・起業アイデアを見つけるときに大切な5つの鉄則
・アイデアを出したり整理したりするときに役立つフレームワーク3点
起業するときに、決して斬新なアイデアは必要ありません。大切なのは以下の2つに該当するかどうかです。
・そのアイデアが誰かの悩みを解決するものであること
・誰かの悩みが“お金を払ってでも解決したいものであること”
早速、解説していきます。
起業アイデアを見つける5つの鉄則
起業アイデアを見つけるためには、まず社会にどのような課題があるのかを知ることが大切です。課題に根差したアイデアこそが、社会に必要とされている解決策、つまりビジネスになります。課題の存在を無視してしまうと、誰も買ってくれない、顧客不在のビジネスになってしまうでしょう。
課題に根差した起業アイデアを見つけるときに大切なことを、5つ紹介します。
1.質よりも量を重視する
起業のためのアイデア出しの段階では、質よりも量を重視しましょう。一つひとつのアイデアの質にこだわりすぎず、まずはいろいろなアイデアを出せるだけ出してみます。
「量質転化」という言葉があります。量をこなすことで質も高まっていき、一定量を超えた段階で大きな質的変化が起こるという言葉です。
たくさんの起業アイデアを出していくうちに、一つひとつのアイデアの問題点も見つけやすくなるでしょう。アイデアをブラッシュアップするためにも、アイデアの見逃しを防ぐためにも、量をこなすことは大切です。
2.課題に苦しむ“現場”を訪ねる
起業について考えるときは、オフィスにこもって検索したり、考えたりするのではなく、とにかく現場を訪ねてみましょう。社会にどのような課題があるのか大まかに抽出できたら、その課題に直面する現場を訪ね、そこに生きる人々と対話を重ねてください。彼らは将来、顧客・取引先となる人たちです。そして、生の声にこそ、新しいビジネスの種が隠れています。
3.既存のアイデアを参考にする
全くのゼロから、完全にオリジナルなアイデアを出す必要はありません。既存のアイデア(ビジネス)を参考にして、新しいビジネスを考えてみましょう。
既存のビジネスに少し手を加えるだけで、新しい価値を提供できることはよくあります。すでにビジネスとして成り立っているアイデアを元にすれば、顧客不在になることもないでしょう。
4.素案を考えるときはペイン(痛み)に注目する
ビジネスの素案を考えるときは、ペインに注目しましょう。ペインとは“痛み”のことで、顧客が抱える課題や悩みを指します。“お金を払ってでも解決したい悩み”がペインであり、“あったらいいな”程度のニーズは、次に解説する“ゲイン”にあたります。
誰かにお金を払ってもらわなければ、起業してもビジネスとして続けられません。“あったらいいな”“お金を払ってもいいけど、優先順位は高くない”程度の弱いペインではなく、顧客にとって避けて通れない緊急度の高い課題を探してみましょう。
5.ペインの解決をベースに、ゲイン(あったら嬉しい)で差別化する
起業するときはペイン(痛み)の解決をベースにすべきです。しかし、そのペインが根深い課題であるほど、すでにそれに着目し、解決のために誰かが動き出しているはずです。
まだ誰も解決できていない課題もありますが、それは解決が難しすぎるか、解決してもお金にならないのかもしれません。このような課題をベースに起業を考えるのは、ハードルが高すぎます。
後回しにするわけではありませんが、まずはビジネスの実力・経験をつけることを優先しましょう。
そこで登場するのが“ゲイン”です。ゲインとは、現状に対して“あったら嬉しい要素”のことで、顧客の中で顕在化されていない、潜在的なニーズを指します。“顧客インサイト”や“付加価値”とも言い換えられるでしょう。
ゲインを軸に付加価値を高めることで、競合他社との差別化が十分にできます。起業として取り組むのに相応しいアイデアとなるでしょう。
まずは100個の起業アイデアを出してみよう
起業のアイデア出しでは、“質よりも量が大切”とお伝えしました。どのくらいの量を出せばいいのか、正解はありませんが、100個くらいはアイデアを出すつもりでいましょう。ライバルを引き離すには、それくらいの意気込みで取り組むことが必要です。
