現代社会人の永遠の悩みである、不安。
将来への漠然とした不安が原因で、独立・起業に二の足を踏んでいる人も多いのではないでしょうか?
「不安」について、心理学者の内藤誼人先生に伺いました。
内藤先生は「人間は不安を感じるからこそ、進化をしてこられた」と言います。その理由とは、一体何でしょうか。
不安を感じるからこそ、人類は生き延びてきた。不安が役立つ感情である理由
今回のテーマである、不安との付き合い方。
一般的に不安と聞くと、自分にとって良くないことと想定してしまいがちですが、実は人間にとって不安とは、非常に役に立つ感情であるということが心理学的に明らかにされているのです。
アメリカのイリノイ大学、カレン・ガスパー先生が行った実験をご紹介しましょう。
ガスパー先生はまず、実験参加者たちの不安傾向を測定する実験を行い「不安傾向が高い」グループと、「不安傾向が低い」グループの2つに分類しました。
その後それぞれのグループにリスクを推定させました。
例えば飢餓になってしまうリスクや、大地震が発生するリスク、交通事故に巻き込まれるリスク、体が動かなくなってしまうリスクなど、人間が生きていく上で起こりうる様々な問題を推定させたのです。
そして不安傾向が高いグループと、不安傾向が低いグループ、どちらがリスクを高く見積もるかを比較したところ、不安傾向が高いグループの方が、リスクを高く見積もるということが分かりました。
つまり不安傾向が高ければその分リスクを高く見積もるので、あらかじめそのリスクに備えておける、という利点があるのです。
人間は不安を感じるからこそ、それを避けるために自己防衛行動を起こします。老後に不安を感じるから、食事に気を遣ったり運動をするし、貯金をするのです。
太古の時代から、人間は不安を取り除くために知恵を絞り、進化をしてきました。この観点からも「不安はあって当然」くらいに捉えられると、少し楽になるのではないでしょうか。
不安を感じる人の方が仕事を楽しめる? 「リバーサル理論」で不安を力に変える!
今回はもう1つ、不安について調べた実験をご紹介します。
ランス大学のファビエン・レグランド先生は、あるテーマパークの絶叫マシンにこれから乗ろうとしている人に対して「今、どれほど恐怖心を感じているか」を聞きました。
そして彼らが絶叫マシンを降りた後に、今度は「今、どれほど快感を得られたのか」を聞き、乗る前と乗った後の感想に相関があるかを調べました。
すると、絶叫マシンに乗る前に強い恐怖心を感じていた人、不安を感じていた人ほど乗った後の快感が大きい、ということが分かったのです。
この実験の結果のように、恐怖心と緊張状態が大きければ大きいほど、かえって快感も大きくなる現象を、心理学の世界では「リバーサル(逆転)理論」と言います。
皆さんも「本番の前はとても緊張していたけれど、終わってみるとものすごく達成感があった」という経験を、1度はしたことがあるのではないでしょうか?
学生時代の受験や、文化祭、部活の大会。社会人になってからの大事なプレゼンや商談。
結果はともあれ「やりきった」ことが強く印象に残っているのなら、それは準備の段階から抱えていた不安が大きかったから、とも言えるのです。
つまり不安を感じる人の方が、結果的に仕事を楽しめる、と言えるのです。
1番やってはいけないのは「不安を感じているのに、行動を起こさない」こと
最初に紹介したとおり、不安は人間が進化する上で欠かせない重要な感情である、ということが以上の2つの実験で分かりました。
不安に襲われて「どうして自分はこんなに臆病なんだろう?」と、自己嫌悪に陥ってしまう人もいらっしゃいますが、臆病でいることそのものは、心理学的に悪いことではありません。
問題なのは「自分は臆病だから、何もしない」という選択肢を取ってしまうこと。
最初に紹介した実験のように「不安を感じるから、起こりうるリスクに備える」からこそ、人間は進化をしてこられたのです。
しかしリスクに怯えて何も行動を起こさなければ、丸腰でそのリスクを受ける羽目になってしまいます。
不安を感じたら、すぐにリスクに備える。これをセットで行えるようになれば、怖いものなしです。不安を味方につけて仕事、そして人生を楽しみましょう!
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