これまで会社員経験しかなく、経営に関わったこともマネジメント経験もない状態で起業しようとすると不安もあるでしょう。本記事では普通の会社員が独立・開業する前におさえておきたいポイントをご紹介します。
【本記事で分かること】
・起業前に確認しておくべき3点
・会社員4人の起業事例
・3つの失敗事例から学ぶ起業成功のポイント
・事業を継続するために重要な3つのポイント
・起業するための6つのステップ
起業に向けて考えておきたいこと、起こしたビジネスを継続するためのコツも、起業した先輩の事例を交えながら紹介します。独立・起業や自分らしい働き方を探している人は必見です。
起業するならまず押さえたい3つの観点
起業したいと思い立ったとき、最初に確認すべき3つのポイントを紹介します。実際に起業するかどうかは置いておいて、まずはこれらの観点から自分や起こしてみたい事業について考えてみましょう。
ここではリスクについてはあまり考えず、楽観的に自分なりの起業をイメージしてみます。
起業の目的が決まっているか
まずは何のために起業するのか、目的が決まっているか確認しましょう。それをほかの方法で実現できないか、代替手段も考えてみます。
たとえばお金を稼ぐことが起業の目的だったとしましょう。この場合、代替手段には資産運用を始める、副業をする、今の会社で昇給・昇進を目指すなどが挙げられます。
起業にはある程度の資金が必要なこと、リスクが伴うことを考えると、副業や会社での昇給・昇進のほうが、お金を稼ぐという目的には合っているかもしれません。
ずっとあたためてきた事業アイデアを実現することが目的なら、会社の新規事業コンテストに応募する、社内起業が盛んな会社に転職するなどの代替手段が考えられます。
たとえば某大手広告代理店では国内でもトップクラスに社内起業が盛んです。会社の資金を使えるためリスクを抑えて事業アイデアの実現ができる、社内起業を目指す仲間と切磋琢磨できるなど、自力での起業にはないメリットも多いです。
ただし、社内起業は自力で起業するよりも自由度は低いです。会社の資金やリソースを使えるのはメリットであると同時に、本当にゼロの状態から事業を大きくしていく楽しさを味わえないというデメリットもあります。
お金を稼ぐにしろ事業アイデアの実現にしろ、代替手段は意外とあるものです。これらに加え、”起業するという経験をしてみたい””最後まで自分の会社として育てていきたい”という目的があるなら、自力での起業に向けて一歩踏み出してみるといいでしょう。
起業する事業が決まっているか
どんな事業で起業したいのか、明確にイメージできるか確認しましょう。ここでは”この業界・業種で起業したい”よりも掘り下げて、”この業界で、こんなサービスを起こしたら面白いんじゃないか””こんな会社を作ったら、顧客に喜んでもらえるのではないか”のように考えます。
たとえばマーケティングの会社を起こすなら、SNS運用の支援・代行やオウンドメディアの記事作成代行、YouTubeチャンネルの運用コンサルなどの具体的な事業内容を考えてみます。”これらの支援を包括的に提供する会社を作りたい”でもいいでしょう。
どんな事業を、どんな理由で起こすのかも大切です。たとえば”既存のマーケティング会社は支援内容が明確に決まっていて、柔軟な対応が難しい””だから、クライアントのニーズに寄り添って、オーダーメイドの支援を提供する会社が作りたい”のような考え方ができます。
このように事業内容を掘り下げていくことで、競合企業との差別化ができるでしょう。
起業がゴールになっていないか
最後に起業すること自体が目的になっていないかを確認しましょう。起業はゴールではありません。スタートです。起業するまでには資金の確保や調達、家族の説得などさまざまな困難があるかもしれませんが、起業してからもより多くのトラブルや挫折が待ち受けているでしょう。
”まずは取引先を5社つくろう””事業を1年継続しよう”のように、小さなゴールを次々設定していくことで、困難を乗り越えるための意欲が湧いてくるはずです。
起業がゴールになってしまうと、事業を起こした達成感で燃え尽きてしまうかもしれません。
起業するまでの6ステップ
起業に対する自分の考えを確認し、気持ちが整っていたら、起業に向けた具体的な準備を進めていきましょう。起業するまでのステップは、大きく6つに分けられます。
1.事業計画を立てる
2.起業形態を決める
3.会社設立・開業の手続きを進める
4.資金計画を立て、資金を調達する
5.起業に必要なリソース(ヒト・モノ)の準備を始める
6.事業を開始する
