【本記事でお伝えする契約における確認事項】
- フランチャイズの契約期間はなぜ確認が必要か
- 契約期間の計算方法に潜む意外な落とし穴がある
- フランチャイズ契約にかかる費用には何があるのか
- 違約金の金額と発生条件を確認しよう
- フランチャイズ契約のメリットと制約を理解する
- テリトリー権はどのようになっているのかを見る
- 就業規則や商品の制約はあるのか
- フランチャイズ契約のトラブル
フランチャイズでの独立は自ら新規ビジネスや店舗を立ち上げて独立するよりも、成功する確率が高いといわれています。フランチャイズ本部の実績があるマニュアルやノウハウ、すでにネームバリューのあるブランドや商品サービスを開業時から活用できるからです。
しかし、フランチャイズ加盟契約時に注意すべき点を見逃してしまうと、ビジネスの失敗につながりかねません。フランチャイズ加盟時には必ず、「フランチャイズ契約書」によって加盟店とフランチャイズ本部の業務内容や条件を確認します。
フランチャイズ加盟後に後悔したいためにも、本記事では契約時に「ゼッタイに押さえるべき!」ポイントを分かりやすく解説していきます。
フランチャイズ加盟を検討している方は、ビジネスを成功させるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
フランチャイズ契約とは
フランチャイズ契約とは「フランチャイズ本部がフランチャイズ加盟店に、ブランド名や商標の使用権、ノウハウなどを提供する代わりに、加盟店がフランチャイズ本部に加盟金やロイヤリティなどの金銭を支払う」という内容の契約のことを指します。
「契約期間」「加盟金」「保証金」「ロイヤリティ」「商標の使用権や条件」「商品の供給方法」「使用するシステムに関する規約」「秘密保持契約」「更新時の手続き方法」「中途解約」「解約時の違約金」など、ありとあらゆる情報が網羅されているのが契約書です。
https://entrenet.jp/magazine/25755/
フランチャイズ契約の確認項目
フランチャイズ契約は、本部と加盟店間で締結される契約であり、業種や事業形態によって内容が大きく異なります。
そのため、画一的な書式は存在せず、各本部独自の条項が盛り込まれています。
しかしながら、多くのフランチャイズ契約書には、以下のような共通項目が含まれています。
1. 契約の目的:契約締結の目的を定義したもの
2. 当事者の地位:本部と加盟店の名称、代表者名、住所などを
3. 契約期間:契約期間の長さ
4. 商標の使用許諾:加盟店が本部の商標を使用する権利と条件の規定
5. 営業名および所在地:加盟店の営業名と所在地
6. テリトリー制:加盟店の営業範囲
7. 店舗の設備:加盟店の店舗に必要な設備や備品についての規定
8. 営業時間等の遵守事項:加盟店が遵守すべき営業時間や定休日など
9. 商品の供給:本部から加盟店への商品の供給方法や条件
10. 会計の報告義務:加盟店が本部に提出する会計書類の種類や提出期限
11. 開業前の指導援助:本部が開業前に加盟店に対して行う指導や援助の内容
12. 開業後の指導援助:本部が開業後に加盟店に対して行う指導や援助の内容
13. 広告宣伝:本部と加盟店が協力して行う広告宣伝活動
14. 加盟金:加盟店が本部に支払う加盟金の額と支払い方法
15. 保証金:加盟店が本部に支払う保証金の額と返還条件など
16. ロイヤリティ:加盟店が本部に支払うロイヤリティの額と支払い方法
17. 秘密保持義務:本部と加盟店が互いに守るべき秘密情報について
18. 競業の禁止:加盟店が禁止される競業行為について
19. 経営委託、権利譲渡の禁止:加盟店が禁止される経営委託や権利譲渡について
20. 中途解約:契約の途中で解約する場合の手続きと条件
21. 解除:契約を解除できる場合とその条件
22. 損害賠償:契約違反が生じた場合の損害賠償責任
23. 契約終了後の措置:契約終了後の商標の使用、商品仕入れ、顧客情報などの取り扱い
24. 合意管轄:契約に関する紛争を処理する裁判所
25. 協議事項:契約書に記載されていない事項について協議する方法
上記はあくまで一般的な項目であり、個々のフランチャイズ契約書によって内容・名称は異なります。
上記以外にも、フランチャイズ契約書には様々な条項が盛り込まれる場合があります。
契約書の内容は、法律や条例によって規制される場合があります。
フランチャイズビジネスの市場規模やメリット・デメリットなど、基本的なことから知りたい方は、まずこちらの記事を読んでみてください。
https://entrenet.jp/magazine/25755/
フランチャイズの契約期間
契約期間は、1年や2年、3年、5年、10年などフランチャイズ本部によって異なります。
一般的には3年から5年程度の契約が多いといわれています。
では、なぜさまざまな契約期間があるのでしょうか。
