「起業したい!」と考えている大学生の中には本当に学生のうちに起業するべきなのか、失敗したらどうしよう、など不安に考えている人もいるかもしれません。しかし大学生が起業するからこそ得られるアドバンテージは大いにあり、挑戦しやすいビジネスモデルもあります。この記事では大学生が起業するメリットやデメリット、ビジネスモデルや注意点について紹介します。
大学生が起業するのは実際どうなの?
今や大学生が起業することは珍しい時代ではありません。ITの普及により起業のノウハウも得やすく、学生起業家として活躍してきた事例も数多く存在します。
ITの普及と価値観の多様化による「追い風」
ITが普及したため、数十年前の起業では必要だったオフィスや固定電話、多額の資本金などを準備する必要がなくなり、自宅でもインターネット接続環境とPCがあれば起業できる事業もあります。サービスを生み出すだけでなく、集客や販売においてもインターネットを活用して少人数で行えるようになりました。
また、古い価値観から、多様性が重要視される社会へと変化しています。大学生だからこそ持てる視点や価値観が受け入れられることも起業の“追い風”となるでしょう。
今は小学生起業家もいる時代
大学生のみならず高校生や中学生、小学生でさえも起業家が生まれています。重たいランドセルの不便さを解消する商品「サンポセル」は、小学生の日常の不満や課題から生まれた商品です。
小学生が感じている課題に着目し解消するための仮説を立て、具体的に「サンポセル」という商品を考案して提供していくことで、世の中に支持される新しい商品やサービスを誕生させました。起業には社会人経験が必ず必要というわけではないのです。
大学生が起業するメリット
大学生のうちに起業するメリットは多くあります。社会人として就職する前だからこそ起業の準備ができるメリットについてご紹介します。
1.圧倒的な体力と実行力
若い大学生だからこそ、体力があることがメリットとなります。起業の際には登記などの手続きだけでなく、事業が好調に推移し利益を残せるようになるまでは、精神的にも肉体的にも多くの労力がかかります。
しかし、それを乗り越えられる体力や実行力が、若い大学生にとって大きな武器となるのです。
2.頭脳的にも環境的にも、失敗から学びやすい
大学生は社会常識に縛られてしまいがちな社会人よりも、素直で柔軟な頭脳で、起業そのものや関連する事業で必要な情報を吸収することができます。また失敗してもそこから学ぶ姿勢で、苦難を乗り越えチャンスを掴む環境を作ることができます。
さらに、社会人に対してはそこまで多くを教えてもらえないような情報も、大学生だからとアドバイスをもらう機会にも恵まれるはずです。失敗しても素直に反省して次に活かせるフットワークの軽さもメリットとなります。
3.先駆者から可愛がられやすい
同じように学生時代に起業した経験のある先駆者から、可愛がってもらえることもあります。また大学のOB・OGなど出身校の先輩起業家から気にかけて応援してもらえることもあるでしょう。
大学生で起業する人はまだまだ少数派ではあるため、先駆者である先輩起業家も、大学生で起業にチャレンジする姿勢に共感して、経験をもとにアドバイスしてくれる可能性もあります。
4.“大学生”という立場を活かせることも
大学構内には学生用の共有PCや図書館などの設備が整っているため、起業で必要な調べ物や資料作成などをしやすい環境があります。キャンパス内に学生同士で集まりやすいこともあり、事業化に向けてヒアリングを行うなど仲間を募る拠点にすることもできます。
また、大学生は社会人と比べて自由で、まとまった時間を確保しやすい環境にあります。就職してしまうと本業を優先せざるを得ないですが、大学生ならば授業やアルバイトを調整して起業そのものや事業に集中する時間を確保できます。
何より失敗しても、就職活動を行い就職するという手段も取れることで挑戦しやすい環境と言えるでしょう。
5.将来役立つ“アドバンテージ”が得られる
起業で経験することは営業やマーケティングだけでなく、財務経理や法務など会社経営のあらゆる要素があります。他の人よりも早い時期に社会に出て起業を経験したことから、社会人でもなかなか得られない経験ができ、アドバンテージが得られることでしょう。
大学生が起業するデメリット
ここまで大学生が起業するメリットについてまとめましたが、もちろんデメリットも存在します。デメリットについてもまとめてご紹介しますので確認してみましょう。
1.学業や就職活動との両立が大変
本来であれば大学生は学業が優先されるものです。例えば経営学部や経済学部ならば起業を学業と両立しやすいですが、それ以外の分野での学びと起業を両立させるには時間が足りなくなることもあります。
また、就職活動でもセミナーや面接など多くの時間と労力を要します。「起業するから就職は必要ない」と早い段階で決断してしまうのも、せっかくの新卒入社の機会を失いかねません。起業にリソースを割きすぎてしまうことで、学業や就職活動への考えがおざなりになってしまわないかは注意したいポイントです。
2.社会的信用を得ることが難しく、資金調達は難航しがち
