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福利厚生費を経費にできる条件は?個人事業主が知るべきポイントを解説

独立ノウハウ・お役立ち

大企業の場合、会社の保養所や催し、住宅手当など福利厚生制度が充実していることがあります。福利厚生制度を利用することで、従業員の定着、労働意欲の向上などを図っています。

では、個人事業主でも福利厚生費を経費計上することはできるのでしょうか。また、個人事業の場合、従業員は専従者のみという場合もあります。事業を手伝ってくれている家族のために、できることなら福利厚生を導入したいものですが、専従者にも福利厚生を提供できるのでしょうか。

今回は、個人事業での福利厚生制度と個人事業主および専従者に福利厚生が提供できるかどうかについてご紹介します。

福利厚生費とは

従業員の生活と労働意欲を向上させるために会社が拠出する費用を福利厚生費といいます。

これは従業員の健康・衛生・慰安・慶弔などに支払われる費用を指し、「法定福利費」と「法定外福利費」の2つで構成されています。

「法定福利費」とは、法律で義務付けられた費用のことで、社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料、介護保険料など)や労働保険(労災保険や雇用保険など)の事業主負担分をいいます。

「法定外福利費」とは、法律で義務付けられていない費用のことで、対象が明確でなく、会社が任意で定めることができます。例えば、交通費・住宅手当・レクリエーション費用・食事手当・慶弔見舞金・健康診断料など、会社が従業員の福祉を目的に支払う費用をいいます。

福利厚生費は役員・従業員を問わず全ての社員に平等に支給されなければならず、また社会通念上、妥当と認められる金額でなければなりません。

参照:No.5261 交際費等と福利厚生費との区分|国税庁

個人事業主でも福利厚生費を経費計上できるのか

福利厚生制度と聞くと法人のイメージをする方も多いかもしれません。しかし、条件が満たされていれば、個人事業主でも福利厚生制度を利用し、福利厚生費を経費計上することができます。“個人”事業主といっても、必ずしも事業主が1人で事業を営んでいるわけではありません。個人事業主の経営方法は、大きく「単独経営」「家族経営」「複数経営」の3つに分けられます。

単独経営:株式会社などの法人を設立しないで、事業主が1人で事業を営む経営方法
家族経営:株式会社などの法人を設立しないで、事業主と専従者で事業を営む経営方法
複数経営:株式会社などの法人を設立しないで、事業主と雇用した従業員が複数人で事業を営む経営方法

個人事業主が福利厚生費を経費計上できる条件は、前提として1人でも専従者以外の従業員を雇っていることです。単独経営で事業や業務を事業主が1人で行っていたり、家族経営だったりする場合、福利厚生の経費計上はほとんどのケースで認められません。

福利厚生費には明確な定義がないため、議論が分かれるところです。しかし、基本的に福利厚生制度とは、従業員の福祉を目的としているため、従業員がいて役員・従業員が平等に利用できる内容で、一般的に妥当な金額であれば福利厚生費と認められると考えて良いでしょう。

では、単独経営や家族経営をしていると、なぜ福利厚生を経費計上できないのかを詳しく解説します。

単独経営の場合

基本的に、福利厚生とは従業員に対して提供するものです。したがって、事業主が単独で事業を営んでいる場合は、いかなる費用も福利厚生費として経費計上することは認められていません。

福利厚生費について、法や税規定の区分は明確になっていない部分は多く、常識的倫理に基づいて税理士によって判断されているのが現状です。現状での一般的な判断としては、単独経営の個人事業主は法定外福利厚生の利用はできないとされています。

家族経営の場合

事業主と生計をともにする配偶者や15歳以上の親族と事業を営んでいるケースを家族経営といいます。このようなケースにおいても、福利厚生費としての経費計上はいかなる内容についても認められていません。

福利厚生費として経費を計上するためには、「専従者以外」の従業員の存在を要します。事業主と専従者、専従者以外の従業員で事業を営んでいる場合は、家族以外の人を雇っているため福利厚生費として経費が計上できます。

また、このような経営方法の元では従業員と同様の福利厚生を専従者も利用でき、それらの費用は福利厚生費として経費計上ができるのです。

しかし、従業員がおらず個人事業主と専従者だけの場合、福利厚生費を経費計上することはできません。前述のとおり、専従者以外の従業員がいる場合で、個人事業主・専従者・従業員が平等に利用できるものあれば、福利厚生費として認められます。

