個人事業主が従業員を雇う場合、従業員の人数や業種によっては社会保険への加入が必要です。
一般的に社会保険というと大企業や中小企業が加入する制度のように聞こえますが、個人事業主で従業員が少ない場合でも、社会保険への加入はできるのでしょうか。
今回は、個人事業主の方の社会保険への加入要件や義務についてご紹介いたします。
社会保険の種類
社会保険とは一般的に、健康保険、介護保険、厚生年金保険の3つを指しますが、企業の場合はこれらに労働保険が加わります。
ここでは、公的医療保険、公的介護保険、公的年金保険、労働保険の4つについて説明します。
公的医療保険
日本の医療保険制度は、相互扶助の精神に基づき、病気やけがに備えてあらかじめお金(保険料)を出し合い、実際に医療を受けたときに、医療費の支払いに充てる仕組みとなっています。
(参考:健康保険組合連合会 けんぽれん)
公的医療保険には会社員などが加入する健康保険、公務員などが加入する共済組合保険、個人事業主などが加入する国民健康保険などがあります。
サラリーマンの場合、所属する企業によってどの被用者保険に加入するかが異なります。また、健康保険料は事業者(企業)と折半して支払います。
法人は規模に関わらず健康保険への加入が義務付けられている
法人の場合、従業員数にかかわらず、健康保険への加入が義務付けられています。健康保険料は、事業者と従業員で折半して支払います。
個人事業主の場合は原則国民健康保険に加入、従業員が5名未満なら健康保険組合への加入は任意
個人事業主は原則、国民健康保険に加入し、常時雇用する従業員が5人未満なら健康保険への加入は任意となっています。
健康保険組合は一般的に法人の加入を対象としていますが、個人事業主でも一部の業種に関しては加入できることも。国民健康保険に比べると、健康保険の方が保障は充実しますし、家族を扶養に入れることができますので、社会保険に加入すると雇用の増加と従業員の定着につながることもあります。
なお、任意で加入する場合には、従業員過半数の同意が必要です。
公的介護保険は健康保険料と一緒に支払う
また40歳以上の場合、公的介護保険への加入が必要となり、健康保険料などの支払いに加えて介護保険料も支払います。
公的年金保険
公的年金保険には会社員や公務員が加入する厚生年金保険のほか、個人事業主などが加入する国民年金があります。
法人は厚生年金保険への加入が必須
法人の場合、従業員数にかかわらず、厚生年金保険への加入は必須です。
支払いは、健康保険と同じく企業と従業員で折半となります。
個人事業主は国民年金保険に加入するが、従業員5名以下でも厚生年金保険に加入できる
個人事業主の場合、原則として国民年金保険に加入します。国民年金保険料は収入にかかわらず一律16,340円(平成30年度)です。
常時雇用する従業員が5人以上の場合は厚生年金保険に加入しますが、5人に満たない場合でも任意適用申請をすれば厚生年金保険に加入できます。事業主は従業員の厚生年金の保険料を半分負担する義務が生じること、厚生年金保険に加入する場合には、従業員過半数の同意が必要なことに注意しましょう。
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個人事業主は厚生年金に加入できるのか? 年金の条件や種類
【参考】
任意適用申請の手続き(日本年金機構)
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労働保険
労働保険には業務中のケガなどを保障する労災保険のほか、失業した場合の保障として雇用保険があります。
労災保険は法人・個人事業主に関わらず従業員1名以上で加入必須
労災保険に関しては、従業員を1名でも雇ったら加入しなければなりません。
正社員だけでなく、アルバイトやパート、日雇いなども含め、給与支給額や労働時間にかかわらず、雇用しているすべての従業員が加入対象となります。
労災保険料は全額事業主負担となり、保険料率は業種により異なります。ただし、個人事業主自身は原則、労災保険に加入できません。
雇用保険の加入が必要なケースとは
31日以上雇用する見込みがあり、週20時間以上勤務する従業員は雇用保険への加入が義務付けられています。
平成30年度の雇用保険料率は事業主負担が0.6%、従業員負担が0.3%です。
士業、サービス業、宗教団体などは社会保険に任意加入となる
これまで説明した通り、個人事業主であっても常時雇用する従業員が5人以上の場合、健康保険、介護保険(40歳以上)および厚生年金保険への加入が義務付けられています。
ただし、第一次産業や士業、サービス業、宗教団体などは従業員が5人以上であっても、任意加入となっています。
健康保険料、介護保険料、および厚生年金保険料は被保険者の給料に応じて計算され、事業主と従業員で半分ずつ負担します。
個人事業主でも雇用がある場合は社会保険加入の可能性
個人事業主でも常時雇用する従業員が5人以上の場合、社会保険への加入が必要です。
5人未満の場合は任意ですが、労災保険は必ず、雇用保険は条件を満たすならば加入しなければならないので、注意してください。
社会保険に加入すると保障が充実するだけでなく、家族を扶養にすることができます。
ただし、事業主は従業員の社会保険料を半分負担しなければならないので、加入する前に負担額を計算した方が良いでしょう。