会社が嫌いなわけじゃない。
仲間がいた。安定があった。愛着があった。
でも独立しないと、できないことがある。手に入らないものがある。
そんな思いで、会社を「卒業」していった先輩起業家に、話を聞いた。
慣れ親しんだ環境から一歩踏み出す時、胸に去来したものは。
オープンイノベーションの支援/角 勝さん
趣味に生きる時間がとれそうだから公務員。思えば、安易な選択でした。
実際はすごく忙しくて異動も頻繁。計算違いでしたね。「社会的な意義があるんだから」と自己洗脳して、仕事してました。
でも、こどもが生まれた瞬間、考えたんです。「置かれた場所で咲きなさい」という言葉もありますが、それで本当に生きていると言えるのか。世の中をよくするために最善を尽くすべきじゃないか、と。
新潟県燕市主催のオープンイノベーショ ンイベント「TSUBAME HACK!」参加者と。
大阪のイノベーションハブの立ち上げを機に、多くの企業や自治体とつながりました。
僕は未来的なガジェットや家電が大好きで、新製品とか特許情報に目がないんです。おかげで誰と話しても話題には事欠かない。「この人とあの人を引き合わせたら面白い」なんてことも、感覚的に分かるんです。この仕事なら自己洗脳がいりません。きっと天職なんです。それをまた異動で失うわけにはいかない。
自身の登壇機会も多数。
独立前は、散々言われましたよ。「公務員だから面白がってもらえるんだぞ」。
確かに、フットワークの軽い変わった公務員としてイベントに呼ばれたり、雑誌にも取り上げてもらっていました。
でも、SNSにアップした退職エントリに「いいね」が1300ぐらいついたんです。
僕が公務員でなくても応援してくれる人が、目に見えた。あれは泣けました。
PROFILE
角 勝さん(46歳)
(株)フィラメント/大阪市中央区
大阪市役所出身。2012年からは「大阪イノベーションハブ」の設立・運営に携る。15年に退職。オープンイノベーションによる新規事業開発や人材開発などを行う。取材場所は、自身も立ち上げに参画したコワーキングスペース「THE DECK」。
構成・文/東 雄介
撮影/刑部友康、片桐 圭、阪巻正志、宮田昌彦
アントレ2019.冬号
「安定、肩書、仲間・・・雇われるよさもあったけど『私、会社を卒業しました!』」より
撮影/刑部友康、片桐 圭、阪巻正志、宮田昌彦
アントレ2019.冬号
「安定、肩書、仲間・・・雇われるよさもあったけど『私、会社を卒業しました!』」より