大学生である以上、社会的信用を得ることが難しいため、資金調達も難航する可能性が高いでしょう。「学業の片手間で経営しているのではないか」と思われてしまう可能性もあります。起業した以上は会社の存続と成長にコミットした姿勢で、信頼を勝ち取っていくことが必要です。
ただ、日本政策金融公庫では若者向けの新規開業資金では通常より有利な条件で運転資金や設備資金を賄える制度など若者を支援する助成金制度も増えつつあります。
3.社会経験が乏しい
就職して初めて経験する社会経験が乏しいこともデメリットの1つです。就職したら社員研修や上司などにビジネスマナーや社会常識を教えてもらえる機会がありますが、学生で起業すると自分で学んでいかないといけません。職種や業種によって肌感覚として持ち合わせる経験も未熟であるのは確かです。しかしその反面、社会の常識にとらわれずに事業を進めていくことは大きなメリットとなります。
自分の置かれた状況を把握し、起業と事業継続や成長のために必要な情報をしっかりと吸収し、ビジネスで関わる関係者から少しずつ学んでいくことが大切です。
大学生が起業するときの注意点【ビジネスの選び方・創り方】
ここまで大学生が起業するメリットやデメリットについて紹介してきました。ここからは、まだどのような商品・サービスを取り扱った事業で起業するのか決まっておらず、「学生のうちに起業したい」と漠然と考えている方に向けて、注意しておきたいビジネスの選び方・創り方について解説します。
1.学内外での学びや体験こそが、アイデアのベースとなる
事業化するためのアイデアは、学内外で学んだことや体験したことがベースとなることがほとんどです。日常の不満やストレスを解決するためにどのようなサービスがあれば使ってもらえるか、アイデアの起点にしてみましょう。大学の授業で知った社会課題に対しての解決策も考えてみるとよいでしょう。
2.初期投資の少ないビジネスモデルを考える
ビジネスモデルによっては多額の投資が必要なケースもありますが、まずは初期投資の少ないビジネスモデルを考えていくとよいでしょう。
事業が成長してから、必要に応じて追加投資をしていくことはできるので、まずは初期の工事費用や賃料がかかるオフィスや店舗を持つのではなく自宅や大学を拠点にしたり、商品となるモノを販売する場合でも実店舗ではなくオンラインストアにしたりするなど、とにかく初期投資の少ないビジネスモデルを採用しましょう。
3.まずはスモールスタートで
初期投資を少なくするだけではなく、事業自体も小回りの利く範囲で始めることをおすすめします。最初から事業を固めてメンバーを増やし大きな売り上げと利益を求めたりせず、まずは試験的に小さくスタートさせて軌道に乗せられるように進めていきます。
小さく始めることで、失敗したとしてもその経験を活かして、事業成長のヒントを得やすいでしょう。失敗を恐れることなく、まずは小さく行動してみることが大学生起業を成功させる秘訣です。
大学生が起業するときの注意点【仲間の選び方・チームのつくり方】
どのような仲間と起業するのかも事前に考えておきたいポイントとなります。事業やビジネスモデルによってさまざまな方法がありますが、チームの体制については起業時に考えておきましょう。
1.いろいろ試すなら“1人”がベスト
起業アイデアが複数ある場合など、いろいろと試したいという場合、まずは1人で起業するのがベストといえます。まだ確実な利益をあげられそうにない場合や、人を雇っても報酬を支払えない可能性が高い場合など、自分1人であれば時間と労力の対価を求められることもありません。商品やサービスを設計する際にも意見が分かれることもないので、スモールスタートしやすいメリットがあります。
2.創業チームは多くても“3人まで”
自分1人でできることは限られています。Webサイトやアプリの開発が得意なエンジニア、商品の売り込みや集客が上手なマーケティング担当など、それぞれの個人の特性を活かして役割を分担して創業していく方法もあります。ただ多くても3人くらいまでにとどめておくとよいでしょう。
もし人的リソースが足りない場合には、経営自体にコミットしない役割で手伝ってもらうことはいくらでもできます。創業メンバーが増えすぎて意思決定を行いにくい組織にするのは避けるようにしましょう。
3.チームメンバーを友達で固めない
大学内の友達同士で起業することもあるかと思います。仲がいいからこそ組織の結束が強まり、困難を乗り越えられることもありますが、チームメンバーすべてを友達で固めてしまうのはあまりおすすめしません。客観的な視点を忖度なくきちんと伝えられ、事業にプラスになるかどうかを優先して考えるようにしましょう。
大学生の起業におすすめなビジネスモデル
ここまでビジネスの選び方や人員について説明してきましたが、どのようなビジネスモデルが大学生の起業でおすすめなのでしょうか。具体的な例をまとめます。
1.低リスク・低コストなフリーランス系のビジネスモデル
すぐに法人化するのではなく、個人事業主として起業する方法もあります。自分1人で事業が成り立つようなフリーランス系のビジネスモデルならば、低リスクかつ低コストで始められます。
