【この記事でわかること】
- フランチャイズ加盟金の仕訳処理について
- 加盟金は返還されない
フランチャイズに加盟すると、本部に対して、加盟金(加盟料)を支払う必要があります。
加盟金を「経費として同年度の内に計上するか」それとも「違う方法で計上するか」、会計処理にまだ慣れていない加盟店オーナーを悩ませることが多いです。
この記事では「税務上の仕訳処理はどうしたらいいか」「加盟金と保証金は違うのか」という疑問を解決するほか「加盟金が返ってくることはあるのかどうか」などフランチャイズ経営に役立つ内容について説明します。
また、フランチャイズ経営はリスクが高いという話も聞くため、一歩踏み出せないという方や、フランチャイズ経営は本当に儲かるのかと不安になっている方も多いと思います。
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フランチャイズ加盟金の仕訳処理と勘定科目の書き方
フランチャイズに加盟する際、加盟金は「繰延資産として原則、5年間で償却計算し経費計上すること」が必要です。
その理由や仕訳方法について、具体的に解説していきます。
フランチャイズ加盟金は繰延資産
加盟金は加盟店にとって「繰延資産(将来にわたって便益が期待できる資産)」として扱われています。
何故なら、フランチャイズ加盟店として活躍できるためのノウハウやブランド利用権などが契約期間中に効果が出る繰延資産とされ、フランチャイズ加盟金は“その資産を手にするために必要な投資”と見なされるからです。
繰延資産の償却期間は、契約期間とビジネスの性質によって例外はあるでしょうが、関連法令や基本通達において加盟金の償却期間については、一般的には5年とされています。
フランチャイズ加盟金の仕訳処理方法
これらの前提を考慮した上で、加盟金の仕訳処理の例を見てみましょう。
主に2つのタイミングでの仕訳処理が必要です。
1つは加盟金の一時金としての支出時、もう1つは償却を行う年度末の決算時です。
【設定条件】
加盟金:3,000,000円
償却期間:5年
【支出時の仕訳】
借方: 長期前払い費用 3,000,000
貸し方:現預金 3,000,000
上記の仕訳処理において、長期前払い費用が資産として増加する一方、同額の資産・現預金が減少します。
いずれも、資産の形式における変更であり、経費や収益に影響を与えません。
借方:長期前払い費用償却 600,000
貸し方:長期前払い費用 600,000
上記の仕訳処理において、資産である長期前払い費用の5分の1(償却期間は5年であるため、年度ごとにその5分の1が償却されます)を費用として計上し、それと同額の資産、つまり長期前払い費用が減少します。
加盟金20万円未満の場合
国税庁のサイトには「支出金額が20万円未満の場合には損金経理により全額損金算入することができます」とあり、加盟金が20万円未満の場合にもこれが該当します。
この場合、フランチャイズ加盟金は支払手数料で仕訳することが可能です。
支払手数料とする場合、支出した事業年度に1度計上することになるため、決算時などの処理は行いません。
【設定条件】
加盟金:150,000円
【支出時の仕訳】
借方: 支払手数料 150,000
貸し方:現預金 150,000
参照:No.5382 同業者団体等の加入金と会費の取扱い|国税庁
税法上の扱い:国税庁の見解
費用や収支の仕訳処理を決める際に、遵守すべき法律は法人税法です。
フランチャイズ加盟金に対する国税庁の見解は、以下のとおりです。
本件の加盟一時金は、「役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用」であり、しかも、その支出の効果が1年以上に及ぶものですから、繰延資産に該当します(法人税法施行令第14条第1項第6号ハ)。
2 この種の繰延資産の効果の及ぶ期間は、一定の契約をするに当たり支出するものについては、原則としてその契約期間を基礎として適正に見積ることとされていますから(法人税基本通達8-2-1)、本件の繰延資産の償却期間は20年とすべきとも考えられますが、1建物を賃借するために支出する通常の権利金、ノーハウの設定契約に際して支出する一時金等の償却期間については、一般的には5年とされていること(法人税基本通達8-2-3)、2協会等同業者団体等への加入金については、その償却期間は5年として取り扱われていることから、本件の一時金についてもその償却期間を5年として取り扱うのが相当と考えられます。
消費税の取り扱い
法人税等では、繰延資産の取得時に支払った費用は、償却期間にわたって費用化されます。しかし、消費税では、繰延資産という概念自体が存在せず、役務提供を受けた対価を支払った時点でその消費税を計上することになります。
つまり、一括で支払った繰延資産に係る消費税は、支払ったその期に全額計上されるのです。これは、消費税が課税対象となるのは「役務の提供を受けた時」であるという考え方からです。
