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57歳からの起業。スタート2年で事業を軌道に載せた『ゼロからのマーケ戦略』とは

57歳からの起業。スタート2年で事業を軌道に載せた『ゼロからのマーケ戦略』とは

上場企業にも務め、企業で取締役までした50代後半の男性が「マラソンのメダルをかけるハンガーを作って起業する!」と言い出したとしたら?

通常の感覚であれば、通帳を取り上げて「待ちなさい」と言いたくなるお話。

今回インタビューさせていただいた服部さんは、そんなリスキーなチャレンジを選び、わずか2年で実際に商品を開発。 某国内最大級のマラソン大会公式グッズにまでブランドを押し上げ、その手腕からTV・雑誌・新聞など多くのメディアに取り上げられるスゴイ方です。

一体、彼が取った戦略とはどのようなものだったのでしょうか? 詳しく聞いてきました。

服部 真さん プロフィール

(株)ランビー代表取締役/東京都中央区。59歳。バンダイなど、玩具会社で商品企画に従事。2014年に独立し、(株)ランビーを設立。会社員時代の経験を生かしてジョギング関連の商品企画を行うほか、自らもジョギングインストラクターを務める。看板商品はメダルを飾る「メダルハンガー」。ジョギング歴は20年以上。

なぜメダルハンガーに?商品開発の着想ヒントは自身の愛するものから

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―このメダルハンガーを商品化しようと思ったきっかけは何でしょう?

―服部
趣味のランニングの分野で起業しようというコンセプトは決めていました。その中でいろいろ考えているうちに、マラソン大会で完走した時にもらえるメダルを飾るアイテムがないな、ということに気づいたんです。そこでインターネットで検索をしてみたら、アメリカのウェブサイトで金属でできた「メダルハンガー」を見つけました。こんなのがあるんだと感心して、自分自身、ほしいなと思ったんです。

それからランナー仲間に聞いてみると「知らない!そんなのあるんだ」と同じように関心を持つ人もいれば、「でも、日本じゃデカいよね」という反応もあったり。アメリカの家はでっかい。だから、メダルハンガーも大振りなんですね。

その時、「確かに、日本の家だと大きすぎて絶対無理だな。でも、これをもっと小さくしたら売れそうだ」とひらめいたんです。そこで「ちょっと小さくしたらどう?」と聞いてみると「それだったら面白いんじゃない?」っていう感じになったんです。

―マラソン好きじゃないと気づかないニーズですね。その経験を生かしてメダルハンガーで起業したわけですね。

―服部
はい。中学のころから駅伝の選手をやってました。正式にフルマラソンに出始めたのは30過ぎからなのでランナー歴は30年以上ぐらいですかね。メタルハンガーに目をつけたのは、ある意味で私の趣味の延長でもあるわけです(笑)。

―着想から実際に販売にいたるまでは、どのような経緯だったのでしょうか?

―服部
一番最初はどこかの会社と組んで、自分の企画を持ち込んで採用してもらい販売してもらう。そうしてアイデア料をもらうみたいなビジネスモデルを考えていました。

ある企業とは話が進んで「やりましょう」って言われて、幸先いいな思ってたんです。でもしばらくして「やっぱり無理だ」って断られちゃいました。ロットがそんなに作れないし、うちの会社のリスクになるからとご破算になっちゃったんです。

その後、1ヶ月ぐらいすごく悩みました。自社で作ると在庫を抱えるリスクがあるので。だけどやっぱり自分発信で、Run Be(ランビー)のブランドで商品を出すことにしました。それが57歳のときのことです。

商品もブランドも知名度ゼロ。取った手段は正面突破

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―57歳から起業するのって、結構大変じゃないですか。何よりも服部さんは、それまで会社の役員を務められていたので、そのキャリアを捨ててまでチャレンジするには、かなり勇気が必要だったと思うのですが。

―服部
そうですね。今、59歳なので「アラフィフ」ならぬ「アラ還」。前の会社ではずっと役員として部下も何十人もいて、それなりの年収もあって。そこから独立して起業するのは、大変といえば大変かもしれませんね(笑)。でもやっぱりやりたいことをやりたい。その気持ちが強かったです。

最初、自分のウエブサイトでメダルハンガーを売りつつ、スポーツ用品店や東急ハンズ様にメダルハンガーを置きたいなって思っていたんです。起業した10か月後の2014年11月には、期間限定ではあったんですけど、東急ハンズ様の新宿店で置いていただけることになりました。

―東急ハンズさんには、ご自身で直接営業なさったんですか?

―服部
そうですね。ランニング仲間のツテを頼りに正面突破で売り込みに行きました。この「飛び込み」なら飛び込んでも死なないですから(笑)。

ゼロからスタートなので、つまりビジネスでは弱者。地道にやっていくしかない。しかもお金かけないでやる。ブランドも知名度もない弱者なのですから当然ですね。

東急ハンズ様に置けたことで、次の段階につながっていきました。そのあと結構大変でしたが、スポーツ用品専門店のスポーツオーソリティ様に置いていただけたのです。次は、ブルーブルーエ様という100数店舗ある雑貨のお店や、ランニング教室のジャパンマラソンクラブ様でも売ってもらいました。

さらにランニング教室では、生徒さんたちにも営業していただいて売ってもらっています。今は、ヨガスタジオさんにも売っていただいるんです。そうしたツテやつながりをフルに使って、少しずつシェアを広げていきました。

ただ、売り場に行っても大体ダメ出しされるんですよね。でもその時、「役員までやってたのに」なんて考えると何もできないです。恥を考えちゃ何もできない。そう考えています。

―役員から一転、飛び込み営業なんてサラリーマン1年生になったようなものですね。その突破力で、国内最大級のマラソン大会の公式グッズにもなったのでしょうか?

