高齢化が進む日本社会において、介護ビジネスは今後ますます成長していく分野であることが考えられます。また介護施設に入居をせず、訪問介護を利用する人のニーズも高まっています。社会貢献度も高く、利用者や家族から感謝されるため、やりがいも大きいビジネスです。
訪問介護のフランチャイズに加盟することでフランチャイズ本部が持つノウハウを活用し、開業までスムーズに準備することができます。その一方、フランチャイズ本部のサポートやブランド使用の対価として、ほとんどのフランチャイズでは加盟金やロイヤリティという費用がかかることも事実です。この記事では訪問介護のフランチャイズについて概要やメリット、デメリットについても紹介します。
訪問介護のフランチャイズとは
訪問介護のフランチャイズとは、訪問介護サービスを展開するフランチャイズ本部が、自社のノウハウやブランド力、システムなどを加盟店に提供し、加盟店は加盟金や研修費、ロイヤリティなどをフランチャイズ本部へ支払って利用することができるビジネスモデルのことです。
フランチャイズ本部のサポートを受けて開業できる
具体的には、フランチャイズ本部が訪問介護事業の運営ノウハウやサービス、営業ツール、マーケティングのサポートなどを提供し、加盟店はこれらのフランチャイズ本部のサポートを活用して事業を運営することができます。
開業にあたって必要となる訪問介護事業の事業計画書の作成や、「介護保険指定許可」の申請などについて、サポートも受けられます。介護事業を運営するために大きな課題となる、人材募集や採用のノウハウ、スタッフ育成・研修についてもサポートのあるケースが多いです。
下記記事ではフランチャイズの仕組みを解説しています。参考にしてください。
https://entrenet.jp/magazine/25755/
訪問介護(ホームヘルパー)の資格と具体的な業務内容
訪問介護員はホームヘルパーとも呼ばれ、介護保険法にもとづく訪問介護を提供する専門職です。
訪問介護員になるためには、「介護職員初任者研修課程」を受講し、修了証明書を手にしなければなりません。この介護職員初任者研修は、都道府県知事などが実施期間を指定し、行われます。講義及び演習を通じて、必要となる基礎知識や介護におけるコミュニケーション技術、実践的な技術や入浴・食事の方法などについて学びます。全課程終了後には約1時間の筆記試験があります。
実際に従事する業務内容は多岐にわたり、介護を必要としている方のお宅に訪問し、食事や入浴、排泄等の身体介護と、外出支援等の移動介助が含まれます。また、日常生活の援助として、調理、洗濯、買い物等の援助や代行も行います。
参照:福祉のガイド 福祉の資格|社会福祉法人全国社会福祉協議会
訪問介護事業の拠点
訪問介護はその名の通り、介護を必要とする方の自宅を訪問して行うサービスなので、開業時に入居者用の部屋や食堂などの施設を設ける必要がないため、比較的低コストで開業できます。
しかし、事業者は拠点となる事務所を設立しなければなりません。事務所には事務スペースのほかに、プライバシーに配慮した相談室や手洗い場、送迎者の駐車スペースなどを用意します。
訪問介護のフランチャイズに加盟するメリット
訪問介護士として活躍する以外にも、フランチャイズに加盟すれば、訪問介護事業の経営者として独立することも叶います。現在、訪問介護士をしている方や、介護業界での独立に興味のある方に向けて、訪問介護のフランチャイズ加盟をご紹介していきます。訪問介護のフランチャイズに加盟するメリットには、どのようなものがあるでしょうか。具体的には、以下のような点が挙げられます。
これらのメリットもフランチャイズ本部によって異なるため、加盟を検討する場合はフランチャイズ本部の選定や加盟条件をよく確認し、十分な情報収集を行うことが重要です。
介護士の資格がなくてもフランチャイズを開業できる
介護士の資格を持っていない方でも、フランチャイズに加盟すると、フランチャイズ本部が持つ、訪問介護事業のノウハウを活用できるので、一人でイチから開業するよりも、スムーズに開業することができます。具体的に、フランチャイズ本部が持つノウハウには以下のようなものが挙げられます。
【フランチャイズ本部の持つノウハウの一例】
- 事業計画書の作成
- 介護保険指定許可申請
- 介護報酬請求の事務代行
- 集客方法
- スタッフの育成・研修
- スタッフ募集 など
開業時や事業の運営に必要なノウハウやサポートを、フランチャイズ本部が加盟店に共有してくれるため、開業に必要な準備などの期間を短縮し、スムーズに運営まで体制を整えられるというメリットがあります。
介護事業の経験がない方でも、資格を保有している訪問介護士や介護スタッフを採用すれば事業を行うことも可能です。また、事業所を経営していく上で業界の最新情報をフランチャイズ本部から共有してもらえるケースもあるため、制度の改定などがあった際にも安心です。
