CATEGORYカテゴリー

個人事業主の確定申告に103万円の壁は関係ある?初めての申告前に知っておきたい豆知識

申告・納税

サラリーマン時代は会社がやってくれていた所得税の計算ですが、個人事業主になったら、自分で計算し、税務署に申告しなくてはなりません。

面倒だな、と思われる方が多いでしょうが、個人事業主なら誰もが通る道です。しっかり準備して臨みましょう

今回の記事では、今話題になっている「103万円の壁」というトピックも絡めて、個人事業主が確定申告する際の留意点を紹介していきたいと思います。

果たして、個人事業主は、所得を「103万円以下に抑える」といった事を、気にしなければならないのでしょうか?

初めての方にもわかりやすいように、丁寧に解説していきます。

個人事業主の確定申告

「確定申告」とは、1月から12月までに稼いだお金(収入)や儲け(所得)を計算して、所得税や消費税といった税の納付額を税務署に申告することです。

サラリーマン(給与所得者)は、給与を支払っている会社が、「年末調整」という形で本人に代わって税務署に申告してくれるので、自分で確定申告をする必要がありません。このため、自分でビジネスを始めて個人事業主になると、「急に確定申告という面倒事が増えた」という感覚に陥りがちです。

しかしながら、これから個人事業主として活動していく方々には、確定申告は「毎年の恒例行事」となります。

面倒なのはしょうがないとしても、少しずつ慣れていき、「逃げたいほど嫌」という状態を避けたいものです。

初めての確定申告をスムーズに実施するために、この記事を参考に、事前の情報収集や準備作業をしておきましょう。

2月から3月に確定申告を

確定申告書の提出先は、税務署です。

全国の税務署を束ねる「国税庁」が、確定申告をする個人事業主向けに、「令和6年分確定申告特集 準備編」という特設サイトを作っています。
「このサイトの内容を理解するのが難しいんだよ」と感じる方もいると思いますが、最も信用できる情報が載っているサイトなので、ご紹介します。

 

参照:確定申告特設サイト|国税庁

確定申告を行う時期ですが、該当する期間が「1月~12月」、つまり12月末までは数字が確定していません。「1月中に出せ」と言われても、無理な話です。

そのため、所得税については、確定申告を行う時期は、「翌年2月16日から3月15日までの間」とされています。

佐藤大貴
佐藤大貴

還付を受けるための申告は、1月1日から申告可能です。

消費税の納税が必要な個人事業主については、消費税の申告・納税期限は、翌年の3月31日です。

所得控除とは?

「これだけ売上(収入)があって、これだけ利益(所得)が出たから、税率をポーンとかけて、所得税はいくら!」というようなシンプルな制度だと計算は簡単なのですが、そうはいかないのが確定申告です。

「そうはいかない」という点についてですが、所得があまり多くない方向けに、「所得の低い人は低い税率を適用します(累進課税)」ですとか、「この分は所得の計算から除きます(所得控除)」といった優遇措置が設けられています。

なので、多少面倒でも、しっかり計算をして、優遇措置を受けた方がオトク、という事です。

所得控除には、次のような種類があります。

  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 生命保険料控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 基礎控除

これ以外にも所得控除の種類はたくさんあります。国税庁が税に関する質問に答えているサイト「タックスアンサー」に記載があるので、気になった方は見てみてください。

参照:No.1100 所得控除のあらまし|国税庁タックスアンサー

また、後半で説明しますが、事業所得を得ている個人事業主が利用できる「青色申告特別控除」という制度もあります。

こうした控除を正しく積み上げていくと、納めるべき所得税の計算ベースである「所得」は小さくなり、納税額は小さくなります。

所得の種類

「所得」という言葉が何度も出てきましたが、所得にも種類があります。

この記事の読者に深く関係しそうな所得を3つ紹介します。

所得についても、国税庁が解説サイトを作って細かく解説してくれているので、もっと詳しく知りたい方はご覧ください。

参照:所得の種類と課税方法|国税庁

A.事業所得

事業として取り組むことを定め、継続的にお金を稼いでいるような場合、その所得は「事業所得」と言います。個人事業として「開業届」を出しているようなケースでは、その所得は事業所得として扱われます。

