多くの人が悩みとして抱える、キャリアの選択。
転職や独立・起業とは、まさに、今から新しいキャリアを選ぶための、人生にとってとても重要なタイミングです。
今回お話を伺ったのは、料理家として活躍する大石亜子さん。
もともとメーカーに勤める会社員だった大石さんは、仕事と家庭の両立の難しさに直面し、体調を崩したことから会社を辞め、調理師学校に通い、のちに「短時間で簡単においしくできる料理」のレシピを紹介した本やブログが人気を博します。
その時々の「ちょっとやってみたい!」を実践してきたという、大石さんのこれまでのキャリアをお聞きしました。
大石亜子さん
料理家/調理師/おうち家庭科研究家メーカー勤務を経て、退職後に専門学校へ通い調理師免許を取得。
雑誌・リーフレットのレシピ開発、イベントでの調理等を担当するかたわら、世田谷の自宅にて少人数制の料理教室 casa piccolo(カーザピッコラ)を主宰。
味や栄養はもちろん、彩りや盛り付けにも気を配った「目にもおいしいおうちごはん」を提案する。
また、家庭科全般(料理、手芸、DIY、フラワーアレンジメント等)を通じて、心地のよいおうちづくりを目指している。
【著書】『調理師あこの今日なにつくる?』(KADOKAWA)他
【ブログ】「おうちで家庭科ラボラトリー ~料理と手しごと」
http://www.nichireifoods.co.jp/media/sodatsu/2774/
短時間で簡単においしく料理が作れたら―。大石さんが、料理家としてのキャリアを歩みだした理由
―料理家としてのキャリアを歩まれた背景を、教えてください。
私は短大を卒業後、大手電気メーカーに就職しました。その後転職し、2社目で同じ会社に勤めていた夫と知り合い、結婚しました。当時、平日は朝早くから夜遅くまで仕事をし、ようやく週末になると、溜まった洗濯物を片付け、掃除、買い物を一気に済ませ、多少のつくりおきおかずを仕込むなど、結構ハードな日々を送っていました。
こうした生活は、なにより、私たち夫婦がいずれも1人暮らし経験が無く、家事に全く慣れていなかったことも影響していたのだと思いますが。
―当時は、料理どころではなかったんですね。
そうなんです。もともと料理は嫌いではなかったのですが、多忙な毎日に疲れ切っていたので、「料理」って言葉を聞くだけでイラっとするほどでしたね(笑)。
しまいには、食事をすることすら面倒になり、泣きながら調理をしたこともありました。
そんなストレスフルな生活が続いた結果、ついに身体を壊してしまったわけですが、同時に、「人が健やかに生きていくためには、衣食住の中でも、特に「食べること」を疎かにしてしまってはいけないんだなぁ」と痛感したのです。
―たしかに仕事ばかりに気を取られていると、つい疎かになってしまいがちですが、食は、人間の根幹にあたる行動ですからね。
本当にその通りです。こうして、改めて食の大切さに気づき、会社を退職して調理師免許を取るために調理師専門学校に通う決心をしました。
そして、昼は派遣社員として働き、夜は調理師の勉強をする生活が始まったのです。
―免許取得後のキャリアは、どのように考えていらっしゃったのでしょうか?
おこがましいのですが、調理師の知識を活かして「短時間で簡単においしくできる料理」を考案すれば、かつての私のように仕事と家庭の両立に苦労している方々を少しでもラクにできるんじゃないかな。という気持ちから、自らが作った料理の写真とレシピをブログで発信していきました。すると、ありがたいことにたくさんの方に読んでいただけるようになり、ブログを通して様々な企業や出版業界の方から「レシピをつくってもらえませんか?」とか「本を出してみませんか?」といったご依頼をいただくようになっていったのです。
こうして料理関係の仕事が増えたことで、料理家としてのキャリアをスタートできました。