例えば、従業員の歓迎会を行うため個人事業主・専従者・従業員で食事会を行い、その費用を全て負担した場合は福利厚生費となります。しかし個人事業主と専従者だけが行う食事会の場合、福利厚生費にすることは難しく、単なる生活費とみなされてしまいます。

他にも、スポーツクラブなどの会費を個人事業主分だけ拠出する場合は福利厚生費として認められませんが、全ての従業員分を拠出する場合は福利厚生費と認められます。

個人事業主が福利厚生費を利用できる条件とは?メリットや注意点も

個人事業主が福利厚生を導入するメリット5選

いってしまえば費用が余計にかかる福利厚生ですが、個人事業主として経営をしていく中で福利厚生制度を導入するのには、主に以下の5つのメリットがあります。

それぞれのメリットについて、もう少し詳しく解説します。

節税対策ができる

個人事業主が福利厚生制度を導入する1つ目のメリットは、節税対策ができる点です。

福利厚生費は経費として計上でき、一定の範囲に限っては税金がかかりません。そのため、個人事業主としては事業税や法人税など税金を節税できるのです。また、福利厚生費として計上すれば従業員に所得税がかかりません。そのため、従業員の収入が減ることもありません。

このように税金の負担を減らせるため、福利厚生制度の導入には個人事業主と従業員の両方に導入するメリットがあります。

人材の確保につながる

個人事業主が福利厚生制度を導入する2つ目のメリットは、人材の確保につながる点です。

多くの会社や調査機関では、働く人を対象に会社に求めるものについて調査を行っています。調査結果の上位には、「福利厚生費が充実している」という回答がランクインしていることが多いです。それだけ、働く人にとって福利厚生に対する関心は高く、福利厚生の制度が充実した会社で働きたいと思っていることがわかるのではないでしょうか。

つまり、福利厚生制度を導入し充実させることは、人材の確保に直接的につながります。企業に比べて人員確保が厳しい個人事業主の方でも、福利厚生を充実させることで興味を持ってもらえて人材の確保がしやすくなるでしょう。

会社のイメージアップにつながる

個人事業主が福利厚生制度を導入する3つ目のメリットは、会社のイメージアップにつながる点です。個人事業主の元で働く従業員の関心が高いことは、そのまま会社のイメージにつながります。

例えば、「あの会社の製品だから安心」とブランドイメージの良い会社の製品を利用する方もいるでしょう。このように、イメージは時に売り上げにも影響を与えます。そのため「イメージ」は会社をブランディングするにあたり、とても重要なものです。これは、個人事業主であっても同じことがいえます。福利厚生を充実させることでイメージアップができ、売り上げなど業績アップにも期待ができます。

従業員の健康的な生活を支援できる

個人事業主が福利厚生制度を導入する4つ目のメリットは、従業員の健康的な生活を支援できる点です。

従業員とは、どんなに小さな職場であったとしても業務に取り組み、利益を生み出すことに貢献してくれる大切な存在です。事業主にとって、そんな大切な従業員のために働きやすい環境づくりに取り組むことは重要です。

福利厚生制度を導入することは、給与とは別の形で従業員の健康や余暇を充実させるなど、従業員の健康的な生活を支援することができます。導入した福利厚生制度を従業員だけでなく、専従者も利用できるようにすれば、さらに信頼関係の構築や従業員満足度の向上に寄与できるでしょう。

従業員の意欲向上が図れる

個人事業主が福利厚生制度を導入する5つ目のメリットは、従業員の意欲向上が図れる点です。

福利厚生制度の導入は、従業員に対する事業主の期待や配慮の現れです。それが従業員に伝われば、より意欲的に仕事に取り組んでもらえる期待ができます。

最近の福利厚生の制度には、従業員の健康面に配慮したものが増えてきています。福利厚生制度を提供することによって得られるのは、健康や能力向上だけに限りません。「制度がある」こと自体が、従業員にとっての精神衛生面上、良い影響を与えるでしょう。

福利厚生費として経費計上できるもの

「よし、福利厚生制度を導入しよう!」と意気込んでも、どのような種類のサービスを福利厚生として利用できるのかを知らないと手が付けられません。福利厚生として利用できるサービスには、以下のような種類が挙げられます。

