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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第76回・できることを考えておく

独立ノウハウ・お役立ち

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

新型コロナウイルスの影響で出されていた「緊急事態宣言」が延長されました。苦しい状況は続きますが、そろそろ「解除の後」に向けた準備も必要になります。さて、予定通り5月末に緊急事態宣言が解除されたとして、6月から少しずつビジネスの軌道を修正する場合、何月までに完了しておく必要があるでしょうか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

5月6日までとされていた「緊急事態宣言」が、5月末まで延長されました。条件付きで早めの解除も検討されるようですが、すでに皆さんの商売も影響を受けているのではないでしょうか。

早く日常に戻ってほしいと願う一方で、果たして本当に以前のように戻るのだろうかという不安もあります。そこもふまえて、解除の後の仕事や生活について考えておく必要はありそうです。

未知のウイルスであり、これまでに経験したことがないことが起こっているのは間違いありませんが、現状から把握できることをもとに類推しながら、客観的に考えてみたいと思います。

それでは解説します!

まず、終息については、「緊急事態宣言」による行動自粛など感染対策がなされることはもちろん大きいですが、季節的な要因もありそうです。新型コロナウイルスは風邪のウイルスなので、インフルエンザと同じく気温が上がる夏には感染がおさまるだろうといわれています。

世界的な感染拡大時期に夏を迎えていた南半球の例がわかりやすいはずです。4月15日時点の人口100万人あたりの死者数を調べると、ブラジルで6人、オーストラリアで2人というデータが出ていますが、これは385人のスペイン、348人のイタリア、182人のイギリス、72人のアメリカなどと比べても、確かに少ないことがわかりますよね。

ちなみにこの時点で日本は1人ですから、ずば抜けて少ないわけです。(※死者数はWHO発表「Situation Report」より)

ところが、5月に入るとブラジルの死者数は急増します。南半球が日本の11月の季節に入ったことになるのですが、直近の数字を見ると人口100万人あたりの死者数は53人です。

過去のパンデミックを参考にすると、今回の新型コロナウイルスと同様に抗体がなかった新しいタイプのウイルスが流行した場合、一度収束した後にかなり高い確率で再流行が起こっています。これは、約100年前に大流行したスペイン風邪もしかりです。

一方で無症状感染者が多く、実は抗体を持つ人が増えているという話があります。しかし、検査がそれほど進められていない中で、ニューヨーク州は知事が「約13.9%に抗体が発見された」と発表しましたし、東京都内でも医師の独自調査で「一般市民の4.8%程度」という数字がニュースになりました。つまり、抗体を持たない人の方が圧倒的に多いと考えてよさそうです。

以上の話から考えられることは2つです。1つは「夏場に一度終息する」ということ。もう1つは、「夏が終わって気温が下がり始めると、抗体を持たない人たちの間で高い確率で再流行が始まる可能性が高い」ということです。

実際のところ、冬場の再流行についてはいろいろな専門家がその可能性について示唆しています。特にブラジルの感染拡大から類推すれば、気温が下がり始める11月あたりがポイントになるかもしれません。

だからこそ、事業者としては4月から5月と似たような状況が再度冬場に起こり得ることを覚悟して、「備えあれば憂いなし」という気持ちで、何かしらの手を打っておく必要がありそうです。

ビジネスモデルを見直すことも考えてみては

今回皆さんにお伝えしたいのは、事業者としてのリスクヘッジの大切さです。「コロナショックがおさまってよかったね」とか、「再流行してしまって残念だ」などと単純に一喜一憂するのではなく、この数カ月間の出来事を教訓とし、その時に慌てなくてすむよう、今のうちからできることを準備しておくべきでしょう。

例えば、同様に外出自粛要請が出たケースに備え、ビジネスモデルを見直してみるのはどうでしょうか。デリバリーのビジネスを本格的に取り入れる、オンライン化を進めるなど、できることを考えて用意しておけば、乗り切ることができるかもしれません。

緊急事態宣言が解除された直後からジャンプスタートして、夏の間の数カ月間に稼げるだけ稼ぐくらいの意気込みであたることも、もしかしたら一つの方法かもしれませんね。

そもそもそれでは無理があるのであれば、固定費の見直しといったことも必要になるでしょう。

こうした取り組みは、再流行するかどうかは別にしても、皆さんのビジネスをより強くすることにつながるはずです。何かできることがあるはずですから、今のうちから考えておきたいものです。

こんな時だからこそ、できるチャレンジもある

多くの事業者にとっては、厳しい状況が続き、ネガティブになってしまうこともあるかもしれません。しかし、こんな時だからこそ、逆に新しいことにチャレンジできるという考え方もあります。

事業を継続できなくなっては意味がありませんので、ぜひ前向きに、今できることを考えてみてくださいね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは、「11月」でした。自粛の日々が続きますが、「日常が戻ったらやろう」と思っていることは忘れないようにして、それを楽しみに前向きに頑張りたいですね。

構成:志村 江

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PROFILE
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(ともにPHPビジネス新書)など。

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