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個人事業主は退職金制度がなくても退職金がもらえる?

個人事業主は退職金制度がなくても退職金がもらえる?

個人事業主でも、従業員を雇っている場合、退職金制度を設けている場合もあるかもしれません。しかし、退職金制度を設けていたとしても、個人事業主本人のための退職金を用意できていることにはなりません。では、どうやって個人事業主は退職金を確保するのでしょうか。

会社員・公務員などと違い、個人事業主の公的年金は国民年金だけです。日本年金機構によると、65歳から支給を開始した場合、最大でも年額777,792円(64,816円/月)です。(2023年3月時点)

「元気なうちはいつまでも働きたい!」と、そもそも、個人事業主の場合「退職」についてあまり考えていない方も多いかもしれません。

しかし、人生100年時代といわれる中で、リタイア後のマネープランについては若いうちからしっかり考えておく必要があります。本記事では個人事業主の方は退職金をどのように用意しておくべきなのか、解説します。


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個人事業主は退職金制度を設定できるのか

個人事業主に限らず、法人でも退職金制度の設定は任意であり、退職金制度を設ける義務はありません。ですが、退職金は従業員、事業主それぞれにとって大切なものです。ぜひとも忘れずに対策しておきましょう。

退職金制度は大きく分けると、「従業員のための退職金制度」と、「個人事業主のための退職金制度」が存在します。それぞれの退職金制度について、詳しく見ていきましょう。

従業員のための退職金制度

退職金の準備先について、りそな年金研究所の調査を紹介します。

中堅/中小企業の従業員向けの退職金制度で一番多いのは社内での準備で、確定拠出年金は年々増加しているほか、中小企業退職金共済制度、特定退職金共済制度も活用されていることがわかりました。

「統計でみる退職金・企業年金の実態(2021 年版)」(りそな年金研究所)
(P.5より)
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1.中小企業退職金共済制度(中退共)

独立行政法人勤労者退職金共済機構の中小企業退職金共済事業本部が運営する国の制度です。

独立行政法人勤労者退職金共済機構の「中小企業退職金共済事業概況」によると、全国で約37.9万事業所の362万人以上の従業員が加入しています。

掛け金は事業主が全額負担し、従業員に直接支払われます。

「令和5年1月 中小企業退職金共済事業概況」(独立行政法人勤労者退職金共済機構)

2.特定退職金共済制度(特退共)

商工会議所の制度で、退職金共済制度の一種です。運営は各地の商工会議所などが行っています。制度の細かな内容は商工会議所によって変わりますが、毎月掛け金を納めることで、退職金を準備できるというシステムは同じです。掛け金は全額事業主負担で、1人につき1口1,000円、最大30口まで加入できます。また、従業員のために負担した掛け金は、全額損金に算入でき、非課税扱いになります。

支払いは過去10年までさかのぼって納めることができるので、これまで特定退職金共済に加入していなかったとしても、今から退職金の準備ができます。

商工会議所によっては加入する際に年齢制限などがある場合もありますが、基本的には従業員であれば誰でも加入できます。

特定退職金共済は、あくまでも従業員のための制度であり、事業主や役員(使用人兼務役員を除く)、事業主と生計を一にする親族は加入することができませんので、ご注意ください。

「特定退職金共済」(東京商工会議所)

「統計でみる退職金・企業年金の実態(2021 年版)」(りそな年金研究所)
(P.5より)
※リンクの遷移先はPDFです。ダウンロードに大量の通信費がかかる可能性があります

個人事業主のための退職金制度

個人事業主のための退職金制度として商品化されているものではありませんが、退職金として使えるものは下記のとおりです。

1.小規模企業共済
2.国民年金基金
3.個人型確定拠出年金“iDeCo”(イデコ)

どれも個人事業主が退職後のマネープランを考えるうえで、検討したい制度です。それぞれの制度について、詳しく解説していきます。

1.小規模企業共済制度とは

小規模企業共済は、個人事業主など小規模企業の経営者が退職・廃業後の生活に備えて長期積み立てをするのに最適な退職金として活用できる制度といわれています。

小規模事業の経営者が国民年金に加えて老後資金を準備することを目的に、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。

毎月500円単位で1,000円〜70,000円の掛け金を積み立て、退職・廃業時などに受け取ることができます。

掛け金全額を所得控除できるというメリットもあり、節税対策にもなる制度です。最初に検討しましょう。

「小規模企業共済」(独立行政法人中小企業基盤整備機構)