ここで紹介する福利厚生の項目は全て従業員のためのものです。個人事業主本人や専従者ではなく、従業員に活用されることを前提として確認していきましょう。

飲食関連

  • 朝食
  • 昼食
  • 残業夕食
  • 夜食
  • お茶やコーヒー
  • お菓子 などの提供

住宅関連

  • 住宅手当
  • 家賃補助
  • 持ち家ローン補助
  • 近隣居住手当 など

慶弔関係

  • 従業員の親族に不幸があった時の弔事・香典
  • 本人の結婚・出産・誕生日のお祝い
  • 病気見舞金
  • 傷病見舞金 など

医療/健康

  • 常備医薬品の購入
  • 健康診断(入社時、定期)
  • 人間ドッグ
  • 予防接種 など

文化・体育・レクリエーションの開催

  • サークル活動
  • 社員旅行
  • 運動会
  • 飲み会
  • 食事会
  • 創業記念品などの贈答品購入 など

施設利用

  • 社員食堂
  • 社宅
  • 保養所
  • スポーツ・レジャー施設
  • リラクゼーション施設 など

財産形成

  • 財形貯蓄
  • 持ち株制度
  • 退職金 など

自己啓発

  • 資格取得
  • 自己啓発
  • 書籍購入
  • セミナー参加 など

個人事業主の湿布代は経費にできる?知っておくべき経費のポイント

福利厚生費を経費計上する際の勘定項目

福利厚生として利用できるサービスをいくつか紹介しました。これらの福利厚生費は、全て「福利厚生費」という勘定科目で経費計上をします。福利厚生費として計上するための限度や要件は、項目ごとに条件が定められています。要件を満たさない場合には、他の勘定科目に振り分けなければいけないので注意してください。

福利厚生費として計上できる条件は、基本的に以下となります。

  • 社会通念上、常識と考えられる範囲の金額
  • 全ての従業員を対象としている

明確に限度額などが示されている場合もあるので、経費計上する際には事前に確認しておくことをおすすめします。

個人事業主の予防接種費用などについては、福利厚生費とするには条件があります。

個人事業主の予防接種費用は経費になる?福利厚生費の対象となる条件

接待交際費や会議費との違い

福利厚生費と接待交際費、会議費の区分について、明確な規定がなく混同される方も多いことでしょう。

国税庁によると、福利厚生費は「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行などのために通常要する費用」としています。一方、交際費は「得意先や仕入れ先その他事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答などの行為のために支出する費用」としています。

これに対し、会議費とは会議に伴い支出した費用をいい、会議室代・資料代・会議時の飲み物代や弁当代などが含まれます。

参照:No.5261 交際費等と福利厚生費との区分|国税庁

まとめ

今回は、個人事業主でも福利厚生費の経費計上は可能かどうか、専従者に提供した福利厚生費は経費計上できるのかについてご紹介しました。

福利厚生費は基本的に従業員の慰安や健康促進、生活向上のための制度であるため、個人事業主1人の事業や個人事業主と専従者だけの事業の場合は福利厚生を経費計上することが難しいようです。もちろん、個人事業主1人であっても福利厚生制度を設置し利用することはできますが、“福利厚生費”として経費にすることはできません。

しかし、従業員がいる場合で従業員全員が同じ福利厚生制度を利用できる時、“福利厚生費”をして経費にすることができます。

ただし、社会通念上一般的な金額を上限とされておりますので、経費にできるからといって使いすぎないよう注意してください。

<監修>
村上 年範さん/クレディ・テック株式会社 代表取締役
金融商品や不動産を活用した経営コンサルティングを得意とし、前職のプルデンシャル生命保険株式会社在籍時より担当したクライアント数は年間200社にのぼる。2013年クレディテック株式会社設立。金融と不動産を軸とし、税務・法務の観点から知識提供を行う、資産形成および財務のコンサルティングサービスを展開。海外不動産についても強いコネクションと発信力を持ち、これまでの取扱高は150MM以上。現在、「幻冬舎GOLD ONLINE」にて、幅広い資産形成ノウハウを連載中。【村上年範 運営】金融・不動産にまつわるYoutubeチャンネル
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<文/ちはる>

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