今回は、中小企業のオーナー(株主)が自社を売却する際に発生する主な手数料についてまとめます。
M&Aにおける手数料概要
自社を売却する場合、株式譲渡が最も一般的なストラクチャーですが、外部専門家(アドバイザー)を起用することで、株式譲渡を円滑化することができます。
手数料を支払先別に列挙すると、主に以下の3つが挙げられます。
①会計・税務アドバイザーに支払う手数料
・買い手に求められる資料(税務申告書や決算資料など)の準備
・売却時の税務手続きなど
②法務アドバイザーに支払う手数料
・株式譲渡契約書ドラフト、交渉、締結
・売却時の法的手続きなど
③財務アドバイザーや仲介会社に支払う手数料
・買い手の紹介
・各アドバイザーとの調整をはじめとする取引全体の進行など
これらはアドバイザーを起用しなくても取引を実行できますが、当該取引の適法性や税務適格性を担保するためにはアドバイザー起用が望ましいでしょう。
M&Aで発生する手数料の種類と相場
上記内容に準ずる場合、①②についてはそれぞれ<数十万円~>が相場です。もちろん、業務内容を限定することで金額を抑えることはできますが、前述した理由で抑えすぎることはおすすめしません。加えて、買い手が対象企業をデューデリジェンス(Due Diligence、精査)することでアドバイザーへの負担が増える場合は、タイムチャージなどで手数料が増加する可能性があります。
③は、<着手金+成功報酬>というパターンが多いです。着手金は請求されないケースもありますが、①②と同様に<数十万円~>が相場となります。
成功報酬は固定金額の場合、<株式譲渡金額等などの●%>のように取引規模に応じてインセンティブがつくケースもあります。成功報酬の発生時点は“株式譲渡完了時”が一般的ですが、“株式譲渡契約完了時”に一部を前倒しで支払うのもパターンの一つです。
そのほか、各アドバイザーの交通費(例えば、取引過程の中で遠方の工場見学などにアドバイザーを同席させる場合に発生する)など実費分を請求されることもある点と、株式譲渡以外のストラクチャー(事業譲渡など)を選択した場合、取引内容が複雑になるほど手数料は高めになる点は留意が必要です。
M&Aにおいて仲介会社を介するメリットとは
大きく分けて2つのメリット(期待できる機能)があります。
(A)取引相手の発見・発掘
仲介会社には売り手・買い手の情報が蓄積されており、これらを用いることでマッチングが容易になります。例えば売り手の場合、「株式譲渡価額は●円以上」「買い手は●●業界の会社がいい」といったように前もって仲介会社に要望を伝えておけば、それに沿った会社に声がけをしてもらえます。「△△社にお声がけしてほしい」というピンポイントでの依頼も可能です。
(B)取引実行におけるリード役
取引相手が決まれば、相手方とのやり取りが発生します。仲介会社はほかのアドバイザーと連携しながら相手方からの要望を受け止め、利害を調整しながら取引を進めてくれます。
最適な仲介会社の選び方
上記内容に準ずる場合、まず仲介会社が“どれだけ幅広く深いネットワークを持っているか”が重要になります。「紹介してくれる先が的外れ」「意中の先にたどり着けない」などは避けなければなりません。
また、秘密保持を遵守してマッチングを進めてくれるかも重要なポイントです。「□□社が売りに出ている」などの噂が立ち、従業員が不安になり離職につながれば、企業価値を棄損することになりかねません。
最も重要なのは、「自社サイドの利益を最優先してくれるか」です。仲介会社の場合、売り手と買い手両方の間に入るためどうしてもこの点が弱くなりがちです。「取引において絶対に譲れないこと」はあらかじめしっかり伝えましょう。そして、それが達成されない場合は取引自体をやめる、といった勇気ある決断も必要となるケースも出てきます。
これを防ぐためには、仲介会社ではなく、売り手・買い手のどちらかのサイドにしか立たない財務アドバイザーを起用することも一つの方法です。この分野は経験がものを言う世界なので、選定の際には「過去どういった取引を扱っているか」「自社のようなケースはあるか」を聞いてみるといいでしょう。
まとめ
創業してしばらく時間が経過し自社のみでは事業が伸び悩むケースや、後継者が不在のケースなどは、M&Aが有力な選択肢となります。一方で、専門的な知識が求められる領域なので、手数料を払う価値のあるアドバイザーを起用して稚拙な取引を行うことを避けることをおすすめします。
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