一方、前払費用は、その期間に応じて役務の提供を受けることから、経過期間に応じて消費税を計上することになります。これは、法人税等における費用計上と同じタイミングとなります。
まとめると、繰延資産と前払費用の消費税処理は以下のようになります。
項目 | 法人税等 | 消費税 |
---|---|---|
繰延資産 | 取得時に全額費用化 | 支払時に全額計上 |
前払費用 | 償却期間にわたり費用化 | 経過期間に応じて計上 |
加盟金以外の開業資金の取り扱い
上記は加盟金、あるいは加入金のような名称のものに関する仕訳処理の方法ですが、それらに類似する名目のものに関しても、同様の仕訳方法が妥当だといえるでしょう。
例えば加盟金を0円としている分、別途、研修費などを求められるケースもあります。
関連法令(法人税法施行令第14条第1項第6号ハ)において「役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用」と定義されるものは、全て繰延資産に該当しますので、仕訳処理も上記の通りとなります。
下記記事ではフランチャイズの初期費用ー融資など資金調達方法や「初期費用0円」についても解説しています。参考にしてみてください。
加盟金と保証金は違う
一般的に加盟金は加盟時に支払いますが、基本的にはその後、返金されることはありません。
フランチャイズ企業によっては加盟金の分割払いが可能なこともありますが、加盟金を分割で支払っている途中に解約となった場合も、支払い義務が残ることがあります。
加盟金の支払いに関する取り決めについては、契約前に本部に確認するようにしましょう。
一方で保証金とは「加盟店がフランチャイズ本部に支払う費用を期日までに支払えなかった時のためなどにフランチャイズ本部に預けておく費用」です。
保証金はあくまで“預り金”という扱いのため、契約が終了したら返金されることが多く、非課税です。
基本的に契約終了時には手元に戻ってくる費用ですが、本部に預けるために用意しなければならない費用です。
フランチャイズの加盟金に関する注意点
ここまでフランチャイズ加盟金の税務上の仕訳方法や考え方について解説してきました。
ここからは、フランチャイズ契約時に加盟金に関して知っておくべき注意点を紹介します。
長期的な店舗運営を想定して費用を確認すること
フランチャイズ加盟金の金額は、業種やフランチャイズ企業によりさまざまです。
なかには「加盟金0円」「加盟金なし」など、開業資金があまりかからないことを謳う魅力的な企業を目にするかもしれません。
そのように開業資金が比較的低く抑えられている場合でも、毎月支払わなければならないロイヤリティが割高だったり、本部から指定の設備投資が必要だったりする可能性もあります。
開業時に本部に支払う費用だけでなく、長期的な店舗運営を想定して継続的に支払う費用も確認するようにしましょう。
フランチャイズ加盟金の契約内容も確認する
フランチャイズ加盟金については、フランチャイズ本部との契約書に明記されています。
加盟金そのものの金額ではなく、もし契約してから「何らかの事情で開業できなくなった際に返金されるのかどうか」も確認しましょう。
契約をかわしてから後になって、フランチャイズ本部側の理由などによって実際に出店できなかった場合に「開業できなかったのに加盟金が返金されない」などのトラブルも考えられます。
契約書に記載されていない場合には、フランチャイズ本部の担当者に問い合わせ、合意した内容を契約書に明記するようにしましょう。
フランチャイズ加盟金は返還されないことが一般的
フランチャイズ加盟金は「返還されない」のが一般的です。
もし加盟店契約書などに「契約期間終了後に返還する」というようなものがあれば、それは加盟金ではなく、先ほど紹介したフランチャイズ本部に定められた金額を預けておく「保証金」という扱いとなります。
保証金は加盟店の資産として扱われるため、経費としての計上はできません。
稀なケースですが、加盟金の全額または一部を返還してもらえることもあります。
例をあげると「加盟店がこのビジネスに適していないとフランチャイズ本部側が判断した場合」や、「契約時に約束されていた指導やノウハウ伝達の役務を、フランチャイズ本部が加盟店に対して実施しなかった場合」などです。
後者はフランチャイズ本部側の落ち度を立証するために、訴訟につながる可能性もあります。
このような悪質な業者に騙されないように注意しましょう。
加盟先はフランチャイズビジネスの体制が整っているか、契約内容や支払うべき金額をきちんと開示してくれる企業を選ぶようにしましょう。
基本的にフランチャイズ加盟店側に落ち度がある場合は契約違反となり、返還されない可能性が高いでしょう。
加盟店都合で解約する時の加盟金の返還は極めて難しいもので、むしろ、加盟金が返ってこない上に解約金や違約金が発生してしまうことも珍しくありません。
