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自営業 年収と手取りの差は?会社員との比較で見える真実

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自営業と会社員の年収は、なぜ比較が難しいのでしょうか?

年収1,000万円の自営業と、年収500万円の会社員。数字だけ見れば自営業のほうが「儲かっている」と感じるかもしれません。ですが、実際には経費や税金の仕組み、保障制度の違いによって、手元に残る金額=手取りはまったく異なります。

たとえば、会社員は税金や社会保険料が会社によって管理され、収入に応じた負担も比較的明確です。一方で自営業者は、収入の中から仕入れや家賃・通信費などの「経費」を支払い、自分自身で手取りをコントロールする必要があります。

本記事では、自営業と会社員の年収や手取りの違いを以下のような視点でわかりやすく解説していきます。

  • 「年収」と「所得」とは何が違うのか
  • 業種別の自営業の収入相場
  • 自営業にかかる税金と確定申告の注意点
  • 自営業の節税テクニックや控除制度
  • 向いている人のタイプや判断基準

数字の裏側にある「仕組み」までしっかり理解すれば、より納得感のあるキャリア選択ができるはずです。

自営業者の年収と、サラリーマンの年収を比較

国税庁の調査により、平成30年の自営業者の平均年収は417万円、サラリーマンの平均年収は422万円だということが明らかになりました。

参考:国税庁|平成30年分民間給与実態統計調査結果について 国税庁|申告所得税標本調査結果

ただし、上記は年収から経費や税金を引いた、手取り金額の比較です。

自営業者は、年収から商品の仕入れ代金や経費、保険料を支払わなければならず、年収と手取り金額の差が大きくなりやすいと言えます。

一方、自分で経費を支払う必要がなく、保険料も半分は会社が支払ってくれるサラリーマンは、年収と手取り金額の差が開きにくいです。

まずは、自営業者とサラリーマンの年収と所得に対する考え方を見ていきましょう。

自営業者の年収と手取りとは

例えば、年収1,000万円と聞くと、一般的には「結構もうかっているな」と感じる人が多いでしょう。

しかし、自営業者は商品の仕入れ代金や経費(事務所代、光熱費、人件費、備品代等)を、自分で支払わなければなりません。商品の仕入れ代金がない場合でも、経費が多額にかかれば赤字になってしまい、手取りは減ってしまいます。

赤字のために、自分の貯蓄をから事業に必要なお金を持ち出さなければならない場合もあります。特に開業2~3年は、赤字になるケースが多いものです。

反対に、年収が500万円であっても、経費がほとんどかからない場合はどうでしょうか。自宅で仕事をし、一人で事業を行って、経費がほとんどかからなければ、いくら税金や社会保険料(国民年金・健康保険)を支払っても、手取りは500万円に近い数字になります。

自営業者の場合は、商品の仕入れ代金や経費によって、手取り金額が変わります。単純に年収を見て「儲かっている、儲かっていない」とは言えないのが事実です。

サラリーマンの年収と手取り

サラリーマンの年収は、1年間の給与とボーナスを合計した金額です。年末に会社からもらう源泉徴収票の「支払金額」に記載された金額を見れば、税込の年収がわかります。

源泉徴収票の「支払い金額」が、会社からの総支払額です。

年収から社会保険料や税金が引いた、残りの金額が手取りとなります。社会保険料や税金は、収入が多くなるほど高くなります。

例えば、年収が500万円の場合、家族の人数等によっても異なりますが、だいたい400万円から350万円が一般的な手取りです。

つまり、年収がわかればある程度の手取りもわかるのです。

自営業者の年収とサラリーマンの年収の大きな違い

自営業者とサラリーマンの年収の大きな違いとは、何でしょうか?

