子育て終了後の第二の人生に対する捉え方は、ほとんどの場合夫婦間で異なります。例えば女性は「自分の時間を大切にしたい」と感じる人が多い一方、男性は「夫婦の時間を大切にしたい」と感じる人が多いようです。充実した第二の人生を歩むには、夫婦で話し合い、協力し合うことが欠かせません。本記事では子育て終了後の第二の人生を歩むための指針を、男女別に示します。
第二の人生について考える前に、子育てをきちんと終了させる
子育て終了後の第二の人生について考える前に、子育てをきちんと終わらせましょう。子育て終了のハッキリしたタイミングは示せませんが、大切なのは、“親の子離れ”かもしれません。
まずは子育てがいつ終わるのか、親元から巣立った子どもに対して親はどう接すればいいのか、考えを整理しておきましょう。
20歳からの子育てとは、責任を持たせること
子育てとは、子どもが何歳になるまで続くものなのでしょうか。明確な子育て終了ラインはありませんが、1つの節目として“20歳”が挙げられます。
2022年から、成人年齢は20歳から18歳へと引き下げられました。しかし、お酒を飲んだりタバコを吸ったりできるようになるのは、引き続き20歳からです。20歳という年齢は、身も心も大人になり、何でも自己責任で行えるようになる節目といえます。
自分の頭で考え、自己責任のもとで行動することで、人は成長していくのです。
巣立った子どもはできるだけ放っておこう
20歳からの子育てでは、親があれこれ口を出さず、我が子を見守ってあげることが大切です。特に家から巣立った子どもはできるだけ放っておき、自分の力で生活することにチャレンジさせてあげましょう。
ただ、我が子が本当に困っているときに、手助けしてあげることは大切です。
人生の先輩としての背中を見せよう
20歳になった子どもに親がしてあげられることは、本当に困っているときに手助けしてあげることと、大人としての生き方を背中で示してあげることです。
大人としてどう在りたいのか、将来どのような老後を過ごしたいのか、20歳になったばかりではイメージできないかもしれません。これから先の長い人生をどう生きていけばいいのか、親としてヒントを出してあげましょう。
子育て終了後の人生に望むものは、女性と男性で違う
子育て終了後の第二の人生で何がしたいのか、女性と男性では考え方が違うでしょう。個人差はありますが、女性は自分の時間を、男性は夫婦の時間を大切にしたいと思う傾向にあるようです。
大切なのはパートナーの気持ちや考え方を理解し、それに協力してあげることです。自分に合わせてもらうのでも、自分のやりたいことを諦めるのでもなく、互いに尊重し合うことを意識しましょう。
女性が大切にしたいのは“自分の時間”
博報堂の調査によると、40~60代の子育て終了世帯のうち4割ほどの女性が、「これからは自分の時間を楽しみたい」と考えているようです。
“男女共同参画社会”や“主夫”という言葉が注目されるようになって久しいですが、出産することができるのは女性だけ。「育児や家のことが気になってしまう」「出産してからは働きたくてもなかなか働けなかった」という女性も、まだまだ多いのかもしれません。
夫婦で互いを尊重する気持ちも必要ですが、まずは、子育て終了を機に、自分が何をしたいのか考えてみてください。
「新大人研レポート No.28 新しい大人へ:オンナも変わるオトコも変わる その①」(博報堂 新しい大人文化研究所)
男性が大切にしたいのは「夫婦の時間」
同じく博報堂の調査によると、男性の34%が、「子育て終了後は夫婦の時間を大切にしたい」と考えているようです。
日本では仕事一筋の男性もまだまだ多く、家族との時間をあまり取ってこなかった人もいるでしょう。子育て終了を機に、これまであまり接してこなかった家族、特に妻との時間を増やしたいと感じるのかもしれません。
お互いの気持ちを知り、尊重することが大切
自分の時間を大切にしたい女性と、夫婦の時間を大切にしたい男性。女性と男性では、子育て終了後の第二の人生をどう過ごしたいかが対照的です。だからこそ、それぞれどのような第二の人生を送っていきたいのか、夫婦で話し合わなければなりません。
相手の話を遮らずに最後まで聞くこと、自分がどう解釈したか確認すること、遠慮せず自分の気持ちをきちんと伝えることが大切です。それぞれが望む人生を送るにはどうすればいいのか、夫婦で話し合い、どちらも妥協せずにすむ方法を探してみましょう。
子育て終了後の人生を歩みだす前に、“心の足かせ”を外そう
子育て終了後の、第二の人生を歩みだす前に、自分の中にある“心の足かせ”を外しましょう。“女だからこうすべき、男だからこうすべき”という固定観念があると、本当に自分がやりたいことがわからなくなってしまいます。相手に自分の考え方を押し付けてしまうことにもなりかねません。
“女だから、男だから”のジェンダーを捨てよう
