【この記事で学べること】
- キッチンカーのフランチャイズで陥りがちな失敗パターン
- 失敗を回避し、成功を掴むための具体的な対策
- 開業資金の目安や必要な資格、具体的な開業ステップ
キッチンカーで開業するなら、実店舗より初期費用を抑えやすく、本部のノウハウを活用できるフランチャイズが魅力的な選択肢です。
しかし、そのメリットだけを見て安易にフランチャイズ加盟を決めると、「こんなはずではなかった」と後悔する可能性があります。
本記事では、キッチンカーのフランチャイズ開業で陥りがちな失敗事例を分析し、その原因と対策を徹底解説します。
未経験からでも着実に成功するために、ぜひ最後までご覧ください。
そもそもフランチャイズとは?仕組みを解説
フランチャイズ(FC)とは、加盟店(フランチャイジー)が本部(フランチャイザー)と契約を結び、そのブランド名や商品、経営ノウハウなどを利用して事業をおこなうビジネスモデルです。
自力でゼロから開業する場合と異なり、本部の成功事例やサポートを活用できるため、未経験からでも短期間で事業を軌道に乗せやすいのが特徴です。
フランチャイズビジネスの市場規模やメリット・デメリットなど、基本的なことから知りたい方は、まずこちらの記事を読んでみてください。
関連記事:https://entrenet.jp/magazine/25755/
キッチンカー業界の現状と市場動向
近年、キッチンカー業界は著しい成長を見せています。
コロナ禍を経てテイクアウト需要が定着したことに加え、イベントやランチ出店の機会も増加しており、都市部・地方を問わずニーズが高まっているのです。
また、市場では定番メニューのキッチンカーに加えて、SNS映えするユニークな商品や、ヴィーガン・オーガニックなどの特定のコンセプトを持つキッチンカーが人気を集める傾向にあります。
他店との差別化を図り、独自の価値を提供できるかが成功の鍵だと言えます。
フランチャイズに加盟してキッチンカーを始めるメリット・デメリット
フランチャイズ加盟を検討するなら、メリットとデメリットの両方を正しく理解し、自身のリスク許容度と照らし合わせることが不可欠です。
本項目では、フランチャイズに加盟してキッチンカーを始めるメリットとデメリットを解説します。
フランチャイズに加盟してキッチンカーを始めるメリット
メリットは、主に以下の3点です。
初期投資の抑制
フランチャイズでは、本部が開業に必要なキッチンカーや設備を一括で提供してくれる場合が多く、個人で一から揃えるよりも初期投資を抑えることができます。
また、仕入れ先の確保やメニュー開発の手間も省けるため、コストと時間の両面で効率的です。
経営ノウハウの提供
フランチャイズに加盟すると、本部が培ってきた成功ノウハウの共有や研修を受けられるため、飲食業や経営が未経験の方でも安心してキッチンカーを始められます。
効果的な集客方法やオペレーションなど、具体的なアドバイスを積極的に求めましょう。
ブランド力の活用
知名度のあるブランドを使えるため、開業初日から一定の集客が期待できます。
ブランドが持つ信頼性を活かすことで、スムーズにスタートを切れる点は大きな強みです。
フランチャイズに加盟してキッチンカーを始めるデメリット
続いて、デメリットは以下の3点です。
ロイヤリティの支払い
フランチャイズ契約では、売上の一部をロイヤリティとして本部に支払う必要があります。
これは固定費として経営を圧迫する可能性があり、収益性に直接影響します。
なので、事前にロイヤリティの割合や支払い方法を十分に確認しておきましょう。
自由度の制限
メニュー、価格、デザイン、出店場所など、多くのことを本部の規定に合わせる必要があります。
独自のアイデアを活かしたくても、ブランドイメージを維持するために制限がかかるケースがほとんどです。
本部への依存
本部の経営状況やブランドイメージが自店の業績に直結します。
本部が不祥事を起こしたり、経営方針が変わったりすると、加盟店もその影響を受けざるを得ません。自分の力だけでは解決できない問題が発生するリスクがあります。
キッチンカーのフランチャイズで失敗するパターン
フランチャイズは、加盟さえすれば安泰というわけではありません。
ここでは、キッチンカー経営で陥りがちな失敗パターンを解説します。
キッチンカーのフランチャイズ本部の選び方