ここでは、契約期間の違いによるメリットやデメリットを解説していきます。
契約期間が長い場合
一般的に5年以上の契約期間があるフランチャイズは契約期間が長いといえるでしょう。
5年契約には飲食店が多く、10年契約にはコンビニエンスストアが多いといわれています。
メリットとしては「契約期間が長いフランチャイズの場合、長期的にフランチャイズ本部からサポートをしてもらうことが多い」ということがあげられます。
フランチャイズ本部が投資した額を回収するのに時間を要することが1つの要因です。
しかし、その場合は途中解約した際の違約金は高額であることが多いため、途中で辞めることが難しいというデメリットがあります。
契約期間が短い場合
一般的に、3年契約以下の契約期間の短いフランチャイズは、比較的小さな事業規模であることが多いといわれています。
メリットとしては「契約期間が短い場合、契約の見直しや変更、途中解約などが比較的行いやすい」ことがあげられます。
また長期契約と比較して、投資回収期間が短いことが多く、加盟店も投資回収期間が短くなる可能性があります。
契約期間が短い場合のデメリットは、契約の更新料がある場合にコストが高くなることです。
また更新頻度が多いとその分、加盟店の事務作業が発生し手間になることも、デメリットであると考えられます。
【意外な落とし穴】契約期間の計算方法
契約期間の算出方法もフランチャイズ本部によって異なるので、必ず確認しましょう。
契約開始時として多いのが、「契約締結日」や「オープン日」です。
「契約締結日」を契約開始時点とする場合、出店準備期間も計画期間に含まれることになります。
契約を締結してすぐ、店舗がオープンできるわけではありません。
店舗の取得や内外装工事・店舗設備の導入、さらにアルバイトを含む従業員の採用や研修にいたるまで、場合によっては数カ月間かかることもあります。
そうなると契約締結日が契約期間である場合、加盟後すぐにロイヤリティを支払うという事態も起こり得るため、契約開始日とロイヤリティの算出開始日をしっかりと把握しておきましょう。
ロイヤリティ
ロイヤリティは、一言でいうと「ブランドの使用料」です。
本部に渡ったロイヤリティは、商品開発や広告宣伝、フランチャイズシステムの改善などに使われます。
「売上歩合方式」「定額方式」「粗利分配方式」という3つの計算方式があり、業種や本部によってさまざまです。
業種ごとのロイヤリティの相場などもっと知りたい方は、こちらもご覧ください。
https://entrenet.jp/magazine/25146/
違約金の金額と発生条件
「違約金の有無と金額、算出方法」や「中途解約の定めがあるかどうか」「契約違反があった場合はどうなるのか」などを事前に必ず確認しておきましょう。
契約期間中に解約する場合、違約金が発生する可能性があります。
フランチャイズ本部も加盟店の開業のために時間を割き、コストをかけてきているので、「すぐに辞めたい」と加盟店が希望しても円満解約にはならない可能性が高いです。
さらにフランチャイズ契約時に中途解約の定めがない場合、契約期間中に解約することすらできない場合もあります。
経営していく中で、健康上の都合で加盟店のオーナーとしての役割が果たせなくなってしまったり、社会情勢が変わって当初の見込みよりも大幅に売り上げが伸びなくなってしまったりする可能性もあります。
またフランチャイズ契約に記載されている役割を加盟店が行わなかったり、違反だと判断されたりした場合には「契約解除」という措置も取られます。
具体的には、フランチャイズ本部が共有する店舗営業方法を守らなかったり、フランチャイズ本部のブランドイメージを損ねるような行いをしてしまったりした場合などです。
その場合は解約による違約金だけではなく、損害賠償も請求される可能性があります。
フランチャイズを経営していく中で、契約期間中に何が起こるかは誰にも分かりません。
違約金の算出例としては「契約後〇年以内の解約の場合はロイヤリティの〇%」など、契約期間の長さによっても変わってきます。
違約金や解約金に関するトラブルを避けるため、契約書の事前確認は、怠らないようにしましょう。
フランチャイズ契約の解約・違約金に関してはこちらもご覧ください。
https://entrenet.jp/magazine/13573/
加盟金・保証金の金額と返金条件
加盟店がフランチャイズ本部に支払う加盟金は、商標利用権などの対価です。
契約書に明記された費用や返金条件を確認し、具体的な記載がない場合は詳細を書面など証拠として残る形で確認するようにしましょう。
また、加盟金は基本的には返還されません。
一方、加盟店が金銭債務を担保するために預け入れる保証金は、債務がなければ返還されます。
ただし、フランチャイズ本部によっては債務がある場合に保証金から充当されることもあります。
保証金の取り扱い方法は契約時に定められるため、注意が必要です。
加盟金についてもっと知りたい方は、こちらの記事も読んでください。
