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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第73回・徳川吉宗はなぜ桜を植えたのか

フランチャイズは儲かる?失敗しないためのポイントを解説! 独立ノウハウ・お役立ち

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

今年も桜がきれいな季節になりました。東京・隅田川沿いは桜の名所として知られ、人気の花見スポットとなっていますが、江戸っ子たちが隅田川で花見を始めたのは、江戸幕府第8代将軍・徳川吉宗の政策がきっかけだったといわれています。花見の習慣をつくったのは、幕府による「ある目的」があったというわけですが、さてそれは一体何でしょうか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

「暴れん坊将軍」でお馴染みの、江戸幕府第8代将軍・徳川吉宗。

彼が進めたある政策にまつわるエピソードから、ビジネスのヒントになるような話をしてみたいと思います。

今回のポイントは、「みんなの力を少しずつ集める」です。

それでは解説します!

突然ですが、東京・吉祥寺にある「ブックマンション」をご存知でしょうか?

たくさんの本が並ぶ店内は、パッと見は普通の書店のようですが、実は棚を1つずつ貸し出した「シェアする本屋」として話題になっています。

棚の数は150。利用者は月ごとの利用料を払ってそのスペースを借り、自分の好きなテーマで好きな本を並べて販売できます。いうなれば、150人のおすすめの本が集まってできたお店です。

本が好きな人は「自分はこの本を売りたい、紹介したい」という気持ちが強いものです。ブックマンションは、いろんな人のそうした思いが少しずつ集まって、1つの大きなお店になっているのです。

さて、話をクイズに戻しましょう。

徳川吉宗は「享保の改革」で知られているように、色々と新しいことを推し進めた将軍だといわれています。その中でも力を入れたことの1つに「治水」がありました。

当時、江戸の真ん中を流れる隅田川はまとまった雨が降ると増水しやすく、周辺の農村などに被害を及ぼすことがあったそうです。これを何とかしようと考えて行ったのが、川沿いに桜の木を植えることでした。

桜の花が咲く時期になると、きれいな桜を一目見ようと大勢の人が集まります。そうすると、集まった人たちによって川沿いの地面が少しずつ踏み固められて、簡単には決壊しない「堤防」ができると考えたのだそうです。

つまり、膨大なお金をかけて治水工事をするのではなく、たくさんの人の力を少しずつ借りることで、大きな堤防を作り上げたというわけですね。時代も手法も全く違いますが、最初の「ブックマンション」の話と共通します。

「スポンサーになってほしい」ではハードルが高いが…

このような、たくさんの人の協力を得て成し遂げる取り組みでちょっとした話題となっているのが、愛知県犬山市にある「日本モンキーセンター」という猿の動物園です。

同園のホームページやTwitterを見ると、「中古でもいいのでほしい物リスト」と、職員が頭を下げている写真が載っています。

これが何かというと、限られた資金の中で動物園を運営していくために、家庭や会社で不要になったものを寄付してほしいと情報発信しているのです。

乗用車や物置といった大きなものから、機械工具や単管パイプ、デジカメなどがリストに並んでおり、過去には中古の軽トラックや扇風機、冷蔵庫、パソコン、洗剤やタオルなどの日用品まで、いろいろな物品をリクエストしていました。動物園を応援したい人で、こうした不用品が手元にある人は、寄付することで園の経営を助けることができるというわけですね。

地方の動物園は財政的に苦しいところが多いといいますが、「日本モンキーセンター」はこうしたたくさんの人の支援によって、見事再生しているのです。

1つポイントがあるとすれば、リクエストしているものが「大したものでない」ところでしょう。「スポンサーになってほしい」「何百万円を出資してほしい」というお願いだと途端にハードルが高くなりますが、頼まれた方も「それくらいなら」と思えるような、ちょっとしたものであるところが、実に絶妙だと思えるのです。

まさに、「みんなの力を少しずつ」が集まった、今どきの面白い事例です。

集められるものはお金だけじゃない

「みんなの力を少しずつ」と聞いて、クラウドファンディングを想像した人も多いでしょう。クラウドファンディングは資金を集めるための有効な手段として浸透していますが、同時に色々な善意や思い、共感といったものがそこに乗っているからこそ、広く利用されているのだと思います。

その意味で、集められるものはお金だけでなく、知恵やアイデア、さらには「ちょっと余っているもの」など、いろんな選択肢がありそうです。自分ならどんなものが集められそうか、ちょっと考えてみてはどうでしょうか。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは、「たくさんの人に地面を踏み固めてもらって堤防を作るため」でした。ちなみに、隅田川といえば花火大会も有名ですが、実はこれも同様に、堤防を踏み固めるための人集めとして始まったのだとか。当時の幕府の財政復興を進めた手腕が評価されている吉宗ですが、人が集まる仕掛け作りが非常にうまかったというわけですね。

構成:志村 江

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PROFILE
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(ともにPHPビジネス新書)など。

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