1.事業計画を立てる
会社を運営するうえで事業計画は欠かせません。事業計画とは、数ヵ月~数年先までの会社の運営方針を決めるものです。事業計画をまとめた資料を事業計画書といいます。
事業計画書は融資の審査資料としても必要です。株式会社なら、株を購入してくれる人を増やすためにも欠かせません。
何より、事業計画は会社の運営方法や戦略を決めるための指針になります。売上目標を達成するためにどんな施策を打つのか、そのためにどんな人材や資材が必要なのかというように、最終目標から逆算して計画を立てていきましょう。
つまずきポイントとその解消方法
データに基づき計画を立てることで、失敗しない事業計画をつくれるでしょう。
既存の企業は過去の財務諸表を分析し、これまでの失敗の原因を突き止めることから始めます。しかしこれから起業しようという場合、過去の財務諸表はないため、競合の失敗事例を調べてその原因を考えたり、作った事業計画書を専門家にチェックしてもらったりするといいでしょう。
2.起業形態を決める
事業計画を立てたら、次はどんな形態で起業するのかを決めましょう。用意できる資金や自分の性格、ライフスタイルなど、自分に合った起業形態を考えます。
起業形態とは
起業形態は大きく個人事業主と法人に分けられます。個人事業主は法人と比べて簡単に開業できますが、その分信用面で不利になることがあります。
主な起業形態は次の通りです。
・フリーランス/個人事業主
最も簡単で、開業届を提出するだけで独立できます。手続きにかかる時間は30分ほど、費用は一切かかりません。
・株式会社
最も一般的な法人形態です。会社設立までの期間は3週間ほどで、かかる費用は自力で手続きをする場合で29万円です。
・合同会社
株式会社よりも費用を抑え、運営面の規制も少ない法人形態です。設立までの機関は2週間ほどで、かかる費用は自力で手続きする場合で10万円です。
・NPO法人
利益の追求ではなく、社会貢献が目的の民間団体です。費用面で優遇され、資本金は0円でも可能であり、設立時の諸費用もかからないことが特徴です。ただし設立には所轄庁の認証をクリアしなければならず、設立には最低でも3ヵ月と2週間の期間がかかります。
・一般社団法人
一定の目的のために人々が集まってできた集団です。設立までの期間は10日ほどで、かかる費用は自力で手続きする場合で11万円ほどです。
・フランチャイズ
チェーン店に加盟し、既存のブランドやサービスを使って事業を起こす方法です。加盟金やロイヤリティなどの費用がかかりますが、「集客力が高い、経営に関するサポートを受けられる」などのメリットがあります。かかる期間や費用はフランチャイズ本部や業態によって変わります。
・事業承継/M&A
既存の事業を引き継ぎ、自分の事業として新たにスタートする方法です。事業や企業の買収が必要で、かかる期間や費用は条件により大きく異なります。
つまずきポイントとその解消方法
先述の通り、起業形態にはさまざまなものがあります。形態が多すぎて、自分に合う方法がわからなくなってしまったかもしれません。
まずは個人事業主として起業するのか、法人を起こすのかを考えましょう。どちらが良いか比較する項目はいくつもありますが、主には税金の名目や税率、社会的信用度などがあげられます。
会社を起こす場合、介護や保育などの福祉系の事業を除き、一般的に株式会社を選びます。
3.会社設立・開業の手続きを進める
起業形態を決めたら、会社設立・開業の手続きを進めましょう。
起こす事業によっては許認可を申請しなければなりません。許認可とは特定の事業を行うための手続きで、飲食店やホテル業、薬局などを開くために必要です。届出・登録・認可・許可・免許の5種類があり、業種により申請すべき種類が異なります。
個人事業主として開業する場合、開業届を書き、所轄税務署に提出しましょう。開業届に記載された項目を埋めていくだけですが、”職業欄”に書く職業によって税率が変わるため、正確に記入しなければなりません。”屋号”は法人でいう会社名です。
「開業届の書き方・出し方は?入手方法から提出期限まで徹底解説!」
つまずきポイントとその解消方法
会社設立・開業の手続きについてわからないことがあるなら、まずは税務署の職員に相談するといいでしょう。個人事業主として開業するなら、税務署職員への相談でほとんどの疑問・問題を解決できるはずです。
法人を設立するなら司法書士や行政書士、税理士などの専門家への相談がおすすめです。費用はかかりますが、設立手続きを任せることもできます。
4.資金計画を立て、資金を調達する
