厚生労働省による在宅医療の推奨などもあり、患者の自宅に訪問して医療行為をする訪問看護は今後さらに広がることが予想されます。超高齢社会の日本では将来性もあるため、訪問看護ステーションの開業を検討している方も多いかもしれません。開業の選択肢には、フランチャイズに加盟する方法もあります。専門的なノウハウを持つフランチャイズ本部のサポートや事業を拡大していくためのノウハウが豊富で未経験からでも参入しているオーナーも存在します。この記事では訪問看護のフランチャイズの将来性や、フランチャイズに加盟するメリット・デメリットについても解説します。
訪問看護のフランチャイズとは
訪問看護のフランチャイズとは、訪問看護事業をフランチャイズに加盟して開業することをさします。加盟店は、フランチャイズ本部に加盟金やロイヤリティを支払う代わりに、開業や経営にあたって、フランチャイズ本部が持つノウハウを提供してもらうという、ビジネスモデルです。
訪問看護とは
訪問看護とは、看護師が利用者の自宅に訪問して、その方の病気や障がいに応じて健康状態の悪化を防いだり、回復に向けた看護を行ったりすることです。訪問介護と混同されやすいですが、訪問看護は主治医の指示を受け、病院と同じような医療処置、医療行為も行います。
具体的には療養生活の相談とアドバイス、リハビリテーション、点滴、注射などの医療処置、病気やけがによる痛みの軽減や服薬管理、緊急時の対応、主治医・ケアマネジャー・薬剤師・歯科医師との連携などを行います。病院のベッドではなく「自宅で最期を迎えたい」という患者の希望に添った看護も行います。
日本の訪問看護サービス提供機関は、主に病院・診療所と訪問看護ステーションがあります。そのうち9割を訪問看護ステーションが担っています。
「日本の訪問看護の仕組み」(公益財団法人日本訪問看護財団)
(P.2より)
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看護職員が2.5人以上必要
訪問看護事業所は「訪問看護ステーション」と呼ばれ、開所するには看護師、准看護師、保健師の資格を有する看護職員が常勤換算で2.5人以上配置されなければなりません。うち1人は常勤となります。また理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問看護師に代わってリハビリテーションを行うこともあります。
「訪問看護」(厚生労働省)
(P.2より)
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訪問看護の市場は広がっていく予想
「訪問看護」(厚生労働省)
(P.9より)
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高齢者のみならず子どもから大人まで看護が必要な方すべてが利用できますが、超高齢社会で訪問看護のニーズは高まり、市場は今後もさらに成長していくことが予想されます。
また、日本訪問看護財団の「訪問看護の現状とこれから2022年版」によると、2011年に5,884件しかなかった訪問看護ステーションは、2021年までの10年間で2倍以上の12,078件に増えています。一方、病院や診療所からの訪問看護は減少しています。
全国的に、病院の病床数が限られていることから、国は在宅での医療を推奨している背景があります。訪問看護ステーションの利用は、介護保険と医療保険の対象となるため、訪問看護ステーションの売り上げのおよそ7割を超える額は、国からの保険料でまかなわれています。
「訪問看護」(厚生労働省)
(P.9より)
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「訪問看護の現状とこれから2022年版」(日本訪問看護財団)
(P.4より)
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訪問看護のフランチャイズに加盟するメリット
訪問看護の将来性について解説してきましたが、ここからは、訪問看護事業をフランチャイズに加盟して開業するメリットについてお伝えしていきます。
フランチャイズ本部のノウハウを活用できる
フランチャイズ本部から訪問看護サービスを運営するためのノウハウやマニュアルを共有してもらえるため、訪問看護サービスに関する専門的な知識やスキルを持たない人でも、事業を展開することができます。
訪問看護事業を開業する際には、必要な書類の作成や役所への申請など、専門的な知識も必要になります。レセプトと呼ばれる診療報酬請求についての管理サポートがあるフランチャイズ本部も多いため、煩雑な請求業務の負担を軽減できます。
フランチャイズ本部が持っているブランド力の活用