確定申告をするケースでは、後半で触れる「青色申告特別控除」という制度を使うメリットが大きいのですが、この制度は「事業所得」では使えますが、「雑所得」では使えません。

副業で少しの所得しかないケースを除き、個人事業主で確定申告をするような場合は、帳簿の整備を行って、所得を「事業所得」にしておくといいと思います。

B.雑所得

まだ「事業所得」とは呼べない段階の、副業などの所得については、「雑所得」とみなされます。

「雑所得」の場合には、「青色申告特別控除」という優遇措置は使えませんが、売上と経費についての書類は準備しておかないと「所得」の計算ができないので、請求書、領収書、レシートなどの書類は取っておくようにしましょう。

「事業所得」と「雑所得」の違いは、国税庁が2022年10月に出した通達によれば、次の2点で判断します。

社会通念上事業と呼べれば「事業所得」
「その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうか?」が判断基準となります。
金額や件数が少なすぎたり、副業で本業と比べて所得がわずかだったりする場合は、「事業所得」と見なされないことがあるようです。

帳簿書類を保存してれば「事業所得」
仕訳帳や総勘定元帳、現金出納帳といった「会計帳簿」を作成、保管していたり、決算関連書類を作っている場合は「事業所得」と見なされます。

佐藤大貴
佐藤大貴

ただし、サラリーマンがおこなっている副業で、本業の収入の10分の1未満や赤字続きの場合は、帳簿があっても雑所得になる可能性があります。

C.給与所得

給料、賃金、賞与、役員報酬など、会社や事業主から受け取っている「給与」に係る所得です。

副業をしていて、サラリーマンとしての給与所得がメイン、という方もいるでしょう。

また、個人事業主でなく、会社を作って代表取締役(株式会社の場合)や代表社員(合同会社の場合)になった方が受け取る「役員報酬」も、給与所得に分類されます。

自分が会社を作り、従業員が自分一人だとしても、その役員報酬は「事業所得」ではなく「給与所得」となります。

確定申告で気を付ける点

初めての確定申告に臨む方は、不安が募っていると思います。しかし、しっかりと事前に知識を得て、準備をすれば、それほど怖いものでもありません。

確定申告の初歩的な注意点について、解説していきます。

収入と所得の違い

まず、最も戸惑うのが、「収入」と「所得」の違いなのではないかと思います。

前半で、「所得」という言葉を多用してきましたが、「収入」と「所得」に下記のような関係があります。

収入(売上) - 経費 = 所得(利益)

サラリーマンは給与所得しかなく、会社が所得を確定する作業をやってくれます。しかも、自分の給与に関しての「経費」という概念がありません。

なぜなら、会社で使っている筆記用具、パソコン、交通費、オフィスの家賃、光熱費などについては、全て「会社の経費」で賄っているので、個人でそれを肩代わりしている人はいません。(いたら会社に経費として申告して清算してもらいましょう)

経費は会社が負担する、という事は、「自分が給与を稼ぎ出す」という行為に、どのくらい「自分自身の経費」を使っているのか、計算できません。

このため、給与に関する経費を概算する「給与所得控除」をいう制度があり、「このぐらいの給与の人の経費(控除額)はこのくらい」という目安が決まっています。

しかしながら、自分で商品やサービス、コンテンツなどを売っていく「個人事業主」の立場では、その売上を上げるために要した経費を、自分で計算していかなくてはなりません。

経費には、次のようなものがあります。

  • 製造原価(モノを売る場合の原材料費など)
  • 人件費(アルバイトを雇う場合など)
  • オフィス家賃、光熱水費
  • パソコン等の機器購入費
  • 消耗品費
  • 広告宣伝費
  • 交通費    など

家で仕事をしている場合、家賃は「生活のため」と「仕事のため」と両方にかかってきます。そのような経費については、「どの程度事業に使っている比率があるか」を計算して、その分を事業経費として計上します(「家事按分」と言います。)

事業に使った経費は、もちろん不当に水増しすることはできませんが、使ったものはきっちり計上しておかないと、所得(利益)が多く出てしまい、所得税が高くなってしまいます。

