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子供たちの「生きる力」をはぐくむ、オリジナルの教育機会を提供。 社会起業家からのメッセージ

生ボイス

NPO法人キーパーソン21/川崎市中原区

代表理事 朝山あつこさん(54歳)

1960年、神奈川県生まれ。清泉女子大学卒業後、すぐに結婚。3人の子育てをしながら、2000年、教育NPOとしてキーパーソン21を創設。小・中・高校生世代を対象にしたオリジナルのキャリア教育プログラムを開発し、生き方学習支援を続けている。2006年からは、企業や全国各地のNPO団体との連携事業を展開。企業のCSR教育プログラムのアドバイザー、講演や教員研修なども務める。

「高校には行かない」。中学2年だった長男が発したこの言葉が、朝山あつこを起業に導いた。当時、長男が通っていた中学校では学校崩壊が進んでおり、暴れる子供、逆にひどく無気力な子供たちを目の当たりにした朝山は、大きな危機感を抱いたのである。
 子供たちの成長を引き出し、支える活動を始めたのが2000年。まだ、キャリア教育という言葉もなかった時代だ。手探りのなか、主に小・中・高校生を対象にした「将来の仕事や生き方を考える」ためのオリジナルプログラムを開発し、少しずつ、地道に教育現場で実践を重ねてきた。15年間におよぶ活動で、プログラムを受けた子供は約3万2000名(2015年4月現在)となり、その事業活動は大きな広がりを見せている。「キーパーソン21」の会員数は300名を超え、協賛・協力する企業や団体も着実に増えてきた。
 キーワードは「わくわくエンジン?の発見」。子供の生きる力の源となる“わくわく感”を引き出すために、親や教員、企業人、大学生、シニアなどといった地域の大人たちが力を尽くす――子供たちの未来を応援するという朝山の志は、様々な立場にある大人を巻き込み、社会を動かしつつある。


子供たちの「生きる力」をはぐくむ、オリジナルの教育機会を提供

━ 専業主婦からの起業だとか。

ええ。わけもわからず走り出した感じで。息子は荒れはしなかったけれど、「高校に行ってもしょうがないじゃん」と、つまりは学校に希望を持てなくなっていたのです。報道で“キレる子供”が取り沙汰された頃で、息子の中学校でも、崩壊ぶりに頭を抱えていたんですね。保護者招集もかかったのですが、私には、学校にいる子供たちがとてもつまらなそうに見えた。暴れる子も無気力な子も、エネルギーを向ける先が見つかっていないのだと感じたのです。

 多くの子供たちがそんな状態では、日本の未来は暗いでしょう?自分の個性を知り、自信を持って生きていく力をはぐくむために、今でいうキャリア教育の場が必要だと思いました。現状の学校教育のあり方では、子供たちを自立させることは難しいと直観的に感じたから……。活動を始めたのは、
「助けて!」という、社会に対する母親の叫びでもあったんですよ。

━ キャリア教育プログラムは、どのように開発したのですか?

 徹底的に現場の声にこだわりました。学校の先生や親はもちろん、大学生、企業人など、いろんな立場の有志が集まって「子供のために、今現場で必要なものは何か」を考え抜き、体系化していったのです。子供が楽しめる、チームで取り組む、大人がかかわる。この3つを絶対ルールにして到達したのが、現在の「夢!自分!発見プログラム」。ここにしっかりしたベースがあるので、提供先に合わせたカスタマイズもできるのです。

 プログラムを通じてわくわくエンジン?を見つけた子供たちは、驚くほど目を輝かせます。そこから意欲や自信が生まれ、自分で選択したことにチャレンジするようにもなる。一方で、プログラムを
運営する先生や企業の社員たちも、子供たちのエネルギーに触れて、気持ちに変化が生まれる。終えたあと、生き生きとした表情になる大人も少なくありません。子供だけでなく、実は、大人のキャリア教育にもなっているんです。

━ ご苦労もあったかと……。

 「やめてやる」と思ったこと、いっぱいありますよ(笑)。最初の頃は、出前講座をしたいといろんな学校に相談しても、門前払い。理念を話せば総論OKなんだけど、決まって「教育委員会に話を通してください」と。だから、しばらくは市民会館などでプログラムを実践していました。

 風向きが変わったのは、4、5年たった頃。ニートやフリーターといった言葉が出てきて、教育のありようが社会問題として顕在化し、国が動き始めたのです。その時、私たちは経済産業省のモデル事業を受託し、神奈川県代表としてキャリア教育の基盤構築事業に携わりました。それで行政や教育委員会、学校の門戸も次第に開かれていったのです。

 途中、私のマネジメント力の弱さから「続けるのは無理かも」と思った時期もある。でも、いつも共感してくれる人々がいて、一緒にミッションを達成していくんだという仲間が支えてくれたのです。

━ 活動が広がってきましたね。

 時代が求めているというか、最近では学年まるごと、学校まるごとへのキャリア教育というオーダーも出てきました。また、個別進路サポートプログラムを開発し、個人向けの授業もスタートさせています。どの事業においても大切にしているのは、子供たちに寄り添いながら、一緒に、未来に希望を見いだしていくこと。

今、プログラムを支柱に展開していますけど、本当は、これが“社会の仕組み”として機能すべきだと思うのです。学校・教育改革は難題ではありますが、仕組みづくりに貢献できたといえるまで、私は力の限り走り続けたいですね。


取材・文/内田丘子 撮影/押山智良

※本記事は取材当時の情報を基にしており、団体名、サービス名、法令等が現在と異なる可能性があります。しかし、取材時の想いや状況を正確に伝えるため、内容をそのまま掲載しています。ご了承ください。

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