個人事業主になると、プライベート用とは別にビジネス用の銀行口座を開設するべきか迷う方もいるのではないでしょうか。本記事ではビジネス用の銀行口座を開設するメリットを解説していきます。あわせておすすめの銀行も7行紹介します。自分に合う銀行を探す際に参考にしてみてください。
個人事業主になる際はビジネス用の銀行口座を開設しよう!
個人事業主になる際には、プライベートで普段使っている銀行口座や今は使っていない銀行口座をビジネス用として利用できそうであったとしても、別途、ビジネス用に口座を開設することをおすすめします。
ビジネス用に銀行口座を開設するメリット4選
ビジネス用の銀行口座を開設するのには、大きく4つのメリットがあります。
1. お金の流れがわかりやすくなる
2. 帳簿を作成する時間を短縮できる
3. クライアントからの信用度が増す
4. 税理士への相談がしやすくなる
これらの口座開設をする4つのメリットについて、詳しく解説していきます。
1. お金の流れがわかりやすくなる
ビジネス用に銀行口座を開設しておくと、支出がわかりやすくなります。ビジネス用とプライベート用の銀行口座を分けておくことで、事業でどれほどのお金を使ったのか、どのような資金の流れがあったのか履歴が残ります。そのため、後から見返す際にも「これはいつ、何のために使ったお金なのか」がわかりやすくなるのです。事業に関する収入・支出が通帳を見るだけで判断できるようになり、収支のバランスが把握しやすくなったり、将来的な事業計画を立てやすくなったりします。
今後、ビジネスを拡大させていくためにも、ビジネス用の銀行口座を開設しておいた方が良いでしょう。
2. 帳簿を作成する時間を短縮できる
ビジネス用に銀行口座を開設すると、帳簿を作成する時間を短縮できるようになります。
ビジネスとプライベートを切り離さずに1つの口座を利用していると、確定申告の際に「この支出はプライベート、この支出はビジネス」と1つずつ切り分けていかなくてはいけなくなり、時間がかかってしまいます。
ビジネス用に1つ口座を用意しておくことで、この切り分けの作業を省くことができます。
3. クライアントからの信用度が増す
個人事業主がビジネス用の銀行口座を開設しておくことで、クライアントからの信用度が増します。
顔見知りのクライアントであれば、個人名義の銀行口座を使っていても特に問題にはなりません。しかし、事業を進めていく中でさまざまな企業と取り引きをすることになるでしょう。
屋号は、「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」を税務署へ届け出る際に記入するものなので、きちんと手続きを踏んでいる証明となり信用も得やすいでしょう。
ビジネス用に、会社名ともいえる屋号の付いた銀行口座を開設すると、口座名に屋号が掲載されるため、顔が見えない取り引きでも信頼感かつ安心感を持って取り引きができるようになります。
4. 税理士への相談がしやすくなる
個人事業主がビジネス用の銀行口座を開設しておくと、通帳の内容も事業に関する取り引きのみになるため、税理士に節税などの相談をスムーズに進めていけるようになります。
また、帳簿作成の手間も省けるので、税理士への相談費用の節約にもつながるでしょう。税金に関する問題は、事業を拡大するうえで避けては通れないものです。税理士と連携をスムーズにとっていくためにも、ビジネス用の口座があると便利になるでしょう。
個人事業主が銀行口座を開設する際に必要となる書類
個人事業主が銀行口座を開設するためには、どのような書類が必要でしょうか。銀行口座を開設するためには以下の4点が必要になります。
・本人確認書類
・個人事業主の確認書類
・屋号を使って営業していることが確認できる書類
・印鑑
それぞれどのようなものなのか解説します。
本人確認書類
本人確認書類では、以下で紹介するいずれかのものを、有効期限内であることを確認して持参しましょう。金融機関によっては、本人確認書類の種類により書類が2点必要なものなどもあります。以下は例ですので、あらかじめ口座開設前に銀行に確認をしておきましょう。
・運転免許証