キッチンカービジネスを扱っているフランチャイズ本部は、提供するフードやドリンクの種類のみならず、お店のコンセプトもさまざまです。
また、フランチャイズ本部との契約内容も大きく異なります。
なので、たとえ「加盟金0円」などの魅力的な言葉を目にしてとしても、それだけで判断するのは危険です。その分、研修費や車両費が高額だったり、月々のロイヤリティが高率だったりするケースがあります。
また、開業後のサポート体制が名ばかりで、いざという時に頼れないという事態も起こり得ます。
本部を選ぶ際は、表面的な条件だけでなく、サポート体制の実態や契約内容の詳細までしっかり見極めましょう。
運転資金不足
キッチンカー事業失敗の理由で最も多いのが「運転資金不足」です。
事業を始める際は、開業資金とは別に事業が軌道に乗るまでの運転資金と、オーナー自身の生活費を最低でも半年〜1年分は用意しておく必要があります。
キッチンカーは実店舗より固定費を抑えられますが、車両費、食材費、出店料、ガソリン代、保険料など、日々多くの経費がかかります。特に、売上は天候に大きく左右されるため、悪天候が続けば収入がゼロになる日も珍しくありません。
資金計画に余裕がないと、売上が想定を下回った際にすぐに立ち行かなくなり、廃業を余儀なくされるでしょう。
関連記事:https://entrenet.jp/magazine/13980/
計画不足
「本部に加盟したから大丈夫」と安易に考え、事業計画を練ることを怠ると、失敗につながります。
本部はあくまでビジネスパートナーであり、経営の最終責任はオーナー自身にあります。
「どのエリアで、誰に何を売りたいのか」「収益目標と、その達成計画は現実的か」「許認可の申請はいつごろ終わらせるか」など、事前の計画はオーナー自身でしっかりと立てておきましょう。
計画が甘いままでは、思うように売上が伸びなかった際に、何を改善すべきか分からず行き詰まってしまいます。
本部のアドバイスを参考にしつつも、「自分の事業である」という当事者意識を持って計画を立てましょう。
客単価が低くて儲からない
キッチンカーは客単価が1,000円以下になることも多く、薄利多売のビジネスモデルになりがちです。「想定より客数が伸びず、利益が全く残らない」という失敗は後を絶ちません。
思うように売上が立たない日でも、ロイヤリティや食材費、人件費といった支払いは発生します。客単価の低さと売上の不安定さをあらかじめ理解し、客単価を上げる工夫や、悪天候時でも売上を確保する対策を考えておくことが重要です。
体調管理が大変
キッチンカーの労働環境は、夏は酷暑、冬は極寒と非常に過酷です。また、長時間の立ち仕事や狭いスペースでの作業は、身体に大きな負担をかけます。特にオーナー1人で運営する場合、休憩時間を確保することさえ難しいのが現実です。
体調を崩して休業すれば、その間の収入はゼロになります。自分の身体が最大の資本であることを自覚し、無理のないスケジュール管理と健康維持を徹底しましょう。
フランチャイズ本部任せにしすぎて経営方針がない
「本部の言う通りにやれば儲かるはず」という他人任せの姿勢では、事業を成功させることはできません。接客や調理、日々の改善活動を行うのはオーナー自身です。
本部から提供されるのはあくまで成功の「型」であり、それを自分のエリアや顧客に合わせてどう活かすかはオーナーの腕にかかっています。
「どうすればもっと売れるか」「お客様に喜んでもらうには何ができるか」を常に考え、主体的に行動する姿勢がなければ、厳しい競争を勝ち抜くことはできないでしょう。
キッチンカー開業に必要な資金の目安
キッチンカーの開業には、大きく分けて「初期費用(開業資金)」と「運転資金」の2つが必要です。
具体的な金額はフランチャイズ本部や車両の仕様によって大きく異なりますが、一般的な目安を解説します。
初期費用(開業資金)
開業時に一度だけかかる費用です。総額で250万円~500万円程度が目安となります。
- 加盟金:0円~100万円
- ブランドの使用権やノウハウ提供の対価として本部に支払う費用
- 車両製作費:200万円~400万円
- キッチンカーの購入・改造費用。
中古車やリースを利用することで費用を抑えることも可能
- キッチンカーの購入・改造費用。
- 研修費:0円~30万円
- 調理や経営に関する研修を受けるための費用。加盟金に含まれる場合あり
- その他:約20万円
