ボランタリーチェーンにもフランチャイズにも本部があります。本部主体なのがフランチャイズ、加盟店主体なのがボランタリーチェーンです。本記事では、それぞれのメリット・デメリットを解説し、それを踏まえた「結局、どっちに加盟すればいいのか?」という疑問に答えていきます。
ボランタリーチェーンとフランチャイズの違い
本部と複数の加盟店でチェーン展開するという点で、ボランタリーチェーンとフランチャイズは似た仕組みといえます。
しかし、両者は「どこが主体となるか」という仕組みの点で異なっています。本部主体なのがフランチャイズ、加盟店主体なのがボランタリーチェーンです。フランチャイズとボランタリーチェーンの違いと仕組みについて解説します。
本部主体なのが「フランチャイズ」
本部が主体となり、チェーン展開をするのがフランチャイズです。加盟店は、それぞれ独立した個人・法人が経営しています。各加盟店が個別に本部とフランチャイズ契約を結び、本部指導の下、店舗を経営していきます。
本部にはチェーンとしてのブランド力やノウハウ、経営に役立つツールなどがあります。加盟店は加盟金やロイヤリティといった対価を支払うことで、これらを活用し、効率よく経営を進められます。
ただ、その分ルールもハッキリしているため、本部にもよりますが一般的に経営の自由度は低くなります。
加盟店主体なのが「ボランタリーチェーン」
加盟店が主体となり、チェーン展開するのがボランタリーチェーンです。ボランタリーチェーンの本部は、加盟店同士で結成するもので、フランチャイズのような「本部の指導の下で経営する」という仕組みではありません。
また、ボランタリーチェーンの本部は、加盟店同士がお互いに出資する「互助」の形で成り立っています。そのため本部が加盟店を取りまとめるというような関係ではなく、加盟店同士は対等な関係といえます。
ボランタリーチェーンに加盟するメリット
ボランタリーチェーンに加盟すると、フランチャイズ加盟に近いメリットが得られます。フランチャイズにはないメリットもあり、人によっては「自分には、フランチャイズよりもボランタリーチェーンが向いていそう」と感じるかもしれません。
ボランタリーチェーンに加盟するメリットを3つ紹介します。
情報やノウハウの共有
ボランタリーチェーンに加盟する1つ目のメリットは、情報やノウハウの共有です。加盟店同士の横のつながりが強いボランタリーチェーンでは、販売管理のPOSシステムや、他店が導入しているシステムや経営戦略の詳細や地域ごとのニーズ・トレンドなどの情報を共有したりできます。
フランチャイズ加盟に近いメリットですが、フランチャイズ本部のように全国の加盟店の情報を集約して各加盟店に伝えるというよりは、ボランタリーチェーンの加盟者同士が情報を共有しあうイメージです。
仕入れにかかるコストや手間を抑えられる
ボランタリーチェーンに加盟する2つ目のメリットは、仕入れにかかるコストや手間を抑えられることです。ボランタリーチェーンでは、本部が一括して仕入れや価格交渉をします。加盟店は、本部が仕入れた商品や備品を、業者からではなく本部から仕入れることも可能です。
加盟店それぞれが卸売業者やメーカーから仕入れるよりも、チェーン全体の仕入れを本部が行うことで、大量仕入れが可能になります。これにより、本部が卸売業者にとって大口の取引先となり、価格交渉もしやすくなります。
また、価格交渉や仕入れ管理を本部に一任することで、コストだけでなく各加盟店の仕入れにかかる手間も抑えられるのです。
フランチャイズよりも自由度が高い
ボランタリーチェーンに加盟する3つ目のメリットは、フランチャイズよりも自由度が高いことです。情報共有や仕入れにかかるコストと手間が省けるという点は、フランチャイズにもボランタリーチェーンにも共通した加盟して得られるメリットです。
しかし、フランチャイズはルールなどが多く、経営の自由度が低いというデメリットがあります。
一方で、互助組織であるボランタリーチェーンは、フランチャイズと比べて経営の自由度が高いです。フランチャイズに近いメリットを享受しながら、フランチャイズ最大のデメリットともいえる「経営の自由度が低い」という特徴がありません。
ボランタリーチェーンに加盟するデメリット
ボランタリーチェーンには、フランチャイズにはない「自由に経営できる」というメリットがあります。しかし、自由度が高いからこそのデメリットもあります。
判断を誤らないよう、ボランタリーチェーンに加盟するデメリットも把握しておきましょう。
入会金や会費がかかる