領収書、レシートなどの「証拠書類」をきちんと保管しておき、経費を確定申告することで、所得税額の納め過ぎを防ぐことができます。

各種控除のボーダーライン

前半で触れましたが、所得税には、「この額は除いて計算していいよ」という「所得控除」がいくつかあります。

下記に紹介する以外にも所得控除は種類がたくさんあるので、興味のある方は、「国税庁タックスアンサー」の「No.1100 所得控除のあらまし」をご覧ください。

参照:No.1100 所得控除のあらまし|国税庁タックスアンサー

A.基礎控除

1月から12月までの合計所得金額が2,400万円以下の場合、一律で48万円が控除されます。

参照:No.1199 基礎控除|国税庁タックスアンサー

B.社会保険料控除

健康保険、年金保険などの社会保険料を支払った場合には、その払った金額の全額が控除されます。

C.生命保険料控除

生命保険料、介護医療保険料および個人年金保険料を支払った場合に、計算式に基づいて、最高12万円まで所得控除を受けることができます。

参照:No.1140 生命保険料控除|国税庁タックスアンサー

D.寄付金控除

代表的なのが「ふるさと納税」ですが、地方公共団体に寄付をした場合、計算式に基づいて算出した額を所得控除できます。

給与所得者の場合、「ふるさと納税分だけ別に確定申告するのは面倒くさいな」という方のために「ワンストップ特例」という確定申告をしなくてよくなる措置があるのですが、個人事業主の場合は、「どっちにしろ確定申告が必要」だと思いますので、ふるさと納税をした分は、遠慮なく計上していきましょう。

佐藤大貴
佐藤大貴

ワンストップ特例も寄付した自治体が6以上になると使えません。その場合、給与所得者でも確定申告をする必要があります。

参照:No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)|国税庁タックスアンサー

参照:ふるさと納税をされた方へ|国税庁

説明会参加のススメ

毎年1月頃に、地方国税局や、商工会・商工会議所などが主催する、「確定申告」や「決算」などに関する無料説明会があります。

お住まいの地域によって開催日程は異なりますが、初めて確定申告を行う方は必ず、2回目以降の方もなるべく、説明会に参加されることをおススメします。

確定申告は、昨年から何の変更もなくても、十分に面倒くさい作業です。それに加えて、税制の改正などがあると、「もう難しくて訳が分からん」という状況になってしまうおそれがあります。

最近では、「インボイス対応」(消費税関連の届出や事務処理の変更)や、「電子帳簿保存法」(会計書類を電子ファイルで受け取ったり保存したりする方法の変更)などの際、多くの個人事業主や中小企業が認識不足や対応の遅れを経験しました。

個人事業主の皆さんは税理士ではないので、税制の改正、制度改正の全てを完全に理解する必要はありません。

しかし、罰則のある対応事項や、優遇措置が設けられた事項など、「直接関係のある変更」については、情報収集していく必要があります。

そんな時にありがたいのが、地元の商工会・商工会議所(「商工団体」といいます)の「経営指導員」から得られる助言です。商工団体は、制度改正を地元の事業主や企業にお知らせするのが仕事なので、難しいことでも嚙み砕いて教えてくれます。

確定申告についても、一度説明会に参加して、経営指導員と知り合っておくと、後々相談に乗ってもらえる可能性が高くなります。

説明会は、「知識を得る」というだけではなく「頼れる人脈を作る」ための貴重な機会です。是非、参加してみてください。

103万円以下に抑える?

さて、「収入を103万円以下に抑える」という「103万円の壁」については、タイトルに書いた割にはあまり触れてきませんでした。

お気づきかも知れませんが、個人事業主の確定申告に関しては、「103万円以下」というボーダーは、あまり気にする必要がありません。

気にしなくてよい理由や、それでも意識だけはしておいた方がいい点、などについて、簡単に触れておきます。

103万円の壁とは?

まず、基本的なお話です。

「103万円の壁」というのは、なぜこれほど話題になっているのでしょうか?

