【この記事でわかること】
- コンビニオーナーの平均年収
- コンビニ経営にかかるコスト比較
- コンビニオーナーが年収UPを目指す方法
私たちが日常的に利用するコンビニエンスストアの多くは、オーナーがフランチャイズに加盟して経営しています。
コンビニ経営は消費需要が安定している一方、厳しい競争を勝ち抜かなければならない世界でもあるため、高い年収を維持するにはコツが必要です。
本記事では、コンビニオーナーのリアルな年収と儲けの仕組み、年収を上げるための具体的な方法、大手3社の費用比較まで、開業前に知っておくべき情報を網羅的に解説します。
※念のため、最新情報については各社HPにてご確認ください。
コンビニオーナーの平均年収は?
コンビニオーナーの平均年収は、600万〜700万円と言われています。
しかし、この金額はあくまで「オーナー総収入」であり、最終的な手取り額ではない点に注意が必要です。
オーナー総収入とは、店の売上総利益(売上高から仕入れ原価を引いたもの)から、本部に支払うロイヤリティを差し引いた金額です。ここからさらに、人件費、廃棄費用、水道光熱費などの店舗運営に関わるすべての経費を支払うため、最終的にオーナーの手元に残る金額はこれより少なくなります。
また、契約タイプによっても収入は大きく変動します。土地や建物を自身で用意する場合と、本部が用意する場合では、ロイヤリティの料率が異なり、オーナーの取り分が変わってきます。
- (A)土地・建物をオーナーが自己負担した場合:ロイヤリティ支払い額は売上の20〜40%(オーナー取り分は売上の60〜80%)
- (B)土地・建物をフランチャイズ本部が用意した場合:ロイヤリティ支払い額は売上の40〜60%(オーナー取り分は売上の40〜60%)
コンビニ経営の収益構造|オーナーの手取りはどう決まる?
コンビニオーナーの年収を理解するには、まず「儲けの仕組み」を知ることが重要です。オーナーの手取り(営業利益)は、以下の4ステップで計算されます。
1. 売上総利益(荒利益)を計算する
まず、店舗の売上高から、販売した商品の仕入れ原価を差し引き、売上総利益(荒利益)を算出します。これが店舗が生み出した利益の総額となります。
2. 本部にロイヤリティを支払う
次に、算出した売上総利益の中から、ブランドや経営ノウハウの使用料としてフランチャイズ本部に「ロイヤリティ(チャージ)」を支払います。
料率は契約内容によって異なりますが、一般的には売上総利益が大きくなるほど料率が下がる「スライド方式」が採用されています。
3. 営業経費を差し引く
ロイヤリティを支払った残りの「オーナー総収入」から、店舗運営に必要な経費をすべて支払います。
主な経費は以下の通りです。
- 人件費:アルバイトや従業員の給与。最も大きな割合を占める経費です。
- 廃棄費用:弁当やおにぎりなど、賞味期限切れ商品のロス費用。
- 水道光熱費:24時間営業のため、高額になりがちです。
- その他:通信費、消耗品費など
4. 残った金額がオーナーの手取り(営業利益)
オーナー総収入から、これらすべての営業経費を差し引いて、最終的に残った金額がオーナーの「手取り(営業利益)」となります。
平均年収600万円は、あくまで経費を支払う前の「オーナー総収入」を指す場合が多いため、この構造を理解しておきましょう。
【ケース別】のコンビニオーナーの収入例
経営状況によって年収は大きく変わるため、この項目では具体的な3つのケースを見ていきましょう。
ケース1:開業直後の場合
開業直後は、年収が300万円前後になることも珍しくありません。これは、店舗の認知度が低く、客数が安定しないことが主な原因です。
また、来店予測が難しいため仕入れ量が多くなったり、スタッフの業務習熟度が低いため多めに人員を配置したりと、人件費や廃棄費用がかさむ傾向にあります。
まずは本部のスーパーバイザー(SV)の助言を活かしながら、地域住民に愛される店づくりを進め、経営を早期に安定させることが重要です。
ケース2:多店舗経営
一店舗の経営が軌道に乗り、信頼できるスタッフが育てば、複数店舗経営が年収アップの最も有効な手段となります。
オーナー業務を店長に任せることができれば、自身は二店舗目、三店舗目の立ち上げと経営改善に集中できます。店舗数が増えればその分だけ収入も積み上がり、年収1,000万円以上を目指すことも可能です。
ケース3:地方で開業する場合
「地方は都会より儲からない」と一概には言えません。
都会の店舗は売上が高い一方、家賃や人件費も高額です。反対に地方の店舗は、売上は控えめでも経費を安く抑えられるため、結果的により多くの利益を残せるケースもあります。
地方の幹線道路沿いなどでは、長距離トラックの運転手をターゲットに駐車場やイートインスペースを充実させ、弁当や雑誌の品揃えを強化するなどの戦略で稼いでいるコンビニも多くあります。
重要なのは、立地特性を分析し、ターゲット顧客のニーズに合わせた店づくりができるかどうかです。
https://entrenet.jp/magazine/25755/
【大手3社で比較】コンビニ経営にかかるコスト一覧
大手コンビニエンスストアチェーン3社のコストを比較してみましょう。
初期費用
開業に際して必要な資金は、大手3社では下記のとおりです。
※2024年8月時点の情報です。最新情報は各サービスのホームページでご確認ください。
コンビニ経営の初期費用に関してもっとよく知りたい方は、こちらもご覧ください。
https://entrenet.jp/magazine/13122/
セブンイレブン
加盟金(成約預託金)
ローソン
開業必要資金
ただし、家族で独立する「家族加盟支援制度」、経験を積んでから独立する「FCオーナー・インターン制度」、一人で独立する「ローソンキャリア独立制度※現在は募集なし」などの独立支援制度を利用すれば加盟金が全額免除(0円)になります。

