起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。
経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第96回・苦渋労働か、退屈か
いきなりですが、クイズです!
クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある
最近、個人的に体験したことで、面白い話があったのでクイズにしようと思います。それは洗濯機を買い換えた時の話です。
自宅の洗濯機が突然壊れて動かなくなってしまったので、急いで家電量販店に買いに行ったのですが、これが思った以上に大変でした。
しばらくはコインランドリーを利用する方法もありますが、やっぱりなくては困るものですから、すぐに欲しいわけです。しかし、人気商品や、価格と機能のバランスが良い売れ筋商品は得てして在庫がなく、配送されるまでに1カ月以上かかるものもありました。結果的に、選択肢が一気に狭まってしまい、機能や価格などをじっくり検討する余地がなくなってしまったのです。
どうしたらいいか困っていると、店員さんが「賢いお客様」の話をしてくれました。
それでは解説します!
洗濯機は家電の中でも機械製品にあたるので、自動車などと同じように耐久年数があります。
これは意外と知られていないことかもしれませんが、具体的には洗濯機の耐久年数は「6〜7年」といわれており、本体部分にそれが明記されているのです。
メーカーや機種にもよりますが、「設計上の標準使用期間 7年」と具体的に書いてあるものや、「○年○月まで」だったり、製造年が書いてあるだけだったりするものもあるようです。
ただし、店員さん曰く「あくまでも目安」であり、実際は平均すると8年半くらいは使えるというデータがあるのだとか。
この事実を知っている賢い人は、購入から7年が過ぎると、いつ壊れてもいいように買い換える機種を選び始めるのだそうです。場合によっては、目をつけた機種が安くなったタイミングで、壊れる前であっても買い換えてしまうといいます。
このやり方だと、在庫や配送日を気にせずにじっくり検討ができますよね。長く使うものだからこそ、納得のうえで自分の欲しいものを買うことができます。しかも、あせって買い換えなくていい分、値段が下がっている時や、資金的に余裕があるタイミングを選んで買う決断ができるわけです。
まさに賢い買い方ですよね。
高い時に買い換えなくてすむように備えるのも大事
この洗濯機の話を聞いて思ったのは、「車だったら、多くの人がそういう行動を取っているのではないか」ということです。
例えば、「10年くらいは乗れるとしても、下取りの価格などを考えて2回目の車検の頃には買い換えようかな」という具合に、使いながら計画的に買い換えについても検討している人は多いはずです。
同じように耐久年数があるものなのに、今回のような家電、中でも洗濯機については、そういった発想で考えてこなかったなあとあらためて気付かされました。まさしく盲点だったと思います。
不動産経営をしている人は分かると思いますが、賃貸マンションに設置しているエアコンが突然壊れて連絡が来ることがあります。それが真夏や真冬の一番稼働する時期であれば、買い換え費用は通常時に比べるとかさみますし、それこそ業者の都合ですぐに設置してもらえなかったりします。だからといって後回しにするわけにもいかず、かなりの出費や手間が余儀なくされるでしょう。
いつ設置したものかをきちんとチェックしておいたり、耐久年数を想定して計画的に買い換えを考えておいたりすれば、そのような事態になることは避けられるわけですね。
身の回りのものをちょっと見てみよう
「備えあれば憂いなし」ではありませんが、消耗品のストックを日頃から用意しておくように、耐久年数と買い換え時期を頭に入れておくことも、1つの大事な備えになるということが、今回の教訓です。
とはいえ、先ほど自動車の例を出しましたが、スマホや携帯電話の買い換えについては、かなり意識的にそれを実践している人は多いはずです。だから決して大げさなことではないのかもしれません。どこに盲点があるか分からないからこそ、あらためて身の回りのものにちょっと目を配ってみてくださいね。
最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「洗濯機が7年程度で壊れることを知っているから」でした。ちなみに、故障したものを修理しながら耐久年数以上使い続けることはできますが、交換部品がなくなったりして修理できなくなることも多いです。ものを大切にすることは大事ですが、仕方がない場合もあるわけですね。
構成:志村 江