独立・開業して事業を進めるなかで、ぜひ活用していきたいのが“補助金”です。補助金をうまく利用することで、資金繰りに悩むことなく事業を展開していけるでしょう。では、補助金には一体どのような特徴があるのでしょうか。本記事では、補助金の特徴とメリット・デメリットをご紹介します。
補助金とは?
補助金とは“国や自治体、地方公共団体が、主に事業主を支援する目的で支給するお金”のことをいいます。便利な補助金はぜひ積極的に活用していきたいところです。有名な補助金としては「事業再構築補助金」「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」などが挙げられます(※2023年11月時点)。
では、補助金にはどのような特徴があるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
「人気の補助金・給付金」(経済産業省 中小企業庁 ミラサポPlus)
目的や趣旨によって補助金が異なる
補助金は“主に事業主を支援する目的”と上述しましたが、詳細な目的や趣旨によって、活用できる補助金が異なります。
“具体的に、どのような分野のどのような事業において支援するのか”また“必要経費のどの部分を支援の対象とするのか”は補助金によって大きく変わるため、公募内容をしっかり読み込んで理解する必要があるといえるでしょう。
全額が補助されるわけではない
“補助金は申請した経費の全額を支給してくれるか”というと、そうではありません。補助金の支給には上限が定められており、補助率も決まっています。補助率や補助金の上限も公募によってさまざまなので、詳細は公募内容を確認することをおすすめします。
審査がある
補助金には“審査がある”ことも特徴の1つです。必要書類を提出したあと、審査が行われます。
審査を通過することで、初めて補助金を受け取れるようになるのです。“申請したからといって必ず支給されるわけではない”ということは覚えておきましょう。
定められた書類を作成する必要がある
補助金を申請するには、募集団体が定めている必要書類を用意する必要があります。必要書類は作成に時間がかかるものがほとんどです。“数日でパッと仕上げよう”と思ったけれども間に合わなかった、ということも起こり得ます。公募を見つけたら、すぐに必要な書類を確認し、余裕を持って作成するようにしましょう。漏れなく書類を作成して提出することで申請が完了します。
基本的に後払い
補助金に採択されても、すぐにお金が支給されるわけではありません。なぜなら、補助金は基本的に後払いとされているからです。例えば創業時、もしくは新規事業に関して申請する場合は“採択されてから、交付された内容で事業をスタートし、報告を終えたあとに補助金額の最終決定・支給が行われる”という流れになっているのです。
補助金と助成金との違いは?
では、補助金と似たようなものとして認識されている“助成金”とはどのような違いがあるのでしょうか。
補助金も助成金も“国や地方公共団体から事業者に対して支給されるお金”であることは変わりません。また“原則返済不要”という特徴も一緒です。
補助金と助成金との違いの1つに“管轄する省庁”があります。“補助金は経済産業省管轄”で“助成金=厚生労働省管轄”という違いがあります。また、補助金の方が助成金に対して“1事業者に支払われる金額が大きい”代わりに“助成金よりも厳しい審査を通過しなければならない”という点で違いがあるといえるでしょう。
補助金を活用することのメリット
続いて、補助金を活用することのメリットをご紹介します。
返済不要で補助してもらえる
補助金の大きなメリットは“返済不要な資金調達方法であること”です。補助金を受け取ることで、自己資金を投入する必要がなくなり、事業の財政的な負担が軽減されます。また、事業の立ち上げに必要な設備や施設の整備にも使用できます。
事業の価値があがる
助成金は、条件を満たしている場合は支給されることが多いですが、対して補助金は、厳しい審査を通過しなければいけません。
つまり、補助金を支給されたということは“その事業計画に優位性や将来性があると認められたことの証明”になるのです。“補助金の審査に通過した”という事実が、結果として事業の価値を向上させることにつながるといえるでしょう。これは、創業したばかりの企業であっても、そうではない企業が新規事業について申請した場合であっても同様です。
事業計画について改めて考えることができる
補助金を申請する際には、応募申請書・事業計画書・経費明細書・事業要請書などの書類を準備する必要があります。
それらの書類を作成する際に、自らの事業について改めて考える必要があるので“事業について棚卸しをするきっかけになる”というメリットがあるといえるでしょう。また、補助金の制度が用意されているということは、国や地方自治体の抱える問題解決につながる社会貢献性が高い事業であることが求められます。自社の事業が社会貢献できる内容に調整できるということも、社会的意義があるでしょう。
補助金を活用することのデメリット
補助金を活用することにおけるメリットが数多くある反面、デメリットも存在します。総じて便利ではありますが、大変な面があることも事実です。どちらも理解したうえで補助金の公募を探し、応募してはいかがでしょうか。
情報を探すのに手間がかかる
そもそも“補助金の情報を探すことが難しいと感じる”というデメリットがあります。
なぜなら、補助金の公募は団体ごとに行っており、詳細な情報を得るためにはそれぞれの公募ページにアクセスする必要があったり公募開始時期も各補助金によって異なったりするからです。社会情勢などによっても公募内容は異なるため、自分の事業にマッチする公募が世の中に存在するのか、こまめに自分で探さなくてはいけません。
