【この記事でわかること】
- コーヒー市場の動向と将来性
- コーヒー豆販売店をフランチャイズ開業する方法
- コーヒー豆の販売店をフランチャイズで開業する際のポイント
コロナ禍による生活スタイルの変化により、コーヒー豆の販売店に注目する人が増えています。本記事ではコーヒー豆の販売店を取り巻く社会情勢、フランチャイズで開業するための資金やメリット・デメリットなどをまとめて解説。どのようなフランチャイズがあるのか、個人で加盟し開業できるフランチャイズ本部を3つ紹介します。
※2024年3月時点の情報です。最新は各企業のホームページで確認してください
コロナ禍でも底堅かったコーヒー市場
日本のコーヒー市場は約2.9兆円のビッグマーケットです。コーヒー需給量はコロナ禍でも大きく下がらず、コーヒー豆の消費量は大きく増加しています。
コーヒー豆の販売のみに関していえば、コロナ禍が追い風になったとすらいえるでしょう。コロナ禍での外出自粛やリモートワークなどにより増えた「おうち時間」を使い、インスタントではなくコーヒー豆から淹れてみようという人が増えたようです。
2023年3月には政府からマスク不要の呼びかけもあり、コロナ禍は実質収束したともいえます。リモートワークを取りやめにしたり、出社頻度を上げる企業も増えてきました。
しかし、コロナ禍で浸透した新しい生活スタイルや働き方が、完全になくなるわけではありません。リモートワークを続ける企業が少なくないのはもちろん、コロナ禍により経済不安を感じるようになった人たちのなかには、フリーランス系の職種での複業をはじめた人もいます。
おうち時間を過ごす人や自宅で働く人の増加により、コーヒー豆に対する需要が高まっているのです。
「フォースウェーブ(コーヒーの第4の波)」という言葉が生まれてきているくらい、現在コーヒーに対する注目度は高いです。
コーヒー豆の販売店はフランチャイズで開業できるのか
コーヒー豆の販売店はフランチャイズでも開業できます。詳しくは後述しますが、フランチャイズに加盟することでそのチェーンのブランド力やノウハウを活用できるでしょう。
コーヒー豆販売未経験の人はもちろん、小売業やコーヒー関連の仕事の経験がある人でも、フランチャイズ加盟のメリットは大きいです。
なお、コーヒー豆の販売店は大きく2通りに分けられます。
カフェ併設型
店内飲食やテイクアウトメインのカフェでコーヒー豆の販売も行う方法です。お店で飲んで気に入ってもらえたコーヒーをそのまま販売できること、顧客との結びつきが強くリピーターを獲得しやすいことなどのメリットがあります。
販売専門店
コーヒー豆や茶葉、喫茶アイテムなどの販売に特化したタイプです。イートインがないため少ないスペースで開業でき、ワンオペ運営も難しくありません。在庫ロスも出づらいでしょう。
この記事では「コーヒー豆の販売専門店」について解説します。カフェの併設を検討している人は、こちらの記事も参考にしてみてください。
https://entrenet.jp/magazine/41528/
開業の手順・資格
フランチャイズでコーヒー豆の販売専門店を開く手順は次の通りです。
加盟するフランチャイズ本部と併せて、販売店の立地や物件についても考えるようにしましょう。フランチャイズ本部ごとに得意な客層は異なるため、出店エリアの地域特性を調べたうえで、説明会に参加したりフランチャイズ本部の担当者に相談したりするのがおすすめです。
なお、令和3年6月1日以降はコーヒー豆販売でも保健所に「営業届出」をすることが必須となりました。そのため「食品衛生責任者」の資格取得が必要です。
ほかにも「コーヒーマイスター」のようなコーヒーに関する民間資格を取得することで、顧客からの信頼が得やすくなるかもしれません。
参考: 一般社団法人 日本スペシャルティコーヒー協会|コーヒーマイスターとは
開業資金・ランニングコスト・平均年収
フランチャイズでコーヒー豆の販売店を開く場合、開業資金は500万~1,000万円ほどと考えておくといいでしょう。もちろん、販売店の規模や立地、加盟するフランチャイズなどにより必要資金は大きく異なります。
ランニングコストも同様ですが、仕入費や人件費に加え「ロイヤリティ」がかかることも覚えておきましょう。ロイヤリティはフランチャイズによりさまざまですが、売上の2~3%ほどが相場といわれています。
平均年収は売上により変わるため一概にはいえませんが、自力での開業では1年目は月収10万円ほどという販売店も少なくありません。
コーヒー販売店のフランチャイズは他業態に比べてロイヤリティが低めです。既存のチェーンのブランド力を集客に活かせること、サポートを受けながら月収アップのための試行錯誤ができることなど、加盟するメリットは大きいでしょう。
コーヒー豆の販売店をフランチャイズで開業するメリット
コーヒー豆の販売店をフランチャイズで開業するメリットを3つ紹介します。
安定した仕入れルートでコーヒー豆を仕入れることができる
フランチャイズに加盟してコーヒー豆の販売店を開く最大のメリットは、コーヒー豆を安定して仕入れられることでしょう。
フランチャイズ本部がすでに構築した信頼関係のなかで取引ができるため、個人でイチから始めるよりもずっとタイパ(タイムパフォーマンス、時間対効果)がいいです。
個人での開業よりも低資金で開業することができる場合も
フランチャイズには加盟金やロイヤリティなどがあり、個人で開業するよりも費用がかかるというイメージを持つ人も多いでしょう。
しかし、加盟するフランチャイズによっては個人で開業するよりも低資金でお店を開けることもあります。なかには焙煎機のリースやレンタルを行っているフランチャイズ、ロイヤリティがかからないフランチャイズもあります。
