ボランタリーチェーンという言葉は知っているものの、「フランチャイズとの違いがよくわからない」という方は多いのではないでしょうか。
どちらも本部の支援を受けながら店舗経営ができる仕組みですが、実は加盟店の自由度やお店づくりの考え方など、さまざまな違いがあります。
「独立開業して自分のお店を持ちたい」と考える方の中には、ボランタリーチェーンとフランチャイズどちらを選べばいいのか、具体的に選ぶポイントは何か、と迷うこともあるでしょう。
本記事では、ボランタリーチェーンとフランチャイズの特徴やメリットを比較し、自分に合った選び方のポイントをわかりやすく解説します。
どちらが自分に適しているのか判断したい方に、ぜひ参考にしてみてください。
ボランタリーチェーンとフランチャイズの違い
本部と複数の加盟店でチェーン展開するという点で、ボランタリーチェーンとフランチャイズは似た仕組みといえます。
始めに、フランチャイズとボランタリーチェーンの違いと仕組みについて解説します。
本部主体が「フランチャイズ」
本部が主体となり、チェーン展開をするのがフランチャイズです。
加盟店は、それぞれ独立した個人・法人が経営しています。各加盟店が個別に本部とフランチャイズ契約を結び、本部指導の下、店舗を経営していくスタイルです。
本部にはフランチャイズとしてのブランド力やノウハウ、経営に役立つツールなどがあり、加盟店は加盟金やロイヤリティといった対価を支払うことで、効率よく経営を進められます。
ただし、その分加盟するお店のルールがハッキリしているため、一般的に経営の自由度は低くなります。
加盟店主体が「ボランタリーチェーン」
加盟店が主体となり、チェーン展開するのがボランタリーチェーンです。
ボランタリーチェーンの本部は、加盟店同士で結成するもので、フランチャイズのような「本部の指導の下で経営する」という仕組みではありません。
また、ボランタリーチェーンの本部は、加盟店同士がお互いに出資する「互助」の形で成り立っています。
そのため本部が加盟店を取りまとめるというような関係ではなく、加盟店同士は対等な関係といえます。
ボランタリーチェーンで有名な企業は?
ボランタリーチェーンは、私たちの身近なところで展開されています。ここでは、代表的な企業を紹介します。
「CGC」全国約3700店舗が加盟するスーパーマーケットのボランタリーチェーン
スーパーマーケットで有名なCGCは、全国の中堅スーパー約200社以上が加盟している日本最大級のボランタリーチェーンです。
CGCは大手総合スーパーに対抗するために、中堅・中小規模のスーパーが集まり、共同で商品の仕入れやプライベートブランドの開発を行っています。
この仕組みによって、個々のスーパーとしての独立性を保ちながら、大手スーパーに負けない運営ができているのです。
また、参加店舗はコスト削減や商品力強化、最新の流通情報の共有など、多様なメリットを得ています。
CGCグループは「地域のお客様に寄り添った店づくり」を実践しているのが大きな特徴です。
「ヤマザキYショップ」山崎製パンが展開するコンビニエンスストア型のボランタリーチェーン
ヤマザキYショップは、食品メーカーである山崎製パングループが運営をサポートするボランタリーチェーンです。
大きな特徴は、自由度が高いことです。たとえば、店舗の営業時間は「24時間営業が必須」ではなく、施設の立地やオーナーの意向に合わせて柔軟に設定することが可能です。
そのため、深夜営業を行わずに地域のニーズやオーナーのライフスタイルに合わせた運営ができます。
また、一般的なフランチャイズチェーンと異なり、売上に応じた変動制のロイヤルティーではなく、定額の運営費のみを毎月支払えばよい仕組みです。
さらに、契約期間は3年と定められていますが、中途解約した場合でも違約金などのペナルティが発生しない点も、オーナーにとって大きなメリットといえるでしょう。
独立系の調剤薬局やドラッグストアのボランタリーチェーン
オールジャパンドラッグは、全国各地の加盟薬局同士が共同で仕入れ・販促活動・情報システムの導入を進めています。
ボランタリーチェーンに加盟することで、個人の薬局で仕入れるよりもコスト削減ができるメリットがあります。
また、共同でプライベートブランド(PB)を開発や、加盟店同士の情報交換で消費者の動向などを把握でき、経営に役立てることもできます。
ボランタリーチェーンに加盟するメリット
ボランタリーチェーンに加盟すると、フランチャイズ加盟に近いメリットが得られます。
フランチャイズにはないメリットもあり、「自分には、フランチャイズよりもボランタリーチェーンが向いていそう」と感じる方もいるかもしれません。
