの“精神的後継作”である『ダーティー・ボム』のリリースをきっかけに、再びFPSの世界へ。
2016年にはチーム対戦型オンラインFPS『オーバーウォッチ』と出合い、自身で同ゲームの大会を主催。実況・解説も務めるようになる。
2018年6月からフリーランスのゲームキャスターとして活動を始め、現在は3タイトルのゲーム実況・解説を行っている。
ゲームにある本来の魅力を伝えたかった。“ゲームキャスター・abara”が誕生するまで
ーゲームキャスターとして活躍されているabaraさん。現在に至るまでの経緯を教えてください。
ゲームが好きになったのは4歳の時です。親戚からゲームボーイをもらって、パズルゲームの『テトリス』を夢中になってやっていました。
中学に上がってからはパソコンゲームにハマり始め、無料で遊べるパソコンFPS(主人公と同じ視点で操作する3Dアクションシューティングゲームの総称)『Wolfenstein: Enemy Territory』(略称:W:ET)でずっと遊んでいました。
中学・高校時代は全てこのゲームに捧げてしまいましたね(笑)。
ー名作ですし、ゲームは1度ハマり出したら止まりませんよね。その頃から「ゲームに関わる仕事に就きたい」と考えていたのですか?
そうですね。小さい頃に抱いていた将来の夢はゲームクリエイターでしたから。
ただ、当時は「ゲームクリエイタ=プログラマー」という程度の知識しかありませんでした。
加えて中学・高校と進んでいくうちに、自分はめちゃくちゃ数学が苦手だということに気がつきまして(笑)。
このままゲームクリエイターを目指しても、プログラミングができないなと、勝手に諦めてしまったんです。
なので、もともとゲームと同じぐらい小説を読むことが好きだったこともあり、なんとなく作家を目指したいなと考え、高校卒業後は、作家やライターを育成する専門学校に通いました。
ーでは、専門学校卒業後は文章を書く仕事をされていたのですか?
いえ、学校で作文技法や構成といった基本スキルは学んだものの、その時は活かすことができなかったんです。
というのも、物語は思い浮かぶし、文章は書ける。でも、10万文字近い文量をコツコツ積み重ねることができなくて、小説の体を成したものは1つも書き上げられませんでした。
「あっ、俺って才能ねぇんだな」って、心が折れましたね。
ただ、時間がかかったとはいえ、専門学校で学んだスキルは、今では実況に活かせています。
ーそうだったのですね…。その後はどうされたのでしょう?
実家に帰って、4〜5年はひたすらゲームをやるだけの生活を送っていました。
アルバイトはしていましたが、それ以外はほとんど家から出ずにゲーム三昧な日々を過ごしていました。
そんな日々に、ある転機が訪れました。
ーどのようなことが起こったのですか?
以前よく遊んでいた『W:ET』の開発元が、同ゲームの“精神的な後継作”として『Dirty Bomb』という新作を出したんです。
戦闘スタイルやゲーム中にあるエリアの地図などは似ているのですが、作品の世界観は全く違う、というような。
これが大変面白くて、大会に2度出場しました。
その時まで夜勤のアルバイトをしていたのですが、コアタイムにゲームがしたくて、普通の商社に就職したんです(笑)。
ですが『Dirty Bomb』はいろいろあって1年くらいで下火になってしまって…。
そのタイミングで『オーバーウォッチ』に出合いました。
このゲームは6対6で戦うチーム対戦型FPSで、チーム内で攻撃役・盾役・サポート役に分かれてプレーするという特徴があります。
なかでも、経験値やレベルによって武器が強くなったりせず、よりフェアな状態で対戦できる“競技性の高さ”に、僕は惹かれました。
FPSでは敵に狙いを合わせる能力であるエイムの強さが絶対の正義なのですが、役割によっては動きでカバーできるというところも大きな魅力です。
ただ、僕は、その時の国内大会のルールがあまり適切ではないと感じていました。海外だと引き分けが滅多に起こらないルールを採用していたのですが、国内だと実力の拮抗チーム同士では引き分けが多発してしまうんです。
「海外ルールで試合がしたい」と考えた結果、自分で『オーバーウォッチ』の大会を開いちゃいました(笑)。
ーえ、いきなり自分で大会を開くことなんてできるんですか?
実は、大会を開くこと自体は言葉にするとすごく簡単なんですよ。
まず大会ルール・日程を決めます。SNSで告知をして、インターネットの応募フォームから参加者を募ります。
それから当日集まった人たちに、ゲーマー向けのボイスチャットアプリ『Discord』でアナウンスして、トーナメント表通りに試合をして貰えば大会ができます。トーナメント表も、手軽に作れるWEBアプリがあるんです。
もちろん、人に参加してもらっているので、失敗すれば大迷惑です。起こりうるトラブルなどは全て想定して解決策を用意し、進行の手順も詳細なものを事前に用意して、誰でも読めるようにしておきました。
事前に準備しておいたことで、大会としてはなんとか成立したんです。気合いと心配りで、なんとか乗り越えられました。
ー本当に手軽に開催できるんですね! 大会にはどのぐらい参加者が集まったのですか?
最初の大会は6人1組で、約20チームも集まってくださいました。
やはり『オーバーウォッチ』は人気コンテンツですし、海外ルールにも需要があったことが、思っていたより多くの方に来ていただけた要因なのかなと。
そこから試合の実況・解説も、自分でやってみたかったのでやるようになったんです。
実際に喋ったものが残っていたことから、2016年7月には『オーバーウォッチ』の公認大会に解説者として呼んでいただけました。
ゲームの実況・解説をさせていただく機会が増えたきっかけですね。
2018年6月から、その時の仕事に区切りが付いたので、フリーランスのゲームキャスターとして活動していくようになりました。