「103万円の壁」というのは、主婦のパートなどの給与所得について、「103万円以下であれば控除額(所得税の計算から除ける金額)の方が大きくなるため、所得税がかからない」かつ、「パート主婦の給与所得が103万円以下であれば、配偶者(夫)が配偶者控除という所得税控除を受けることができる」というボーダーラインのことです。

まず、ご本人(主婦)に対する所得税控除について説明します。「控除」には2種類あります。

1つは、給与所得者全員が対象の「給与所得控除」。この最低額が55万円です。次に、「基礎控除」が48万円。この合計額が103万円です。

次に、配偶者(夫)の受けられる配偶者控除について説明します。こちらも「控除」は2種類です。

1つは、配偶者控除です。配偶者の合計所得金額が48万円以下の場合、最大38万円の控除が適用されます。さらに配偶者特別控除というものもあり、配偶者の合計所得金額が48万円を超えても133万円以下であれば、段階的に控除を受けることができるというものです。

配偶者(夫)の所得が900万円以下の場合、配偶者控除の額は38万円です。

佐藤大貴
佐藤大貴

配偶者(夫)の合計所得金額が1,000万円を超えると配偶者控除を受けることはできません。

個人事業主と給与所得控除

この記事では、主に個人事業主の確定申告についてお話ししています。

つまり、所得については、個人事業主さんが稼ぎ出した「事業所得」や「雑所得」を対象としています。

103万円の壁の話には、「給与所得控除」55万円、というのが出てきます。

この「給与所得控除55万円」というのが、事業所得を得ている個人事業主の場合、関係ありません。

本人分の所得税控除については、基礎控除「48万円」に、各種控除を加えた金額、そして使った方がいい「青色申告特別控除」を加えた金額が、控除額になります。

また、前段として、個人事業主は、収入(売上)から、給与所得者には計算の難しい「経費」(これが給与所得控除という控除の実質的な中身)を差し引いた金額を「事業所得」として計上しています。

配偶者の受けられる控除については、次節で説明したいと思います。

配偶者が受けられる所得控除

説明がわかりづらくなるので、本人をAさん、配偶者をBさんとします。

Bさんが「配偶者控除」が受けるためのAさん所得のボーダーは、48万円です。ただし、所得が48万円を超えて133万円以下の場合、「配偶者特別控除」という別の控除が受けられます。

まず、「配偶者控除」については、Aさん所得が48万円以下(給与所得の場合のみ103万円以下)の場合に、Bさんに、Bさんの所得に応じて下表のような控除があります。

参照:No.1191 配偶者控除|国税庁タックスアンサー

次に、「配偶者特別控除」については、Aさんの所得が48万円を超えて133万円以下の場合(下表の左欄)に、Bさんに、Bさんの所得(下表の上欄)に応じて控除があります。

参照:No.1195 配偶者特別控除|国税庁タックスアンサー

青色申告と白色申告

個人事業主は「青色申告特別控除」という優遇(よく略して「あおしん」と言います)を使った方がいい、という話しをしてきましたので、「青色申告」「白色申告」「青色申告特別控除」などについて、簡単に説明しておきたいと思います。

青色と白色の違い

青色申告と白色申告の違いは、会計帳簿の付け方です。

「複式簿記」という手法で会計帳簿を付けて確定申告をする事業者が、「青色申告者」です。「青色申告者」になるときは、その確定申告をする年の3月15日までに、「青色申告承認申請書」を税務署に提出します。

佐藤大貴
佐藤大貴

2025年1月から12月までの所得に対して、青色申告をしたい場合、2025年3月15日までに上記手続きをする必要があります。

参照:No.2070 青色申告制度|国税庁タックスアンサー

白色申告は、複式簿記によらない手法で整理された帳簿で行う確定申告です。所得金額がわかるように、売上や経費などを記録していく事が必要です。

参照:No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度|国税庁タックスアンサー

青色申告特別控除

青色申告者が、複式簿記を用いて記帳を行い、貸借対照表及び損益計算書(複式簿記で作られる「決算書類」)を添付して確定申告をした場合に受けられる所得控除です。

控除される金額は、55万円。給与所得控除と同額です。

大きいです。

給与所得控除が、「給与所得者の経費に相当する金額」であるのに対し、青色申告特別控除は、収入から経費が既に引かれている「所得額」に、更に適応される控除です。

是非とも使いたい優遇措置です。

青色申告特別控除は、所得の種類が「事業所得」か「不動産所得」の個人事業主のみが使える制度です。開業届をまだ提出していない場合や、所得の種類が「雑所得」であるような副業事業者には使えないので注意が必要です。