こちらでは、ボランタリーチェーンに加盟するメリットを3つ紹介します。
情報やノウハウの共有
ボランタリーチェーンに加盟する1つ目のメリットは、情報やノウハウの共有です。
加盟店同士の横のつながりが強いボランタリーチェーンでは、販売管理のPOSシステムによって他店が導入しているシステムや地域ごとのニーズ・トレンドなどの情報を共有しています。
さらに、本部にはすべての加盟店の業績が集まり、データ分析や店舗規模、立地などに応じて適切なフィードバックを行います。
ですので、加盟しているボランタリーチェーン全体が一緒に成長していけるメリットもあります。
仕入れにかかるコストや手間を抑えられる
ボランタリーチェーンに加盟する2つ目のメリットは、仕入れにかかるコストや手間を抑えられることです。
ボランタリーチェーンでは、本部が一括して仕入れや価格交渉をします。
加盟店それぞれが卸売業者やメーカーから仕入れるよりも、チェーン全体の仕入れを本部が行うことで、大量仕入れが可能になります。
また、価格交渉や仕入れ管理を本部に一任することで、コストだけでなく各加盟店の仕入れにかかる人的コストも抑えられるのです。
フランチャイズよりも自由度が高い
ボランタリーチェーンに加盟する3つ目のメリットは、フランチャイズよりも自由度が高いことです。
情報共有や仕入れにかかるコストと手間が省けるという点は、フランチャイズにもボランタリーチェーンにも共通した加盟して得られるメリットです。
ボランタリーチェーンがフランチャイズよりも「自由度が高い」と言われる理由として、以下のような具体例があります。
自由度の具体例 | ボランタリーチェーン | フランチャイズ |
営業時間の設定 | 店舗ごとに自主的に設定できる | 本部の方針に従い決められていることが多い |
ロイヤルティの仕組み | 月額固定費が中心で、定額制が多い | 売上比率のロイヤルティが発生する場合が多い |
商品・サービスの選択 | 地域や店舗独自の商品・サービス導入が可能 | 本部指定商品/サービスが中心 |
契約期間・解約の自由度 | 契約中の中途解約もペナルティなし・緩やか | 厳格な解約ルール・違約金ありが多い |
店舗運営やプロモーションの選択権 | 独自の販促企画やイベントも自主判断で可能 | プロモーション方針は本部が指示 |
ボランタリーチェーンは「本部のサポートを受けながらも、オーナー主体の店舗運営を行える」という点で、フランチャイズチェーンより柔軟性が高いとされています。
ボランタリーチェーンに加盟するデメリット
ボランタリーチェーンには、フランチャイズにはない「自由に経営できる」というメリットがあります。
しかし、自由度が高いからこそのデメリットもあります。判断を誤らないよう、ボランタリーチェーンに加盟するデメリットも把握しておきましょう。
入会金や会費がかかる
フランチャイズに加盟する際には、加盟金の支払いや毎月ロイヤリティの支払いが必要ですが、ボランタリーチェーンにも入会金や会費がかかります。
また、ボランタリーチェーンには「仕入れコストを安く抑えられる」というメリットがあります。
ですが、削減できるコストと会費の差額でどちらが大きくなるのか、共有される情報には会費を支払うだけの価値があるのか、よく考えて加盟する必要があります。
ある程度は自力で運営しなければならない
フランチャイズと比較したときの、ボランタリーチェーンのデメリットは「ある程度は自力で運営しなければならない」ことです。
ボランタリーチェーンでも情報やノウハウを得られますが、これはあくまでも加盟店同士の情報共有にすぎません。
フランチャイズのような本部からのサポートやマニュアル共有までは期待できず、加盟後も、自発的な経営努力が必要となります。
フランチャイズほどのブランド力は期待できない
ボランタリーチェーンはブランド(屋号・看板)を強く打ち出すわけではありませんし、同じ店舗名でチェーン展開するわけでもありません。
フランチャイズほどのブランド力・世間での認知は期待できないでしょう。
本部から、知名度の高いプライベートブランド(PB)商品を仕入れることは可能ですが、店舗や商品・サービスのブランディングなどは自社でしなければなりません。
商品や自社のブランド力がないと集客が成功しにくいため、集客に力を入れる営業力が必要です。
ボランタリーチェーンで成功するためのコツ
ボランタリーチェーンは本部の支援を受けながらも各店舗の自主性が尊重される仕組みです。
長く安定的に成果を出す店舗にはいくつかの共通したポイントがあります。
