「もう1つの年金」と称され、老後の積立資金として人気のあるiDeCo。
前回、アントレ Style MagazineではiDeCoについて、やさしいお金の専門家・横川楓先生に解説していただきました。
“もう1つの年金”・iDeCoについて、やさしいお金の専門家・横川楓先生が解説!
https://entrenet.jp/magazine/32818/
実はそんなiDeCo、なんと2022年に3度も制度の改正がありました。
一体どんなことが変わったのでしょうか。今回も横川楓先生にお話を伺いました。
横川楓さん
やさしいお金の専門家・金融教育活動家
一般社団法人日本金融教育推進協会 代表理事
明治大学法学部卒、その後同大学院へ進学。
24歳で経営学修士(MBA)を取得。
実家は会計事務所を経営。
同年代の友人たちのお金に対する意識と、将来の資産形成、所得格差、年金問題、増税など、これからの日本を担う世代に振りかかるさまざまなお金の問題との乖離に疑問を持ち、お金の知識の啓蒙活動を開始。
ファイナンシャルプランナー(AFP)や、SDGs検定、マネーマネジメント検定等の資格を取得し、2022年1月に一般社団法人日本金融教育推進協会を設立。
同法人の代表理事を務める。
横川さんのインタビュー記事はこちらから!
「収入=給与」に縛られない。経済評論家・横川楓さんに聞く、独立・起業に必要な2つの条件
庵(いおり)
イラストレーター
都内に住む27歳のフリーランスイラストレーター。
学生時代から絵を描くことが好きで、数年前から副業としてイラストレーターの仕事を受けるようになった。
近年は副業での収入が本業の稼ぎより多くなったことから、独立を決意する。
2022年はiDeCo大転換の年になる?

今日は久々にiDeCoをテーマにお話していくよ。
実はiDeCoは、今年に入ってから10月現在までに3度も制度が変わってるんだ。

3度もですか! ……そもそものiDeCoの仕組みも、ちょっとうろ覚えです……。

じゃあ簡単にiDeCoについて復習していこうか。
詳しくは以前の記事に書いてある通りなんだけど、iDeCoというのは別名「もう1つの年金」のこと。
今支払っている年金(個人事業主なら国民年金、会社員なら厚生年金など)に、プラスアルファの掛金を支払うことで、将来もらう年金に金額を上乗せできる制度だったよね。
“もう1つの年金”・iDeCoについて、やさしいお金の専門家・横川楓先生が解説!

そうでした、だんだん思い出してきました!

最低毎月5000円から、個人事業主なら最大68000円まで掛金をかけられるんだ。
ちなみに会社員の人も加入できるはできるんだけど、個人事業主に比べて掛金の上限は低くなっているよ。
これは個人事業主が入っている国民年金に加えて、会社員が加入する厚生年金はそもそもが国民年金の金額に加えて会社が掛金を上乗せしているから。

iDeCoを使えば、国民年金にも厚生年金にもさらに上乗せできるんですよね。会社員のように会社からの上乗せがない個人事業主にとって、心強い制度ですね!

加えて払った掛金は全額確定申告で控除できるんだ。将来もらえる年金を増やしていきつつ、節税もできる。
ここまでが従来のiDeCoの概要なんだけど、今年さらに制度の変更があったんだ。
加入対象者が大幅に広がった! 2022年に変わった3つのこと
4月編

まず、2022年4月に変わったのがiDeCoの老齢給付金の受給開始年齢の延長。
これまでiDeCoの老齢給付金の受給開始年齢は、60歳から70歳までの間だったんだけど、2022年の4月から75歳までに延長したんだ。
5月編

5月には何が変わったんですか?

5月には、iDeCoの加入要件が緩和されたんだ。
・国民年金に任意加入している60歳以上65歳未満の人
・国民年金に任意加入している海外在住の人

この3つのいずれかに当てはまる人も、iDeCoに加入できるようになったんだ。

上2つについては、年齢に関するものなんですね。

そうだね。今までは年金は定年(満60歳)になるまで払うものだったんだけど、今は国民年金の「任意加入」といって、65歳になるまでの5年間プラスアルファで払い続けることもできるんだ。
これは60歳で定年を迎えた後も、働き続ける人が増えているからだね。
そこで「もう1つの年金」たるiDeCoも、65歳になるまで加入できるようになったんだ。

最後の海外在住の人、というのは?

海外に住んでいる人は、任意加入という形で年金に加入できるんだ。よって年金に入っているから、iDeCoにも入ることができるよ、ということだね。
ただし年金やiDeCoは、日本だと当然全額控除の対象になるんだけど、収入の得方によって日本の控除には当てはまらないこともあるから、要注意。
10月編

最後、10月に変わることを教えてください!

これは主に会社員の人向けのお話。
企業型確定拠出年金(企業型DC)に入っている人のiDeCo加入要件が緩和されたんだ。

企業型DCって……なんですか?

iDeCoと同じような仕組み(確定拠出年金の制度)をその会社独自の制度として行っている企業もあるんだ。
個人事業主に限らず、基本的に会社員でもiDeCoに加入はできるんだけど、企業型DCに加入している会社員は、これまでiDeCoに加入できなかったんだよ。
それが今回、2022年10月からはiDeCoに加入して、以下のように掛金をかけられるようになったんだ。

ただ、企業型DCのマッチング拠出を行っている人は引き続き加入できないので注意しておこう。
対象者が広がり、活用しやすくなったiDeCo。しかし注意点も?

今年のiDeCoの制度改正、いずれも「加入できる人の幅が増えた」という印象です!

そうだね。
今まで以上にいろんな人がiDeCoを活用できるようになったから、これからの人生設計やマネープランの選択肢がさらに広がっていくことはメリットとして挙げられるかな。
一方でこれは前回も説明したけれど、iDeCoは掛金を設定したらずっと払い続けなければいけないんだ。
掛金の最低金額は5000円だから、控除対象とはいえ月々5000円の固定費がかかってしまうことになる。
自分に合った掛金で、無理なくiDeCoを活用していこうね。

横川先生、今回もありがとうございました!
構成・文・撮影=内藤 祐介
イラスト=ram