参照:No.2072 青色申告特別控除|国税庁タックスアンサー

e-tax(イータックス)を利用すると

「55万円」の青色申告特別控除を受ける要件を満たした個人事業者が、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を用いて確定申告する場合、若しくは、電子帳簿保存を行っている場合は、青色申告特別控除額が、55万円から65万円にあがります

電子帳簿保存の方は少し難しいので記載を割愛しますが、e-tax(イータックス)を利用した確定申告については、最初の設定が少し難しい以外はそれほどハードルが高くありません。

e-taxにするだけで控除が10万円違うので、是非e-taxで電子申告、納税してみてください。

参照:e-tax公式サイト

ケース別の確定申告

これまでは、個人事業主の確定申告の際に気を付けるべき点などについて大まかに触れていきましたが、ここでは、ケース別に、注意点に触れていきます。

特に、配偶者が給与所得者で、勤め先の会社が年末調整を行っているような場合、会社に対する書類の提出が間に合わなくなるおそれがあるので、ご注意ください。

なお、会社の年末調整に間に合わずに記載できなかった場合でも、配偶者が別途確定申告をすることができます。

個人事業一本の方

まず、生活費を稼ぎ出す手段が「ご自身の個人事業のみ」という方。

初めての確定申告で「まだ所得が少ない」という方は、起業したてで、これまで働いてきた貯金で生活している、というケースかも知れません。

そんな方は、1月から12月までのご自身の収入、経費、所得をじっくりと計算し、使える控除を使い、青色申告をする、といった作業に集中していただきたいと思います。

注意しておきたいのは、「3月までサラリーマンだった」など、1~12月までの間に環境が変わったケースです。

年内に「給与所得者」だった期間のある方は、勤めていた会社からその期間の源泉徴収票をもらい、確定申告に盛り込んでください。

仮に、期間が1~3月と短かったとしても、かなりの金額が動いています。

まず、前の会社が、源泉徴収をしています。その金額については、既に所得税を払っている額になりますので、確定申告時に申告をする必要があります。

また、社会保険料についても、控除の対象になります。社会保険料については、会社と本人が折半しており、本人負担分は会社が預かって納付しています。源泉徴収票に本人が支払った社会保険料額が出てきますので、それを確定申告に使います。

佐藤大貴
佐藤大貴

退職をした場合、源泉徴収票を必ずもらうことと、なくさないように保管をしておいてください。

退職金をもらっている方で、退職所得に所得税がかかる方(かなりたくさん退職金をもらう方)については、前の会社が源泉徴収をしていると思いますが、源泉徴収票を見て確認しておいてください。

なお、退職所得の控除額については、下記のタックスアンサーに載っていますので、必要に応じてご確認ください。

参照:No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁タックスアンサー

配偶者が主な所得者

共働き世帯の場合、片方が起業する、といったタイミングの際に、一時的に所得が少なくなるかもしれません。

そのような場合は、「配偶者控除」「配偶者特別控除」といった優遇措置を使って、配偶者が所得控除を受けられる可能性があります。

また、所得税の確定申告からは少し話がそれますが、年間収入が130万円未満である場合には、健康保険、年金保険について、配偶者の扶養に入れる可能性があります。健康保険と年金保険の扶養については、全国健康保険協会(協会けんぽ)のサイトを参照してください。

参照:被扶養者とは?|全国健康保険協会サイト

なお、所得控除の対象となる生命保険料については、夫婦のどちらに控除を付けるか、といった話になることもあると思います。基本的には、生命保険料控除は、より高い税率の所得税を払っている方につけた方が、控除額は大きくなります。

所得税は、所得が大きいほど税率が上がる「累進課税」となっています。より高い税率で所得税を納めている方の控除が大きくなった方が、還付額が大きくなる可能性があります。

