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“デスボイス専門”のボイストレーナー・MAHONEはなぜニッチすぎる市場を選んだのか

生ボイス

「プロダクトアウト」「マーケットイン」という言葉があります。

自社の商品やサービス(プロダクト)を作った上でどう売っていくのかを考えるのが、プロダクトアウト。一方で既に市場にあるニーズ(マーケット)を捉えた上で、それに応じた商品やサービスを作っていくのがマーケットインという考え方です。

あなたの事業は、どちらの考え方に近いでしょうか?

今回お話を伺ったのは、デスボイス専門のボイストレーナー・MAHONEさん。

MAHONEさんは、日本で唯一のデスボイス専門のボイストレーニング教室を運営しており、その人気は会員希望者が続出して新規受け付けをストップしているほど。

MAHONEさんなぜ「デスボイス専門のボイストレーニング」という、一風変わった切り口で事業をすることになったのでしょうか?

その理由はプロダクトアウト、マーケットインに二分できない、MAHONEさんらしい試行錯誤の積み重ねがありました。

<プロフィール>
MAHONEさん
デスボイストレーナー/ボーカリスト

デスボイス、シャウトやスーパーヘッドボイス、ホイッスルボイスなどの特殊発声を得意とする。
大学時代の先輩の影響でデスボイスに興味を持ち、独学でデスボイスのロジックを確立。大学を卒業後は商社へ就職。1年半後に退職の後、独立。

日本初のスクリーム教室「MyScream」を設立。YouTubeチャンネル登録者数は57000人に上る。

「やり方をおさえて練習すれば、誰でも出せるようになる」。MAHONEさんが、デスボイストレーナーになるまで

――ボイストレーニングのお仕事をされている方はたくさんいらっしゃいますが「デスボイス専門のボイストレーニング」というのは、とても珍しいのではないですか?

MAHONEさん
そうですね。デスボイスやホイッスルボイス(※)といった特殊発声を専門とした、ボイストレーニング教室の運営をしているのは、おそらく日本で僕だけだと思います。

※意識的、積極的に出す「ダミ声」「悪声」「がなり声」。
主にデスメタル、ブラックメタル、グラインドコア、ゴシックメタル、メタルコア、ポストハードコア、スクリーモなどのジャンルで多用される発声技のこと。
強い怒りや悲しみといった感情を表現する方法として使われる。
参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/デスヴォイス

※特殊発声には数多くの種類があるが、以下、便宜上“デスボイス”と呼称する。

――現在のお仕事について教えてください。デスボイス専門といっても、事業的には普通のボイストレーニングと変わらないのでしょうか?

MAHONEさん
はい、仕組みそのものは普通のボイストレーニングと変わらないですね。生徒さんから受講料をいただいてノウハウをお教えするという、よくあるスタイルです。

ただ扱うのはデスボイスのみで、クリーンボイスと呼ばれるいわゆる普通の“歌モノ”の指導は行いません。

教室の他にはLINEを使った添削レッスンも行っています。

こちらは2020年4月の緊急事態宣言の外出自粛をきっかけに始めました。生徒さんに自分の声を録音いただいて、それに対してコメントや指導を行うという、いわばオンラインレッスンに近いものですね。

ありがたいことに教室でのレッスンはご好評をいただいていて、現在は数カ月に一度のペースで限定的にしか、新規の生徒さんを受け付けておりません。

他にはYouTubeでデスボイスに関する情報発信を行っていたり、有名アーティストさんとコラボさせていただいたり、楽曲に参加させていただいたりと、レッスン業を中心に活動は多岐に渡ります。

――そもそもMAHONEさんはなぜ、デスボイスを始めたのでしょう?

MAHONEさん
デスボイスを本格的に練習し始めたのは、大学生になってからですね。

音楽自体は高校の時からやっていて、当時はボーカルではなくドラムを叩いていたんです。高校に軽音楽部がなかったので、大人に混じってアマチュアのバンドに参加して叩いていました。

大学に進学した後は軽音楽部に所属。そこで出会った先輩の影響で、デスボイスに興味を持ったんです。

――なぜデスボイスに興味を?

MAHONEさん
先輩のデスボイスを聞いて、純粋にかっこいいなぁ……と。

ですが同時に「こんな声、僕には出せないだろうなぁ……」とも思っていて。そこでダメ元で先輩からいろいろ教えてもらって練習を重ねていきました。すると、だんだんできるようになっていったんです。

そこからはデスボイスの魅力に取り憑かれてしまって(笑)。以来1年半ほど練習を積んでいったら、かなり上達していきました。

MAHONEさん
加えて、今度は僕が友人にデスボイスを教える機会が増えていって。

その過程で「やり方さえおさえて練習していけば、誰でもデスボイスが出せるんだ」と気がついたんです。

デスボイスの効果的な出し方を、論理的に説明できるようになっていきました。

――そこでボイストレーニング教室を開くことになったんですね。

MAHONEさん
いえ。当時はまだ大学生だったので、今のような教室の形式で教えていたわけではありません。

ただずっと昔から、どんな形であれ「独立したいな」とぼんやり考えてはいたんです。

大学卒業後は一般企業に就職し、その1年半後に独立しました。

“デスボイス専門”のボイストレーナーという、ニッチすぎる市場を選んだ理由

――独立の決め手は?

