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企業買収で就業規則はどうなるのか? リスクをうまく成果につなげるには……

独立ノウハウ・お役立ち

企業買収で2つの会社が1つになると、2つの就業規則が存在することになります。

2つの規則で業務をすると混乱してしまうので、1つにしないといけません。

例えば、出勤時間が8時始まりと9時始まりとでは、どちらかに統一しないと業務に支障が出てしまいます。

では、どちらの就業規則を正とすべきなのでしょうか。

なぜ企業買収で就業規則統合が必要なのか?

1つの会社に就業規則が2つあっても、良いことはありません。

先ほど例に出したように出勤時間が違ったらどうでしょうか。

朝礼を行っている会社では、朝礼で必要な事項を共有することでその日の業務がスムーズに進むように調整します。

ですが、朝礼を同じ時間に実施するには、就業時間のスタートが同じでないといけません。

企業買収での就業規則関連リスク

1つの会社に勤務する社員に異なる就業規則が適用されると、円滑な業務運営の妨げになります。

所定労働時間は7時間もあれば8時間もあるでしょう。それが変われば、時間外労働時間の取り扱いなども変わります。

出社時間・退社時間などの労働時間、年間休日や休暇の取得条件・付与日数、割増賃金(残業代)や定年など、日々の業務遂行に直接影響する労働条件が1つの社内で複数あれば、日々の業務が円滑に進みません。

そして意外と忘れがちなのが、日々の通勤手当や出張旅費などの部分です。

企業買収後すぐにでも就業規則統合を実施しないと、業務を行う上で支障をきたします。

労働日数や有給休暇の日数、手当などについて出身会社による格差が発生する場合、低い水準の就業規則が適用された社員はモチベーションが確実にダウンしてしまいます。

就業規則の統合を行う場合、法的リスク、つまり“労働条件の不利益変更”の問題もあります。

例えば、所定労働時間を8時間に統一するとします。

すると、今まで7時間働けばもらえていた賃金が、8時間働かなければもらえなくなってしまいます。

これはまさに不利益変更です。このようなリスクを回避しながら、就業規則を統合しなければならないのです。

それぞれの会社にとって一部の条件が良くなったり、悪くなったりすることは一般的です。

変更による影響がどの程度あるのかを確認し、マイナスの影響が生じる場合には注意深く手を打ちましょう。

就業規則を統合する場合の流れ

①就業規則の比較表を作成する

まずは2社の就業規則の比較表を作成し、各社の規則の相違点や差異の大きさを分析します。

表面的な金額や仕組みの違いの比較だけでなく、各社の差が生じている原因まで究明しましょう。

理由としては、ビジネス上の競争優位性や人材採用上の優位性のために設定されている場合が多いからです。

②業務遂行上、重要な労働諸条件から統合する

企業買収は、従業員にとってはいきなり実行されたと感じることが多いです。

そのため、業務遂行上、重要な労働諸条件から統合を行う必要があります。

特に、日常の業務遂行に直接影響を与える労働時間や休日・休暇、出張旅費に関する事項などを優先的に統合します。

③ビジョンの見直しと再度の制度設計

新会社の経営環境やあるべき人事制度の方向性、制度設計などの事前策定が必要です。

事前策定の前には、企業ビジョンを再度検討し骨太の改正も行いましょう。

④社員コミュニケーションを確実に実施する

最後に重要なのが社員コミュニケーションです。

各社労働組合・従業員代表との協議、意見聴取、従業員説明会の実施などがあります。

就業規則の統合にあたり、統合前の労働諸条件がすべて維持されることはまずありません。

就業規則統合の趣旨を理解し納得してもらうため、従業員に対し段階的にコミュニケーションを図ることが重要です。

会社のビジョンをあらためてアピールし、従業員に夢を与え、ビジョンに基づく労働条件の変更であり、就業規則の統合であるということを、経営者が熱く語ることが必要ではないでしょうか。

会社買収時に就業規則以外に注意するポイント

有給休暇の扱いに関しては、各従業員の勤続年数が引き継がれるかどうかで変わります。

会社株式譲渡の場合は継続されるので問題はないのですが、事業譲渡の場合、転籍先企業と労働契約を結び直します。

そのため、有給休暇の取得可能日数はリセットされます。

しかし、実務上は従業員からの不満を生まないために譲渡前の有給休暇を引き継ぐこともあるようです。

そして、退職金です。

多くの企業は退職金を就業規則で定め、多くの場合、勤続年数に応じて金額が決定します。

そのため、ここでも「勤続年数が引き継がれるかどうか」がポイントとなるのです。

会社株式譲渡の場合には会社がそっくり譲渡されますので、退職金はそのまま継続年数が引き継がれ、転籍先での退職金制度で再スタートになります。

事業譲渡の場合は勤続年数を引き継ぎません。

一般的には、累積した退職金をそのまま持ち越し、以降は転籍先の会社規定に従って累積させていくか、もしくは、一度退職金を清算してそれ以降は転籍先の会社規定に従うかのどちらかを選ぶことになります。

まとめ

就業規則の統一化は重要です。

現在多くの方が困っている問題に、未就学児の保育や自宅介護などがあります。

これをスムーズに進めるためには、朝に大切な共有事項を確認し、それを確実に1日の業務の中で実施していくことが大切です。

特に、子どもをもつ方がいる場合、その会社を退社するときの時間が明確であれば、それに合わせて他の人もそれぞれの業務を調整できます。

今は働き方改革が問われています。

1日の業務をスムーズに進めるためには周りとのコミュニケーションが何より大切であり、それを可能にする“就業規則”が、会社の基本文書としてますます大切になってきます。

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PROFILE
平松徹

社会保険労務士
上智大学卒業後、空調機販売会社に勤務、経営管理/営業企画を担当した。その後ビジネススクールでマーケティング/財務/人事労務の講義を担当。1998年にマネジメント/人事労務/街づくりコンサルタントとして独立した。

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