フランチャイズに加盟する際に加盟金の支払いがあったり、毎月ロイヤリティの支払いが必要だったりするように、ボランタリーチェーンにも入会金や会費がかかります。
ボランタリーチェーンには「仕入れコストを安く抑えられる」というメリットはありますが、削減できるコストと会費のどちらが大きくなるのか、共有される情報には会費を支払うだけの価値があるのかどうか、よく考える必要があるでしょう。
ある程度は自力で運営しなければならない
フランチャイズと比較したときの、ボランタリーチェーンのデメリットが「ある程度は自力で運営しなければならない」ことです。ボランタリーチェーンでも情報やノウハウを得られますが、これはあくまでも加盟店同士の情報共有にすぎません。
フランチャイズのような本部からのサポートやマニュアル共有までは期待できず、加盟後も、自発的な経営努力が必要となります。
フランチャイズほどのブランド力は期待できない
ボランタリーチェーンはブランド(屋号・看板)を強く打ち出すわけではありませんし、同じ店舗名でチェーン展開するわけでもありません。フランチャイズほどのブランド力・世間での認知は期待できないでしょう。
本部から、ある程度、知名度の高いプライベートブランド(PB)商品を仕入れることはできるかもしれませんが、店舗や商品・サービスのブランディングなどは自社でしなければなりません。商品や自社のブランド力がないと集客が成功しにくいため、自社で集客に力を入れる必要がでてきます。
ボランタリーチェーンと比べた、フランチャイズのメリット・デメリット
ボランタリーチェーンと比べたとき、フランチャイズには「本部からマニュアルや研修を提供してもらえる」「チェーンとしての知名度、ブランド力が高い」といったメリットがあります。
加盟するチェーンにもよりますが、フランチャイズは本部のサポートがあるため、経営やその業界での経験がなくても独立しやすいでしょう。知名度の高いフランチャイズに加盟すれば、ある程度の集客力が期待できます。
反対に、「自由度の低さ」はデメリットと感じる人もいるでしょう。フランチャイズにはしっかりしたマニュアルがあるものの、それに沿って運営する必要があるため不自由に感じる人もいます。
一般的に競業避止義務(契約満了後の一定期間、そのフランチャイズと同種・類似の事業をしてはならないこと)もあり、フランチャイズ契約満了後の起業も制限されかねません。
結局、加盟するならボランタリーチェーンとフランチャイズのどっちがいいの?
ボランタリーチェーンにもフランチャイズにも、それぞれメリット・デメリットがあります。どちらを選ぶべきか、どちらにも加盟せずに独立してビジネスを興すべきかは、人により異なるでしょう。
経営未経験な人、不安な人にはフランチャイズがおすすめ
経営が未経験な人、不安な人にはフランチャイズ加盟がおすすめです。加盟するチェーンにもよりますが、フランチャイズは「開業前の研修」「マニュアルやノウハウ提供、スーパーバイザーによる経営支援」「圧倒的な知名度」などの強みがあります。また、多店舗展開など複数店舗をいずれ持ちたいと思っている拡大志向がある人も「集客力に強みがある」フランチャイズがおすすめです。
経営の経験がない人、未知の業界・業種での独立を目指す人でも、比較的安心してビジネスを興せるでしょう。
経営に自信がある人、主体性が高い人にはボランタリーチェーンがおすすめ
経営に自信がある人、主体性が高い人には、ボランタリーチェーンがおすすめです。英語のボランタリー(Voluntary)には「自発的」「自由意志」といった意味があります。ボランタリーチェーンではフランチャイズ以上に経営努力が必要となりますが、代わりに自由度は高いです。
経営や、その業界・業種での経験があり、自力で業績を伸ばしていく自信のある人や、主体性が高く、自由にビジネスを進めていきたい人に向いているでしょう。
ボランタリーチェーンもフランチャイズも、自分との相性を考えて加盟しよう
ボランタリーチェーンやフランチャイズに加盟したからといって、絶対に安泰ということはありません。「この条件に当てはまったら、ボランタリーチェーンに加盟すべき」という、絶対的な基準もありません。
どこに加盟したとしても、お店の業績を伸ばすには経営努力や能力が必要です。まずは自分にどのような能力があるのか、どのような部分が苦手でフォローを必要としているのかを分析してみてください。自分の弱点を補うための1つの手段として、ボランタリーチェーンやフランチャイズへの加盟を考えてみましょう。