フランチャイズ本部のサポートにより、初めての起業や経営における不安や失敗するリスクを軽減することができます。また、フランチャイズ本部がすでに成功している経営モデルを共有してくれるため、安心感もあるでしょう。
顧客獲得につながるブランド力を開業当初から手に入れられる
フランチャイズ本部が持つネームバリューやブランド力を活用することで、集客がスムーズにできます。自宅に出入りする訪問介護という特性上、利用者やその家族は、見ず知らずの事業者よりも、信頼できる事業者を利用したいと思うでしょう。
フランチャイズ本部がそれまでに築いてきた知名度や信用は顧客獲得につながり、経営も安定しやすくなるでしょう。また、事業運営に欠かせない訪問介護士の採用においても、知名度の信頼感は重要です。評判の見えない企業よりブランド力のある企業に勤めたい訪問介護士の採用にも期待が持てるのもメリットといえるでしょう。
資金調達がしやすい場合もある
開業する際には、事務所や人員の確保などまとまった資金が必要となります。開業資金は日本政策金融公庫や金融機関などで資金調達できますが、フランチャイズに加盟することで資金調達しやすくなる可能性もあります。フランチャイズ本部の持つ、それまでの成功実績が買われたり、綿密な事業計画書を提出できたりすることなどが理由として挙げられます。
訪問介護のフランチャイズに加盟するデメリット
訪問介護のフランチャイズに加盟するメリットとは対称に、デメリットはどのようなことが考えられるでしょうか。デメリットもきちんと理解した上で加盟検討をするようにしましょう。
加盟金やロイヤリティがかかる
フランチャイズに加盟するためには、フランチャイズ本部により金額は異なりますが、費用がかかります。フランチャイズ本部から数多くのサポートを受けられるといっても、その対価として、加盟金や研修費用、売り上げに応じたロイヤリティなどの支払いが発生する点はデメリットともなるでしょう。サポート内容に見合ったロイヤリティかどうか、必ず確認するようにしましょう。
経営上の制約があるケースも
フランチャイズ本部から事業内容についてのサポートを煩わしいと感じる方もいるでしょう。フランチャイズ本部によっては、独自のルールやシステムに則って経営を行わなければならないケースがあります。自由度が低く、独自のアイデアやサービスを取り入れることが難しいこともあるので、フランチャイズの持つノウハウを活用するにあたり、どれくらいの自由度があるのか、自分の希望するノウハウ共有と比較することが大事です。また、訪問介護士の資格を活かして開業しようとしている方は、特にフランチャイズ本部への期待値が高いこともあります。理想に近い運営をしているフランチャイズ本部があるか、複数社で比較検討する機会を怠らないようにするのも、成功のポイントの一つです。
フランチャイズ本部のトラブルや倒産リスクはなくならない
自分の事業所がどんなに正しく運営していても、同じフランチャイズに加盟したほかの事業所やフランチャイズ本部自体がトラブルを起こすことで、自分の営業所も風評被害を受けてしまうというリスクは存在します。
またフランチャイズ本部が倒産すると、加盟店も影響を受ける可能性があります。加盟時には、フランチャイズ本部の経営状況を確認する必要があるでしょう。
このように、他の加盟店のトラブルやフランチャイズ本部の倒産など、予期せぬ事態が起きた際に、フランチャイズ本部がどのような対応をするのかは加盟時の契約書などに記載があるはずです。契約書についても確かめておきましょう。
訪問介護のフランチャイズへの加盟方法
訪問介護のフランチャイズに加盟するためには、フランチャイズ本部が主催する説明会に参加することが第一歩です。説明会では事業詳細のほか、すでに事業を展開している先輩オーナーの話を聞けたり、希望する開業エリアでの売り上げと利益のシミュレーションなども紹介されたりすることが多いです。
説明会に参加して、疑問点が出たら、都度、確認するようにしましょう。なんどか話を聞き、加盟検討をし、加盟を決めたら、契約締結に進みます。その後、介護保険指定許可申請や物件の選定、職員の採用、研修など具体的な開業準備に入ります。
訪問介護のフランチャイズで安定経営
訪問介護はフランチャイズ本部も多く、ブランド力が活用できるため、加盟店としてのメリットも多く存在します。加盟金やロイヤリティなどフランチャイズ本部への支払いもありますが、1人でゼロからスタートするケースに比べ、はるかに心強いサポートが受けられ、安定した経営を目指していけるでしょう。
アントレではフランチャイズ本部の概要や加盟プランだけでなく、加盟店のレポートなども掲載しています。事業のやりがいや社会貢献度も高く、将来性もある訪問介護のビジネスについて、ぜひ前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
<文/北川美智子>