大学卒業後、学生時代にアルバイトをしていた大手の学習塾に入社。退職後、フランチャイズの学習塾を開業。雑誌の取材を受けるなど経営は順調だったものの、理想とする塾のスタイルと違うと感じ塾を閉める。その後、大手の個別指導塾に入社し、個別指導の運営方法などを勉強。退職後、2017年4月、神奈川県に「子別指導塾らぼ」という塾を開校。その3カ月後には黒字化し、現在は「子別指導塾らぼ」の2校目をフランチャイズで開校したいという知人のため、開業準備も手伝っている。
今までの経験を生かして独立開業したい、と考えている方も多いのではないでしょうか。山本さんは新卒で大手の学習塾に入社し、その後フランチャイズの塾を開業。雑誌にも取り上げられるほど経営はうまくいっていたものの、自身の信念に合う塾を開業しようとフランチャイズの塾を閉めることを決意。その後、大手の学習塾に転職したのち、2017年4月、神奈川県に個人経営の学習塾を開校。塾業界で培った経験、フランチャイズの塾開業経験を生かしながら、信念をもって開業に取り組んだ1年を振り返ります。
塾業界を熟知しているからこそ、同業他社との差別化を意識したという山本さん。
例えばインテリアと内装。「生徒たちが通いたくなるような、おしゃれな雰囲気の塾をつくりたい!」と、カフェのような優しく落ち着いた雰囲気になるよう、壁紙や照明などにこだわりショウルームをいくつか回り、1つずつ選んでいきました。インテリアなどは開業前から「開業したら、塾にこういうものを置いたら良いのではないか」と思うものをチェックしていたそう。セレクトしたのは、おしゃれかつ勉強に興味を持つきっかけとなるようなものでした。参考書と並んで地球儀や顕微鏡なども設置。さらに、教室内にはアロマオイルも導入しました。
集客手段としてのチラシにも工夫がありました。他塾のチラシに埋もれないようにデザインをシンプルにしたと言います。また、通常の紙の2倍近いコストをかけて厚めの紙にするなど細部にまでこだわりました。実は、この紙質を厚くしてほかのチラシに埋もれないようにするというヒントは本で読んだ他業界の事例を取り入れてみたのだといいます。また、ほかの塾が「夏期講習」を謳っているときは、敢えて同じことを謳う必要はないと判断し、塾の雰囲気が伝わるようなシンプルなチラシにこだわりました。
開業前の準備はタスクが並行して進み、忙しかったと思うのですが、お話を伺うたびに常に状況は変わっており、ポンポンと前に進んでいるように見えました。ただ、開業時、初めてチラシを作成するとき、どこにデザインを依頼して良いのか、ポスティングはどの業者に依頼して良いのかわからず、チラシの作成は近隣のプリントショップで、ポスティングは実際に配っている人に声をかけたといいます。この行動もとても早く、行動力と決断力を発揮していました。
生徒さんへの指導方法にもこだわりが。まずは勉強を楽しんでもらうこと、勉強を習慣にすることを大事にしています。生徒さんには自習に来てね。と声をかけ、来てくれたらありがとうと伝えることで、授業のない日でも自習に来る生徒の数は過去に勤めたどの塾に比べても多いという結果になったそう。生徒の親御さんからは「いつも楽しそうに塾に通っています。たくさん面倒を見ていただいてありがとうございます」という言葉をもらったときは、とてもうれしかったそうです。
こだわりや工夫の効果と、何より生徒たちのことを第一に考えた指導が実を結び、生徒数は順調に推移。講師業をサポートするスタッフも徐々に増えています。経営も非常に好調で、なんとわずか3カ月目で、年間財務見立てでは黒字化という状況になりました。
さらには塾業界にいる知人から山本さんの「子別指導塾らぼ」のFCで2校目を開校したい、というオファーが来るまでに。開校予定地域の物件探しに同行したり、開業時に依頼した内装業者に2校目の内装も依頼できるか確認を取るなど徐々に準備を進めているそうです。
今後の経営目標は、赤字を出さずに長く続けること。生徒さんのためにはそれが一番大切だという山本さん。2校目が開校した際は経営を軌道に乗せることも大切です。だからこそ欲張らずに一歩一歩進めていきたいと話していました。その堅実さも経営がうまくいく要因なのではないでしょうか。
最後に、アントレの密着取材を受けた感想を伺ったところ、「一年間ありがとうございました。色々と聞かれることで、自分の考えが整理できたり、無意識に行っていたことを言葉にすることができたりして、とてもよかったと思います。こちらも色々なお話を伺うことができて楽しかったです」とのお言葉をいただきました。
経験を生かしながら、「人が人を教える塾をつくりたい」という信念に基づいてここまで歩んできた山本さん。取材中も予定より早く生徒さんが自習にきたり、登下校中の小学生が外から覗き込んでいる様子を見かけることがあり、既に地域にとって、なくてはならない塾になっているのだと実感しました。きっとこれからも山本さんの信念を軸に生徒や親御さんに愛される塾となるでしょう。
年間密着取材を終えて
経験業種・業界で独立開業すれば必ずしもうまくいくという保証はありませんが、経験があるからこそアドバンテージがあるというのは確かです。
山本さんのように、今までの経験を生かしながらも、業界の常識に縛られることなく新たな視点をプラスし挑戦し続けること。さらに揺らぐことのない信念を持つこと。山本さんを通じて、挑戦と信念の掛け合わせが成功の秘訣であることを学んだ1年でした。
ありがとうございました。
「-Season2-長期密着取材! 独立開業への道365日」シリーズ
次回の更新は、2017年12月8日(金)。
2年後の定年までにどう独立するかを決めたい林原さん編(総集編)予定。
数々の選択肢で迷う日々を経て。 お楽しみに!
更新日:2017/12/1文:篠原舞 撮影:中村公泰
- 第1回 “人が教える”という基本に立ち戻り 理想の学習塾を2017春に立ち上げたい
- 第2回 昨年12月に開業場所が決定 融資申請とともに内装や看板手配を進める
- 第3回 日本政策金融公庫との創業融資面談も終え、着々と進む開業準備
- 第4回 融資も満額おりて、内装工事を開始。いよいよ準備も本格的に!
- 第5回 業界を渡り歩き、理想の塾を開校。当面は販促より内部充実に注力予定
- 第6回 生徒さんたちの成績を上げることを第一に考え、授業に集中する日々
- 第7回 個人で独立した今、フランチャイズの開業経験が生きている
- 第8回 開校3カ月。月割で収支計算すると既に黒字化!
- 第9回 収支計算に捉われすぎずに開業3カ月で黒字化できたワケ
- 第10回 集客成功のカギは“紙にこだわったチラシ”
- 第11回 来春開校? 開業5カ月で2校目の準備を開始
- 第12回 最終回 塾物件のポイントは、利便性ではないところに…
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