心理学の言葉で「内観」という言葉があります。
内観とは、自分自身の心の動きや精神、内面を観察すること。すなわち自分が何が好きで嫌いか。どんなことにモチベーションを感じるか。
自分を知ることは、自分がどんな仕事をしてどんなキャリアを描きたいのかにも、繋がってきます。
今回お話を伺ったのは、手作りおもちゃクリエイターの、むーさん。
幼少期からおもちゃ作りが好きだったむーさんは育休中、SNSにこどものために作ったおもちゃの投稿をスタートさせ、会社を退職し独立します。
むーさんのキャリアは、自分の中の“あるモチベーション”によって作られてきました。そのモチベーションこそが、むーさん「らしさ」を形成するアイデンティティと言えます。
それは一体なんでしょうか。
むーさん
手作りおもちゃクリエイター京都府出身。
高校時代の文化祭で、幼少期から好きだったものづくりの楽しさを思い出し、京都府内のデザイン系の専門学校へ進学。卒業後はデザイン会社にグラフィックデザイナーとして就職する。
第一子の産休育休のタイミングでSNSの運用をスタートし、自らの手作りのおもちゃを投稿し始める。
投稿が反響を呼び、おもちゃの作り方の手描きレシピも公開し始める。
現在は会社を退職し、手作りおもちゃクリエイターとして独立。SNSでの投稿はもちろん、Webメディアや雑誌での連載、本の出版などその活動は多岐に渡る。
産休育休中のSNSでの発信を経て、独立。むーさんが、手作りおもちゃクリエイターになるまで
――現在、手作りおもちゃクリエイターとして活躍されているむーさん。まずはおもちゃ作りの原点からお聞かせください。
工作やおもちゃ作りは、物心がついた時からしていたと思います。というのも私は、「既に完成されて売られているおもちゃ」で遊ぶよりも、自分で考えたものをゼロから作る方が好きなこどもだったんです。
そしてその作ったおもちゃを、誰かに共有したり遊んでもらうことも好きでした。
だから小学校4年生の頃には、夏休みに近所のこどもたちを集めて、工作のワークショップのようなものを開催していた記憶がありますね(笑)。
――まるで今の活動のような……?
そうですね! ですが当時はまさか、自分がおもちゃを作ったり、作り方を人に教えることが仕事になるなんて、露にも思っていなかったです。ただ、ものづくりに関してはずっと好きでした。転機となったのが、高校時代の文化祭。
裏方として大道具や演劇で使う小物、背景のイラストなどを私が担当したのですが、それがとても楽しかったんですよね。
私が作ったものがクラスみんなの役に立って、喜んでもらえることに、とてもやりがいを感じました。
その出来事がきっかけで、デザイン系の専門学校へ進学し、デザインを学び、卒業後は京都のデザイン会社に勤めることになったんです。
――手作りおもちゃクリエイターには、どのように転身したのでしょう?
きっかけは産休育休期間中のことでした。こどもが生まれて、生後4カ月の頃におもちゃ作りを始めたんです。それをSNSに投稿するようになって。
最初は他の育児アカウントの方と繋がれたらな、くらいに思っていたんですが、ありがたいことにおもちゃの投稿をアップするたびに、フォロワーが増えていきました。そのうちに「手作りおもちゃの作り方を教えてほしい」というお声もいただくようになり、おもちゃのレシピも公開するようになったんです。
子育てって、どうしても孤独になってしまいがちなのですが……。
こうしてSNSを通して、自分の手作りおもちゃが、誰かの役に立っている実感を得られたことがとても嬉しかったんです。
作る楽しさをもっと発信していきたい! と気持ちを固め、2019年3月、息子が1歳になり保育園に通い出すタイミングで会社を退社して、独立しました。