https://entrenet.jp/magazine/13132/
テリトリー権
テリトリー権とは、特定の地域における同一フランチャイズの出店制限のことを指し、以下の種類があります。
テリトリー権の範囲の指定方法は「店舗から半径〇km」といった距離で指定する場合や市区町村、行政区画、店舗の最寄り駅などで指定する場合があります。
1.クローズド・テリトリー
本部が加盟店ごとに特定の販売領域を設け、そのエリアでの独占的な販売権を保証する制度
この合意により、出店エリア内に同じフランチャイズのほかの店舗は出店されなくなる
2.オープン・テリトリー
特定の販売領域に出店する店舗数を制限し、上限を超えてテリトリー内に他のフランチャイズ店の出店をさせない制度
店舗数はある程度は制限されるものの、一般的には、フランチャイズの加盟店同士で競争が発生する
ある程度近いエリアに複数店舗を構えることで、配送や人員のシフト管理を共有し、効率化させるなどのメリットがある
3.期間限定テリトリー
開店後一定期間に限って出店数を制限するという制度
制限期間が過ぎたら、他の加盟店による新規出店の可能性は大いにあり
4.優先的テリトリー
特定の販売領域の中に出店を検討する場合、フランチャイズ本部がその領域内の加盟店オーナーに「追加で出店しないか」と優先的に声をかける制度
既存の近隣加盟店に声をかけることで基本的な研修を省いたり、開業準備までスムーズにこぎつけられたりするメリットがある
商標の使用許諾
フランチャイズ契約書には、商標の使用方法に関する詳細な規定が記載されています。
具体的には、以下のような内容が盛り込まれています。
商標の不正利用が認められた場合、「本部からの指導・勧告」だけでなく、契約解除や損害賠償請求が発生する可能性があります。
仕入れ制限条項
フランチャイズ契約において、本部が加盟店に対して商品や材料、備品の仕入れを制限することがよくあります。
ブランドイメージの統一やサービス品質の担保を目的としていますが、加盟店にとって不利益となるような制限は、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」にあたる可能性があります。
具体的には、以下のような条項には注意が必要です。
- 不当な仕入れ数量の強制:本部が加盟店に対して、必要以上に多くの商品などを仕入れることを強制する条項
- 正当な理由のない仕入れ品目の制限:本部が、加盟店が仕入れる商品や材料の種類を、正当な理由なく制限する条項
- 不当な取引条件の押し付け:本部が、加盟店に対して、不当に低い価格で商品を買い取ったり、高い価格で商品を販売することを強制する条項
- 排他的取引の強制:本部が、加盟店に対して、特定の業者からのみ商品や材料を仕入れることを強制する条項
優越的地位の濫用にあたるかどうかは、個々の具体的な状況によって異なるため、判断に迷う場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
競業避止義務
競業避止義務とは「フランチャイズ契約期間中、もしくは契約終了後の一定期間内は自営も含め、同一商業地域で同一の営業を行ってはいけない」というものです。
これは、フランチャイズ本部が提供したノウハウやマニュアルが、ロイヤリティなしに利用されることを防ぐために定められることが多いです。
具体的には以下の点に注意しましょう。
- 既存事業との抵触:すでに複数のフランチャイズに加盟している場合、既存事業が競業避止義務に抵触しないか確認する必要があります。
- 将来の事業計画への影響:将来的に自身で事業やサービスを展開する予定がある場合は、「類似事業」の範囲がどこまでなのか、具体的に確認しておきましょう。
- 契約終了後の禁止期間:契約終了後の禁止期間が不当に長いと感じたら、交渉する余地がある可能性があります。
競業避止義務の内容は、個々の契約によって異なります。
契約書をよく確認し、疑問点があれば、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
売上・利益予測の根拠
加盟店希望者向けに提示される売上・利益予測は、過去のデータや類似店舗の業績などを基に算出されています。
しかし、実際の業績は、立地条件、競合環境、経済情勢など様々な要因によって左右されるため、予測値通りになるとは限りません。
本部から提示された予測値について、以下の点に注意し、納得いくまで説明を受けましょう。
- データの鮮度と信頼性:過去のデータを使用している場合は、そのデータの期間や対象店舗を明示
- 類似店舗の妥当性:類似店舗の業績データを使用している場合は、その店舗の立地条件や競合環境などと加盟予定店舗との類似性を確認
- 予測方法の詳細:予測値の算出方法を詳しく確認
- 将来性への考慮:将来の市場動向や経済情勢をどのように織り込んでいるのか確認
