他人の評価って、気になりますか?
「インスタ映え」や「エゴサーチ」という言葉があるように、自分が周りの人にどう思われているかを気にしてしまう人が多い、現代社会。
しかし、今回お話を伺った造形作家の橘川匠さんは「他者からの評価に固執することはない」と、言います。
大学を中退して専門学校生、パソコン教室講師、派遣社員など様々な経験をしてきた橘川さん。現在は造形作家として、誰も思いつかないようなユニークな作品をデザインフェスタやネット通販に出品することで生計を立てています。
独特な視点と発想から生まれた作品には、根強い人気があります。
しかし、独特な作品を作ってきたからこそ、様々な評価もされてきました。
今回は、そんな橘川さんの半生を振り返るとともに、「評価されること」について伺いました。
橘川匠(きつかわ・たくみ)
造形作家。
「くだらないもの工房」店主としてユニークな作品を制作し、ネットで販売。
ロールプレイングゲームなどでよく使われる、セーブポイントをイメージした『卓上セーブポイント』をメインに、『将棋コンバットシリーズ』や『死亡フラグ』といった、見た人が思わず「フフっと」なるような“もの”を造ることを心がけている。
ネット通販だけでなく、デザインフェスタに出展したりワークショップや個展を開いたりと、精力的に活動している。
「ふざけたことに真剣になる」を掲げ、日々新しい“もの”の制作に奮闘中。
※インタビュー記事のため、多少固い表現を使っています。
世間の常識なんて気にしない! 橘川匠さんが“もの”づくりでの独立を決断した理由
ー橘川さんは現在、「くだらないもの」をコンセプトに“もの”づくりをされているようですが、このようなお仕事をされるようになった経緯を教えてください。
工業系の大学に入学後、様々なアルバイトを経験しました。その後Web系やゲーム制作会社に就職しました。
1つのキャリアである程度のスキルを得られたら次の職場へ、というスタンスで仕事をしていたので、若い頃は様々な職を経験していましたね。
いずれも会社員として仕事をしていたのですが、正直自分の中で、しっくりきていなかったところも多々ありました。
ー会社員のどういった点が肌に合わなかったのでしょう?
どこの職場で働く時も、自分の中である程度明確に「目的意識」がありました。
例えばゲーム制作会社なら「ゲームを作ること」、パソコン教室なら「PCスキルを生徒さんに教えること」といった具合です。
しかし会社にいると、その目的に沿わない仕事も多くこなさなければならないシーンがありました。
ー例えばどのような仕事ですか?
私はパソコン教室でPCスキルを教えていた時「生徒さんに教えることが好き」で、仕事をしていました。
しかしそこそこキャリアを積んでいくと、現場ではなく教室長として、経営のことも考えなければいけなくなってしまったんです。
もうスキルを教えるどころじゃなくなって、とても大変でしたね。
ーなるほど。とはいえ会社に頼らず、自分の力で生活していくことは並大抵のことではないと思います。
そうですね。
特に私たちが就職氷河期世代ということもあり、周りの人はいわゆる「安定志向」の人が多かったように思いました。
しかし私は、もともと会社員での仕事に疑問を感じていたこと、そして周りの人が「安定志向」だからこそ、自分のやりたいこと・やりたい仕事に挑戦したいと思うようになり、独立を決意しました。
ーでは派遣社員の後、独立して現在のお仕事をされるようになったのですね。
そうですね。縁があって会社員時代からデザインフェスタに“もの”を造って出展していたので、「何か作って、生計を立てる」という現在のビジネスモデルのイメージはできていました。
特にいまでも作っている『卓上セーブポイント』は、デザインフェスタに出展した頃から評判が良かったです。
ーその『卓上セーブポイント』を造ろうと思ったきっかけはなんでしょうか。
たくさんの出展物があるデザインフェスタでお客さまの注目を集めるには、「目立った」“もの”じゃなきゃいけないと気づきました。
なので「光って目立つものを造ってみよう!」と思いついたのが『卓上セーブポイント』だったのです。それがヒットしました。
この作品に限らずですが、誰も思いつかないようなことを作品として表現できるよう、心がけています。