在賀耕平さん(42歳)
2007年頃、消費至上主義的な世界に限界を感じ、農家に転身。
今では年間60品目の野菜を栽培、北八ヶ岳の畑から都心に「旬の野菜セット定期便」を届ける。
VOL.197有機肥料で年間60品目。北八ヶ岳から野菜を直送
都会を捨てたら無闇なパワーがわいてきた
32歳まで都内のITベンチャーで働いていて、金銭的にも恵まれていました。でも本を読むと、テクノロジーの進化は打ち止め、石油エネルギーもどこまで持つかと書いてある。会社で扱うソフトウエアも「あってもいいけどなくても困らないもの」でした。なんだか消費至上主義的な世界に限界を感じたんですね。
「農業はどうだろう」と妻に話すと意外にもすぐノッてきて、勢いがつきました。
ITから農業へ、都会から田舎へ、新天地を目指すんだと決めると無闇なパワーがわいてきた。退職後数年間は、そのパワーで突き進んだ気がします。
田舎が好きなわけでも、農業が好きなわけでもないんですよ。
仕事を充実させながら夫婦2人で仲良く生きていけたらそれでいい。東京でもまだやれたのかもしれません。ただ僕はもともと物欲が少ないし、せいぜいおいしいものを食べるぐらいで満足する。「頑張るぞ!」というタイプでもないんです。「あえて厳しい環境に身を置かないと自分はダメになる」と思って猛烈に働いていたんですけど、あと10年20年続けるのは難しかったかも。
今の環境のほうが、本来「のほほん」としている自分に向いています。畑仕事をして、ふと見上げた瞬間、いい景色だなと思う。
東京の人はこの景色をわざわざ見に来るんだと思うと、僕らいい生活してるなって。
アントレ2017.秋号 「会社員の肩書、プライド、業界の慣習から自由に! 捨てれば始まる」より