事業内容や起業形態によりますが、事業を起こすには資金が必要です。資金計画を立て、自己資金で足りない分は調達しましょう。
必要な資金の目安
まずは必要な資金を算出しましょう。起業時に必要な開業費以外の費用は、運転資金と生活費の2つに分けられます。どちらも1年分の金額を目安に確保しておきたいです。
必要な資金額は法人か個人事業主か、店舗や事業所の有無、業態などにより大きく異なります。一般的に個人事業主は、事業規模の関係から法人よりも初期費用を抑えられる傾向にあります。
飲食業のような業態は店舗を準備するために大きな資金がかかると感じるかもしれませんが、デリバリーに特化する、店舗を持たずキッチンカーで移動販売するなどの工夫でコストを抑えられます。
資金調達方法
資金調達の方法は大きく次の5つに分けられます。
1. 出資を受ける
自社の株式を提供し、対価として出資を受ける方法です。出資により得た資金は返済不要ですが、経営に口を出されたり、提供する株式数によっては経営権を握られたりするリスクがあります。組織として出資するベンチャーキャピタルと、個人として出資するエンジェル投資家がいます。
2. 融資を受ける
金融機関から資金を借り入れる方法です。返済が必要なこと、金利を支払わなければならないことなどはデメリットですが、まとまった資金を比較的短期間で調達できます。金利が低く返済期間の長い、銀行や日本政策金融公庫からの融資がおすすめです。
3. 助成金/補助金
国や地方自治体による事業者の支援制度です。受給した資金は返済不要であり、「助成金/補助金給付の対象となっている=公的機関の審査をクリアしている」とみなされ、社会的信用が高まるメリットもあります。ただし、助成金/補助金は原則として後払いなので、自己資金は必要です。
4. クラウドファンディング
インターネットのプラットフォームで起こしたい事業や作りたい商品・サービスを紹介し、そのための資金を提供してくれる”応援者”を募る方法です。返済不要で資金調達ができる、資金調達と同時にプロモーションができるなどのメリットがあります。
5. 家族/知人からの借入
家族や知人から資金を借りる方法です。交渉や相手次第ではありますが、金融機関からの借り入れと異なり金利が付かない、低いことがメリットといえます。ただ、お金を借りたことで人間関係にヒビが入ることもあります。個人間融資は違法になるケースが多くあります。できるだけ避けるべき方法ともいえます。
つまずきポイントとその解消方法
資金調達を考えるとき、まずは受給できそうな助成金/補助金がないか探してみましょう。助成金/補助金は返済不要なので、出資や融資と異なりリスクがありません。
そのうえで、足りない資金は融資で調達するのが一般的です。出資は融資に比べて資金調達の難易度が高く、時間もかかります。
出資者の目的は出資先企業の株式を安いうちに購入し、企業価値が高くなってから売却することで得られるキャピタルゲインです。そのため、上場するつもりがない企業は出資を受けられないので注意しましょう。
5.起業に必要な(人材・物件・資材の)準備を始める
起業に必要な人材・物件・資材を洗い出し、準備しましょう。いわゆる”ヒト・モノ”の観点です。事業の内容や業界・業種だけでなく、物件の有無によっても「何を準備すべきか」は異なります。
店舗型ビジネスの場合
店舗を構える場合、物件の取得や内装・電気工事、設備の購入などが必要です。接客や店舗業務を任せる従業員も雇わなければなりません。
物件を選ぶ際は商圏を意識しましょう。商圏とは、簡単にいうと”店舗に来てくれる顧客がいる範囲”のことです。そのエリアにどのようなターゲットや競合がいるのかを調査し、より成功しやすい物件を取得しましょう。
「商圏とは?店舗ビジネスに欠かせない『商圏』の基本知識を抑えよう」
個人事業主ならiDeCoやNISA、国民年金基金などの制度を活用し、節税と併せて貯金もしましょう。自宅で仕事をするなら生活費の家事按分も忘れてはいけません。
無店舗型ビジネスの場合
店舗を構えない場合でも、電話をはじめとする連絡手段、PCやITツールなどの機材・資材が必要です。
物件取得や設備購入にかかる費用が少なく、店舗を構える場合よりもコストを抑えて起業できるでしょう。
ただし、店舗のように看板を掲げて営業することはできません。SNSやブログなど、インターネットを使った集客について勉強しておきましょう。電話や訪問での営業をするなら、営業リストの作成も必要です。
つまずきポイントとその解消方法
