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43歳で起業し「抹茶マシン」で米進出。塚田英次郎に聞く、40超えての起業に必要なこと

生ボイス

独立・起業における、適正年齢とは何歳なのでしょうか?

体力があり、全てを吸収できる20〜30代、ある程度会社で経験を積み働き盛りの40〜50代、または会社勤めをリタイアした60代以降……。

その答えは、人によってさまざまです。

今回お話を伺ったのは、塚田英次郎さん。塚田さんは大手飲料メーカー・サントリー株式会社で21年間勤め、主に新商品開発を担当した後、米国にてWorld Matcha Inc.を創業後、日本でもWorld Matcha株式会社を創業。

同社では、自宅で茶葉から抹茶を挽き、飲むことのできる抹茶マシン、「CUZEN MATCHA」(空禅抹茶)を製造・販売しています。

43歳で起業をした塚田さんですが、さまざまな経験を積んできた40代以降に独立・起業をするなら、あることが必要だと語ります。それは一体なんでしょうか。

<プロフィール>
塚田英次郎さん
World Matcha Inc. Founder and CEO

東京大学を卒業後、大手飲料メーカーのサントリー株式会社(現サントリーホールディングス株式会社)に入社。
新商品開発を担当し「DAKARA」や「Gokuri」などのヒット商品を生み出す。
その後、米国スタンフォード大学経営大学院(MBA)へ留学し、帰国後「烏龍茶」や「伊右衛門」を担当後「特茶」を開発。

再び渡米し「STONEMILL MATCHA」を立ち上げ、抹茶カフェ事業をスタート。2019年にサントリーを退職し、World Matcha Inc.を米国にて創業。その後100%子会社のWorld Matcha株式会社を日本で設立。

抹茶の飲用機会を増やすため、家庭で抹茶を気軽に楽しめるプロダクト「CUZEN MATCHA -空禅抹茶-」を開発し、2020年より販売。さまざまな賞を受賞し注目を集める。

コーヒー文化の米国に「抹茶」で挑む! 塚田さんが起業した理由

――まずは塚田さんが、現在行っている事業について教えてください。

塚田さん
当社では、家庭で簡単にオーガニック茶葉を挽き、フレッシュ抹茶を楽しめる「CUZEN MATCHA」(空禅抹茶)の開発、販売を行っています。

塚田さん
「CUZEN MATCHA」とは、いわば抹茶版のエスプレッソマシンのようなものですね。

エスプレッソマシンは豆を挽いてコーヒーを抽出しますが、「CUZEN MATCHA」は茶葉を挽いて抹茶粉末にして、簡単に飲むことができます。

――どういった経緯で起業をし、「CUZEN MATCHA」を開発するようになったのでしょうか?

塚田さん
起業の経緯からお話します。

私は大学を卒業後、飲料メーカーのサントリー株式会社(以下、サントリー)で、新商品の開発を担当していました。

「DAKARA」や「Gokuri」などの商品の企画開発を担当した後、米国のスタンフォードに留学し、MBA(経営学修士)を取得しました。

日本とは異なり、スタンフォードでは「起業するのが当たり前」のような雰囲気がありまして……(笑)。

起業を最初に意識したのは、その時だったと思います。

――では帰国後に起業を?

塚田さん
いえ、実際起業したのはもう少し後の話になります。

2006年に日本に戻ってきてから、米国での茶事業の立ち上げを担当した後、日本国内では、「烏龍茶」や「伊右衛門」などのブランドマネジメントをしていました。

起業するにしても、当時は今の「米国で抹茶を広める」というような事業のアイデアも決まっていなかったですし、大学院への留学は、会社のサポートもあったんです。

なので、会社に恩返しができていないまま、退職して起業するのは、ちょっと違うかなと(笑)。

その後2014年に「特茶」がヒットし、だいぶ会社にも貢献できたかなと思ったところで、米国で「抹茶」の流行の兆しがにわかに見え始めていて。

――米国で抹茶……ですか?

塚田さん
はい。米国では日本以上に、コーヒーが愛飲されており、故にカフェインを取りすぎてしまう傾向があるのですよね。

そうした健康課題の観点からか、一部の層に「抹茶」が注目され始めていたんですよね。

そこに事業の可能性があるなと。「特茶」から新規事業開発を検討するプロジェクトチームへ移籍し、米国で「STONEMILL MATCHA」を立ち上げ、抹茶カフェ事業をスタートさせました。

その経験を活かし、2019年にサントリーを退職。World Matcha Inc.を創業しました。

独立・起業に遅すぎることなんてない。「自分らしさ」を大切にしてほしい

――コーヒーが占めていた領域へ、抹茶という新しい選択肢を提案する。そのために抹茶マシンを作って、コーヒーの牙城に挑みにいったんですね。とはいえ「CUZEN MATCHA」のようなプロダクトを、ゼロから作るのは大変だったのではないですか?

