角田 太郎さん(46歳)
VOL.156元Amazon部長が開業 カセットテープ店
時代に逆行
カセットテープが音楽業界を再生する
ア
マゾンの黎明期から14年働きました。辞める直前の僕はよくいる外資系マネジメント人間です。アマゾンのことは誰よりも愛しています。でも僕がやりたかったことは別で。新卒でWAVEに就職したんですが、CD産業が衰退して不完全燃焼。アマゾンに転職してインターネットで音楽を売りながら「自分ならこんな店をつくるのに」ってずっと空想してました。
恵まれたポジションを手放すからには、アマゾンでは絶対できないことをしたい。そう思った時部屋のなかを見渡したら約1万本のカセットが並んでいたわけです。
僕はおそらく世界的なカセットコレクター。市場らしい市場がないのでカセットの入手は困難。でも入手困難だからこその「ありがたみ」があります。それこそ定額で音楽聴き放題の時代になって失われてしまったもの。
僕のビジネスの持論は時代に逆行すること。そうすれば誰もいないところにたどり着ける。起業したら社内稟議もなくなる、いっそう説得不要で逆行できますよね。SNSもマーケティングもしない。音楽離れが叫ばれているなか、それでも開店前からお客さんが並んでくれる。メディアが変わるだけで音楽はまだ売れるんです。僕は本気で、カセットから音楽業界を再生するつもりですよ。
アントレ2016.夏号 「儲けも損も財産だ 激白!社長の醍醐味」より