「同業他社のフランチャイズ本部の予測値と比較」「近いエリアの既存店から話を聞き、実際の売上や利益を確認」するなど、複数の情報源から比較検討することも有効です。
法定開示書面との比較
中小小売商業振興法に基づき、小売・飲食のフランチャイズチェーンは、加盟希望者に対して「法定開示書面」を提示することが義務付けられています。
法定開示書面には、本部の事業内容や財務状況、過去のトラブル履歴などが記載されており、売上・利益予測の妥当性を判断する上で役立ちます。
法定開示書面と契約書の内容に矛盾がないか、必ず確認しましょう。
【事例紹介】フランチャイズ契約にまつわるトラブル
中小企業庁もフランチャイズ契約時の注意点として、以下のような過去のトラブル事例を紹介しています。
契約時に十分な説明がなされない、加盟者も契約内容をきちんと理解できていないまま契約締結を進めてしまうケースもあります。
そのような場合は、トラブルの原因となりますので、加盟前に納得がいくまで確認し、説明を求めるようにしましょう。
※リンクの遷移先はPDFです。ダウンロードに大量の通信費がかかる可能性があります
トラブルに巻き込まれないためのポイント
日本フランチャイズチェーン協会の公式サイトには、情報開示書面公開企業がまとめてあります。
小売業・外食業・サービス業の有名フランチャイズチェーンの「フランチャイズ契約の要点と概説」がそれぞれ閲覧できるようになっています。
フランチャイズに変更するか迷った際には、フランチャイズシステムの体制が盤石で担当者と円滑にコミュニケーションが可能かどうか、開業実績のある企業かどうかを1つの判断基準とすることもおすすめします。
参照:FC加盟・独立をお考えの方へ「情報開示書面」|日本フランチャイズチェーン協会
アントレチャンネルで契約について解説しています
アントレでは契約前にチェックすべき内容をYouTubeでも解説しています。
まとめ
フランチャイズ契約に関する不明点は、本部にしっかりと説明を求めましょう。
特に契約期間やロイヤリティなどの加盟店が支払う費用、フランチャイズ契約に伴う制約などは、必ず確認すべき項目です。
契約書にサインしてしまってからでは遅いという危機感を持ち、自分に合った契約内容になるよう交渉しましょう。
中小企業庁にもフランチャイズ契約の際の留意点がまとめられ、日本フランチャイズチェーン協会には代表的なフランチャイズの契約内容が開示されています。
フランチャイズ本部とフランチャイズ加盟店は、あくまでも独立したビジネスパートナーとして対等な関係です。
ビジネスパートナーとして一緒に事業を大きくしていきたいと思えるフランチャイズ本部を選択することが、後悔の少ない決断につながるといえるでしょう。
よくある質問
Q:フランチャイズ契約にかかわる費用はどれくらい?
A:業種や本部により異なるが、開業資金+6か月分のランニングコストと生活費は確保しておいた方が良い
フランチャイズを始めるにあたって、加盟店が支払うべき費用は加盟金や保証金、ロイヤリティだけでなく、以下のような費用が発生することもあります。
- 研修費
- 宣伝広告費
- 設備費
- 更新費 など
フランチャイズ本部によっては、加盟金の中に開業準備のサポート費用が含まれていたり、研修費が含まれていたりすることもあります。
各項目の費用相場や内訳は、本部の方針によって異なりますので、それぞれの費用の内訳として何が含まれているかを確認しておきましょう。
Q:フランチャイズ契約で得られるメリットとは?
A:店舗運営のノウハウやマニュアルの共有、ブランドの利用権、広告宣伝など
加盟店は、ロイヤリティなどを支払う代わりに、本部から店舗運営に関するノウハウやマニュアルの共有を受けることができます。
- 店舗運営のマニュアル
- 従業員の教育指導、研修
- 経営、店舗運営指導
- 売り上げや経費の数値予測 など
マニュアルの作成は店舗経営の中でも非常に工数のかかる作業のため、加盟店としては大幅な作業軽減につながります。
また従業員への研修も、フランチャイズ本部が請け負ってくれるケースがあります。
従業員がフランチャイズ本部によるしっかりとした研修を受けることにより、接客技術などの向上が期待できます。
また経営が初めての場合でも、フランチャイズ本部からのサポートがあるため、安心して経営できるのは大きなメリットといえます。
売り上げや経費の数値予測についても、フランチャイズ本部が持つこれまでの実績やほかの加盟店の実績からより精度が高いデータが得られるはずです。
季節やイベントなどによってどんな需要のバランスがあるのかというデータも、フランチャイズの場合は把握しやすくなります。
Q:フランチャイズ契約は途中で変更できる?
A:民法上不可能ではないが、難しい
フランチャイズ契約は、民法の原則通り、当事者の合意があれば変更が可能です。
しかし合意できずに契約内容を守らなかった場合、違約金や契約解除などのペナルティーが発生する可能性が高いです。
<文/北川美智子>