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会社の社長(代表取締役)が相続をする際に作成すべき遺言書とは

会社の社長(代表取締役)が相続をする際に作成すべき遺言書とは

同族会社とは、株主の3人以下およびこれらと特殊の関係にある個人および法人の有する株式総数または出資金額の合計が、その会社の発行済み株式の総数または出資金額の5割以上に相当する会社のことをいいます。

そして日本の会社のほとんど(約250万社 参考:国税庁 会社標本調査結果)が、いわゆる同族会社です。

上場会社の社長が亡くなると会社の経営への影響は大きいですが、その会社の資本関係に対しては多くの場合それほど影響がありません。

一方で同族会社の社長は、その会社の株式をある程度、あるいはそのほとんどを持っている場合があります。

この場合に社長が亡くなることは、会社の資本にも影響を及ぼしてしまいます。

同族会社の社長は、自分が死亡し相続となった場合の対処について、会社経営だけでなく会社の資本関係のことも考えておかなければならないのです。

遺言書とは

法律上は、遺産の処分や祭祀主宰者の指定など、法が認める事項について、遺言書を書こうとする者(被相続人)が決定でき(遺言)、これを記したものが遺言書となります。

つまり、例えば白洲次郎が「葬式無用、戒名不用」と“遺言”を残したとしてもそれは法定の遺言事由とはならないため、この言葉が人に感銘を与えたとしても法律上の遺言・遺言書とはならないのです。

遺言書には、“自筆遺言書”と“遺言公正証書”の2種類があります。

前者の自筆遺言書とは、自分一人で作成する遺言書です。

基本的には、①全文を自分で書き、②日付を記して、③署名・捺印しなければなりません。

最近の民法改正によって、上記①に関連して要件が緩和され、一部ワープロ文書を使用してもよいことになり、新たな保管方法も制定されました。

後者の遺言公正証書とは公証人に作ってもらう遺言書です。

自筆遺言書と遺言公正証書とは、法律上の効果はまったく同じです。

しかし、あとからその有効性を争われる恐れなどを考えると、遺言公正証書にしておいたほうが望ましいといえます。

遺言書は何回も書き直すことができます。

そして内容に変更がある場合、常に最後の一番新しいものが有効となり、それまでのものは自動的に撤回されたことになります。

小説や映画、テレビなどで、それまで貧乏だった登場人物が遺言によって一夜にして大金もちになる場面があるでしょう。

それからのストーリー展開は国によって異なります。

イギリス・アメリカなどの国では、遺言者はその財産を誰に相続させるか自由です。

つまり、遺産はすべて遺言によって遺産を相続した者のものとなるのです。

これに対してフランス・ドイツなどの国では、本来の相続人に遺留分というものが認められていて、遺言で遺産を取得した者はその一部を取り消される可能性があります。

日本は後者に属しますので、遺言書を書く際は、遺留分にも十分考慮しなければなりません。

なぜ社長は生前に遺言書をつくると良いのか

同族会社の社長は、自分の事業承継のことを考えだすと夜も眠れなくなるのではないでしょうか。

「業務を任せられる人材は育っているかどうか」
「今後の会社の成長は見込めるのか」
「誰に会社を継がせるべきか」
「相続税はどうなるだろうか」
「承継者の希望があるのだが、それを実現するにはどうしたら良いのか」

同族会社では経営と資本が事実上分離していないことが多くそれが問題となる一方で、それを生かした相続ができます。

その際に遺言書を作成しておくことは、有用であり重要です。

つまり、会社経営を任せたい者に株式も同時に相続させることにしておけば、経営と資本が一致し安定した会社経営が可能となります。

その際の注意点は、日本では遺留分があるという点です。

本来の相続人が有する遺留分の権利行使によって、遺言の意図が実現しない・制限される可能性があります。

遺留分に配慮した遺言書を作ることがポイントとなるのです。

遺言書はどのようにつくると良いのか

遺言書は自分でつくる自筆遺言書でも公証人に作ってもらう遺言公正証書でも法律上の効力は同じであることは前述しました。

しかし、その有効性を争われにくいことから、遺言公正証書にするべきです。

その分のお金はかかりますが、将来の紛争を未然に防止するという観点からは必要な費用といえるでしょう。

遺言の内容は、上記のように会社の経営と資本(株式)を一致させることを重視すべきです。

なぜなら、それによって会社経営が安定し、その継続・発展も望めます。

ただし、その際に本来の相続人の遺留分に留意するべきことは最重要ポイントです。

あらかじめ“遺留分に相当する財産”かつ“会社経営に影響しない財産”を遺留分権利者に遺贈・遺贈するなどして会社経営に悪影響を与えない考慮をする必要があります。

また、最近の民法改正で遺留分の請求は受遺者・受贈者による価額賠償となりました。

例えば、工場の敷地に対する遺留分の行使に対しても、その土地の一部ではなく金銭を与えることで解決することが可能となったのです。

これまでは遺留分減殺請求権の行使により遺産の共有となることが原則であり事業承継の支障となっていたため、この法改正は遺言者と受遺者・受贈者にとって朗報といえるでしょう。

まとめ

日本の同族会社の社長は自分の会社の承継を考えるとき遺言書を重要な武器として使えます。

ただし、遺留分には十分注意する必要がありますが、一方でこれを利用する手もあります。

日本の生産性が低いことが問題となっていますが、日本の中小企業は日本のこれまでの成長を支えてきており、これからも日本の経済・文化に貢献できるはずです。

いや、そのように努力することが今の同族会社の社長に求められているのです。

遺言書がそのお役にたてたら、関連業務を行ってきた者としてこんなにうれしいことはありません。

PROFILE

弁護士 大塚 嘉一

昭和63年から、弁護士として、首都圏の同族会社の法務、事業承継、相続、経営権の争い、株式買取請求などの事案を多数手がける。紛争の解決を通じ、日本を元気にするにはどうするべきか、日々、研究し、活動している。

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