アイデアの量を重視する段階では、ひとまず質については無視して構いません。思いついたことはとにかくメモすることが大切で、そのための“ツール”と“ルール”が必要です。
思いついたアイデアは片っ端からメモする
アイデア集めのツールには、できればアナログのものを使いましょう。デジタル端末は便利ですが、例えばスマホなら「ロック解除→メモアプリの起動→入力」と、メモするだけで3つのプロセスを踏まなければなりません。
これに対してアナログな紙の手帳なら、「手帳を開く→書く」と、プロセスを1つカットできます。図や注釈も入れやすいでしょう。
ただ、シャワーを浴びているときや就寝直前などのタイミングでいいアイデアが浮かぶこともあります。このようなときのアイデアも逃さず、確実に書き留めるための工夫も必要です。例えば手が濡れていても書けるホワイトボードを使ったり、枕元に手帳とペンとスタンドライトを置いたり、補助的にデジタル端末も活用したりといったことができます。
自分のアイデアも人のアイデアも否定しない
アイデア集めの最も基本的なルールが、自分のアイデアも人のアイデアも否定しないことです。荒唐無稽に思えるアイデアでも、後からしっかり煮詰めたら、意外と使えるかもしれません。最初から否定ばかりしてしまうと、イノベーションの芽を潰してしまいます。
人のアイデアを否定してしまうと、アイデア出しの会議でも「こんなことを言っても、否定されたり馬鹿にされたりするだけだ」と、周りどころか自分も発言しづらい雰囲気になってしまうでしょう。誰かとアイデアを出し合うときは、自由に発言できる安心感・信頼感のある場作りが大切です。
起業アイデアが見つからないときは、“現場の声”を集めてみよう
起業アイデアが見つからないときは、“現場の声”が足りていないのかもしれません。インターネットなどを使った情報収集も大切ですが、課題はオフィスではなく、現場で起こっています。解決すべき課題を探し、それに対する熱量を高めるためにできることを、3つ紹介します。
1.興味のある領域を探してみよう
まずは、自分がどのような領域に興味を持てるのかを探してみましょう。その領域に興味を持ち、課題解決に向けた高い熱量を維持できなければ、起業するのは難しいでしょう。
この段階では、インターネットや書籍などから情報を集めましょう。広く情報を集めていくうちに、気になる領域や課題が見つかるはずです。
2.気になる領域の現場を訪ね、課題を見つけよう
気になる領域や課題が見つかったら、さっそく現場を訪ねてみましょう。例えば介護に興味があるなら、介護施設や自宅介護をする家庭などが現場にあたります。
この段階では、なるべく多くの現場を訪ねることを重視しましょう。ここでも、初めは“質より量”です。介護が行われている施設や家庭、介護用品の販売店やメーカーなどを行き来するうちに、課題への理解が深まっていきます。
3.現場で苦しむ人と対話し、“自分ごと化”しよう
起業する領域が固まってきたら、その現場を何度も訪ね、課題に苦しむ人と対話を重ねてみてください。現場の生の声を聞くうちに、“対岸の火事”でしかなかった課題に対して、当事者意識が芽生えていきます。自分のこととして考えて初めて課題が姿を現し、地に足の着いたアイデアが生まれます。
既存のアイデアを改造して、自分のビジネスを考えてみよう
起業するときに大切なのは、決してオリジナルであることではなく、誰かの役に立つことです。既存のアイデアに付加価値を加えたり、ターゲットを少し変えてみたりするだけで、埋もれていた顧客を掘り起こし、新しいビジネスが生まれることもあります。
既存のビジネスを元に起業アイデアを考えるときの、3つのコツを紹介します。
1.課題を解決した先駆者を、異なる業種から探してみよう
既存のビジネスから起業のアイデアを考えるときは、似たような課題を解決した先駆者がいないか、異なる業種から探してみましょう。異なる業種では当たり前の解決策や商品が、自分がこれから起業する業種では、未知のものかもしれません。競合を避けるためにも、異なる業種のアイデアを転用するのは有効です。