さまざまな違いがありますが、中でも大きな違いは「年収から、手取り金額がどのくらいになるのか、わかるかどうか」です。

サラリーマンは、社会保険料や税金はほぼ決まっているため、年収がわかればだいたいの手取りもすぐに推測できます。

自営業者には、商品の仕入れ代金や経費の支払いがあり、金額は人によって異なります。自営業者は、年収がわかっても、どのくらいの金額が手取りとして残るのか、すぐにはわかりません。

自営業者の場合は、年収ではなく所得を見て、収入を判断をします。

所得とは、年収から仕入れ代金や経費を引いたものです。
所得から社会保険料控除や扶養控除等を引いた「課税所得」に対して、税金がかかります。

所得が少ないほど、税金のかかる課税所得も少なくなります。税金を少しでも安くするために、経費を増やして所得を減らしている自営業者もいるほどです。

自営業の所得・収入・年収・経費の違いとは?

年収と所得の違いがよく分からなくて不安ですよね。それぞれの意味と関係性を整理するとすっきり理解できます。

一緒に確認していきましょう。

年収と所得の具体的な違い

「年収が高い=儲かっている」と思っていませんか?
実は、自営業ではこの考え方はあてはまりません。自営業の「年収」とは、1年間に得た売上の合計です。一方で、実際の手取りに近いのが「所得」。年収から必要な経費を差し引いた残りの金額です。

例えば、年収1,000万円のフリーランスがいても、経費に800万円かかっていれば、所得は200万円にすぎません。つまり、所得=本当の儲けです。

給与で収入を得る会社員と違い、自営業では仕入れや広告費、家賃や通信費など多くの費用を自分で負担します。「経費」を考慮せずに年収だけを比較しても、実態は見えてきません。

「経費」で変わる手取り

自営業者の手取りを左右する要素が「経費」です。なぜなら、経費は税金を減らすために活用できるからです。経費として認められるものには以下のようなものがあります。

  • 事務所や店舗の家賃
  • 電気・水道・インターネット代
  • 商談に使った交通費や飲食費
  • パソコンや備品などの設備費用

売上の中から事業に必要な支出を「経費」として引くことで、所得が圧縮され、結果として支払う税金が減ります。つまり、同じ年収でも経費の使い方次第で手取りは大きく変わるのが自営業の特徴です。

個人事業主・自営業者の平均年収と業種別の相場

自営業の人はどれくらい稼いでいるのか気になりますよね。業種や職種ごとの相場を知ることで自分の立ち位置が見えてきます。

具体例とともに見ていきましょう。

業種別の収入相場

自営業と一口に言っても、業種によって収入は大きく異なります。以下は、代表的な業種ごとの平均年収相場です。

業種年収の目安
Web系フリーランス500万〜800万円
飲食業200万〜500万円
美容サロン250万〜600万円
士業(税理士・社労士など)600万〜1000万円
物販(EC)300万〜700万円

たとえば、WebエンジニアやデザイナーなどのIT系は、設備投資が少ないため経費率が低く、所得率が高い傾向があります。反対に、飲食業のように初期投資や毎月の固定費がかさむ業種では、利益が出にくいこともあります。

職種ランキングTOP5

収入が高いとされる人気の自営業職種TOP5を見てみましょう。

  1. 税理士・公認会計士
     専門資格が必要で希少価値が高く、顧客単価も大きいのが特徴です。
  2. ITフリーランス(エンジニア・デザイナー)
     技術職として高単価な案件が多く、需要も年々高まっています。
  3. コンサルタント(経営・SNS・マーケティングなど)
     企業の課題を解決するスキルがあれば、高額報酬も夢ではありません。
  4. ネットショップ運営・物販(Amazon、BASEなど)
     在庫管理や発送の効率化で利益率を上げられる仕組みがあります。
  5. 講師・インフルエンサー・オンラインスクール運営
     知識・スキルを販売するビジネスモデルで、初期費用が少なく始めやすいです。

すべて「スキル×仕組み化」が鍵。最初は苦労しても、時間をかけて信用や実績を積み上げることで安定収入が見込めるのが特徴です。

自営業にかかる主な税金と計算方法

自営業にかかる税金って多くて複雑ですよね。基本の税金と計算方法を知れば、怖がらずに対応できます。

順を追って解説していきます。

所得税・住民税・消費税の内訳

自営業者が支払う主な税金は次の3つです。

  • 所得税:所得に応じて課税される国の税金。課税所得が増えるほど税率が上がる「累進課税制度」が適用されます(例:195万円以下は5%、330万円以下は10%、695万円以下は20%など)。
  • 住民税:原則10%(所得割+均等割)で、前年の所得に基づいて課税されます。
  • 消費税:売上が1,000万円を超えると、翌々年から課税事業者となり、売上に対して10%の消費税を納める必要があります。