・マイナンバーカード(通知カードは不可)
・パスポート
・健康保険証
・住民基本台帳カード(顔写真とQRコードの印字があるもの)
・印鑑登録証明書
・住民票の写し(コピーは不可) など
※QRコードはデンソーウェーブの登録商標です。
個人事業主の確認書類
個人事業主の確認書類としては開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)や各種申告書など、個人事業主であることを証明できる書類を用意しましょう。また、銀行によってはプライベート用の口座をすでに持っている場合は屋号付きの口座が開設できなかったり、最初に口座開設の審査があり、審査後に確認書類を求められたりします。事前に銀行に確認しておくと良いでしょう。
・開業届(控えまたはコピー)
・青色申告承認申請書
・確定申告書
・個人事業開始申告書
・国税・地方税の領収書または納税証明書(原本)
・社会保険料の領収書(原本)
・商号登記簿謄本(原本)
・公共料金の領収書(原本) など
屋号を使って営業していることが確認できる書類
屋号を使って営業していることが確認できる書類は以下のいずれかを用意しましょう。
・所得税や地方税の納税証明書または領収証
・事務所などの賃貸契約書
・公共料金の領収書(原本)
・所得税や住民税の確定申告書の控え など
印鑑
書類ではありませんが、銀行口座を開設するためには印鑑が必要になります。インキ浸透印では取り扱えない場合があるため、印鑑を用意しておくようにしましょう。
ネット銀行と店舗型銀行、おすすめは?
口座を開設するにあたって、まず銀行の種類を把握しましょう。銀行と一言でいっても、“ネット銀行”と“店舗型銀行”の2種類があります。
ネット銀行はインターネット上での取り引きが中心で、実店舗がない、もしくは実店舗が少ない銀行です。ネット銀行の最大の特徴は、口座開設をはじめとするさまざまな手続きを手軽にインターネット上で行える点です。手続きまでのスピードや効率化を重視する個人事業主に特におすすめです。ただし、店舗型銀行に比べると信頼面で不安視されることもあります。
これに対して店舗型銀行の特徴は対面でもサービスが受けられることです。知名度の高い銀行の場合、個人事業主としての口座を持っていることでクライアントからの信頼性も高くなるでしょう。ただし、口座開設はネット銀行と比べると手間や時間がかかります。
ネット銀行と店舗型銀行のメリットやデメリットを理解したうえで、ここからは、個人事業主におすすめの銀行を7行ご紹介します。ネット銀行と店舗型銀行に分けて紹介するので、自分にあった銀行を見つけてみてください。
【ネット銀行1】楽天銀行(旧イーバンク銀行)
個人事業主が銀行口座開設をするのにおすすめの1つ目の銀行は、ネット銀行として日本最大級の規模の楽天銀行です。楽天銀行には、ビジネスシーンで便利なサービスが充実しています。代表的なものは以下の2つです。
・楽天銀行かんたん決済:サービスURLを顧客に送り、リンク先の振込専用画面を通じて顧客の楽天銀行口座から振込手続ができる
・かんたん振込(メルマネ):振込相手のメールアドレスと口座名義(カタカナ)の情報のみで安価な手数料で振り込みができる
また、口座開設はWeb申し込みの後、郵送かアプリで書類を送る必要があります。アプリを使うと口座開設までの時間を短縮できるのでぜひ活用してみてください。
楽天銀行宛ての振込手数料は52円/1件(税込み)となりますが、楽天銀行以外の口座に3万円以上の振り込みをすると229円/1件(税込み)の手数料がかかります。振込金額によってだいぶ異なりますので、振込金額や利用頻度を鑑みて検討しましょう。
【ネット銀行2】PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)
個人事業主におすすめの2つ目の銀行は、「PayPay銀行」です。
PayPay銀行は口座開設に必要な書類をスマートフォンでアップロードできるので、簡単に口座が開設できます。さらに口座開設まで最短5日~7日程度なので、急に口座が必要になったときでも作りやすいでしょう。