2.既存のアイデアにゲイン(あったら嬉しい)を加えてみよう
起業のベースとなるビジネスを見つけたら、それを自分で実際に使ったり、利用者の声を集めたりしてみましょう。自分のビジネスの不十分なところや利用者の不満を集めることで、加えるべき付加価値が見えてきます。そのアイデアにどのような要素が加わったら効率が上がるのか、ゲインを探してみるのです。
3.活かせる強みやリソースがないか探してみよう
競合他社との差別化を考えるときは、役立ちそうな強みやリソースがないか、探してみるのも有効です。例えば競合他社が人海戦術でやっているビジネスを、自分のITスキルを活かして自動化してみる。新規の起業家としての自由さを活かして先入観にとらわれることなくアイデアを何度も練り直し、ビジネスモデルとしてブラッシュアップしてみる、といったことができるでしょう。
4.フランチャイズに加盟してノーアイデアで起業
フランチャイズというビジネスモデルを利用すれば、斬新なアイデアがなくても起業することが可能です。中には一人で開業できるビジネスなどもあります。業種もIT系ビジネスや飲食、小売り・サービス系、教室系と多岐にわたります。フランチャイズで開業するメリットには、“仕事や経営が未経験でも開業できる”“集客力がある”“仕入れ先ルートの確保が楽”“開業後のリスクが低い”などが挙げられます。
どうしてもアイデアが浮かばない場合は、納得のいくビジネスモデルとなっているフランチャイズ本部を探すというのもよいのではないでしょうか。
参照:「1人で開業するならフランチャイズ!開業する方法や準備すべきものを解説!」
起業アイデアよりも大切な、“意志”の育み方
起業するうえでアイデアよりも大切なものに、“意志”があります。起業における意志とは、“誰のどのような課題を、なぜ自分が解決するのか”に対する答えのことです。この問いに対する答えが明確であるほど意志が強くなり、無理難題も乗り越える“折れない起業家”になれるでしょう。
起業家としての意思を育むために何をすればいいのか、課題発見から起業までの流れに沿って紹介します。
1.“現場”を訪ね、当事者意識を高めよう
起業家としての意志を育むために、くり返しになりますが、まずは、とにかく現場を訪ねましょう。現場を訪ねることで、その課題がなぜ起こっているのか、解決したらどうなるのかをリアルにイメージできるようになります。課題に苦しむ人々と対話をくり返すことで、自分もその輪の1人となり、“絶対に解決したい”という強い意志も育まれるでしょう。
課題解決のためのアイデアを現場に持っていき、フィードバックをもらうことも大切です。現場の人々にとって役に立つ、課題解決に直結するアイデアへとブラッシュアップするために、くり返し訪問しましょう。
2.“最前線”に触れ、視座を高めよう
現場で当事者意識を高めたら、課題解決に取り組む最前線に触れ、視座を高めましょう。例えば課題解決のためにITを活用するなら、思い切ってシリコンバレーや深圳市などに行ってみる。現地の企業とアポを取り、話を聞かせてもらうといったことができます。
そこまでするのが難しければ、その領域の企業について書かれた記事を読んでみたり、社会人インターンや副業としてその世界に飛び込み、課題解決に取り組んでみたりするのもいいでしょう。
3.自分の痛みや価値観から、“自分がやる意義”を見つけよう
当事者意識を高め、“何としても自分が解決するんだ”という意志を持つためには、課題を“自分ごと化”しなければなりません。そのうえで役に立つのが、自分の痛みや価値観、これまでの経験です。
例えば介護領域の課題に取り組むなら、自分の両親を介護した経験や、両親が祖父母の介護をしている姿を見て感じたことなどを思い出してみてください。
現場の声を集めることは大切ですが、それは、どこまでいっても“他人の感じたこと”なのです。経験に照らし合わせて自分がどう感じるか、それがなければ現場の人ともに汗を流して新たな経験を作ることで、“自分ごと”にすることも大切です。