自営業は、すべて自分で計算・申告して納める必要があるため、税金対策や会計知識が重要です。

確定申告で注意すべきポイント

自営業者は毎年1月〜12月の売上と経費をまとめ、翌年の2月中旬〜3月中旬までに確定申告を行います。ミスを防ぐために以下のポイントに注意しましょう。

  • 帳簿は毎月つけておく
     年末にまとめて作業するとミスや記憶違いが発生しやすくなります。
  • 経費の領収書は必ず保管する
     レシートでも経費にできる場合があるため、原則7年間の保管が必要です。
  • e-Taxの活用で控除が増える
     電子申告を行うことで、青色申告特別控除65万円が適用されやすくなります。

申告ミスや未納があると、延滞税や加算税などのペナルティが発生する可能性もあるため、正確な帳簿管理と早めの準備が大切です。

自営業が節税のために使える控除・仕組み

できるだけ税金を減らしたいと思いますよね。正しい制度を活用すれば合法的に節税が可能です。

具体的に確認していきましょう。

青色申告のメリット

青色申告には、節税メリットが多くあります。主な特典は以下の通りです。

  • 最大65万円の特別控除が受けられる(複式簿記&電子申告が条件)
  • 赤字を3年間繰り越し可能
  • 家族への給与を経費として計上可能(専従者控除)

白色申告では得られない制度です。特に青色申告控除65万円を活用すれば、課税所得が抑えられ、結果として数万円〜十万円単位で税金が減るケースも珍しくありません。

家事按分・専従者控除の活用法

自宅の一部を仕事で使っている場合、光熱費や通信費を「家事按分」として一部経費にできます。たとえば、仕事部屋が自宅の25%を占めるなら、家賃や電気代の25%が経費になります。

また、配偶者や家族を業務に関与させている場合には「専従者控除」を使って、給与を支払う形で所得を分散させることが可能です。家計としての手取り総額が増える仕組みが作れます。

自営業として副業をするサラリーマンの、驚きの年収とは

自営業者の年収は、所得とは大きく異なるということはおわかりいただけたでしょう。実は、年収と所得のカラクリを利用して、サラリーマンが税金を安くすることができます。

例えば、サラリーマンとしての本業とは別に、自営業として副業をしたとします。自営業の副業がうまくいかずに赤字が出た場合、赤字をサラリーマンの所得から引いて、課税所得を減らすことができるのです。

ただし、会社の年末調整ではなく、自分で確定申告をしなければなりません。

ライターとして報酬をもらったり、自営業としてネット販売などをしたりして得たお金は、給与ではありません。なので、事業所得として申告できます。

事業所得は、売上から経費を引くことができます。さらに、赤字となったときには、赤字分の数字を給与所得から引くこともできるのです。

つまり、年末調整で確定した給与の税金から自営業の赤字を引くことで、確定申告によって還付を受けることになります。

サラリーマンとしての給与をもらいながら、自営業を行うことで年収は増えます。しかし、年収が増えた分だけ税金も増えるのではなく、反対に税金が少なくなる(=還付を受ける)という驚きの結果です。

ただし、自営業で黒字が出ている場合は、もちろん税金も高くなるので注意しましょう。

自営業は年収ではなく、所得が重要

自営業者の年収とサラリーマンの年収には、手取り金額の違いがあります。

サラリーマンは、年収から引かれる社会保険料や税金を調整し、手取り金額を自分で操作することはできません。しかし、自営業者の場合は、同じ年収でも経費をどう使うかによって、手取り金額は異なってきます。

全てではありませんが、経費はある程度、自分で調整できます。高い備品を買って経費を増やしたり、経費を切り詰めたりということができるのです。

自営業者の収入を判断するうえで、年収はほとんど参考にされません。所得によって「儲かっているか、儲かっていないか」を判断されます。

自営業者の場合は、所得が非常に重要となりますので、所得の数字に注目してください。

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