(1)加入資格
事業内容によって、加入条件が異なっています。

1.建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業は、常勤従業員の数が20人以下の個人事業主または会社などの役員

2.商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は、常勤従業員の数が5人以下の個人事業主または会社などの役員

3.常勤従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人などの士業法人の社員 など

なお、上記1.または2.の事業に該当する事業の共同経営者の場合は、個人事業主1名につき2名まで加入できます。

(2)共済金の種類
契約者の地位や請求事由によって受け取る共済金の種類・金額が異なりますが、ここでは個人事業主の場合を見ていきます。

1.共済金A
廃業した場合、共済契約者が死亡した場合に受け取るもの。死亡時には、親族が請求できます。なお、廃業時に配偶者や子に事業譲渡した場合は準共済金となります。

2.共済金B
65歳以上で180ヵ月以上、掛け金を払い込んだ場合に老齢給付として受け取るものになります。働きながらでも受け取れるので、心強い味方です。

3.準共済金
法人成りにより、事業主に加入資格がなくなり、解約をした場合に受け取るものです。

4.解約手当金
任意の解約や掛け金を12ヵ月以上滞納した場合、また法人成り後も加入資格は存続したものの、解約をした場合に受け取るものになります。

また、共済金Aと共済金Bについては、一括受取り、分割受取り、一括受取りと分割受取りの併用の3つの方法を選ぶことができます。 

(3)節税対策
小規模企業共済に掛け金を納付すると、所得控除として扱われ、節税対策にもなります。

所得控除とは、所得税を計算する前に、社会保険料や生命保険料などのように所得から差し引くことのできる項目です。

小規模企業共済は、掛け金全額が控除できます。所得額が増えると所得税率は上がるため、所得の多い経営者ほど、掛け金の納付による節税効果も大きくなります。

ただし、受取時には、一括受け取りであれば退職所得扱い、分割受け取り(年金受け取り)であれば公的年金などと同じ雑所得扱いとなるため、結果として課税されます。現役中に所得控除としていた分を、受取時に納税するかたちになるのです。

それでも、現役中は経済的な余裕ができますし、退職時にも「事業所得」扱いではないので、やはり節税効果があります。

「共済金(解約手当金)について」(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)

(4)一時貸付金制度
小規模企業共済制度に加入することで、低金利で事業や福利厚生などの資金を借り入れることができます。助成金・補助金などと違い、返済しなければなりませんが、頼れる味方です。

1.一般貸付制度(もしものときに、迅速に事業資金を借り入れできる制度)
2.緊急経営安定貸し付け(経営環境の悪化などのための事業資金)
3.傷病災害時貸し付け(ケガや病気による一定期間の入院や被災を受けた際の事業資金)
4.福祉対応貸し付け(同居親族などへの住宅改造・福祉器具購入資金)
5.創業転業時・新規事業展開等貸し付け(新規開業・転業などのための事業資金)
6.事業承継貸し付け(事業用資産または株式等の取得のための貸付金)
7.廃業準備貸し付け(設備の処分費用など円滑な廃業・会社解散のための貸付金)

限度額や条件などについては中小機構のWebサイトで確認してみてください。

「貸付制度について」(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)

小規模企業共済制度のデメリット

小規模企業共済は退職金制度を設定することを目的とした制度のため、廃業または65歳に達する以外の理由で任意解約すると不利になります。

1.1年未満の解約は掛け捨てとなり、解約手当金がありません
2.加入後20年未満で任意解約したときは、積立額より解約手当金が少なくなることがあります
3.確定拠出年金と違い、自分で運用方法を選ぶことはできません

2.国民年金基金とは

国民年金基金とは、国民年金(老齢基礎年金)に上乗せして加入できる公的な年金制度です。自営業やフリーランスなどの国民年金第1号被保険者の方が、安心して老後を過ごせるための制度として用意されています。一生涯にわたり確定した額を受け取ることができるのはもちろん、現役時代においては掛け金が一定なので資金計画が立てやすく、さらには掛け金全額が社会保険料控除となるため節税にもなります。

国民年金基金に加入できるのは、以下のような方です。

1. 20歳以上60歳未満の国民年金の第1号被保険者の方(※国民年金保険料を納付している方)
2.60歳以上65歳未満の方や海外居住者で国民年金に任意加入している方

条件は以上ですので、学生や主婦であっても、国民年金1号被保険者であれば加入可能ですが、厚生年金・共済年金に加入されている方(第2号被保険者)とその配偶者(第3号被保険者)の方は加入できません。