ファミリーマート

ランニングコスト
開業後のランニングコスト(ロイヤリティ支払い)は、大手3社では下記のとおりです。
※2024年8月時点の情報です。最新情報は各サービスのホームページでご確認ください。
コンビニエンスストアのロイヤリティについてもっと知りたい方はこちらもご覧ください。
https://entrenet.jp/magazine/13118/
セブンイレブン
売上総利益(売上高から売上商品原価を差し引いた利益額)の45%(24時間営業の場合は43%)から下記を減額した金額

売上総利益 | 550万円超/月の店舗 | 550万円以下/月の店舗 |
---|---|---|
24時間営業店 | ①24時間営業 ▲2% | ▲月額200,000円 |
②特別減額 ▲1% | ||
③▲月額35,000円 | ||
非24時間営業店 | ①特別減額 ▲1% | ▲月額70,000円 |
②▲月額15,000円 |
さらに、満5年を経過した開店月の翌月からは最大で3%のチャージ負担が軽減されます。
売上総利益(売上高から売上商品原価を差し引いた利益額)にスライドチャージ率を乗じた金額
売上総利益 | 550万円超/月の店舗 | 550万円以下/月の店舗 |
---|---|---|
24時間営業店 | ①24時間営業 ▲2% | ▲月額200,000円 |
②特別減額 ▲1% | ||
③▲月額35,000円 | ||
非24時間営業店 | ①特別減額 ▲1% | ▲月額70,000円 |
②▲月額15,000円 |
さらに、満5年を経過した開店月の翌月からは最大で3%のチャージが免除されます。
ローソン

FC-Cn 契約、FC-5Cn 契約(土地・建物は本部持ち)
総荒利益高に対して、スライドチャージを乗じた金額
10年契約(FC-Cn) | 5年契約(FC-5Cn) | |
---|---|---|
総荒利益高300万円以下の部分 | チャージ率45% | チャージ率46% |
売上総利益300万円超〜450万円以下の部分 | チャージ率70% | チャージ率71% |
売上総利益450万円超の部分 | チャージ率60% | チャージ率61% |
※ただし、非24時間営業店舗は、上記各チャージ率にさらに3%加算します。
※リンク内、契約タイプ部分にある「土地・建物をお持ちの方」タブをクリックすると詳細の確認ができます。
総荒利益高に対して、次の率を乗じた金額
総荒利益高300万円以下の部分 | 41% |
売上総利益300万円超〜450万円以下の部分 | 36% |
売上総利益450万円超~600万円以下の部分 | 31% |
600万円を超えた部分 | 21% |
※ただし、非24時間営業店舗は、上記各チャージ率にさらに3%加算します。
ファミリーマート