人材・物件・資材の価格は上を見ればキリがありません。考えれば考えるほど必要なものが思い浮かび、資金がいくらあっても足りないと感じる人もいるでしょう。
ただ、起業はスモールスタートが鉄則です。資金をかければ、その分有利に事業を進められるかもしれませんが、リスクも高くなります。まずは最低限必要なヒト・モノを絞り込むこと、手持ちのPCや電話など”既に持っているリソース”をそのまま事業に使えないか考えることが大切です。
6.事業を開始する
準備が整ったら、いよいよ事業を開始します。起業に向けて準備すべきことは多く、すでに疲れ切ってしまっているかもしれません。
しかし、起業はゴールではなくスタートです。予期せぬトラブルが起こり、計画通りに事業を進められないことも多いです。気を引き締めなおし、状況に応じて計画を変更しながら事業を進めていきましょう。
つまずきポイントとその解消方法
起業の準備が大変なほど、起業した達成感も大きいでしょう。達成感があるのはいいことですが、そのせいで燃え尽きてしまう起業家も少なくありません。
事業を起こしてからは準備を進めているとき以上に、スピーディな判断と行動が必要になります。燃え尽きている時間はありません。
気持ちをなかなか切り替えられないなら、小さなゴールを作ってみるといいでしょう。これまで起業することを目的に準備を進めてきたように、具体的な目標があれば気持ちも引き締まります。
”まずは取引先を3社つくろう””次は月商〇万円を目指そう”というように、小さなゴールを次々設定していくことで、達成に向けてモチベーションを高められるでしょう。
実際に会社員から起業した4つの先輩事例
会社員時代に培った能力は起業にも活かせます。今ある能力や経験、向き・不向きを踏まえてどのような事業を起こすか考えることで、起業の成功率を高められるでしょう。
起業した先輩の成功事例を、おすすめの起業形態と併せて紹介します。
1.スキル/能力を活かして1人で起業成功した先輩の事例
引越し会社を経て仲間数人とハウスクリーニングで起業した中川秀樹さん。仲間たちが別の道に進んだ後もハウスクリーニングを続けた中川さんは、売り上げを順調に伸ばすものの事業の限界を感じていました。そこで壁紙を張り替えずに新品同様にする特許製品「クロスメイク」の代理店契約を結びます。
ハウスクリーニングで培った知識と経験があったからこそ、クロスメイクの効果に驚いたといいます。自身の事業にクロスの張替え、洗浄をオプションとして取り入れ、より効率的な売り上げアップを実現しました。
実は、今では妻と一緒に仕事をしています。夫婦で同じ現場で楽しく仕事ができるのも、この仕事ならではの魅力ですねと語る中川さん。自らのスキルと知識を活かして成功した事例です。
おすすめは株式会社
個人事業主として自分のお店を持つこともできますが、株式会社として開業するのもおすすめです。株式会社は個人事業主より開業するのが大変ですが、その分社会的信用度も高いです。
渡邊さんは有限会社を事業承継していますが、法人であることのメリットは大きいでしょう。
ちなみに、株式会社の設立月日の決め方にルールはありません。税理士のレスポンスが遅くなりやすい繁忙期を避けたり、設立日を月の真ん中である15日に設定して税金の支払いを11ヵ月分で計算したり、起業にお得な月というものがあります。
「税金面から見る、“起業にお得な月”は?~法人設立初年度から知っておくべき税金について【第8回】」
3.未経験分野で起業成功した先輩の事例
不動産・建築業界での営業職や、不動産業界のフランチャイズ本部で加盟開発の仕事を経験してきた森口政俊さんは、子育てが一段落したのを機に夢だった独立を決意しました。あえて未経験の買取事業での独立し、開店から40日間の総売上は1,500万円にもなったといいます。
森口さんが未経験の業界で起業したのは、フラットな状態でさまざまな可能性を模索するためでした。退職から半年かけて8業種12社の話を聞き、じっくり検討を進めたといいます。
他社との差別化や集客ノウハウ、店舗数や投資回収などのあらゆる条件を加味して加盟チェーンを比較しました。そのうえで、加盟の決め手となったのは本部の誠実な対応と理念だったそうです。
「フランチャイズは儲かる?開業するメリットやデメリットまとめ」
4.既存サービスや店舗を引き継いで起業成功した先輩の事例
実家が自営業だったこともあり独立を志していた徳地清匡さんですが、事業をゼロから始める年齢でもないと考え、フランチャイズや事業承継での独立を検討するようになりました。
