移動式販売を行うキッチンカーはフランチャイズで開業することで、飲食業での就労・経営経験がなくても開業しやすいメリットがあります。フランチャイズでキッチンカーを開業する場合の開業資金や運転資金の内訳、調達方法について紹介します。
キッチンカーのフランチャイズとは
キッチンカーとは、厨房機器が備わった車両のことで、キッチンカービジネスとはキッチンカーでフードやドリンクを提供するビジネスことを指します。フードトラックやフードワゴンなどとも呼ばれます。実店舗を構えないため開業資金や毎月の固定費を抑えることができ、飲食店が少ないエリアでも一時的に人流が集まるシーンでは大きな売り上げを期待できます。例えば平日のオフィス街や大学のランチタイム、週末のイベント、地方で開催される音楽フェスなどです。
キッチンカーのビジネスは、フランチャイズに加盟することでスムーズに開業できるというメリットを受けられます。フランチャイズ本部の店名やロゴを使用でき、ブランド力や商品開発力などのノウハウとマニュアルを活用できます。ネームバリューで集客できるため開業後も売り上げが安定しやすく、失敗しにくいキッチンカー経営に近づけます。
下記記事ではフランチャイズの仕組みを解説しています。参考にしてください。
https://entrenet.jp/magazine/25755/
キッチンカーフランチャイズの開業資金の目安
キッチンカーのフランチャイズを開業するためには、どれくらいの資金を準備したらよいのでしょうか。開業資金と運転資金、それぞれについて紹介します。
開業資金
フランチャイズで開業する場合、下記のような費用が必要となります。
具体的な費用は、どんな商品を取り扱うかによって異なります。
また、キッチンカーの車両代も中古車か新車かによって異なります。新車のトラックを購入してオリジナルで改造する場合と、既にキッチンカーとして使われていた中古車を利用する場合があります。メンテナンスがしっかりされていて、まだ長期的に利用できそうであれば、中古車を選択することで新車から用意するよりも低コストに抑えられるでしょう。
さらに、フランチャイズ本部によってはキッチンカーを入手する独自のルートを確保しているところもあり、こうしたフランチャイズ本部へ加盟すれば、個人で開業するよりも、費用を抑えて車両を入手できる場合もあります。
場合によっては車両を取得せずにリース対応でキッチンカーを使用できることもあるので、その場合は開業資金をさらに抑えられます。
運転資金
キッチンカーの運転資金としては、下記の項目が考えられます。
店舗を構えて営業するよりも、家賃が発生せず従業員数も限られるため、低コストで運営していけるでしょう。
しかし開業時に忘れてならないのが、これらの運転資金をあらかじめ開業前に用意しておくことです。最低でも6ヵ月以上は用意しておくことで、万が一売り上げが想定よりも少なく赤字経営になった際にも事業を続けられるでしょう。また、オーナー自身の生活資金も忘れずに確保しておきましょう。
参考:投資回収までの期間
「開業時にかかった資金を、どれくらいの期間で回収できるか」についてもシミュレーションしてみましょう。初期費用の減価償却分だけでなく運転資金も入れて、販売単価と想定される客数を計算し、収益シミュレーションに落とし込みます。
具体的な期間は扱う商品や戦略によって異なりますが、1年くらいで回収できることもあります。これらは実店舗で投資回収するよりも短期間になることが想定されます。
もし2~3年以内の投資回収が難しいと見込まれる場合、客単価を上げる施策や、原価や人件費を減らすアイディアなど「収益化に向けて事業計画を練り直していくこと」をおすすめします。フランチャイズ本部の説明会に参加すると、自身の希望エリアでの収益実績等のシミュレーションを出してもらえることもあるので活用してみましょう。
資金調達方法
キッチンカーの開業資金は店舗型に比べて低価格であるとはいえ、開業時の初期費用は200万円~1,000万円近くかかることもあります。これらの資金調達方法について紹介します。
2023年6月時点の情報になります。最新の情報については、各ホームページ等でご確認ください。
自己資金