第二の人生について考えたり話し合ったりするときは、“ジェンダー”を捨てましょう。ジェンダーとは、社会的・文化的につくられる性別のことです。例えば“夫が外でお金を稼ぎ、妻が家を守る”のような考え方も、ジェンダーの1つです。
“女だから、男だから”というジェンダーに縛られた考え方のままだと、パートナーの話や希望を受け止められないでしょう。パートナーを男性や女性という枠組みで見るのではなく、個性のある一人の人間として認めることが、充実した第二の人生を送るための、はじめの一歩になります。
男性は、妻の“働きたい気持ち”を尊重しよう
第二の人生について話し合うとき、特に男性は、妻の“働きたい気持ち”を尊重しましょう。特に妻が子育てや家事にかかりきりだった場合、妻には社会との接点があまりないかもしれません。コミュニティを広げるためにも、“もう一度働きたい”と考える女性は多いでしょう。
男性にとって大切なのは、働きたいという妻に協力することです。例えば今までほとんど家事をしてこなかったという場合は子育て終了を機に、自分も家事にチャレンジしてみましょう。ほかにも仕事探しを手伝ったり、仕事の愚痴を聞いたり、できることはたくさんあります。
女性は、夫の“寂しい気持ち”を理解しよう
第二の人生について話し合うとき、特に女性は、夫の“寂しい気持ち”を理解してあげましょう。夫が働きづめで家にいる時間があまり持てていなかった場合、家庭では“妻と子どもvs夫”のような構図ができあがってしまいます。
このような家庭の夫にとって、会社は唯一の居場所かもしれません。子育て終了後に定年退職を迎えると、夫には居場所がなくなり、家庭で孤立してしまいます。たまには2人で出かけてみたり、夕食を一緒に取るようにしてみたり、コミュニケーションの場を設けるようにしましょう。
子育てが終わった女性へ、第二の人生の指針
一般的に妊娠や出産をともなう女性の方が、“親としての自覚”が育まれやすいといわれています。そのようなことから、女性は育児にかかりきりになることも多いです。子育て終了後、どう過ごしていいかわからなくなってしまうこともあるでしょう。
子育て終了後の第二の人生をどう過ごせばいいのか、“自分のやりたいこと”を見つけるための指針を示します。
途絶えていた交友関係が蘇ることも多い
女性は結婚や出産、育児や介護などによる“ライフステージの変化”が大きいです。特に出産は男性にはできないことであり、女性の心身にダイレクトに影響を与えます。ライフステージの変化により、今までの友人と話が合わなくなることも少なくありません。
女性の交友関係はライフステージの変化とともに、めまぐるしく変わっていくでしょう。
ただ、子育て終了やパートナーの定年退職などを機に、途絶えていた交友関係が蘇ることも多いです。学生時代の友人と街でばったり再会し、そこから定期的に会うようになったという人も、珍しくありません。
妻でも母でもない“本当の自分”は何が好きだった?
途絶えていた交友関係が蘇り、昔の友人たちと会話を重ねていくにつれ、妻でも母でもない“本当の自分”を思い出すでしょう。もちろん、“本当の自分を思い出す作業”は、自分ひとりでもできます。
学生時代に好きだったこと、会社員時代にやりがいを感じていたことは何だったのか、深く見つめなおしてみてください。
妻や母といった役割はひとまず忘れ、本当の自分は何が好きだったのか、これから何をしていきたいのかを考えてみましょう。
子育てが終わった男性へ、第二の人生の指針
今は性別に関係なく、生き方を自由に選択できる時代です。女性の管理職や社長が増えたのと同じように、男性の主夫も増えました。
しかし、女性と異なり、男性は出産することができません。そのため、女性の方が親としての自覚を持ちやすいといわれていますし、男性で育児休暇を取るのが難しい会社もまだまだ少なくありません。身体の構造的にも、社会の構造的にも、成人から定年まで働きづめになる男性が多いのは仕方のないことかもしれません。
男性は子育て終了よりも定年退職を機に、第二の人生について考えはじめる人が多いでしょう。定年退職後の第二の人生をどう生きればいいのか、指針を示します。
仕事に人生を捧げてきたなら、退職後も熱中できる仕事を選ぶ
これまでの人生を仕事に捧げてきたなら、子育て終了後や定年退職後も、働き続けた方がいいかもしれません。仕事と家の往復で家族との時間をあまり取れなかった男性の場合は、特にそうです。
今まで働きづめで、夫と家族とのコミュニケーションが希薄だった家庭では、どうしても“妻と子どもvs夫”という構図ができあがってしまいます。ここでは便宜上「vs」をいう表現を使っていますが、この“vs”は対立関係を示すものではありません。
“父親とは何となく接しづらい”“夫のことがよくわからない”という家庭では、男性は孤立しやすいです。会社が唯一の居場所だったという場合は、定年退職と同時に、居場所も話し相手も失ってしまいます。