事業承継実践プログラムのセミナーで学び、地元で126年続く食肉・惣菜加工品の販売会社の5代目社長に就任。その後はデジタル化の推進に力を入れ、稟議書関係や勤怠管理などの改革も考えているといいます。ほかにも中期経営計画を年内にまとめたり経費削減を進めたりと意欲的で、5年で売り上げ約2倍を目指しています。
徳地さんは、まず業務委託で事業に携わり、その頃から常に業務改善のさまざまな提案をしていました。ほかの候補者もいるなか、アグレッシブさと実行力がある徳地になら社長を任せられると、先代社長からの期待も大きいです。
おすすめは事業承継
徳地さんには”地元を元気にしたい”という想いがあり、もともと地元での独立・開業を目指していました。地元に対する想いが強い徳地さんにとって、地域の既存事業を引き継ぐ事業承継は最適な選択肢だったといえるでしょう。
事業承継にはすでに認知度や集客力のある事業を引き継ぐことで、スムーズに事業拡大を目指せるメリットがあります。このような実利面だけでなく、誰かが手塩にかけて育ててきた事業を、創業者や前任者の想いとともに後世に残していけるという魅力もあります。
社会問題でもある後継者不足の解決につながる、社会・地域への貢献度の高い起業方法です。
3つの失敗事例から学ぶ起業成功のポイント
先輩起業家の失敗事例には、成功の法則が詰まっています。”お金”、”契約”、”人脈”の3つの観点で失敗事例を紹介し、失敗しないための対策をまとめています。失敗から学んで、起業を成功させるポイントを見つけてみてください。
事例1.お金で失敗するケース
やはり一番多い失敗のケースは”お金”でしょう。起業する場合には多かれ少なかれ必ず費用がかかります。資金調達時や補助金・助成金での失敗を紹介します。
過去の借金で融資に大苦戦
起業を決めたものの 数千万円の資金が必要で、金融機関からの融資を検討していたAさん。貯金も含めて手元にある自己資金は十分。しかし、事業計画書で収支計画も見立てて申請したにもかかわらず、過去の借金が理由でまさかの審査落ち!結局、スタートが大幅に遅れてしまったそうです。
融資を受けるのに大切なのは金融機関からの信用力。信用力を測るのは申請時の手元資金の額だけではなく、過去数年のお金の借入歴・返済歴も審査対象になるといわれています。住宅ローンでは問題がなくても、消費者金融やノンバンク系の金融機関から借入歴があると、審査が厳しくなる傾向にあります。
携帯電話の料金、水道光熱費などの滞納が不利に働くこともあります。数年経てばクリアになるといわれていますが、融資を受けたいときに困らないように、日々のお金の使い方には注意するようにしましょう。
補助金はすぐ受け取れると勘違い
独立・起業に必要なお金は、自己資金や金融機関からの融資で賄うのがセオリー。
国や地方自治体のホームページで、〇〇補助金・〇〇助成金を見つけ、事業に使うお金を援助してくれるらしいとすぐに飛びついたBさん。張り切って地元の商工会議所に相談に行くと、自分の場合は適用されない内容だったり、その場で支給されるわけではなく事業開始後にしか受け取れなかったりする費用でがっかりしたそうです。
補助金・助成金は、事業でお金が足りないときなどに助けてくれる素晴らしい制度ですが、お金が支給されるタイミングには注意が必要です。補助金・助成金は、自分が使いたいタイミングより前にお金が支給される制度ではなく、支給されるのは、購入した証拠(領収証など)を提示した後となります。
まずは自分のお金で購入する必要があり、支払いも採択後の数ヵ月先になることも多いです。補助金・助成金はあくまで補足的な意味合いと留め、期待しすぎないようにしましょう。
事例2.契約で失敗するケース
”契約”についての失敗も見過ごせません。一口に契約といっても、加盟契約に限らず、不動産契約なども含まれます。契約こそ慎重な自己判断が求められるため、失敗事例から学んでいきましょう。
自宅で起業にまさかの落とし穴
趣味でつくっていたアクセサリーが好評で、思い切って起業することを決意したCさん。特段スペースを取るビジネスではないので、自宅で起業することにしました。意気込んでいた矢先に、いきなり不動産管理会社から、「この物件は事業用に使えません。今後も仕事で使うようなら、退去していただきます」という通知が届き、慌てて賃貸契約を確認することになったそうです。
個人事業主が自宅を仕事場にしようとするのはよくある話ですが、思わぬ落とし穴があることを理解しておきましょう。貸主・オーナーと取り交わす賃貸契約書の中には「用途」という項目がありますが、住居用で部屋を借りた場合は「借主自己の居住用」といった内容が書かれており、さらに「用途目的以外の使用を禁ずる」という内容も追記されていることが多いので、改めて確認してみてください。