―服部
国内最大級のマラソン大会には残念ながらツテがありませんでした(笑)。そこで、マラソン大会の公式サイトにあるお問い合わせフォームから提案をしたんです。でも返事が1か月くらいこなくて。まぁ、大体こないですよね(笑)。

でも1か月後、返事が来たんです!「返事が遅れてすいません。メダルハンガーについて詳しく聞きたいので来社してくれますか」という内容です。文字通り、その担当者のところへすぐ飛んで行きました(笑)。

取引条件では「服部さんができる範囲でいいですよ」と言われて、「じゃあ、それで」と言ったら、結局2日間で売り切れるほど大好評。おかげさまで来年も契約させていただくことになり、さらにちょっと増量しましょうということになっています。

恥を捨て、恥を忍ぶ。弱者のマーケティング戦略

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―営業の他にも大変だったことは、たくさんあったのではないでしょうか?

―服部
そうですね。例えば事務や管理業務のバックオフィスの仕事。会社勤めだと、経理部とか総務があって、全部やってくれてるわけじゃないですか。でも起業すると、決算前には決算書や青色申告書も作らなきゃいけないし、税務署に行かなきゃいけない。

でも実際やり始めたのはいいけれど、当然四苦八苦する。それを見て友人の税理士さんがいつでも教えてあげると言ってくれたんです。その言葉に甘えて、しょっちゅう相談に乗ってもらっています(笑)。

さらに税務署でも教えてくれるので、税務署の職員に言われたとおりまた直して、また出直しますというのを繰り返して。結局、お金は一銭もかけませんでしたね(笑)。

―人と人で直接会話してなるべくコストを抑えるんですね。独立・起業といっても、やはり人に頼ることは大切ですか?

―服部
「人に頼る」っていうよりも、「恥を捨てて人に聞く」ってことが大事です。頼ろうとすると煙たがられますから。人は結構教えるのが好きなので「教えてよ」っていうと、「俺でいいの、しょうがないな〜」と言って聞いてないことまで怒涛ごとく教えてくれます(笑)。

聞き上手になって、いろんな人に聞きまくること。前職のちょっとしたツテでも自分でぶち当たっていけばいい。

―ひょっとして、人のつながりでメディアにも登場なさったのですか?

―服部
はい。メディアに出るようになったのは、私も会員になっている起業家向けのレンタルオフィスを運営している銀座セカンドライフ株式会社の片桐実央 社長とのつながりがきっかけでした。

片桐社長がある雑誌の企画で取材されたときのことです。レンタルオフィス会員の人も同時に取材したいということになり、「服部という人をインタビューしていいですか」と雑誌の担当者から聞かれたそうです。どうも私は片桐社長の会員では異色のようで。「変わっている」という恥を活かせたわけです(笑)。

そんな変わっている私がメディアに出ると、それを観た他のメディア関係者が検索して、直接ホームページから連絡が入ります。その連鎖で、マスコミからの問い合わせが多くなり、自然と登場する回数が増えていったという感じです。

銀座セカンドライフ株式会社で片桐社長と繋がらないで、自宅でコツコツやっていたらマスコミには登場できなかったです、きっと。「恥を捨て、恥を忍ぶ」。これがわたしなりの弱者のマーケティングだったんでしょうね。

独立・起業して成功する鍵はフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーション

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―やはり人のつながりというのは大切なんですね。

―服部
人とのリアルなつながり、フェイス・トゥ・フェイスは、おそらく皆さんが考えている以上にずっと大事だと思います。先日、あるTV局の取材の時、電話取材だけにしたいという申し出がありました。でも、電話だけじゃ嫌だよといって断ったんです。

フェイス・トゥ・フェイスなら、相手の表情で「そんなこと聞いているんじゃないんだな」と察知して言い回しを変えたりできます。そうして初めて本当に相手が求めているものが提供できるようになります。こちら側としても相手の表情がわからないと、聞いてもらってるのかなって不安にもなりますよね。

きっかけは別にメールでいいんですよ。でも、踏み込んで聞きたいときは、やっぱり会ったほうがいい。

―独立・起業の成功のコツも実はそこに?

―服部
そうです。すべては、コミュニケーション。コミュニケーションを取り違えると大きな傷になって最後に違うね、となります。ビジネスも同じでしょう。コミュニケーションの取り違えさえなければ、結構自分のやりたいように仕事をして生きていけます。いかに最初をつかむかというのが大切ですよねぇ。

まとめ:コミュニケーションを大切にすれば50代でも独立・起業の道は開ける

大手玩具会社での商品企画の経験を活かして、ランニンググッズのビジネスを展開するのが服部さんのマーケティング術だと取材前は思っていました。

しかし、実際は、人のつながりをとことん活かして服部さんは事業をされてます。だからこそ、対面コミュニケーションの大切さを服部さんは強調されています。フェイス・トゥ・フェイスは、昔ながらのコミュニケーションの基本。そうした人とのつながりを活かしてTVや雑誌などのマスコミへの登場にもつなげる。そうした複合的なマーケティングに、独立・起業のヒントがありそうです。

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