今までバリバリ働いていたのに、急に何もすることがなくなり、途方に暮れてしまう人もいるでしょう。“仕事をしているときはあんなに元気だったのに、定年と同時に一気に心身が弱くなってしまった”という話もよく聞きます。退職後も嘱託職員として会社に残ったり、退職金を活用して開業したりするのも良いかもしれません。仕事はもうやりきったと思うのであれば今まで任せきりだった家庭を顧みて、第二の人生として妻との関係性を再構築することも1つの手です。
相手の気持ちや希望も考えながら、“妻と一緒にやりたいこと”を考えてみよう
今まで働きづめだった夫ほど、“定年退職後は家族とゆっくり過ごしたい”“子育て終了後の第二の人生では、妻との時間を取り戻したい”と感じるかもしれません。
しかし、その気持ちを妻に押し付けてはいけません。先述したように、第二の人生で“夫婦の時間”を大切にしたい男性が多いのに対して、女性は“自分の時間”を大切にしたいと考えている人が多いのです。
相手の気持ちや希望も聞きながら、“妻と一緒にやりたいこと”“自分ひとりでできること”を考えてみましょう。
子育て終了後に何をする?みんなはこうして時間を使っている
子育て終了後の第二の人生をどう歩んでいけばいいのか、答えは人それぞれ違います。しかし、先に第二の人生を歩み始めた“先輩夫婦”の話は参考になります。
子育て終了後の第二の人生を周りはどう歩んでいるのか、何を意識すれば人生の満足度が高まるのか、5つの心得を紹介します。
自分について見つめなおしてみよう
第二の人生について考える前に、まずは自分について見つめなおしてみましょう。妻や夫、親といった“役割”を意識的に忘れてみて、役割を持たない自分はどのような人間だったのかを思い出してみるのです。
役割を取り払った“本当の自分”を見つめなおすときは、昔からの友人と話してみたり、学生時代のことを思い出したりしてみるのがいいでしょう。
いろいろな人と話し、本を読んでみよう
“妻や夫といった役割を取り払った自分”や、第二の人生でやりたいことが、人と話したり本を読んだりするうちに見つかるかもしれません。昔からの友人はもちろん、自分たち夫婦よりも早く第二の人生を歩み始めた先輩など、いろいろな人と話をしてみると気づきも多いでしょう。
しかし、もし話し相手がなかなか見つからないなら、本を読むのがおすすめです。子育て終了後の生き方について書かれたハウツー本もいいですが、小説を読み、主人公の人生や考え方を追体験してみるのもいいでしょう。
家事は夫婦で協力、分担しよう
家事や育児に積極的な男性も増えてきましたが、男性がこれらにあてる時間は、女性の半分未満です。男女共同参画局の調査によると、「夫婦+子ども世帯」の男性が家事や育児にあてる時間は、1時間57分。女性は4時間38分であり、男性の2倍以上です。
子育て終了を機に、再び働きたいと考える女性も多いです。「外で働くとなると、今までのように家のことを任せっぱなしにするのは大変だよね。家事の分担を考えなおそうか」と、夫から提案してみてください。
もちろん、妻が働かない場合でも家事を分担することは大切です。夫婦がそれぞれ家事や仕事をして、“いざとなったら自分ひとりでも生きていける”という意識を育むことで、夫婦関係もうまくいきやすくなるでしょう。
10年後の自分や家族をイメージしてみよう
今は“人生100年時代”といわれています。仮に50歳で子育て終了を迎えたとしても、人生はまだ50年近く残っていることになります。第二の人生はもはや“余生”とはいえず、将来のことを考えながら、計画を立てていかなければなりません。
第二の人生について考えるときも、これまでと同じように5年先、10年先を考えて人生計画を立てましょう。
何よりも、パートナーとよく話す
第二の人生をどう過ごしていきたいか、お互いの希望を聞きながら、夫婦ともに納得できる答えを探しましょう。相手の気持ちをよく考え、最後まで話を聞くこと。自分の希望も恥ずかしがらずに伝えることが大切です。
第二の人生の選択肢に、“自分たちのビジネス”を選ぶ人も多い
子育て終了後や定年退職後の第二の人生に、“自分たちのビジネスを立ち上げる”という選択をする夫婦も多いです。今まで働きづめだった夫は仕事をしていた方が落ち着くかもしれませんし、育児で思うように働けなかった妻が、子育て終了を機にもう一度働きたいと思うケースも少なくありません。
“自分の店を持つことが昔からの夢だった”“これまでの人生経験を活かして、何か新しいことをしてみたい”という人も多いでしょう。
ただ、起業にはリスクがともないます。経営経験も、その業界でのノウハウもゼロの状態でビジネスを立ち上げるのは不安もあるでしょう。
リスクヘッジやノウハウ不足を補う選択肢として、フランチャイズシステムを活用するのもいいでしょう。今は低コストで始められるフランチャイズビジネスもたくさんあります。
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<文/赤塚元基>