経営サポートを得ることができ、未経験でも経営を始めることができる
コーヒー豆の販売店に限らず、フランチャイズに加盟することで本部からの経営サポートを受けられます。
開店前に実店舗で研修を行ったり、販売促進の支援を受けられたり、未経験でも安心して経営を始められるでしょう。なかには一級建築士が店舗設備についてアドバイスをしてくれることもあります。
もちろん、本部によってサポート内容は異なります。加盟金やロイヤリティといった金銭面だけでフランチャイズを選ばず、どういったサポートを受けられるのか、自分にはどのようなサポートが必要かにも注目しましょう。
下記記事ではフランチャイズの仕組みを紹介しているので、参考にしてください。
https://entrenet.jp/magazine/25755/
コーヒー豆の販売店をフランチャイズで開業するデメリット
フランチャイズでコーヒー豆の販売店を開業するデメリットを紹介します。
- 経営の自由度が低い
- ロイヤリティなどのコストが発生する
- ブランドイメージに影響される
- 競合避止義務があり、契約満了後にも影響する
これらのデメリットはコーヒー豆の販売店に限らず、フランチャイズ全般にいえることです。
ただ、近年のフランチャイズのトレンドとして、SNS集客の自由度が高いことには注目したいです。販売しているコーヒー豆のストーリーや飲み方、食べ合わせなどをSNSで発信することで、ブランドだけではない「自店舗のファン」をつくることが大切です。
自店舗のファンをつくることができれば「他店舗のトラブル」「本部(ブランド全体)の炎上やネガティブな口コミ」など、自店舗と関係のないところで不祥事が起きても、そのダメージを最小限に抑えられるでしょう。本部によってSNSの投稿ルールもあるので、確認してみてください。
コーヒー豆の販売店をフランチャイズで開業する際のポイント
コーヒー豆の販売店をフランチャイズで開業する際のポイント、どんな観点からフランチャイズを選べばいいのかを解説します。
コンセプトや原価に注目
フランチャイズの加盟候補を選ぶ際は、そのチェーンのコンセプトやコーヒー豆の原価にも注目しましょう。
最近はコーヒー豆や茶葉などを購入する際、焙煎日や産地情報など「透明性」を重視する人が増えてきました。特にコーヒー豆は「フェアトレード」「サステナブル」などを重視する人も多いです。
このような情報の透明性が高く、地球や生産者に対してやさしい経営をしているフランチャイズを選ぶことで、より広い客層を取り込めるでしょう。
フランチャイズに加盟し店舗運営をはじめてからは、SNSや店頭POPなどでコーヒー豆に関するストーリーをPRするのもおすすめです。
ターゲットは若者だけではない
「コロナ禍でおうち時間が増えたことによりコーヒー豆への需要が増えた」と先述しましたが、コーヒー豆の販売店のターゲットは若者(働き手世代)だけではありません。シニア世代もコーヒー豆に対する需要を高めています。
総務省による家計調査(2020)によれば、シニア世代のコーヒー豆消費量がお茶の消費量を上回っていることがわかりました。
シニア世代がコーヒーをよく飲むということは、平日昼間のカフェを覗いてみたり、子どもの頃に遊びに行った祖父母の家を思い出したりすればわかるでしょう。小さい頃、祖父母が「あなたはまだ子どもだから飲めないけど」と言いながら飲んでいたコーヒーに憧れていたという人も少なくないのではないでしょうか。
コーヒー豆の販売店で開業できるフランチャイズ一覧
コーヒー豆の販売店を開業できるフランチャイズにはどのようなものがあるのか、3つの例を紹介します。
A社
「加盟店に無理をさせないこと」「オーナーの想いを尊重したお店づくりをすること」を大切にするフランチャイズです。
綿密な打ち合わせをもとに、オーナーの事情や想いを大切にした提案をしてくれるチェーンで、フランチャイズであっても比較的自由なお店づくりができるでしょう。
オープン時に応援スタッフが入ったり、スーパーバイザーが定期的に巡回しアドバイスしてくれたりと、サポートも充実しています。
B社
「加盟店が末永く安心してお店を運営できること」を大切にするフランチャイズです。
すでに加盟店がある地域では後続オーナーが契約できないため、同じ看板同士でお客さまを取り合うようなことは起こりません。フランチャイズでありながらロイヤリティが一切ないのも魅力的です。
焙煎機は月額制でレンタルできるため、開業資金も抑えられるでしょう。焙煎技術の指導もあるため、未経験でも安心して「コーヒー豆の専門店」を名乗れます。
C社
世界各国のコーヒー豆を取り扱うフランチャイズです。コーヒー豆の販売だけでなく、店舗にはセルフサービスでのカフェも併設されています。セルフサービスなので、通常のカフェほどの人員を割かずに運営できるでしょう。
コーヒー豆の種類と品質、独自の販売スタイルに強みがあるフランチャイズです。
まとめ
コーヒーはコロナ禍でも安定した需要があり、特にレギュラーコーヒー(インスタントではない、豆から淹れるコーヒー)への需要は伸びました。おうち時間や自宅で働く人の増加により、「自宅での喫茶タイム」にこだわる人が増えたからです。
この波に乗りコーヒー豆の販売店を開きたいと考える人も少なくありません。コーヒー豆の販売店はフランチャイズでの開業がしやすく、他業態よりも低い開業資金とランニングコストで自分のお店がもてるでしょう。未経験の人はもちろん、集客に自信がない人にもおすすめです。
<文/赤塚元基>