4.起業時に心得ておくべきこと
起業して成功するためには3つ心得ておきたいことがあります。それは“成否はマインドで半分決まる”“まずは副業でスモールスタートするべし”“最低でも半年分の資金を確保すべし”という3点です。
脱サラをして開業した成功例をみてみると、会社員のうちに個人事業主として事業を起こし準備を整えてから開業した、フリーランスで色々な仕事をこなして自分の強みと弱みをきちんと把握してから開業したなどの例があります。
きっちりと準備を整えて、小さく開業して事業が軌道に乗ったら拡げていくとよいのではないでしょうか。
参照:「【厳選3例】脱サラの成功例をリアルに分析!上手くいく人の心得と、失敗する人の特徴もご紹介」
起業アイデアを考えるときに役立つ、3つのフレームワーク
起業アイデアがなかなか思いつかないときや、出したアイデアを整理したいときは、フレームワーク(フロー図や手順)が役立ちます。アイデアを出したり整理したりするときに役立つフレームワークを3つ紹介します。
1.アプローチする領域やターゲットを探すなら“顧客の相関図”
起業する領域や解決すべき課題、アプローチするターゲットを探すときに役立つフレームワークが、“顧客の相関図”です。顧客となりそうな人々を、マインドマップ形式で書き出していくフレームワークで、一見ばらばらな顧客同士の関係性を整理するうえでも役立ちます。
例えば介護領域で起業したいなら、その領域にどのような仕事をしている人がいるのか、ターゲットとなり得る人を洗い出さなければなりません。ターゲットは、介護施設で働く職員なのか、自宅介護をしている世帯なのか。介護施設の職員をターゲットにするとしても、“施設で働く本人”にアプローチするのか“その人を支える家族”にアプローチするのか、選択肢はさまざまです。
2.複数人でのアイデア出しなら“ブレインライティング”
複数人でアイデア出しをするときに役立つフレームワークが、“ブレインライティング”です。口頭でアイデアを出し合うブレインストーミングの進化版のようなフレームワークで、1枚の大きな紙を回覧しながら、メンバーでアイデアを次々に書き足しあっていきます。“一度に1人しか発言できない””人に聞かれているというプレッシャーがかかる”といった特に日本人が苦手とする点を克服しています。
ブレインライティングでは画像のようなシートを用意し、次の手順で、一人ひとりアイデアを書き込んでいきます。
1.1人目が1行目に、アイデアを3つ書く
2.2人目が1行目のアイデアを元に、2行目に3つアイデアを書く
3.3人目が2行目のアイデアを元に、3行目に3つアイデアを書く
4.人数分、これをくり返す
3.既存アイデアを参考にするなら“オズボーンのチェックリスト”
既存のビジネスを元に起業アイデアを考えるときに役立つフレームワークが、“オズボーンのチェックリスト”です。次の9つの観点から、元にするアイデアに修正を加えていきます。
転用:ほかの領域やターゲットに活用できないか
応用:異なる技術を加え、新しいビジネスにできないか
変更:形や色、機能などに変えられそうな部分はないか
拡大:大きさや長さ、使う頻度、高さなどを拡大できないか
縮小:軽量化したり、手順を短縮したりできないか
代用:素材やプロセスを変えることで、新しいターゲットにアプローチできないか
再配置:既存の要素を並び替えることで、新しい価値を生み出せないか
逆転:既存の要素を逆転させることで、新しい価値を生み出せないか
結合:目的や要素を結合したり、ほかのものと組み合わせたりできないか
起業アイデアを考えるときは、成功例もチェックしよう
起業するときはゼロからアイデアを出すのでなく、既存のビジネスや成功例を参考にしてみましょう。どんな人でも、ゼロから発想・実現するのは至難の業です。異なる業界の成功例の中から、自分が起業したい業種に転用・応用できそうなものがないか、まずは探してみましょう。それもまた立派な独創的アイデアになります。
<文/赤塚元基>