- 調理器具、最初の食材仕入れ、許認可の取得費用など
運転資金
事業を継続していくために毎月かかる費用です。最低でも半年分(100万円~150万円程度)は確保しておきましょう。
費用の例は以下の通りです。
- ロイヤリティ:売上の3~10% or 固定額
- 本部に毎月支払う対価。算出方法は必ず契約前に確認が必須
- 食材費:売上の30~40%
- 出店料:1日数千円~数万円
- 駐車場代、ガソリン代、保険料、販促費など
キッチンカー開業に必要な資格と許可
キッチンカーで移動販売をおこなうには、以下の資格と許可が必須です。
これらの資格や免許は、取得まで時間がかかるものもあります。必ず事業を開始する日から逆算して、無理なく取得するようにしましょう。
フランチャイズでキッチンカーを開業するまでの流れ
フランチャイズに加盟してから実際に営業を開始するまでの、一般的なステップを紹介します。
フランチャイズ本部選び・説明会参加
まずは複数のフランチャイズ本部の資料を請求し、比較検討しましょう。
気になる本部が見つかったら、説明会に参加して事業内容やサポート体制について詳しい話を聞きにいきます。
加盟申込み・契約
加盟を決めたら、申込書を提出します。
その後、審査を経て、契約内容を十分に確認した上でフランチャイズ契約を締結します。
契約書で不明な点があれば、必ずその場で質問・解消しましょう。
研修・キッチンカーの準備
本部の研修プログラムに参加し、調理技術や経営ノウハウを学びます。
並行して、本部の仕様に基づいたキッチンカーの製作・準備を進めます。
資格・営業許可の取得
「食品衛生責任者」の資格を取得し、出店エリアを管轄する保健所で営業許可を申請します。
許可が下りるまでには数週間かかる場合があるため、早めに準備を始めましょう。
開業
全ての準備が整ったら、いよいよ開業です。
本部と相談しながら出店場所を確保し、営業をスタートさせます。
キッチンカーのフランチャイズで失敗しないために
本項目では、キッチンカーのフランチャイズで失敗しないための具体的な対策を3つ紹介します。
出店時の人流や客層を考えて商品を提供する
キッチンカーの強みは、顧客がいる場所に移動できることです。
このメリットを最大限に活かすために、出店場所の人流、時間帯、客層を徹底的に分析し、ニーズに合った商品を提供しましょう。
たとえば、平日のオフィス街なら「安くて早い」ランチメニュー、休日の公園ならファミリー向けのシェアできる商品や子供が喜ぶメニューが求められます。
競合のキッチンカーを調査し、自店の強みをどう打ち出すか戦略を立てることも重要です。
客単価を上げる
利益率を高めるには、客単価の向上が不可欠です。
看板商品に加えて、利益率の高いサイドメニューやドリンクとのセット販売を強化しましょう。
「チーズ増量」「アボカドトッピング」など、追加料金で満足度を高める工夫も有効です。
また、その場で食べるだけでなく、お土産として持ち帰れる冷凍商品や焼き菓子を用意するのも良い方法です。本部のルール内で、どのような工夫ができるか常に考え、提案してみましょう。
まずは副業からリスクヘッジして始める
いきなり専業で始めることに不安があるなら、まずは週末限定の副業としてスタートするのも賢明な選択です。
本業の収入があれば、「絶対に稼がなければ」という精神的なプレッシャーから解放され、落ち着いて経営経験を積むことができます。
週末のイベント出店から始め、少しずつ固定ファンを掴み、事業が軌道に乗ったタイミングで本業に切り替えることで、失敗のリスクを大幅に下げられます。
キッチンカーのフランチャイズ成功はフランチャイズ本部選びがカギ
本記事で紹介した通り、キッチンカーのフランチャイズビジネスを始めてみても少なからず失敗してしまうパターンはあります。
フランチャイズ本部との契約内容や条件は、それぞれで大きく異なります。自分の考える独立スタイルに合っているか、無理な資金計画になっていないか、フランチャイズ本部のサポートはどれくらい受けられるのかについて事前にしっかり確認しておきましょう。
フランチャイズとはいえ、加盟店オーナーの熱意や意欲、アイデアや創意工夫次第で売り上げと利益は大きく左右されます。
経営者としての自覚を持ち、最適なフランチャイズ本部をパートナーに選び、キッチンカーのビジネスモデルを成功に近づけましょう。
<文/北川美智子>