人は誰しも死を迎え、そこには遺品が残る。近年では、故人が残したスマホやパソコン、Web上のデータなどは「デジタル遺品」と呼ばれている。これらのデジタル遺品は年を追うごとに数を増やし、対処に困っている人も増えているという。
今回お話を伺った古田雄介さんは、フリーライターとして活動する一方、デジタル遺品の専門家としても活動している。
古田さんがデジタル遺品の専門家として活動する背景には、どのような出来事があったのだろうか?
古田さんに職歴を聞いてみると、建設会社に勤めた後、葬儀会社や編集プロダクションに転職し、フリーライターとして独立したことがわかった。
かなり異色な経歴であるが、このようなキャリアを歩んできた背景には、古田さんなりの必然性があったようだ。
1977年、名古屋市生まれ。一般社団法人デジタル遺品研究会ルクシー(LxxE)理事。
名古屋工業大学卒業後、建築現場監督と葬儀社スタッフを経て雑誌記者に転身。2010年から故人がインターネットに遺した情報の追跡調査をはじめ、2015年には故人が残したサイトの事例をまとめた『故人サイト』(社会評論社)を刊行。複数の媒体でデジタル遺品等に関する記事を執筆している。
⇒ スマートフォンやパソコン、USBメモリなどに保存されたデータをはじめ、Web上に残るSNSアカウントやブログ、ネット口座情報などを指す。故人が見られたくない情報の流失や、遺族が知らずに放置してしまう事例などが発生している。
ファーストキャリアは現場監督、ハードな環境で考えた「自分は何をしたいんだろう?」
– 古田さんはフリーライターとしてデジタル遺品だけでなく、パソコンパーツなどの記事も執筆されていますが、どのような道を歩まれてきたのでしょうか?
現在はフリーライターと社団法人の理事をしていますが、最初のキャリアは建設会社の現場監督だったんですよ。
– デジタル遺品とも、文筆業とも関係ない業界ですね。なぜ建設会社に勤めるようになったのですか?
僕は高校時代、数学・物理・美術が得意だったので、なんとなく「向いているだろう」という理由で建設学科に入学したんです。その流れで、卒業後は建設会社に就職しました。
働いてみると現場監督はすごくハードな仕事で、起床は毎朝4時、現場に泊まり込むことも多かったですね。
– なかなかハードな環境ですね。
ハードなのは勤務時間だけで、先輩や職人さんは優しくて人間関係は良好でした。
でも、環境が環境でしたから人の入れ替わりは激しかったですね。僕が入社して半年後かな、現場の所長が突然いなくなっちゃったんですよ。残された僕らは出勤時間と睡眠時間を合わせて、毎日の自由時間が5時間しかない生活が続いたんです。
– 睡眠時間を入れて、余暇が5時間ですか? 私なら耐えられません(笑)。
当時はわりとポジティブでしたけどね。しかしながら仕事に忙殺されていたのでプライベートな時間が取れず、「自分はなぜここで働いているんだろう? 何がしたいんだろう?」と考えちゃうわけです。
それで、仕事を辞めて後悔しない道を選ぼうと考えて、出てきた選択肢が「葬儀会社」と「ライター」だったんですよ。