入居後に事業を始めた場合は要注意です。 ただ、禁止されている理由としては「物件の敷地内や公共スペースに、居住者以外の客や業者が出入りすることを避けるため」であることが多いため、今回のケースのように「人が出入りするビジネスではないこと」を事前に説明しておけば、退去通知には至らず、そのまま住居兼仕事場として続けていけたかもしれません。
フランチャイズの契約内容を理解しないまま契約締結
初めての起業に不安があったDさんは、最初はノウハウがまとまっているフランチャイズに加盟するのが良いと思い、いくつか検討した結果、独自の技術が魅力のハウスクリーニングのフランチャイズに加盟することにしました。
後日、違った強みを持つハウスクリーニングのフランチャイズの存在を知り、そちらにも加盟。両者の強みを活かして順調に仕事を始めていたところ、最初に契約したフランチャイズ本部から競合での加盟を禁止する訴状が届きました。契約内容を再確認したところ、競業避止義務に違反していることが発覚したそうです。
フランチャイズ本部や外注業者、税理士など、独立するといろいろな人や会社と取引することになり、その都度契約書の取り交わしが発生します。一度取り交わしてしまったら、その内容は正式なものになり法的拘束力を持つことを肝に銘じましょう。契約書の内容に反することをしたら、相手から訴訟を起こされ、損害賠償請求されてしまうリスクもあります。
この事例に出てくるフランチャイズ契約書では、「競業避止義務」といって、本部が定める競合ビジネスをやってはいけないルールが記載されていることも多いです。「知らなかったです。すみませんでした」では済まされないので、契約書は事前に必ず自分ですべてチェックし、知らない事項は確認したうえで納得して締結するようにしましょう。
事例3.味方がいなくて失敗するケース
起業は孤独といわれます。そのため味方は、多いに越したことはありません。家族や友人知人に限らず、人脈や医療機関などさまざまな味方を見つけておくヒントを紹介します。
体調管理は経営者の基本なのに
内装業で独立して3年、経営も安定して社員も増えたというEさん。社会保険労務士の提案で、社員の人間ドックの費用を一部会社負担にすることにしたついでに自分も受けてみることにしました。そういえば会社員時代は毎年会社の指定で健康診断を受けていたのに、独立してからは無縁だったようです。特に体の不調などなかったので大丈夫だろうと思って受診したら、検査結果はまさかの再検査。定期健診の重要さを身に染みて痛感することになったそうです。
会社は、労働安全衛生法に基づき、会社員に対して医師による健康診断の実施が義務付けられています。毎年当たり前に受診していた人も多いでしょう。しかし、独立後は、このような健診を誰かが用意してくれるわけもなく、民間のクリニックを自分で探したり、自身で健康診断・人間ドックに申し込む必要があります。
自治体や国民健康保険が実施している健康診断なら、無料もしくは低額で受けることもできるので、調べてみるのと良いでしょう。経営者・事業主の健康を守る制度は世の中にきちんとあるので、活用しない手はありません。仕事も生活もすべては健康な体があってこそ成立することを改めて理解しておきましょう。
周りに起業した先輩がいなくて孤独
新卒でWEB系企業に入社して10年、離職率が低いのが自慢の職場で、居心地良く働いていたFさん。そんなとき、友達に「一緒にマーケティング会社を立ち上げよう!」と口説かれ、自分もピンときて脱サラ・起業を決意しました。仕事にやりがいを感じる日々ですが、元同僚は今もみんな会社員で、悩みを誰に相談すれば良いかわからず孤独を感じてしまったそうです。
「経営者は孤独」などとよくいわれますが、実際に、世の中の経営者は相談相手を求めているものです。コンサルタントや先輩経営者など相談内容によって相手は変わりますが、国も各地域に商工会議所を設置し経営相談窓口を設けていたり、経営者同士をマッチングするサービスもあったり、比較的安価で利用できるサービスが充実してきています。
SNSで自分の肩書をプロフィール欄に載せ「相談したいです!」と投稿するなど自分からアプローチしてみるのも手です。相談で大事なのは、有意義なアドバイスを得るため、恥ずかしがらずに悩みを打ち明けることです。経営者ならきっとあなたの悩みをわかってくれるはずです。