参照:No.2260 所得税の税率|国税庁タックスアンサー

個人事業が副業

最後に、個人事業が副業である場合です。

「副業で稼ぎが少ないからまだ確定申告をしたくない」という人もいるかもしれません。

サラリーマンの場合、本業の給与所得については会社が年末調整で所得額を確定し、税務署に報告してくれるため、確定申告は不要です。

しかし、給与所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人は、確定申告をしなければなりません。

参照:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁タックスアンサー

また、所得が20万円以下の場合でも、税務署への確定申告は不要ですが、市町村や都道府県に対して支払う住民税に係る申告は別途市町村に提出しなければなりません。

住民税は、所得が20万円を超えて確定申告をする場合は、税務署が把握した所得情報が市町村に送られて納税額が決まります。20万円を超えない場合は、市町村が申告された情報を元に納税額を計算します。

いずれにしても、副業として個人事業をしている場合で、「会社にバレたくない」というは、この住民税の徴収方法を、会社が毎月の給料から天引きする「特別徴収」でなく、自分で市町村から納付書をもらって納める「普通徴収」にしてもらう必要があります。

「特別徴収」にしてしまうと、会社が天引きする住民税額が多くなってしまい、「給料以外に稼いでいる額がある」ことが会社に知られてしまうからです。

完全に会社にバレないようにするというのは難しいのかも知れませんが、「副業分の所得にかかる住民税は普通徴収にする」というのは、一つの方法です。

まとめ

今回は、最近話題の「103万円の壁」と絡めて、「個人事業主に103万円の壁は関係ある?」というタイトルで、個人事業主の確定申告のポイント、注意点などについて説明しました。

結論としては、個人事業主の場合、所得を103万円以下に抑える、というのは、あまり気にする必要はありません。

個人事業主の所得が給与所得ではない場合に、「103万円の壁」の内訳となっている「給与所得控除」が使えない、というのが主な理由です。

ただ、個人事業主自身の所得税の節税については「青色申告特別控除」など、また配偶者の節税については「配偶者特別控除」などの制度があるため、「まったく節税できない」という事はありません。

この記事の「ケース別の確定申告」で説明した内容を参考に、皆さんの置かれている状況に応じ、適切な節税対策を講じていただきたいと思います。

確定申告は、3月15日が期限で、「仕事もすごく忙しい時期なのに、とても面倒な作業だ」と思っている人が多いです。次の3月に初めての確定申告を行う方も感じると思いますが、想像以上に煩雑で、「なぜこの時期に」と感じてしまうかもしれません。

ですが、個人事業の「事業期間」が1月から12月である以上、確定申告時期は、毎年3月です。
年中行事として、慣れていただくしかありません。

初めての方は、是非、国税局や商工団体(商工会・商工会議所)が開催するセミナー(無料のものが多いです)に顔を出してみてください。

単に勉強するだけでなく、「質問したいときに、この人になら聞ける」という公的機関の担当者(商工団体の経営指導員など)に出会えるかも知れません。

税制や確定申告の書類作成は、難しいので、自分一人で処理しようとすると、時間もかかってしまいます。誰かに聞ける状態、相談できる状態を作って、あまり思いつめずに進めていただくといいのかな、と思います。

無料会員登録だけで
4大特典が付いてくる!

特典コンテンツの一部をご紹介

✓副業「こんなはずじゃなかった」失敗談
✓個人事業主だからこそできる節税対策
✓手軽にできる流行りのスマホ副業を紹介
✓お手軽に、すぐスタート!在宅サイドビジネスのススメ
儲かるフランチャイズランキング

芸能人、声優、実業家など、総勢500人以上のインタビュー記事も無料で読み放題!

最短1分で完了!

[無料]メールアドレスで登録

PROFILE
佐藤大貴

上場企業の経理や事業管理として、10年以上業務に従事しながら税理士資格取得を目指す。2022年に税理士資格を取得し、2023年税理士登録をおこない、4月に独立開業をする。税理士業務もさることながら、企業での業務改善や学生に対する租税教室など、幅広く業務に携わっている。

佐藤大貴をフォローする
申告・納税
タイトルとURLをコピーしました