国民年金基金のプランは、以下のようになっており、自分のライフスタイルに合わせて自由に選択できます。

プランは、大きく一生涯年金を受け取れる「終身年金」(A型B型)と、期間限定で年金の上乗せができる「確定年金」(Ⅰ~Ⅴ型)の2つに分けられます。1口目は必ずA型かB型のどちらかを選び、2口目以降はA型かB型の上乗せ、またはⅠ~Ⅴ型から選びます。掛け金の上限はiDeCoと合わせて月額6万8,000円になります。

【終身年金】
1.A型(15年の保証期間あり)
・65歳から一生涯、年金を受け取れます。
・年金受給前または保証期間中に亡くなった場合、遺族に一時金が支給されます。

2.B型(保証期間なし)
・65歳から一生涯、年金を受け取れます。
・遺族一時金はありませんが、その分、掛け金が抑えられます。

【確定年金】
3.I型(15年の保証期間あり)
・65歳から、15年間、年金を受け取れます。

4.II型(10年の保証期間あり)
・65歳から、10年間、年金を受け取れます。

5.Ⅲ型(15年の保証期間あり)
・60歳から、15年間、年金を受け取れます。

6.Ⅳ型(10年の保証期間あり)
・60歳から、10年間、年金を受け取れます。

7.Ⅴ型(5年の保証期間あり)
・60歳から、5年間年金を受け取れます。

国民年金基金の注意点

注意すべき点として、国民年金基金は途中で脱退ができないことが挙げられます。

1口目を減口することはできませんが、申し出て口数を減らしたり、掛け金の納付を中断したりすることはできます。その場合、それまでに納めた額に応じたものが60歳または65歳から支給されます。

また、納付・受取金額が固定されているために、物価上昇など経済の変化には対応ができません。並行して他の制度や、次項のiDeCoのような変動金利型の商品を検討しておきましょう。

なお、国民年金基金と付加年金は重複加入できませんので、ご注意ください。

「国民年金基金とは」(全国国民年金基金)

3.個人型確定拠出年金 “iDeCo”(イデコ)とは

iDeCo(イデコ)とは、60歳までの間に毎月一定の金額(掛け金)を投資信託などの金融商品を自ら選択して運用し、60歳以降に形成された資産を受け取るという私的年金制度です。

自営業者(国民年金第1号被保険者)の場合であれば、国民年金基金と合わせて、月額6万8,000円を上限として積み立てることができます。

加入は任意であり、申し込み、掛け金の拠出・運用をすべて自分の責任で行います。銀行や信用金庫などの運営管理機関で加入手続きをします。運用管理機関が選定・提供する金融商品を自分で選び、掛け金を納めて、運用開始となります。

金融商品は、複数の商品を選ぶこともできますし、途中で商品を変更することもできます。

税制面でも優遇されていて、拠出の際には非課税、すなわち全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)とされ、運用益についても運用中であれば非課税となります。

そして、給付時においては、一時金として受け取れば退職所得控除、年金として受け取れば公的年金等控除が適用されます。

iDeCo公式サイト

個人型確定拠出年金 “iDeCo”(イデコ)のデメリット

上記のように自らの判断で運用するものなので、iDeCoならではのデメリットもあります。

1.運用状況によって、資産が増減するので元本割れする可能性があります
2.原則60歳まで運用中の資産を引き出せません
3.口座管理料や信託報酬などの各種手数料がかかります

また、安全・確実を重視する方には向かないかもしれません。自ら判断するのが苦手な方も注意が必要です。また、国民年金の免除・一部免除を受けている方はiDeCoに加入できません。そうでなくとも、手元資金に不安がある方はNISAなど他の制度や商品を検討した方がよいでしょう。

個人型確定拠出年金iDeCoポータル

まとめ

個人事業の開業直後は、収入も安定せず、なかなか退職金を計画的に準備することは難しいかもしれません。しかし、万一病気などで働けなくなると無収入になってしまいます。会社員のように被雇用者と違い、病気やケガで働けなくなったときの傷病手当金も受けられません。

退職金のつもりで毎月コツコツと積み立てをすることで、廃業や退職後だけでなく、一時的に働けない場合の備えとすることができます。

実際に退職の計画はなくても、65歳で退職という前提で退職金の目標額を定め、しっかり準備をしておきましょう。

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PROFILE

ちはる

大手IT商社でプロダクトプロモーション担当を経て、 WEBコンテンツ制作会社に転職し、ライターとして所属。その後、独立し、現在はビジネス・不動産関連の記事を主に執筆。

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