内装設備工事はオーナーが負担(1FC-Cタイプ) | 内装設備工事は本部が負担(2FC-Nタイプ) | |
---|---|---|
月額営業総利益300万円以下の部分 | 本部フィー率59% | 本部フィー率59% |
月額営業総利益300万1円以上、450万円以下の部分 | 本部フィー率52% | 対象外 |
月額営業総利益300万1円以上、550万円以下の部分 | 対象外 | 本部フィー率63% |
月額営業総利益450万1円以上の部分 | 本部フィー率49% | 対象外 |
月額営業総利益550万1円以上の部分 | 対象外 | 本部フィー率69% |
内装設備工事はオーナーが負担(1FC-Aタイプ) | 内装設備工事の一部は本部が負担(1FC-Bタイプ) | |
---|---|---|
月額営業総利益250万円以下の部分 | 本部フィー率49% | 本部フィー率52% |
月額営業総利益250万1円以上 350万円以下の部分 | 本部フィー率39% | 本部フィー率42% |
月額営業総利益350万1円以上の部分 | 本部フィー率36% | 本部フィー率39% |
収入の不安を軽減する「最低保証制度」
多くのフランチャイズ本部では、開業後の収入不安を和らげるために「最低保証制度」を設けています。これは、ロイヤリティを支払った後の「オーナー総収入」が、本部規定の金額に満たない場合に、その差額を本部が補填してくれる制度です。
この制度があることで、売上が安定しない開業当初でも安心して経営に集中できます。ただし、保証の適用には条件があるため、契約時に内容を詳細に確認することが重要です。
フランチャイズのコンビニエンスストア経営の仕組み
オーナーの仕事は多岐にわたりますが、中心となるのは「在庫管理」「人材育成」「売上管理」の3つです。
在庫管理と仕入れ
在庫管理と仕入れは、利益を最大化するうえで最も重要な業務です。天気や地域のイベント情報、過去の販売データに基づき、商品の発注量を最適化します。
欠品による販売機会の損失を防ぎつつ、賞味期限切れによる廃棄ロスを最小限に抑えることが、オーナーの腕の見せ所です。本部のデータを参考にしながら、自店の客層に合わせた的確な仕入れ判断が求められます。
スタッフの育成
スタッフの育成のため、オーナーはスタッフが気持ちよく働ける環境を整え、接客マナーからレジ操作、商品陳列まで丁寧に指導する責務があります。
近年では、SNSへの不適切な投稿が店の信用を失墜させるリスクもあるため、コンプライアンス意識の指導も不可欠です。
優秀なスタッフは店の財産であり、彼らの成長が店舗の成長につながります。
売り上げの管理
売上の管理では、日々の売上データ(客数、客単価、時間帯別売上など)を分析し、経営課題を発見して改善策を実行します。
「なぜこの商品の売上が落ちているのか」「どうすれば客単価を上げられるか」などの視点で常に店舗を観察し、品揃えの変更や販促活動に活かすことが重要です。マーケティングの視点を持って自店をプロデュースする能力が求められます。
コンビニオーナーが年収を上げる方法5選
年収を上げるためには、売上を伸ばし、経費を削減することが基本です。
具体的には以下の5つの方法が挙げられます。
食品の在庫管理に注意する
コンビニ経営で利益を圧迫する最大の要因が、弁当やおにぎりなどの廃棄ロスです。
発注精度を高め、期限が近い商品を見切り販売するなど、食品ロスを徹底的に削減することが直接的な利益向上につながります。
地域や客層、季節に応じて取扱商品を決める
オフィス街であれば弁当やコーヒー、住宅街であれば総菜や日用品のように、地域の顧客ニーズに合わせた品揃えを強化することで、固定客を獲得できます。
本部と良好な関係を築く
本部は全国の店舗データから導き出した、売上アップのための貴重な情報を持っています。
担当のスーパーバイザー(SV)と密に連携し、経営改善のアドバイスを素直に実行することが、成功への近道となります。
スタッフの育成に力を入れる
スタッフのスキルが向上すれば、業務効率が上がり、少人数でも店舗を円滑に運営できるようになります。これは人件費の最適化につながります。
また、質の高いサービスはリピーターを増やすことにもつながるので、スタッフの育成には力を入れましょう。
多店舗展開を目指す
一店舗の利益には限界がありますが、経営が安定した店舗を複数持つことで、収入を大幅に増やすことが可能です。
信頼できるスタッフを育て、店舗運営を任せられる体制を築くことが、多店舗展開成功の鍵となります。
「コンビニ 年収」に関するよくある質問
Q:フランチャイズでコンビニ経営するメリット/デメリットは?
A:メリットは「集客力とサポート」、デメリットは「自由度の低さと長時間労働」です。
Q:コンビニオーナーの稼働時間は?
A:経営フェーズによるが、1日8時間前後が多い
公正取引委員会のアンケート調査によると、従業員・アルバイトの人数に対するオーナーの認識は下記のとおりです(令和2年1月1日時点)。
つまり、93.5%のオーナーが現在および将来の人数不足を心配していることになります。
参考:コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査報告書(令和2年9月)|公正取引委員会:(P.168より)
※リンクの遷移先はPDFファイルです。ダウンロードに大量の通信費がかかる可能性があります
まとめ
コンビニ経営は、フランチャイズに加盟せず個人で始めることも可能です。しかし、大手本部のブランド力、確立された経営ノウハウ、仕入れ網を活用できるフランチャイズ加盟は、未経験からでも成功を目指せる有効な選択肢です。
ただし、加盟すれば安泰というわけではありません。本記事で解説した通り、オーナーの収入は自身の経営努力に大きく左右されます。ロイヤリティの仕組みを正しく理解し、廃棄ロスの削減や人材育成といった日々の地道な努力を続ける覚悟が必要です。
この記事を参考に、目標とする年収や働き方に合ったフランチャイズ本部を選び、成功への一歩を踏み出しましょう。
<文/柴田敏雄>