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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第99回・ワクチン接種が進んでいる国で起こっていること

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起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

新型コロナウイルスへの対策として、世界中でワクチンの接種が進んでいます。さて、次に挙げる5つの国の2021年4月15日現在のワクチン接種率(人口に対する少なくとも1回接種した人の割合)を高い順に並べた時に、日本は何番目になると思いますか?

日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、イスラエル

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

新型コロナウイルスの発症を抑える効果が期待されるワクチンの接種が、世界中で始まっています。

日本においても、河野ワクチン担当大臣の指揮のもと、今年2月より接種が始まりました。まずは医療従事者からで、次に高齢者、その次に基礎疾患を有する人や高齢者施設などの従事者と、随時対象を広げて接種が進んでいく予定です。

感染症という脅威に対抗するための「武器」ともいえるワクチンですが、さて、日本のワクチン接種は世界的に見て進んでいるのでしょうか?それとも遅れているのでしょうか?

それでは解説します!

今回のクイズでは、日本と比較するために、アメリカ、イギリス、ドイツ、イスラエルという4つの国の数字を見てみたいと思います。その国々と比べて、日本はどのくらい進んでいるのかを考えてみましょう。

まずは、この中で一番接種が進んでいるのがイスラエルです。ワクチンを少なくとも1回接種した人は人口の約62%で、これは割合としては世界で一番高い数字です。
※数値は全て『Our World in Data』4月15日更新分より参照

そんなワクチン接種が進んでいるイスラエルでは、一部の海外旅行が解禁になったといいます。ワクチンのおかげで、景気回復に向けていろいろなことが「できる」状況になり始めているようです。

二番目に高いのがイギリスで、約48%。そして三番目がアメリカで約37%です。アメリカについては、ワクチンを少なくとも1回は接種した人が約1億2230万人と、接種回数は世界で一番多くなっています。

残るは日本とドイツですが、ドイツに関しては新型コロナウイルス対策で苦悩するニュースが多く報じられています。ワクチンがあまり普及していないことから、イースター休暇中の外出自粛規制を強化しようとしたところ、様々な方面から批判が続出。メルケル首相が撤回、謝罪することになったようですが、それくらい苦戦しているといわれるドイツで、約17%です。

では、日本はどうでしょうか。

ニュースでも報じられていますが、接種率はわずか0.9%で、1%にも届いていません。これは世界の国々の中でもかなり低い数字であり、いかに日本のワクチン接種が遅れているかを示しています。

悲観的な状況だが、裏を返せば……

日本については、人口に対する接種率が低いだけでなく、そもそも1回でも接種した人の数が114万人あまりと、世界的に見てもかなり少なくなっています。

日本は自国でワクチン開発ができないため外国製に頼ることになり、どうしても遅れてしまいます。医療従事者や高齢者への接種も思うように進んでいない印象で、余ったワクチンの廃棄が問題となったり、メーカーを選んで接種できるような話が出るもすぐに大臣が訂正したりと、何かとバタバタしているのが現状です。

世界の国々と比べると、コロナ対策という意味では悲観的にならざるを得ない残念な状況といえそうですね。

しかしここでは、この事実をただ残念がるのではなく、逆の見方をしてみたいと思います。それは「対策が遅れているからこそ、他の国の動きから学ぶことができる」という視点です。

ワクチン接種が進むことで、イスラエルのように海外旅行が解禁になるなど、世界各国で次々と景気回復に向けていろいろな取り組みが進んでいくでしょう。どの業界がどういう順番で回復していくのかなど、これからどういった順序で何が起こっていくのかについて、海外の国々の状況をしっかりウオッチしたうえで、対策を講じることができるわけですね。

つまり、裏を返せば、この悲観的な状況は「先を読む」時に非常に役立つわけです。

例えばイスラエルではワクチンを接種した人に接種証明となる「グリーン・パス」を発行し、公共施設やお店、イベント会場などでの提示を義務付けているそうです。今後、日本でもこういったワクチン・パスポートの取り組みを検討していくとしたら、海外のこうした事例を参考にできるかもしれません。

国ごとの違いに着目すると、見えてくることがある

ワクチン接種においては、日本は非常に遅れているといわざるを得ません。しかし、そのネガティブな状況をただ悲観するのではなく、違う角度から捉えてみることで、新たに見えてくることがあります。

私は経営戦略コンサルタントとして「未来予測」を専門としていますが、普段から今回取り上げたような「国ごとの違いや遅れ」に着目して、経済を読む練習をしています。いいトレーニングになるので、ぜひ皆さんもやってみてくださいね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「5番目(最下位)」でした。ちなみに、ニュースでワクチンについて報じる際、注射を打つ様子が繰り返し流されますよね。注射が嫌いな人からしたら非常に嫌な映像だと思いますが、あれには「痛くないんだよ」とアピールする意図があるようです。ワクチンは筋肉注射なので通常の注射よりは痛いといわれますが、痛がっていない人の映像を通じて、前向きに接種してもらおうということですね。

構成:志村 江

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PROFILE
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(ともにPHPビジネス新書)など。

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