塚田さん
本来ならコーヒーメーカーなどの製造経験のある人と一緒に作るのがベターなのかもしれませんが、実は「CUZEN MATCHA」の開発チームには、そうしたプロダクトを開発した人が1人もいなかったんですよ(笑)。

以前、サンフランシスコで、たまたま知り合いになっていたプロダクトデザイナーに声をかけ、その後、そのプロダクトデザイナーからエンジニアを紹介してもらって……という数珠繋ぎのように、人が集まっていきました。

ちなみに僕は、「オーガニックの抹茶リーフ(碾茶)から、ボタン1つでカンタンに、挽きたての抹茶の飲み物をつくる
」という、世の中にないものを作る​​​​​ということで、UI/UXを決めるという役割でした。

「CUZEN MATCHA」に初めて触れるお客さまにも分かりやすいデザインや使い心地に。長く使い続けていただけるよう、手入れなどはなるべくシンプルに。

そういった理想を追い求めていった末に生まれたのが、「CUZEN MATCHA」なんです。

――「抹茶」に可能性があるからといって、起業して、誰も作ったことのないプロダクトをゼロから生み出すのって、相当覚悟が必要ですよね?

塚田さん
まぁ確かに、出資金を募った投資家からは「狂ってるよ」と言われたこともありますね(笑)。

でも僕の中では、起業して「CUZEN MATCHA」を作ったことは、非常に自然だったというか……。

「やったことないからできそうにないな」とは思えなかったんですよ。

こう振り返ると、マシンなんて作ったことのない僕が、「CUZEN MATCHA」というプロダクトを売る会社の社長をしていること自体、奇跡です。

開発チームにこれだけ優秀なメンバーが参画してくれたのも、正直運や縁の要素もありましたし。

でもどうにか、こうして形になりました。後付けかもしれませんが、全ては結局「タイミング」なのかもと思えるんです。

――タイミング、ですか?

塚田さん
はい。

実は前職のサントリー時代、僕がスタンフォードから帰国して、しばらくした2008年頃。

「烏龍茶」や「伊右衛門」といった「お茶」の商品を引っ提げて、サントリーが北米に進出しました。ですがリーマンショックが原因で、その事業は撤退することになってしまって。

その時は会社員としてですが、米国に挑戦しようとする機会があったんですよ。

もし当時僕が、すぐに会社を辞めて起業していたら、また全然違っていたでしょうね。

仮に「抹茶」の事業をしていたとしても、正直全然売れなかったと思います。当時は今ほど、「抹茶」がブームだったわけでもありませんでしたし。

――その後、塚田さんはサントリーに残り「特茶」をはじめとするヒット商品を開発し実績を積みました。一方米国では健康志向の高まり「抹茶」ブームが始まる。つまり、そのタイミングが噛み合ってこその「CUZEN MATCHA」だと。

塚田さん
はい。「烏龍茶」や「伊右衛門」「特茶」、2008年頃の米国への茶事業進出・撤退、そして米国でのカフェ出店など、過去10数年の仕事での経験が全て、今の会社の事業に何らかの形で活きているんですよね。

最近は特に、若くして独立や起業をされる方が増えています。

確かに若さはそれだけで体力面を始め、さまざまなアドバンテージになるものです。

でも僕は、自分が40歳を過ぎて起業をしたことを後悔していません。

むしろ、この年齢と経験を重ねた、今のWorld Matchaだからこそ「自分らしさ」を感じます。

40代、50代での独立・起業が、遅すぎるなんてことはありません。そこに自分らしい経験や物語、ストーリーがあれば、何歳からのスタートでもきっと大丈夫。

そんなふうに僕は思うんです。

米国で、日本人の僕が「抹茶」を売るからこそ、面白い? 自分だけのオリジナリティとユニークネスを探す!

――塚田さんのこれからの展望を教えてください。

塚田さん
まずは「CUZEN MATCHA」を1人でも多くの人に利用していただきたいですね。米国、日本を始め、世界中に抹茶の美味しさと「和」を満たしていけたらいいなと思っています。

そして僕の強みは、長年会社員時代に培った新商品の開発力です。「CUZEN MATCHA」で得た経験やノウハウを活かして、また新たなプロダクトを作っていければと考えています。

――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

塚田さん
独立・起業を考えるなら、ぜひ自分の「オリジナリティ」「ユニークネス」を見つけて、それを大切にしてほしいですね。

例えば僕なら「お茶」をはじめとする飲料の商品開発に長年携わったことや、米国への留学経験、そして抹茶を主軸としたカフェの出店を経験したこと。

「お茶」を開発して売るという仕事をしている中で、日本と米国という2つの国を行き来している人って、そう多くないと思うんですよ。

実際、米国現地のイベントに出展した時も、僕が「お茶」の“本場”である日本出身だからこそ、さまざまな方に耳を傾けていただいているな、という肌感覚が、確かにあって。

そうした自分だけの「オリジナリティ」や「ユニークネス」の中に、自分の事業の強みが隠されているんじゃないかなと。まずはその2つを探してみることから、始めてみてはいかがでしょうか。

取材・文・撮影=内藤 祐介

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アントレスタイルマガジン編集部

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