MAHONEさん
いくつかあるのですが、今も続けているYouTubeチャンネルの登録者が伸びたことが、大きな要因の1つですね。

就職当時は登録者が2500人程だったのですが、会社を辞める頃には15000人まで伸びていて。それが少なからず、独立への自信に繋がりましたね。

でも独立当初は、デスボイス専門のボイストレーニングだけをやっていたわけではなくて(笑)。

いわば“三足のわらじ”を履いていたんです。

――どういうことでしょう?

MAHONEさん
独立した時、デスボイス専門のボイストレーニングと、ヒューマンビートボックス(※)の教室、そしてパーソナルトレーニングジムの3つを同時に運営していたんです。

いずれも僕自身が好きでかつ得意であり、人に教えられるものを選んだのですが、その中から1番伸びた事業を選んで、それに専念しようと思っていました。

個人的には正直伸びるのは、ヒューマンビートボックスか、パーソナルトレーニングだろうなぁと思っていたんですが……。

蓋を開けてみたら、ダントツでデスボイスが伸びてきたので、デスボイスに全振りしたんです(笑)。

※ドラムやベース、レコードのスクラッチ音といった音を、人間の発話器官を使って作り出す、音楽表現の形態の1つ。
参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/ヒューマンビートボックス

――なぜデスボイスが1番伸びたのでしょうか?

MAHONEさん
なんででしょう……? みなさん、デスボイスを出したいほどに鬱憤が溜まってたのかもしれないですね(笑)。

強いていうなら「デスボイスだけを専門に教えます!」という教室が、他になかったからじゃないかなと。

デスボイスを出せる人はいたとしても、それを体系的に理解・整理して「人に教えられるようにしよう」なんて人って、そうはいませんから。

振り返ってみると、そこにビジネスチャンスがあり、結果として他のボイストレーニングとの差別化に繋がったのかもしれませんね。

――MAHONEさんにとって、デスボイスの魅力とはなんですか?

MAHONEさん
デスボイスを始めする特殊発声って、とても中毒性があるんですよ。

最初は「うわっ!」とか「こんなの無理!」と思っていても、聞いているうちにだんだん気持ち良くなっていく、というか……。発声している人も、聞いている人も陶酔できるところがあるんですよね。

その経験の数が増えていくと、だんだんプロの人のデスボイスを聞くだけじゃなくて、自分でもデスボイスをかっこよく歌いこなせたら……と思うようになっていく。

言語化できない気持ちや鬱憤も、デスボイスという形での表現方法だからこそ吐露できる。

普通のクリーンボイスの歌には表現できないことだったりしますし、その表現のお手伝いができたらいいなと思って、生徒さんと向き合っています。

失敗ではなく“実験”として捉える。ニッチな職業を確立させるために必要なこと

――MAHONEさんの今後の展望を教えてください。

MAHONEさん
現在は教室を運営しているので、どちらかといえば個人で通ってくださる方が多いのですが、今後は事務所さんや音楽会社さんなど、法人のお客さまとお付き合いができたらと思っています。

そうした多方面の活動を通して、いつしか「デスボイスといえば、MAHONEだよね」と思っていただけるような存在になりたいですね。

デスボイスなどの特殊発声というジャンルにおいての分かりやすいキャラクター、というか。専門家として、より知名度を上げていければいいなと。

いつかデスボイスにまつわる全需要を僕に集められるよう、これからも精進していきたいと思っています(笑)!

――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

MAHONEさん
ここまで読んでくださった方には、もしかするとあまり伝わっていないかもしれませんが……。今回お話したのは、僕のキャリアのほんの一部分です。

インタビュー上では綺麗に見えるかもしれませんが、実は上手くいかなかったこともたくさんありました。

「デスボイス専門のボイストレーニング」というニッチな職業を確立させるには、それなりのトライアンドエラーがあったんです。

三足のわらじの話しかりいろんな失敗、というより“実験”と捉えて、どうにか今までやってくることができました。

実験は失敗するためにするものですし、成功するまでチャレンジすれば失敗で終わることなんてありません。

独立・起業には大なり小なり失敗がつきものです。失敗と前向きに付き合っていけたら、きっと独立・起業も成功に導くことができるのではないでしょうか。

取材・文・撮影=内藤 祐介

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アントレスタイルマガジン編集部

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