テレビ東京のディレクター時代にYouTubeで「日経テレ東大学」を企画した高橋弘樹さん。自分のいる環境を客観視し「大企業に属している恩恵にあずかっている」から、なんでみんな「独立っていいもんだよ」と言うのか理解ができなかったというが、独立後は、YouTubeで「ReHacQ」を立ち上げ、番組内ではいち社会人の目線で「それってどうなんですか?」「どうしてですか?」「今後はどうなるんですか?」と視聴者目線で政治家や専門家にインタビューしたり、旅バラエティー企画「世界の果てに、ひろゆき置いてきた」では、ひろゆきさん、東出昌大さん、Toshlさんなどゲストの人間性を写し出し人気企画を手掛けている。
思ってもいなかった“独立の道を選んだからこそ想うこと”を、お伺いしてきました。
会社員は素晴らしいと思っていた自分が起業
―開業される前は、どのようなキャリアプランを描いていらしたのですか?
開業前はテレビ東京(以下、テレ東)に勤めていて、異動もなく、18年ぐらい制作局にいたので、そのままずっと50代くらいまでテレビ番組を作っていくんだろうなと思ってました。番組を作りながら役職につくような形態で、出世して役員とかになりたいなと思ってましたね。
テレ東には番組を作りながら役職につくっていうことも、できそうな雰囲気もあったので、そういう道があるというわけではなかったですけど、“なくもない“ようにも感じましたし、そういう道を“作りたい”という感じでした。
―独立しようと思われたきっかけは何でしたか?
日経新聞とテレ東とが合同で始めたYouTube「日経テレ東大学」に携わっていたんですが、その事業が終了となったことがきっかけでした。
そもそも、日経新聞とテレ東の合同で新しくメディアを作るということで企画の募集があったんです。オリエンテーションを受けて、応募した企画が通って始まったメディアでした。日経新聞って、あんまり本格的に映像をやったことがなかったんですけど、本気でテレビ東京と映像を作るという感じでしたね。
―いつぐらいから退職を検討するようになったのですか?
矛盾するようなんですけど……ずっと“会社に骨を埋めるんだろうな”と思ってはいたんです。でも、頭のどこかで“食いっぱぐれないよう、いつ辞めても大丈夫なようにはしておこう”とは思っていたかもしれないですね。
テレ東って、働く環境とか待遇面とかはすごく良いので、会社に居続けるんだろうなと思ってたんです。でも、僕は18年ずっと制作局にいたので、スキルとしては比較的、ジョブ型に近いというか、専門職だったんです。だから、いつ辞めても映像が作れるっていう武器を使って食いっぱぐれないようにしようっていう意識は、どっかにありましたね。
―会社員のときは、何か働き方など悩みはありました?
テレ東は、良い会社で楽しかったんですけど、外の世界を見てみたいっていう想いはありましたね。
会社員であるメリットも十分に分かってはいましたけど、独立している人が少し羨ましくて、外の世界を見てみたいなという気持ちもありました。独立ではなくて転職みたいな目線で、「他局は、どうなんだろうな」とか、「例えば映像制作しながら大学の先生になるのはどうなんだろうな」とか、いろんな働き方があるんじゃないかと考えてはいましたね。
他局の知り合いから聞いた話だと、数字にシビアだなと感じていたので「実際のところは、どうなんだろう」という興味がありましたね。テレ東は結果にコミットせざるを得ない環境ではあるんですけど、テレ東は他局と比べると視聴率とか数字に対するシビアさがあまりなかったのと、ちょっとクリエイティブな環境があったので、「面白いことをやろう」っていうトライアル精神のある雰囲気が良くて、テレ東に飽きることもなかったし「テレビ東京が一番だ」と思っていました。でも、ずっと競争している中にいたので他局のことは気になってましたね。まあ、それは業界で後発の最下位企業ならではのものだと思うんですけど(笑)。でもその分、やりたいことがやれるというような環境がありましたね。もともと業界で最下位っぽい感じだったので、失敗して数字が悪くなったから異動ということもあんまり聞いたことはなかったですし、逆に言うと、そんなに咎められないから新しいことに挑戦しやすいという良い環境だった気がします。そこはテレ東の良い所だなと思ってました。
―お話に出てきた“会社員のメリット”ですが、具体的に何がメリットだと思われますか?
本当に会社員は素晴らしいなと思っていましたけど、例えば健康リスクです。
体が悪くなっても安心して働けるっていうところはいいなと思ってました。大先輩で体調を崩された方も、良い環境、良い待遇で働けるというのを見ていましたし。会社員って、すごい実績を上げても、すごいリターンがあるわけじゃない。でも、保険をかけながら働けるから、リスクとリターンを天秤にかけて考えると、そんなに悪くないんじゃないかなとは思います。かっこいいことを言う人もいますけど、実際に独立してみると代えがたいメリットだと感じますよね。
独立してからは、“自分が死んだらおしまいだな”と思うようになりました。そうならないように、体調も管理して会社をやっていきたいと思っています。