「ミラサポPlus」やJ-Net21などでは、キーワードや都道府県別に検索することも可能になっています。普段から情報をこまめにチェックしておくと良いでしょう。
「人気の補助金・給付金」(経済産業省 中小企業庁 ミラサポPlus)
「支援情報ヘッドライン」(J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト)
審査に通るのも簡単ではない
補助金に採択されるためには“審査”を通過しなくてはなりませんが、その審査に通るのが簡単ではないこともデメリットの1つといえます。
手間をかけて申請書や事業計画書などの書類を作成し応募しても、採用されない可能性があるのです。また、補助金には制度全体で予算の上限があるため、応募者多数で締め切られてしまうことや抽選で外れてしまうこともあります。
前払いで補助金を受け取れない
“今すぐお金が必要だ”という方には、補助金という制度は適していません。なぜなら、基本的に補助金は前払いではお金を受け取れないからです。
提出した事業計画通りに事業を実施し、終了後にその内容を報告することで、実際に必要になった額×補助率で補助金額が決定するのが一般的な流れです。この通り“補助金が前払いではない”こともデメリットの1つといえるでしょう。
補助金を返還しなければならない場合もある
補助金を受け取った事業者が、一定期間内に事業を停止する場合は、補助金の返還が必要となる場合があります。公募要件は必ず確認しておきましょう。
課税対象になる補助金もある
“収入の一部と見なされ、課税対象となってしまう補助金もある”というデメリットもあります。
補助金の分だけ収益が増えるので、その分、課せられる税金も増えます。課税によって資金繰りが苦しくなる可能性があるため、応募する際には、補助金の受領によって“いつ・どれだけの課税がなされるのか”をシミュレーションし、“今行っている・行おうとしている事業に関して補助金申請を行うべきか”よく検討することをおすすめします。
補助金の審査を通過するためのポイント
では“簡単ではない”といわれる補助金の審査を通過するためには、どのようなポイントを押さえておく必要があるのか見ていきましょう。
事業の優位性や将来性をアピールする
審査員に「この会社・事業に補助金を支給すべきだ」と思ってもらうには、オリジナリティや魅力を申請書で伝える必要があります。事業の優位性や将来性をしっかりとアピールすることが、審査に通過するために効果的であるといえるでしょう。
具体的には、事業の特徴を明確に説明することが必要です。どのような商品やサービスをどういうターゲットに提供するのか、特徴は何かを分かりやすく伝えます。また市場調査や顧客ニーズの把握を通じて、自社の商品やサービスが求められていることを訴求したり、製品やサービスに関する技術や特徴をアピールしたりすることで、競合他社との差別化を図ることができます。特許や実績など、自社の強みを訴求することが重要です。
さらに事業の将来性をアピールするには、持続的なビジネスモデルを示すことが必要になります。将来的な市場拡大や需要増加につながるような事業戦略を示し、自社のビジネスモデルが持続可能であることを訴えましょう。
パッと見て興味を持ってもらえるように作成する
他の事業者が提出する申請書と差別化をするために、パッと見たときの読みやすさにもこだわりましょう。見出しをつけてインパクトを与えたり、イメージ図や写真を用意したり、箇条書き・下線・太字などを駆使したりしてください。
補助金の使用目的を明確にする
申請書を提出する最大の目的は“事業内容と補助金の使用目的を理解してもらうこと”です。審査員の方々にあなたの事業を「補助すべきだ」と思ってもらう必要があります。そのためにも、補助金の使用目的やスケジュールを明確にすることを意識するようにしましょう。
分かりやすくまとめる
詳しく説明しようと業界用語や専門用語を羅列する人がいますが、それはNGです。社内の人間や業界の関係者だけが理解できるような、分かりにくい専門用語の多用も避けましょう。審査員にあなたの事業計画や補助金の使用目的を理解してもらうためには、分かりやすく伝えることが重要です。
審査員の方は各界のプロフェッショナルではありますが、業界のことを全て知っているわけではありません。そのため、専門用語を完全に理解してもらえるわけではないのです。その分野の専門家ではない人が申請書を読んでも、内容を十分理解できるよう、難解な言葉は使わず簡潔にまとめることをおすすめします。専門用語を多用しなければいけない場合、語句解説等を挿入すると良いでしょう。
補助金の代表例
時期や地域によって異なりますが、代表的な補助金は以下の例があります(2023年11月現在)。賃上げや地方創生、少子高齢化による後継者不足、新型コロナウイルスによる低迷、環境問題など、国や社会の課題解決につながる補助金が用意されています。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、中小企業者が経営を継続するための支援策の1つで、設備投資やマーケティング支援、新たなビジネスモデルの開発などに対して、一定額の補助金が支給されます。
支援の対象となる企業は、従業員数などの条件を満たす必要があります。補助率は、一般的には2/3〜3/4程度ですが、補助金の上限額は地域や事業の種類によって異なります。
※2023年12月12月が第14回の締め切りとなります
「小規模事業者持続化補助金<一般型>第14回公募公募要領」(商工会議所地区)
(P.5、P.8より)
※リンクの遷移先はPDFファイルです。ダウンロードに大量の通信費がかかる可能性があります
