「串打ち3年 裂き8年 焼き一生」
うなぎ屋の世界では、こんな言葉をよく聞きます。何事も、極めるには長い年月がかかるという意味です。
今回お話を伺ったのは、デザイナー/絵本作家の塚本ユージさん。
塚本さんは、今年行われた第10回「be絵本大賞」において、絵本大賞を受賞されました。
その審査員は秋元康さん、茂木健一郎さん、武田双雲さんなど、そうそうたる顔ぶれです。
大賞を受賞した作品『かいとうあっというま』には、どのような想いが込められているのでしょうか?
その裏側には、中学時代から続けているという「作詞ノート」の存在がありました。
今回は、塚本さんの半生を振り返るとともに、受賞までの経緯、そして『かいとうあっというま』に込めた想いについてお聞きしました。
塚本ユージ
株式会社アメージングデザイン・代表取締役社長/デザイナー/絵本作家日本大学芸術学部デザイン学科卒業。
大学卒業後、フリーターをしながらミュージシャンを目指し活動。結婚を機に就職。
2度の転職を経験し、会社員として働くも、こどもが生まれたことをきっかけに、家族との時間を増やすため、デザイン会社・株式会社アメージングデザインを設立。
「ミミアンジュール」というイラストブランドを立ち上げ、こどもだけでなく、元こども達(大人)に向けた作品の発信もしている。
会社の仕事と並行して、イラストや詩、絵本などの創作活動にも力を入れる。
こどもや親に向けた、イベントやワークショップ等も積極的に行っている。
そして今年、本業の傍らで創作を続けていた絵本『かいとうあっというま』が、第10回「be絵本大賞」において、絵本大賞を受賞。
秋元康氏、茂木健一郎氏、武田双雲氏などの著名な審査員から、大絶賛される。
家族との時間が最優先。塚本さんが独立をした理由
ー今年、絵本大賞を受賞された塚本さん。その経歴を教えてください。
もともと小さい頃から絵を描くのが好きだったので、大学ではデザインについて勉強していました。もっとも、大学時代は絵よりも音楽活動の方が楽しくて、バンド中心の生活を送っていましたが(笑)。
ー美術に音楽と、芸術系がお好きだったんですね。絵と同様、昔から音楽もご経験があったのでしょうか?
そうですね。音楽も昔から好きだったので、中学生くらいの時から「作詞ノート」をつけるようにしていましたし、作曲もしていました。
ー大学卒業後も音楽活動をされていたんですか?
はい。大学卒業後は、アルバイトをしながら音楽活動を続けていました。しかし、がんばってもなかなか芽が出なかったんですよね。そんな時、高校時代から付き合っていた彼女と結婚しました。
「結婚をするなら、就職しないと…」と思い、就職活動を始めたんです。
ーそれまで正社員での経験がないとなると、就職活動はなかなか厳しかったのではないですか?
そうですね(笑)。とりあえず大学で絵を勉強していたので、デザイン系の会社なら入れるんじゃないかと思い、そのあたりの会社に絞って就職活動を始めたんです。
しかし、面接がなかなか厳しくて(笑)。
それもそのはず、当時の私は実績もなかった上に、募集要項に記載されている「デザイン」の意味をよく理解していなかったので(笑)。
ーどういうことでしょう?
僕は「デザイン=絵」だと思っていたのですが、募集要項にあるデザイン職とは、Webデザインやロゴデザインなどが主な業務でした。そもそもの認識がズレていたんですよね。
ともあれ実績がないので、とりあえず自分が描いたイラストを持ち込んでは、面接でアピールしていたんです。
運良く僕の絵が、1社目の部長さんの目に留まり、おもしろがってもらえて、なんとか採用になりました。
ーではその会社でイチからWebデザインを学ばれたのですか?
そうですね。とにかく勉強してスキルを身につける毎日でした。この頃はもう仕事でてんてこ舞いで、音楽活動はできなくなっていましたね。
そしてある程度仕事をこなせるようになり、2度の転職を経て、3社目に籍を置いていた時に、もっとこどもと一緒にいたいと思うようになったんです。
そして、会社を辞めて、デザイナーとして独立することにしました。