アントレでは先輩オーナー紹介や、会員特典として無料で相談員に悩みを打ち明けるサービスを用意しています。無料で受けられる特典内容を確認してみましょう。
起業してビジネスを継続するために重要な3つのポイント
起業はゴールではなくスタートです。自分の事業を起こした後こそ、さまざまな困難やトラブルが待ち受けているでしょう。個人事業主や経営者には、会社員のような保証はありません。自分の事業でお金を稼ぎ、事業を続けるだけでなく、生活をしていかなくてはなりません。
そのために重要なことをお金の管理と計画の立て方、いざというときに助けてくれる味方の作り方の3つに分けて紹介します。
ポイント1.お金の管理を怠らない
お金は事業を続けるための体力のようなものです。事業資金はもちろん、生活資金が足りなくなれば、焦りが生まれ合理的な判断が下せなくなるでしょう。会社員だった頃以上に、お金の管理に気をつけなければなりません。
資金は十分準備する
生活費と事業の運転資金、この2つの費用を十分準備してから起業しましょう。
生活費は1年分準備しておきたいです。基本的に今の生活レベルを下げない想定で、月々の収支から必要な金額を算出しましょう。
生活レベルを下げるのも手ですが、これは難しいでしょう。一度生活レベルを下げられても、その反動で散財してしまうリスクもあります。このようなリスクを考え、生活レベルを下げるのではなく、”生活レベルを上げない”という意識をもつといいでしょう。
運転資金は起こす事業により大きく変わってきます。事業所や店舗用の物件があるなら家賃や水道光熱費、物件がないならビジネスの維持費や交通費などが主な運転資金となります。ほかにも厨房機器やPCなどの機材のメンテナンス費も計算に入れておきましょう。
節税・固定費の削減を目指す
事業の維持にかかる費用はなるべく削減しましょう。固定費を削減すること、節税に取り組むことで、支出を減らし手残りを増やすのです。
個人事業主ならiDeCoやNISA、国民年金基金などの制度を活用し、節税と併せて貯金もしましょう。自宅で仕事をするなら生活費の家事按分も忘れてはいけません。
「個人事業主が意識しておくべき貯金と節税について」
融資情報は常にキャッチ
事業を起こしたり拡大したりするには、何かと資金がかかります。自己資金では足りず、資金不足が原因でチャンスを逃してしまうこともあるでしょう。融資情報を常にキャッチする意識が必要です。
起業時の資金調達には日本政策金融公庫の新創業融資制度がおすすめです。基準金利2.40~3.70%で、3,000万円を限度に融資を受けられます。3,000万円のうち運転資金は1,500万円です。
ほかにも起業や経営に役立つ支援情報はたくさんあります。下記Webページでは補助金・助成金やセミナー、イベントなどの情報を地域ごとに検索できるので、融資情報をキャッチするためにもこまめにチェックしてみましょう。
支援情報ヘッドライン | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]
収益シミュレーション事例(ひとりで開業できるビジネス編)
事業内容や起業方法を踏まえ、収益をシミュレーションしてみましょう。フランチャイズに加盟し起業する場合、業種ごとに次のようなシミュレーションが考えられます。
【ハウスクリーニングの収支シミュレーション】
●月商 124.3万円
▼ロイヤリティ 6.6万円
▼広告分担金 2.2万円
▼システム利用料 2.2万円
▼広告料 24.86万円
▼消耗品等 1.243万円
▼交通費 6.215万円
▼損害保険 0.5万円
→◎営業利益◎ 80万4820円
出典:日本おそうじ代行/Laugh Place株式会社の独立開業情報
【宅配事業の収益実績】
◆年間所得額:1137.0万円(神奈川県で開業/30代/開業11年)
◆年間所得額:806.9万円(兵庫県で開業/60代/開業3年)
◆年間所得額:667.7万円(東京都で開業/50代/開業9年)
【キッチンカーの収益シミュレーション】
●1日の売上(客単価2000円)
平日:3万~6万円/土日祝:5万~20万円
●2人で月20日稼働の場合月商:80万~260万円
※原価率25%程度
出典:EDEL Cafe(エーデルカフェ)/株式会社エヌステージの独立開業情報
ポイント2.計画変更は柔軟に
起業に向けて詳しい事業計画を立てることは大切です。しかし、答えがひとつとは限りません。代替案を常に持ち、計画通りに進まない場面に備えましょう。
社会や市場の動向を見て、柔軟に計画を変更したり、全く新しい代替案を考えたりすることも大切です。