フランチャイズに加盟する時には「オーナーは独立した事業者」として、フランチャイズ本部と同格であることを覚悟することが必要かもしれません。
フランチャイズの加盟金とは
フランチャイズの加盟金とは、契約締結時に加盟者が本部に支払う費用のことです。
フランチャイズ企業によっては加盟金が不要なこともありますが、毎月支払うロイヤリティが高めだったり、開業後のサポートがあまりなかったりする場合もあります。
加盟を検討する場合は、支払う加盟金・ロイヤリティとノウハウやブランド利用権といった受けられる恩恵のバランスが合っているか確認するようにしましょう。
そもそもフランチャイズとは?仕組みを解説
フランチャイズとは、個人や法人がフランチャイズ本部企業と契約を結び、店舗などを経営するビジネスシステムのことをいいます。フランチャイズ・チェーンの頭文字をとって”FC”と表現されることもあります。
自力で独立するのとは違い、フランチャイズ本部が持つ商標・チェーン名称・商品の知名度・経営のノウハウなどを活用するのが特徴です。本部の教育や指導を受けて短期間で事業をスタートさせ、スムーズに軌道に乗せていくことを目指します。
フランチャイズビジネスの市場規模やメリット・デメリットなど、基本的なことから知りたい方は、まずこちらの記事を読んでみてください。
まとめ
フランチャイズに加盟する際には、契約時に加盟金が必要となります。
会計上、税務上どのような処理をする必要があるかを事前に知っておくことで、より健全なフランチャイズ・ビジネスをスタートできるでしょう。
また、加盟金はフランチャイズ本部に一時的に預けておく保証金とは異なり、一般的には契約期間が終了しても返還されることはありません。
加盟契約書に記載されている加盟金に関する条項は、加盟金返還のプロセスと方法も視野に入れた上で、事前に確認しておきましょう。
加盟金の額は業種やフランチャイズ企業によっても異なりますが、開業時に必要な大きな初期投資といえます。
フランチャイズに加盟することにより、メリットやサポートなどリターンを期待できるか、自分が求める独立を実現できるパートナーとなるかなど妥協することなく確認するようにしましょう。
よくある質問
Q:フランチャイズ加盟金の相場はいくら?
A:業種/本部によってばらつきがあるものの、100~200万円となることが多い
- 小売業 172万円
- 外食業 209万円
- サービス業 210万円
参照:平成20年度フランチャイズ・チェーン事業経営実態調査報告書|経済産業省
加盟金以外にフランチャイズ加盟時にかかる費用は?
A:本部よって異なるが、店舗の有無によって金額の変動が大きい
加盟店が本部へ支払う費用がどれくらいになるかは、業種やフランチャイズ本部によって異なります。
また加盟金以外にも保証金やロイヤリティなど、さまざまな費用が発生します。
開業時には初期費用として加盟金や保証金が必要になるフランチャイズが多く、これらは毎月のロイヤリティとは別に支払います。
加盟店が本部に支払う費用の一例
- 加盟金:加盟時に支払い、契約解消後も返金されない
- 保証金:開業初期に支払い、契約解消後は返金される
- ロイヤリティ:売り上げや利益に連動、または固定で支払う
- 研修費:フランチャイズ本部が行う研修やセミナーに参加する際にかかる
- 広告宣伝費:フランチャイズ本部が行う広告宣伝費が按分されてかかる
- 設備費:フランチャイズ本部が指定する設備や備品を購入する際にかかる
初期費用として想像しやすい加盟金や保証金だけでなく、研修やセミナーでかかる研修費、広告宣伝費用などが必要となることがあります。
フランチャイズ企業によっては、「研修費は加盟金に含まれているため無料」というケースもあります。
また、実店舗を構える場合は、本部に支払う費用以外にも「物件取得費」や「内外装費「設備投資の費用」などもかかります。
Q:なぜ加盟金が必要なのか?
A:ブランド利用/広告宣伝/研修/指導といった便益に対する対価となるから
「加盟」とは「団体や組織に一員として加わること」を意味しますが、「規約に沿って加わる」という性質を含む言葉です。
フランチャイズにおける加盟には主に2種類の約束があります。
それは「加盟店と本部の間の約束」と「加盟店同士の約束」です。
それらの約束を守ることで、フランチャイズというビジネスのエコシステムが成り立ち、加盟店もフランチャイズ本部も利益を得て事業の成長と存続ができるのです。
このビジネスのエコシステムがどの加盟店にも正しく浸透し、全体として利益を残せるノウハウを提供し、運営していくのがフランチャイズ本部の役目でもあります。
その実現のために様々な研修と指導という役務を実施しています。
また、加盟店に対して直接の役務を実施していなくても知的財産・広告宣伝など、加盟店が加盟契約期間にわたって便益を受けるものがあります。それらの対価として払う一時金が「加盟金」です。
<文/北川美智子>