フランチャイズに加盟すると、フランチャイズ本部が持つ店舗名やサービスのネームバリューやブランド力を活用することができるため、開業当初からお客さまの信頼を得ることができるでしょう。フランチャイズに加盟することで、それまでフランチャイズ本部が育ててきたブランド力を譲り受けることができるからです。訪問看護は利用者の自宅に足を踏み入れて医療行為をするため、聞いたこともない事業者よりもよく知られた事業者を選択する安心感があると考えられます。
営業やマーケティング、採用等のサポートが受けられる
フランチャイズ本部によって内容は異なりますが、広告や宣伝などの営業活動について、フランチャイズ本部のサポートを受けられます。売り上げを伸ばしていくために大きなカギとなる、集客においても継続的なサポートが受けられるのはメリットといえるでしょう。また、開業前の研修や、人材採用・育成面でのサポートも得られるため、知識に不安のある方でもオーナーとして開業することができることも魅力です。
訪問看護のフランチャイズに加盟するデメリット
フランチャイズに加盟するメリットをご説明してきました。反対に、訪問看護のフランチャイズに加盟するデメリットは、どのようなことが考えられるでしょうか。
加盟金やロイヤリティなどフランチャイズ本部に支払うお金が発生する
訪問看護サービスを展開するフランチャイズに加盟するには、加盟金などの費用が必要です。フランチャイズ本部から数多くのサポートを受けられるといっても、加盟金や売り上げに応じたロイヤリティなど、フランチャイズに加盟しなければ発生しない費用がある点はデメリットといえるでしょう。しかし、中には加盟金やロイヤリティが不要なケースもありますので、加盟検討時は必ず確認するようにしましょう。
フランチャイズ本部のルールに沿った運営方法がある
フランチャイズ本部から事業内容や運営ルールなどについて、フランチャイズ本部が定めるルールやシステムを利用して経営を行わなければならない場合があります。フランチャイズ本部がそれまで培った成功ノウハウを取り入れたルールとなっていることがほとんどですが、人によっては自由度が低く、独自のアイデアやサービスを取り入れられないことがデメリットに感じてしまうこともあります。訪問看護の場合、利用者とのトラブルを避けるためにもルールを明確に決めておく方が安心だという考える人も少なくないため、自分にとって必要なサポートは何であるか、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
フランチャイズ本部・他の加盟店のトラブルや倒産リスクはある
自分の店舗でどんなに正しく訪問看護ステーションを運営していても、同じフランチャイズ本部に加盟した他の事業所がトラブルを起こすと、フランチャイズ全体のイメージ棄損となり、場合によっては自分の店舗も風評被害を受けてしまうリスクは存在します。
また、万が一、フランチャイズ本部が倒産すると、加盟店である自分の店舗も影響を受ける可能性があります。倒産や廃業リスクはもちろん、自分でイチから開業した場合にも当てはまりますが、フランチャイズの加盟を検討する際には、フランチャイズ本部の経営状況を確認する必要があるでしょう。
加盟しているフランチャイズの他事業所のトラブルなど、予期せぬ事態が起きた際に、フランチャイズ本部がどのような対応をするかは加盟時の契約書などに記載があるはずです。契約書についても確かめておきましょう。
訪問看護のフランチャイズへの加盟方法
訪問看護のフランチャイズに加盟するためには、フランチャイズ本部が主催する説明会に参加します。対面やオンラインで開催される説明会では事業詳細の他、事業・業界の将来性、収益モデルなども紹介されることが多いです。
複数社の説明会に参加してフランチャイズ本部の比較検討が済んだら、加盟店の見学などを行います。契約締結後、フランチャイズ本部の研修に参加し、開業までに必要なノウハウを学びます。訪問看護事業に関する申請なども、フランチャイズ本部からのサポートを受けながら進められることが多いでしょう。
訪問看護ステーションで起業するならフランチャイズで
訪問看護は将来的にも成長する市場で、地域に根差した訪問看護ステーションのニーズは今後も高まっていくでしょう。
フランチャイズに加盟すると、専門的な知識がなくても、フランチャイズ本部から、オーナーとして経営していくためのノウハウやサポートを受けることができるでしょう。加盟金やロイヤリティなどフランチャイズ本部への支払いがあることはデメリットではありますが、フランチャイズのネームバリューやサポートを利用して安定した経営を目指していけるのは大きなメリットとなります。
アントレではフランチャイズ本部の概要だけでなく、加盟店オーナーのレポートなども掲載しています。事業のやりがいや社会貢献度も高く、将来性もあり、市場も広がっていく訪問看護のビジネスについて、ぜひ前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
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<文/北川美智子>