さらに、振込手数料はPaypay銀行宛てであれば一律55円/1件(税込み)、他行宛ては160円/1件(税込み)というのも魅力です。
さまざまな手続きがインターネット上で完結できるのも、PayPay銀行の特徴です。インターネット上でビジネスローンの申し込みもでき、手数料や維持費が一切かからないのも嬉しいポイントです。
「法人・個人事業主のお客さまへおすすめ!」(PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行))
【ネット銀行3】GMOあおぞらネット銀行
個人事業主におすすめの3つ目の銀行は、「GMOあおぞらネット銀行」です。
GMOあおぞらネット銀行には「つかいわけ口座」という機能があり、1つの口座を最大10口座に分けて預金の管理ができるのが最大の特徴です。また振込手数料が同行宛てだと無料、他行宛てでも一律145円(税込み)/1件なので、銀行での取り引きにかかるコストを抑えられます。
注意点としては、ビジネス用の口座開設をするためには開業届や確定申告書などの「個人事業主の確認書類」とホームページなどのアドレスを印字したものや請求書、発注書などの「事業内容等が確認できる書類」の2種類の書類が必要ということです。
「個人事業主のお客さまの口座開設について」(GMOあおぞらネット銀行)
【店舗型銀行1】三井住友銀行
個人事業主の口座開設におすすめの4つ目の銀行は、「三井住友銀行」です。口座開設に必要な書類もあまり多くはありません。そのため、準備にかけるための手間を省くことができるでしょう。
Web通帳は、最大30年間の閲覧が可能です(2019年以降の明細が対象)。パソコン・スマートフォン等で明細にラベルとメモを登録できます。メモも30年間見られる(2019年以降の明細が対象)ので、スムーズに預金管理や取り引きの確認などができます。
個人事業主は営業性個人となり、法人の口座開設と同様になりますが、詳細は事前に問い合わせて確認をしておくことをおすすめします。
【店舗型銀行2】三菱UFJ銀行
個人事業主が口座開設をするのにおすすめの5つ目の銀行は、「三菱UFJ銀行」です。三菱UFJ銀行では、「三菱UFJフィナンシャルパートナーズ」というグループ会社が中小企業や個人事業主の資金調達、資金決済、預金取り引きなどに関わる各種相談窓口となっているので、ビジネスに関する幅広い相談ができます。
また、経営課題解決のために三菱UFJ銀行の顧客同士をマッチングする、ビジネスマッチングサービスなどがあります。これらをうまく活用することで、ビジネスの効率化にもつなげることができるでしょう。
個人事業主の口座開設に必要な書類は国税または地方税の領収書または納税証明書(原本)や社会保険料の領収書の原本など、屋号付きで営業を行っていることを確認できるものとなります。
【店舗型銀行3】みずほ銀行
個人事業主が口座開設をするにあたっておすすめの銀行6行目は、「みずほ銀行」です。みずほ銀行で屋号付きの口座を開設するためには、開設理由や口座利用目的などのヒアリングがあります。その後、改めて必要書類を提出しなくてはいけません。初回来店時には運転免許証やパスポートなどの本人確認書類と印鑑が必要になるので、用意してから来店するようにしましょう。
個人事業主の口座はインターネットからの申し込みができないので、注意しましょう。
【店舗型銀行4】ゆうちょ銀行
個人事業主におすすめの銀行の7行目は、「ゆうちょ銀行」です。ただし、通常貯金や定期性貯金は、事業用途とそれ以外の口座を合算し1,300万円が限度額となります。また、口座開設の審査には1ヵ月程度かかりますので、そのあたりも加味して検討してください。
「事業用途で個人名義の口座を開設されるお客さまへ」(ゆうちょ銀行)
屋号付きの銀行口座を開設して信頼される個人事業主になろう!
個人事業主になる方は、必須とまではいきませんが、ビジネス用の銀行口座の開設をおすすめします。屋号付きの口座開設をすることで自分の作業が楽になるのはもちろん、クライアントからの信頼度も向上させることができるでしょう。自分に適した銀行を見つけて、ぜひ口座を開設してみてください。
<文/ちはる>