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が新たなサービスや試作品の開発・生産プロセスの改善など、ものづくりの技術革新を目的とした経費に対して、補助金が支給される制度です。
補助率は1/2~2/3、補助金の上限額は地域や事業の種類によって異なります。申請には、事業計画書や経営計画書、事業の説明書、財務諸表等の書類が必要であり、事前に事業計画書の審査が行われます。
※2023年度補正予算案にものづくり補助金の予算が盛り込まれています
「令和5年度補正予算の事業概要(PR資料)」(P.14より)(経済産業省)
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業や個人事業主などが、情報処理システムの導入に必要な経費の一部を補助する制度です。具体的には、業務の効率化や情報管理の強化を目的としたシステムなどの導入に対して、1/2~4/5の補助金が支給されます。
補助金の上限額は、事業者の規模やシステムの種類、導入目的などによって異なります。ただし、補助対象となるシステムや設備、導入条件などには制限があります。
※2023年7月に公募は終了しましたが、2023年度補正予算案にIT導入補助金の予算が盛り込まれています
「IT導入補助金2023」(一般社団法人 サービスデザイン推進協議会)
「令和5年度補正予算の事業概要(PR資料)」(P.14より)(経済産業省)
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、経済産業省が実施する補助金の1つで、新型コロナウイルス感染症の影響で困難を抱えている中小企業や個人事業主を支援するために設けられた補助率が1/2~3/4となる補助金です。
具体的には、新たな事業展開のための設備投資や開発費用などに補助金が支給されます。また、補助金を受け取るためには、申請する企業や個人事業主が事業再構築計画書を作成することが必要であり、その計画書が審査を通過する必要があります。
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、経済産業省が実施する補助金の1つで、中小企業の事業承継を促進するために設けられた補助金です。
具体的には、事業を継承する後継者が必要なスキルや知識を身に付けるための研修費用や、事業承継に関するアドバイザー費用、事業を継承するための設備投資・開発費用などに補助金が支給されます。また、補助金を受け取るためには、承継予定者が事業承継計画書を策定し、それが審査を通過する必要があります。補助率は1/2~2/3です。
※2023年度補正予算案に事業承継・引継ぎ補助金の予算が盛り込まれています
これら以外にも、各種の補助金が設けられており、時期や地域によっては、特定の業界や目的に対する補助金も多数存在します。申請期間や申請方法、支援の対象となる事業内容などには制限があるため、国や地方自治体のWebサイトなどで詳細を確認することをおすすめします。また補助金は、申請する企業や団体によって異なる制限や条件があります。事前に申請資格を確認し、自社や団体が申請可能な補助金を選ぶことが大切です。
補助金についての相談窓口
補助金申請については、専門の機関や団体に相談することができます。補助金のメリット・デメリットも制度によって異なるので、相談することでより理解しやすくなるでしょう。
【商工会議所】
全国に515ヵ所ある商工会議所では、中小企業の補助金についての情報を保有しています。地域によっては、無料で申請を代行してくれる場合もあります。
【地方自治体】
地方自治体でも、中小企業や地域の産業振興のための補助金制度を設けています。相談できる場所は経済産業局などがメインとなりますが、自治体によって異なりますので、各自治体の公式Webサイトを参考にしてください。
【専門のコンサルティング会社】
補助金のノウハウがあるコンサルティング会社や、税理士事務所に相談することもできます。申請についてもプロが代行してくれることもありますが、一定の費用がかかることが多いです。なかには、SNSなどで補助金の申請代行などをうたい、高額な成功報酬等を請求する悪質な業者等もいるので、依頼する際はご注意ください。不正受給を斡旋する業者である可能性もあるためです。
【行政書士事務所】
補助金の申請に行政書士の依頼が必要かどうかは、申請する補助金の種類や申請書の内容によって異なります。一部の補助金においては、行政書士による書類の作成や手続きの代行が必要となる場合がありますが、全ての補助金に行政書士の依頼が必要なわけではありません。
以上のような機関や団体に相談することで、補助金申請の手続きをスムーズに進めることができます。ただし、補助金の申請には資料作成が必要であり、手続きミスや書類不備があると申請が却下されることもあります。そのため、申請者自身が申請書の作成や手続きを行うことが困難な場合は、行政書士や専門のコンサルタントに相談することをおすすめします。また、補助金の申請には締め切りが設定されていることが多く、時間的な余裕がない場合もあるため、早めに相談することが重要です。
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独立・開業するなら、補助金をうまく活用して事業を行いましょう。審査を通過することはなかなか容易ではありませんが、ポイントを押さえて書類を作成することで、通過する確率をアップさせられるでしょう。
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<文/北川美智子>