事業承継という言葉を知っていますか? 事業承継とは、会社の経営を後継者が引き継ぐこと。
実はこの事業承継がうまくいかずに会社を畳まざるを得ない、いわゆる「隠れ倒産」をする会社が年々増えているのです。
今回お話を伺ったのは、葬儀・仏事アドバイザーで、一般社団法人継活推進協会の代表理事である冨安達也さん。
冨安さんが代表を務める継活推進協会では、個人や会社の資産や事業、なにより「想い」を次世代に繋げる(継活)ために、様々な活動をされています。
今回はそんな冨安さんのキャリアを振り返ると共に、個人や会社が“継活”を進めることの重要性について伺いました。
冨安達也さん
葬儀・仏事アドバイザー・一般社団法人継活推進協会 代表理事
愛知県出身。
高校卒業後、東証一部の葬儀会社「燦ホールディングスグループ」(株)公益社に入社。以降3大都市圏の複数の葬儀社に勤務し、命の尊さや死生観を学ぶ。
22歳のときに、厚生労働省認定一級葬祭ディレクターを最年少で取得。
葬儀担当以外にも葬儀会館の店舗開発、他葬儀社の調査を行い、葬儀ビジネスの提案を行う。
10年間で1000件以上の葬儀を担当し、葬儀前後のサポートの必要性を実感。
2018年、一般社団法人継活推進協会(けいかつすいしんきょうかい)を発足。全国初の実務経験を経た葬儀アドバイザーとしても活躍中。
葬儀業界は完全分業制? 「人の死」における構造的な課題に、感じた違和感
―冨安さんの経歴から教えてください。
この業界で働いていると、幼い頃に「死」というものに直面する出来事があったのですかと聞かれることがよくあるのですが、私の場合はそんなこともなく、いわゆる普通の学生時代を送っていました。
もちろん子どもの頃から、葬儀の仕事に興味があったわけでもありませんでした。
―そんな冨安さんが葬儀業界に入るきっかけはなんだったのでしょうか?
1つだけ、人と違ったことがあるとすれば、父の存在ですね。
葬儀会社の一管理職だった父が、私が小学生の頃に独立し、株式会社ティアという葬儀会社を立ち上げました。
創業から1代にして、葬儀社として2社目の東証一部上場を果たした父だったのですが、家では全くと言っていいほど自分の仕事について話をしませんでした。
仕事の楽しさはもちろん、仕事の不平不満や愚痴までも、とにかく仕事に関する話を家ですることはありませんでした。
高校を卒業する前、進路を決めるタイミングでそんな事に気づき、ふと父の仕事って一体どんな仕事なのだろう、と思うようになりました。
そこで地元愛知から離れ、大阪に本社がある(株)公益社に入社しました。
―きっかけは、お父さまの仕事への興味からだったのですね。実際に働かれてみて、いかがでしたか?
人の「死」と向き合う仕事です。悲しみに暮れているご家族と接することは並大抵のことではありません。
しかし、ご遺族より心から感謝の言葉を頂ける仕事であり、本当にやりがいのある仕事です。
公益社に入社後は、数度別の葬儀会社に転職をして、大阪、東京、そして地元名古屋とさまざまな場所・会社で「人の死」を見届けてきたのですが、次第に業界に関する、ある課題感が自分の中で芽生えてきました。
―どのような課題感だったのでしょう?
葬儀会社は、「人生最後の時」に関して「包括してサポートはできない」ということです。
当たり前のことなのですが、葬儀会社は基本的に、お通夜とお葬式・法事などにしか関わることがありません。しかし「人生最後の時」において、お通夜とお葬式だけが必要なわけではありません。
お通夜・お葬式はもちろん、生前なら介護、認知症の問題、相続問題、亡くなった後もお墓の設置や管理の問題など、課題は実に多様に存在します。
介護なら医者や介護士、相続なら税理士や司法書士などの士業の方、お葬式なら葬儀会社、お墓なら墓石会社やお寺など、現状ではそれぞれの専門家に依頼することになります。
そしていずれも決して安い金額で依頼できるものばかりではありません。
―「人生最後の時」において発生する問題が多すぎるが故に、事前準備をしておく必要がある、ということですね。
はい。そこで「人生最後の時」を包括して支えることができないかと考え、立ち上げたのが「一般社団法人継活推進協会(けいかつすいしんきょうかい)」だったのです。