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エグゼイドだから表現できること。作品の本質を引き出す、引き算の力【高橋悠也・後編】

生ボイス

あらゆる仕事において、常に存在する制限事項。

それが時間であれ予算であれ、様々な制限がある中で、高いパフォーマンスを発揮する人を、いわゆる「仕事ができる人」と呼ぶのではないでしょうか。

今回、お話を伺ったのは脚本家の高橋悠也さん。

高橋さんは、こどもから大人までSNSを中心に大いに話題となった『仮面ライダーエグゼイド』、国民的人気アニメ『ドラえもん』など、数多くのヒット作品を手がける、人気急上昇中の脚本家の1人です。

前編では高橋さんのキャリアを中心に、好きを仕事にすることについて伺いました。

今回の後編では、高橋さんがどのように信頼を築き仕事を勝ち取ってきたのか、そして『仮面ライダーエグゼイド』でのエピソードから、限られた条件の中で最高のアウトプットをするための方法について伺いました。

本質をつかむには「引き算」の力が重要だと語る高橋さん。その真意を伺いました。

<プロフィール>
高橋悠也さん
脚本家/演出家/小説家/俳優
QUEEN-B所属

1978年2月1日生まれ。
劇団UNIBIRD主宰。テレビドラマ、アニメ、映画、舞台など幅広いジャンルの脚本を手がける。
映像作品では、2010年にドラマ『怪物くん』で脚本デビュー。

2016年に『仮面ライダーエグゼイド(以下、エグゼイド)』のメインライターを務め、テレビシリーズ、映画、オリジナルビデオ、小説を含めたほぼ全ての関連作品を執筆。

2018年4月からはテレビアニメ『ドラえもん』にも脚本として参加。

代表的な脚本作品は『金田一少年の事件簿N(neo)』『相棒』『エイトレンジャー』『曇天に笑う』『ルパン三世 PART IV』『仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判』など。

信頼を作って、仕事を勝ち取る。『エグゼイド』全話執筆の裏側

―前編では、高橋さんのこれまでのキャリアを中心にお話を伺ってきました。後編では、どのように仕事を勝ち取ってきたのか、仕事論のお話から伺っていきたいと思います。

高橋さん
仕事論、と言えるか分かりませんが、若い頃から今まで徹底しているのは「締め切りだけは必ず守ること」ですね。

特に脚本家として物語を書き始めた初期の頃は、とにかく締め切りを最優先に置いて仕事をしていました。

―「スケジュールかクオリティか」を選ぶという苦渋の選択で、締め切りを優先させたのはなぜでしょう?

高橋さん
当たり前なことですが、僕を含めたおそらく全ての脚本家は、可能な限り自分が納得できるクオリティのものを書きたいと思っているでしょう。

しかし脚本に限らずですが、あらゆるクリエイティブの仕事において「100点を目指しすぎる」と、どうしても締め切りギリギリまで粘ってしまいたくなり、時には締め切りを延ばしてしまうこともあります。

しかし映像作品は、脚本だけで完成するわけではありません。

脚本を書く人がいて、実際にその筋書きで演じる人がいて、役者が演じている様子を撮る人がいて、撮った映像を編集する人がいる。

たくさんの人が関わって1つの作品を作り上げています。自分が100点を目指したいがために、限られた時間を必要以上に使い続けてしまうのは、作品にとってもマイナスになりかねない。

―だからこそ、締め切りを優先させたんですね。

高橋さん
はい。脚本家がごまんといる世界で、仕事を勝ち取っていくために『少なくてもスケジュールを守る、筆の早い脚本家である』というスタイルを貫こうと心がけました。

もちろん締め切りに遅れようとも、圧倒的なクオリティの作品を書き上げるのも1つの答えだと思いますが、僕は逆に、少なくとも信頼を得られるまでは、締め切りを最優先させようと思ったんです。

その結果、プロデューサーを始めとするドラマやアニメの制作スタッフに「仕事が速い」「納期を必ず守ってくれる」と、評価していただけることが多くなり、次第に仕事が増えていきました。

―若い時からこうした姿勢を貫いてきた高橋さんだからこそ『エグゼイド』を全話執筆されるという、偉業を達成されたのですね。さらに速筆なだけでなく、膨大に張り巡らされた伏線と話のテンポの良さで『エグゼイド』は平成仮面ライダーシリーズの中でも、人気のある作品となりました。

高橋さん
普通、仮面ライダーシリーズはメインライターの他に数人のサブライターを加えて、脚本を書いていくのですが、前編でも話した通り、僕は『エグゼイド』が大好きだったので、なんとかして全話書き上げたかったんですよね。

撮影が迫っている時は3日で2話分(1話あたり400字詰め原稿用紙約25枚分、10,000〜15,000文字程度)の脚本を書いていたので、なかなか大変でしたけど(笑)。

―3日で2話分も書かれていたんですか!?

高橋さん
はい、それでも他の脚本家に執筆をお願いするのは避けたかったんです。

今思えば、あの忙しさをなんとか自分の力で乗り越えられたのは、若い時から徹底している「締め切り」の意識と、そして何より誰にも負けない『エグゼイド』への情熱だったんじゃないかと思います。

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“病が完全になくなる世界”は、ありえない。『エグゼイド』だからこそ、表現できること

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