コロナ禍により多くの飲食店や宿泊施設が苦境に立たされたことは記憶に新しいでしょう。この前代未聞の状況で生き残ったのは、デリバリーやテイクアウトなどの新しいニーズにいち早く対応した店舗、リモートワークをはじめとする新しい生活様式に合ったサービスやビジネスモデルを考えた企業です。
ポイント3. 味方は多ければ多い方が良い
起業は孤独なものです。家族や友人・知人、先輩起業家など、味方は多ければ多い方が良いです。
特に家族の協力は欠かせません。苦しいときに励ましてくれたり、家事や介護・育児を通して間接的に事業をサポートしてくれたり、家族による精神的・物理的な支えがなければ事業を軌道に乗せるのは難しいです。
税理士や中小企業診断士など、課題ごとに相談できる専門家とつながっておくのもいいでしょう。
独立・起業の支援サービス「アントレ」では、提携の相談員がプロ目線で無料アドバイスをしてくれます。無料の会員登録をするだけで、専門家への無料相談や起業に役立つ動画コンテンツなど、さまざまな特典が利用できます。
登録はスマホから30秒でできるので、少しでも気になる方はまずは試しに使ってみてください。
起業に向けたおすすめの第一歩
起こしたい事業や実現したい理念があり、そのためには起業がベストだと感じるなら、ぜひ起業してみましょう。
しかし、いきなり起業するのはおすすめできません。事業の内容や起業形態にもよりますが、起業するにはある程度の資金が必要で、それなりのリスクも伴います。リスクヘッジとして、まずはスモールスタートするのがいいでしょう。
起業に向けた第一歩としておすすめの方法を2つ紹介します。
スキルを活用するなら【副業から始めてみる】
起業に向けた第一歩として、自分のスキルを活用し、”副業”を始めてみるといいでしょう。起こしてみたい事業、起業したい業界・業種で、まずは副業を始めてみるのです。
業種にもよりますが、副業ならあまり資金をかけずに事業を始められます。業種によっては資金ゼロで始めることもできるでしょう。副業として続けながら人脈を作ったり、独立のための資金を貯めたりもできます。
今あるスキルで副業をすることには、自分の市場価値を確認する意義もあります。クラウドワークスやココナラなどのサービスを活用すれば、意外と簡単に事業をスタートできるでしょう。
未経験でも一歩踏み出すなら【フランチャイズ・代理店を活用してみる】
未経験の業界・業種に一歩踏み出すなら、フランチャイズや代理店を活用するのがおすすめです。すでに稼げる仕組みや成功のためのノウハウが確立されたビジネスモデルに乗り、自分の事業を始められます。
フランチャイズや代理店というと、“加盟金だけで数十万円、数百万円かかるんじゃ…?”“いきなりお店を持つのは怖い”と感じるかもしれません。
しかし、無店舗でライトに始められるビジネスもあります。副業からスタートできるフランチャイズ・代理店も多いです。
アントレでは副業からスタートできるフランチャイズ・代理店情報を多数掲載しています。まずはどのようなビジネスモデルがあるのか、どのくらいの資金がかかるのか、実際の独立・開業情報からチェックしてみましょう。
副業からスタートに関する独立、開業、フランチャイズ情報を探す
起業でも会社員でもどちらも正解!
仕事で何を重視するかは人により違います。”もっと自分らしく働きたい””どこまでやれるか自分の力を試したい”といった上昇志向で起業を目指すのはいいことです。
もちろん、必ずしも起業する必要はありません。”もっと自分らしく働きたい”という希望は、リモートワークやフレックスタイム制のある会社への転職でも叶えられるかもしれません。今の会社の仕事に精一杯取り組むことでも、自分の力は試せます。
ただ、せっかく生まれた起業マインドを押し込めてしまうのはもったいないです。まずは今、会社員としてスキルアップすることで、将来起業に役立つ能力や資産が得られるでしょう。
いきなり独立・起業することが不安なら、副業から始めてみるのがおすすめです。本業を続けながらスモールスタートすれば、起業は怖くありません。
ただ、起業や副業についてわからないこと、困っていることがある人も多いでしょう。そんな人には独立・起業を応援する「アントレ」がおすすめです。
無料の会員登録をするだけで、起業に役立つ動画コンテンツや専門家への相談サービスなどを利用できます。もちろん、これらのコンテンツ・サービスもすべて無料です。
無料の会員登録はこちらからスマホから30秒ほど操作するだけで完了です。起業に興味が芽生えたら、最初の一歩として情報収集から開始してみましょう。
<文/赤塚元基>