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”嫌われ者にも支持者はいるから…” 細い線をどう歩いていくか|安居楽業〜ゲスト石戸諭さん(後編)

生ボイス
この記事は、アントレのPodcast番組「安居楽業」にご出演いただいた方のお話を記事として書き起こしているものです。これまでの仕事やプライベートのこと、苦難を乗り越えたエピソード等、”楽業”を手に入れるまでを語ってくださっています。

働き方やライフスタイルのヒントをお届けするポッドキャスト番組『安居楽業 ライフとワークを整える』。前回に引き続き、ゲストは記者・ノンフィクションライターとして活躍し、鋭い取材と柔らかい語り口が魅力の石戸諭さん。

後編では、“厄介者を解き明かす人”という印象とは裏腹に、料理やファッション、ライブ鑑賞などプライベートで見せる意外な素顔に迫ります。また、「本当の悪者は滅多にいない」という石戸さんの取材哲学や、フリーランスとしての働き方、仕事と生活のバランスの取り方、そして“断らない”というシンプルな軸が生んだキャリアの広がりについても語っていただきました。

一つひとつの問いに誠実に向き合いながら、日常の楽しみ方や仕事へのスタンスを淡々と、しかし温かく語る石戸さん。その言葉に、これからの働き方を考えるヒントが詰まった後編です。

正しい情報だけが流布している状況はある意味”不健全”/選挙は非日常…期間が決まっているからこそ燃え上がりやすい|安居楽業〜ゲスト石戸諭さん(前編)

日本のトリックスターたちを追いかけて|石戸諭の人物ルポの現場

西川あやの
今販売されている本が『嫌われ者の正体:日本のトリックスター』ですが、正直、名前が並んでいるだけで「すごい顔ぶれだな……」と圧倒されてしまうような(笑)。

石戸諭
我ながら、名前を読むだけで、お腹がいっぱいになるような顔ぶれだと思います。

西川
ガーシー氏や大阪府の吉村知事、玉川徹さん、山本太郎さんなど、かなり幅広い方々に取材されていますよね。これは、取材対象のラインナップってどうやって決めたんですか。

石戸
ラインナップは、基本”来たまま”ですね。もちろん「こういう人を書きたい」という気持ちが全くないわけじゃないけれど、この手の“人物モノのルポを書いてください”という依頼が、2021年くらいから急に増えてきたんですよ。それも、なぜか厄介な事案ばっかり。賛否両論が激しく分かれる人が多くて、どう書いても一歩間違えたら炎上必至という依頼が多くなってきた。

西川
確かに……そのイメージ、あります(笑)

石戸
プロフィールでも紹介してもらいましたけど、『ルポ 百田尚樹現象』を書いたときってまさに、百田さんの炎上発言が世間を大きく賑わせていた、まさにど真ん中のタイミングだったんですよ。それで、「これが書けるなら他の人も書けるでしょ」と思われたのか、とにかく賛否を集める厄介な人たちについて、なぜこんなに話題になるのか、その謎を解き明かしてくださいという依頼が、定期的に届くようになったんです。

西川
わかります、石戸さんが書いてそうなラインナップです(笑)。でも、そういう題材って、色々気をつけることが多くないですか?

石戸
ありますよ、もちろん。今年の夏の参院選なんかも例によってといいますか文藝春秋さんから依頼をいただきました。「今度は参政党の神谷さんを」と。もう、“やっぱり来たか”という感じで。「来るよね、そうだと思った……」と苦笑しながら、夏の参院選をひたすら追いかけることになりました。

西川
もう、スペシャリストじゃないですか(笑)

石戸
この“厄介な人たち”を、僕はまとめて“嫌われ者”と名付けたんですけど、最近はだんだん「厄介な案件といえば…」という図式になってきているような気もしています賛否両論渦巻く人物で、炎上も含めて社会で話題になっている現象…。だいたい僕に回ってくる状況に気がついたらなっていました。そんな流れもあって、これまで書いてきた原稿を1冊にまとめたのが今回の本なんです。

西川
なるほど。でも石戸さんって、そこに個人的な感情とかお気持ち表明はないですよね?

石戸
わかりやすくはないですよ(笑)

西川
ですよね。解明ですもんね。現象はなんなのか?っていう。

石戸
そう。こういう方々って熱狂的な支持者もいれば、批判する人もいますから。ちょっと違うぞという書き方をしただけでこちらが被弾し、集中砲火されるような危うさもある。どう書いても批判される可能性があるような人たちなんですよ。

西川
実際に捕まっていた方もいますしね。

石戸
ガーシーさんとかね。でも、そういう人にもちゃんと支持者がいる。この「支持者側もそこそこ納得してくれる」かつ「批判する側もそこそこ納得できる」という、ものすごく細い道をどう歩くか。それが僕の仕事なんです。

西川
そう考えると、本当にすごい筆致力ですよね。

石戸
これね、自分で言うのもなんですが、結構難しいものですよしかも、わかりやすく対立構図をつくって批判したほうが「これがジャーナリズムの仕事だ!」というリーチはしますからね。

西川
文章を書く時点で大変なのはもちろんですが、取材するときの空気感ってどんな感じなんですか?

石戸
普通に行きますよ、本当に普通に。「お疲れ様です」って挨拶して、敵対するわけでもなく、かといって味方でもないという姿勢を保ちながら。「敵じゃないですよ」という空気はちゃんと示しつつ、「ちょっとお話を伺わせてください」と。それしかできないんですよ。要は、「あなたのことを知りたいです」という気持ちを丁寧に伝えるだけなんです。

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炎上する人々は悪人なのか? 石戸諭が語る現代のトリックスター像

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