自分がフリーランスである程度、仕事を請け負うようになれば、将来的にノウハウを教えてメンバーを増やし、制作会社などにして法人化することもできます。
・フリーライター
文章を書くライターはパソコンとインターネット接続環境があれば誰でもどこでも始められる事業です。Web向けの記事を作成するWebライターは多数存在し、求められるレベルも幅広いです。著名人のSNS投稿をまとめるだけの記事もあれば、しっかり取材して書いたオリジナルの記事も存在します。大学生だからこその視点や経験に基づいた記事制作ができるようになると他のライターと差別化していけるチャンスが広がります。
・エンジニア
プログラミングの知識を活かして、フリーのエンジニアとして業務委託で仕事を請け負い、納品した成果物や活動時間に対して報酬を得ます。サービスを作る業務に携わり、プログラミングの知識や経験を増やしていけるので、今後、サービスを開発して事業の軸にしていくノウハウが学べるでしょう。
・デザイナー
Webデザインのスキルを活かしてデザイナーとして仕事を請け負います。単に要望通りのデザインに仕上げるだけではなく、Webのフロントエンドエンジニアとしての知識が求められたり、UI/UXデザインによってユーザーの行動がどう変わったのか分析したりする視点もデザイナーとして大切な要素です。大学生の感性を生かし、常に最新トレンドをキャッチできるようにアンテナを張ることで、社会人のデザイナーにはない斬新なデザインを提供できるようになるかもしれません。
・動画編集者
YouTubeやTikTokなど動画投稿サイトが情報伝達の主流になってきています。撮影した動画を編集し、有益なコンテンツを作り上げる動画編集者のニーズも高まっています。編集だけでなく撮影や、動画に添えるキャプションの制作などスキルを広げるチャンスもあります。ショート動画のトレンドなどは若年層から作られる傾向もあるため、周りの友人を巻き込みながら話題性のある動画を投稿し続ける努力も求められます。
2.大学生としての経験を活かすビジネスモデル
大学生だからこそニーズがわかる、大学生としての感性を活かすビジネスモデルについても押さえておきましょう。
・シェアハウス運営
実家を離れて暮らす人のためにシェアハウスを運営することも、立派なビジネスモデルです。一人暮らしではコストがかかりすぎる広くて設備が整った物件も、複数人で集まって住むことで割安に生活できます。同世代で情報を拡散して住民を集めやすく、どのような設備や備品を用意したら魅力的になるかなど同じ目線で考えられることもメリットです。
・イベントやセミナーの運営
大学生が参加してみたくなるイベントやセミナーを主催し、参加費や協賛金を集めて開催していくビジネスモデルです。ターゲットの求めている情報に近いからこそアイデアを活かしやすく、集客も大学生のネットワークを使えば比較的簡単に行えます。
・アプリ開発
幼い頃からデジタル機器に囲まれてきた大学生だからこそ、既存のアプリにはない世の中に求められるアプリがどのようなものか感覚的に理解しやすいといえます。すでにあるサービスに差別化させる要素をプラスするなど、横展開して考えていくこともおすすめです。
・産学連携
大学などの教育機関や研究機関と民間企業が連携した産学連携のビジネスモデルも、大学生には身近なものでしょう。自分の大学でどのような産学連携の実績があるか、募集しているビジネスコンテストがないかなど確認しておきましょう。
3.事業推進に慣れてきたら挑戦したいビジネスモデル
起業後、事業が安定して成長していった頃に挑戦したいビジネスモデルについてもまとめます。
・Web制作
先ほど紹介したライター、エンジニア、デザイナーが集まればWeb制作としてまとまった金額で受注していくことができます。1つの会社で役割分担していくことでプロジェクトを進めやすく、会社の制作実績として残していくことができます。
・マーケティング関連
Web広告やSNS集客など、プランニングから実行まで請け負うマーケティング関連のサービスも、自社のノウハウを活かして事業化しやすいモデルの1つです。クライアントのニーズを理解して同じようにコンサルティングも行うことで付加価値を提供できます。
・新サービスの開発
軸となる事業が成長したからこそ、社内で全く新しいサービス開発に向けたアイデアを募ることもできます。大学生の柔軟なアイデアや人脈を活かして、将来の利益に大きく貢献できるサービス開発に開花させる可能性も秘めています。
大学生のうちに起業することには、“体験”としての価値がある
ここまで紹介してきたように大学生のうちに起業することは大きなメリットがあります。自ら考えて行動した“体験”としての価値があります。まずは初期投資を抑えてスモールスタートで事業を進めていった経験が、今後のビジネススキルを磨いていく大きな機会となるでしょう。
学生が起業を学ぶビジネススクールを利用してみることもおすすめです。若くて柔軟な大学生という貴重な期間を活かして、ぜひチャレンジしてみてください。<文/赤塚元基>