自己資金があればそれだけ借り入れにかかる金利の発生を抑えられるので、開業前には自己資金が多いに越したことはありません。資金があるからこそできる投資や、長期的な事業計画を組むことが可能です。
日本政策金融公庫からの融資
日本政府によって運営されている日本政策金融公庫からの融資は、一般的な金融機関に比べて小規模事業者向けに金利や返済期間が優遇されているため、外部からの資金調達が必要な場合は最初に検討する先としておすすめできます。
女性、若者、シニアを優遇する融資や、実績がなくても安心して利用できる融資制度も充実しています。日本政策金融公庫は全国に150を超える数の支店があり、直接相談もできます。
銀行融資
都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合からの融資も選択肢のひとつです。日頃から利用している銀行で、事業融資を相談して資金調達をします。
ローン
ノンバンクと呼ばれる、キャッシングやカードローンを行っている金融機関から調達する方法もあります。審査期間が短くスピーディに借り入れできるメリットがありますが、他の金融機関に比べて金利が高いです。緊急時にどうしても利用する際など、一時的な利用にとどめておくことをおすすめします。
【番外編】本部からの車両リース
フランチャイズ本部によっては、資金調達方法についてアドバイスをしてくれるところもあります。また開業資金の大きな割合を占めるキッチンカー自体を、リースで対応してくれることもあります。その際は「車両事故が起こった場合の負担割合はどうなるか」など契約内容をしっかり確認するようにしましょう。
活用できる助成金の紹介
キッチンカーを開業する場合、地方創生や雇用創出など国の課題解決に関連しそうなものであれば、助成金や補助金を利用できる可能性があります。助成金や補助金は返済の必要がないため、利用して損はありません。募集期間が限られていたり、申請してすぐに承認されるものではないので、計画的に準備しましょう。
具体的には、各都道府県のそれぞれの条件を満たしていないか確認してみましょう。2人以上を雇用する場合は、地域雇用開発助成金の対象になることもあります。
2023年6月時点のものになります。最新の情報については、各ホームページ等でご確認ください。
参照:中小機構|創業者向け補助金・給付金(都道府県別) 厚生労働省 地域雇用開発助成金
資格取得・加入すべき保険の費用
キッチンカーを開業する際に必要な資格や、加入するべき保険についても確認しておきましょう。
保健所関連の許可取得費用
キッチンカーの開業に必要な資格は大きく2つあります。
- 食品衛生責任者:各都道府県の食品衛生責任者養成講習会を受講する
- 飲食店営業許可:各都道府県の保健所に申請する
費用は各都道府県によって数千円の違いがありますが、上記を合わせて5万円ほどみておくと良いでしょう。
参照:東京都福祉保健局:食品衛生の窓 東京都食品衛生関係許可手数料
参照:一般社団法人東京都食品衛生協会|食品衛生責任者会場集合型養成講習会
車両保険
キッチンカーは専用の車両保険が必要となることが多いです。一般の車両ではなく移動販売用に改修しているため、いわゆる「8ナンバー(特殊用途自動車)」で登録します。そのため特殊車両用の保険に加入します。
またキッチンカーの場合は通常の車両保険の内容だけでなく、PL保険(生産物賠償責任保険)に加入するのが一般的です。製造した食品が他人に損害を与えた際の賠償リスクに備えられる保険です。
費用はそれぞれの条件によって細かく異なるため、保険会社のプランを比較して最適なものを選択しましょう。
比較検討して自分に合うフランチャイズ本部を見つけよう
本記事では、キッチンカーをフランチャイズで開業する際の開業資金についてまとめました。フランチャイズを利用することで、開業時の不明点を相談できるだけでなく、車両や設備の取得でフランチャイズ本部のノウハウを活用できるため、低コストで効率的に準備を進められるというメリットを受けられます。
加盟金やロイヤリティ、営業時のルールなどはフランチャイズ本部によって異なるため、複数のフランチャイズ本部をしっかり比較して判断することをおすすめします。
<文/北川美智子>