大学と同時にPASSPO☆を卒業した槙田紗子さんは、「アルバイトをしてみたら、あまりにも仕事ができなかったので、普通の生き方を“諦めて”大変なことを承知で振付師を極めようと決めた」という。超ときめき♡宣伝部の「最上級にかわいいの!」やFRUITS ZIPPERの「わたしの一番かわいいところ」など、次々とバズを生みだす売れっ子振付師となった今もなお、叶えたい夢があるそう。
“自分のやりたいことは、何かからの逃げ道としてではなく本心かどうか見極めることが大事”“ストレスがあって当たり前と思わずに幸せを掴みにいったらいい”という槙田さんは、フランクで正直で、何よりポジティブで、ずっとお話をしていたくなるような魅力溢れる方でした。
“手に職”を求めライブ演出もできる振付師の道を選ぶ
―振付師のお仕事を選ばれたのはどうしてですか?
本当は演出家になりたかったんです。振付師の方がアイドルのライブ演出をしていたので、振付師を極めたらライブ演出ができるかもしれないと思って振付師になろうと思いました。
もともとは出役になりたくて、15歳から6年間ぐらいアイドルをしていたんですけど、活動の後半は、衣装デザイン、作詞などをメンバーそれぞれが担当をして、みんなでセルフプロデュースするようなかたちだったんです。自分は、アイドル好きで色々なアイドルのライブを見て勉強していたんで、PASSPO☆のワンマンライブでも「このブロックだけは好きに演出していいよ」って任せてもらうところから始まって、徐々にライブ演出に携わらせてもらえるようになったんです。
小さい頃からダンスを習っていてダンス経験者だったので、ライブ演出と同時に「PASSPO☆の楽曲で、振り付けもやってみたら?」と、チャンスをいただいて、楽しくやっていたんです。でも、「いつまでアイドルを続けるんだろう」と考え始めたら、自分がステージに立って表現することより、誰かに自分の考えたことを体現してもらう方が、満たされるなって思ったんです。ステージに立って、お客さんに見ていただくのも、すごく楽しかったんですけど、自分より華がある子をたくさん見てきたので、自分がアイドルの世界で、一番になるのは難しいだろうな、それよりも手に職をつけたいなと思ったんですよね。クリエイティブな仕事は、極めれば揺るぎないものになるから、自分にも別の道はあるかもしれないと思って、自然と振付師にシフトしていったような感じでした。
本当はライブ演出がやりたかったんですけど、演出家になる方法がわかんなかったんですよね。
PASSPO☆のライブも演出家の方はいなくて、振付師の先生と舞台監督さん、事務所の社長たちがテーマやセットリストの案を出してくれて、自分たちも意見を言うというやり方だったので、演出家の知り合いはいなかったし、演出家になる方法も分かりませんでした。でも、K-POPが日本で流行り始めた頃、私はいちファンとして、少女時代の振付師の仲宗根梨乃さんが、少女時代のライブ演出を手掛けていたことを知っていたし、PASSPO☆の振付師の先生も、ライブ演出に携わっていたので「仲宗根さんのように振付師を極めれば、ライブ演出もできるんだ!じゃあ振付師になろう」って思ったんです。
アイドルとして自分ができることは、やりきったと思ったタイミングで、事務所の人たちにも、振り付けや、演出など作り手側の仕事をしていきたいことを伝えてアイドルを卒業することになりました。ありがたいことに、当時所属していた事務所の後輩たちの振り付けをする機会をいただけて、気付いたら10年くらい経っています。
―振付師の道に進むことは、どなたかに相談したりしましたか?
自分で決めるタイプなんで、特に相談はしませんでした。
あまり難しく考えず、振付師は自分に向いているだろうなって思ったし、何よりほかの仕事はびっくりするくらいできなかったし、楽しくなかったんです。
大学卒業と同時にアイドルを辞めて、駆け出しの振付師になったんですけど、最初はあまり仕事もないので、飲食や事務のアルバイトをしたんです。グループにいた時はマネージャーさんより自分たちのスケジュールを把握していたから、メンバーに「マネージャー」って呼ばれていたぐらい“しっかりしている”って言われてきたのに、本当に信じられないぐらいに仕事ができなかったんですよ。同級生は社会人1年目のタイミングだったんで、「自分は、みんなみたいに企業に入って仕事をするっていうことは、向いてないんだな」と思いましたね。
10代から特殊な世界にいて気付けなかったけど、アルバイトを経験して、“自分の意思で選んだ仕事以外は、できない人間なんだな”と分かったし、やっぱりエンタメの世界も好きだったので“好きなことをやるために、もう頑張るしかないんだ”って改めて思ったんです。
エンタメの世界で、仕事がない状態から、“売れっ子になる”っていうところまで行くのは本当に大変なことだと分かっていたんですけど、その上で、それしか自分の生きる道はないって諦めました。
本当は“覚悟を決めた”っていうとかっこいいんでしょうけど、普通に生きていくことを“諦めた”っていう表現の方が合っているんです。
―振付師が自分に向いていると思ったのは、どうしてですか?