ここでは、実際に業績を伸ばしている店舗に見られる成功のコツを詳しく紹介します。
地域ニーズや顧客目線を重視した品揃え・サービス
ボランタリーチェーンで成功するためには、まず地域の特性やお客様の声にしっかりと耳を傾けることが欠かせません。
下記は、開業する前に把握したいニーズの具体例です。
- 地域ごとのニーズや文化を把握し、それに合わせた商品を取り揃える
- 顧客の声を積極的に吸い上げ、サービスや品揃えに反映する
- 限定商品や地域密着型のイベントを企画・開催する
地域によって顧客の好みや求める商品は大きく異なります。
日々の接客やアンケート、SNSでのお客様の反応などからニーズを掴み、お店独自の品揃えやサービスに反映させましょう。
さらに、地元の方からの支持を集めるために、地域限定の商品やイベントの開催も喜ばれる施策の一つでしょう。
加盟店の判断・自主性を活かし、独自の強みを出す
本部の方針に従うだけでなく、自店の個性や工夫を活かすことも成功のポイントです。
自由度の高い運営ができるのがボランタリーチェーンの強みであるため、店主自らが考えたアイデアはどんどん実行していきましょう。
競合にはない商品やサービスを展開することで「この店だからこそ」という価値を生み出せます。
独自性を発揮すると、お客様の印象に残ります。それによりリピーターや新規顧客の獲得につながるでしょう。
変化する市場や消費動向に柔軟に対応する
時代や環境の変化に素早く対応できる柔軟性も、長く愛される店舗であるためには不可欠です。
- 新しいトレンドや社会の変化を積極的にキャッチする
- 売れ筋や消費者の行動変化を分析し、商品構成を見直す
- 本部からの最新情報やサポートを活用し適時アップデートする
顧客のニーズやトレンドは、ものすごい早さで変化しています。
「今どんな商品やサービスが求められているのか」を、売上データや市場動向を見ながら常に把握し、柔軟に受け止めることが大切です。
本部からの情報提供やサポートも積極的に利用し、自店の強みと時代の流れを上手く組み合わせていきましょう。
ボランタリーチェーンとフランチャイズどっちがいいの?
ボランタリーチェーンにもフランチャイズにも、それぞれメリット・デメリットがあります。どちらを選ぶべきか、どちらにも加盟せずに独立してビジネスを興すべきかは、人により異なるでしょう。
経営未経験な人、不安な人にはフランチャイズがおすすめ
経営が未経験な人、不安な人にはフランチャイズ加盟がおすすめです。
フランチャイズは「開業前の研修」「マニュアルやノウハウ提供、スーパーバイザーによる経営支援」「圧倒的な知名度」などの強みがあります。
また、多店舗展開など複数店舗をいずれ持ちたいと思っている拡大志向がある人も「集客力に強みがある」フランチャイズがおすすめです。
経営の経験がない人、未知の業界・業種での独立を目指す人でも、比較的安心して運営できるでしょう。
経営に自信がある人、主体性が高い人にはボランタリーチェーンがおすすめ
経営に自信がある人、主体性が高い人には、ボランタリーチェーンがおすすめです。
英語のボランタリー(Voluntary)には「自発的」「自由意志」といった意味があります。
ボランタリーチェーンではフランチャイズ以上に経営努力が必要となりますが、代わりに自由度は高いです。
経営や、その業界・業種での経験があり、自力で業績を伸ばしていく自信のある人や、主体性が高く、自由にビジネスを進めていきたい人に向いているといえます。
【まとめ】ボランタリーチェーンもフランチャイズも、自分との相性を考えて加盟しよう
ボランタリーチェーンとフランチャイズは、どちらも本部のサポートを受けながら店舗を展開できる有力な選択肢です。
ボランタリーチェーンの特徴
- 地域のニーズを活かした品揃えやサービス展開に柔軟に取り組める
- 営業時間や店舗運営など、各オーナーの判断が認められている
フランチャイズの特徴
- 本部による強いブランド力がある
- ノウハウや営業・仕入サポートが手厚い
- 初心者でも始めやすい安心感がある
しかし、ボランタリーチェーンやフランチャイズに加盟したからといって、絶対に安泰ということはありません。
どちらに加盟したとしても、お店の業績を伸ばすには経営努力や能力が必要です。
地域や顧客の声への耳を傾け、自店舗の強みや市場の変化にも柔軟に対応しながら運営することが、長く愛されるお店づくりにつながります。
まずは自分にどのような能力があるのか、どのような部分が苦手でフォローを必要としているのかを分析してみてください。
自分の弱点を補うための1つの手段として、ボランタリーチェーンやフランチャイズへの加盟を考えてみましょう。