起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。
経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第84回・ホテルの棚の秘密
いきなりですが、クイズです!
クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある
新型コロナウイルスの影響により、大きく売り上げが減ってしまったり、苦境に立たされる業界が後を絶ちません。「Go Toキャンペーン」のように、打撃を受けた業界を救済するための施策も少しずつですが始まっていますよね。
しかし一方では、コロナウイルスの影響が良い方に作用した業界もあります。多くの人が在宅勤務や巣ごもりを余儀なくされたことで、新たな需要が掘り起こされ、売り上げが伸びたのです。
それでは解説します!
代表的なものが、在宅ワークには欠かせない「パソコン」や「ウェブカメラ」です。
「スマホがあるから家にはパソコンを置いていない」という人も多かったようですが、コロナを機に自宅に仕事用のパソコンを購入したという話はあちこちで聞きました。
加えて、ウェブ会議で必要だからとウェブカメラやヘッドセットを新たに購入した人もたくさんいたはずです。
意外なところでは、「テント」の需要が高まりました。家族みんなが家にいる状態で集中できるワークスペースを確保しようと考えて、一人分の作業スペースが作れるテントを活用した人が多かったのです。
また、外出ができず旅行にも行けなかったことから、非日常を楽しむためのものとしてもテントには注目が集まりました。子どもたちが入って遊ぶだけでなく、その中で寝たりするわけですね。
ワークスペースの確保という点では、ベッドルームにも置けるような小型の机も売れています。さらには、椅子を座り心地の良いものに買い換えるといった人も多かったようです。
これらは全て、家でしっかり働くための設備投資ではありますが、このように一部の好調な業界があることがお分かりいただけたと思います。
さて、今回クイズに取り上げたのは、「100万円を超えるくらいまで値段が高騰しているのに、それでも売れているもの」です。キーワードは同じく「在宅」なのですが、一体どんなものだと思いますか?
気に入ったら、プライスレス!
答えをお伝えする前に、ヒントを3つほど出してみます。
(1)リモートワークが増えたことで、職場に行けなくなって「寂しさ」を感じる人が増えているので、需要が高まっている
(2)「需要は高まっているが、供給が追いついていない」という、値段が上がりやすい典型的な状況にあるもの
(3)気に入ってしまったら、プライスレスになってしまう
お分かりになったでしょうか? 答えは「ペット」なんです。
これまでは家にいる時間が少ないために動物を飼うことを躊躇していた人が、在宅勤務が増えるのを機に飼い始めようと考えたのが、売り上げを伸ばした大きな理由でしょう。
ただ、売れるからといって急に供給量を増やすわけにはいきませんから、値段はどうしても高くなっていきます。コロナ以前に50万円から60万円だった血統書付きの犬が、今だと100万円以上するなんてこともザラで、それだけ値段が上がっても買う人がいるということです。
20万円から30万円の価格帯の犬や猫も、今や50万円程度になっているようですから、ほぼ倍近くまで値上がりしている状態ですね。
ペット業界そのものは、少子化や高齢化社会という時代背景や、単身世帯が増えているという昨今の状況から、成長が見込める業界の1つだといわれ続けていました。それが思わぬかたちで加速したというふうにもとれるかもしれませんね。
いずれにしても、ペット業界は今後も注目が必要です。
意外とある、コロナ渦で伸びているビジネス
コロナウイルスで、みんな大変な状況にあることは間違いありません。しかし、目のつけどころ次第で、伸びているビジネスも間違いなくあります。
いろんなニュースをチェックしたり、周りの人の話を聞いてみたりして、「需要が伸びているもの」の情報を集める習慣をつけてみてください。もしかしたら、自分の周りにも思わぬものがあるかもしれませんよ。
最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「ペット」でした。ちなみに、ペット需要が高まっているのは日本に限った話ではなく、世界中でそうした動きがあるようです。入荷待ちの人も多いようですから、ブリーダーにとっても稼ぎ時ということですね。
構成:志村 江